佐渡ハイヴ強襲作戦から一週間が経った。
ハイヴを不用意につついた影響は今の所なく、BETAの表立った行動はみられない。
強襲作戦で中破したエクスのVF-25SCの修理も完了し、後はシェイクダウンを残すのみだ。
「修理は完璧だ。 ついでに操縦系を調整してある。 前に比べて反応が過敏になっているがお前さんなら問題無いだろう。」
エクス
「やっと直ったか! 整備班長、ありがとう! これでいつBETAどもが来てもいいぜ!」
「相変わらず、気の早いヤツだな。 修理は完了してても、まだ、シェイクダウンしてないぞ? いつやる?」
エクス
「…そうだな。 早いに越した事はない! さっさとシェイクダウンもやっちまうか。」
「発進準備はしといてやる。 ちゃんと、艦長の許可を取ってからにしろよ。」
エクス
「分かってるって! 今から許可を取って来るさ。」
そう言うやいなや、ハンガーを飛び出し艦長室に向かうのだった。
◆◆◆◆◆
エクス
「クラウ、聞こえるか? 機体のご機嫌伺いをしたい。 発進許可をくれ。」
クラウ
「艦長からの許可は出ています。 いつでも発艦してください。 念の為、最低限ガンポットだけでも装備してくださいね。」
エクス
「分かってるさ。 ちゃんと装備済みだ。 じゃあ、行ってくる!」
スロットルを全開にし、アフターバーナーを吹かせ、一気に最大推力まで、押し上げる。
そのまま、カタパルトから押し出され、ランディングギアが甲板から離れると、一瞬、落下するかの様な浮遊感がエクスを襲うが、直ぐ様、翼が風を捉え揚力が生まれると同時に大空に舞い上がる。
エクス
「やっぱ、宇宙と違って空を飛ぶのは気持ちいいぜ!」
いつの間にか、エクスによる一人アクロバット飛行が始まっていた。
ロールしながら急上昇、降下しながらコークスクリュー、ただただエンジン出力任せのコブラなど、ありとあらゆる技を繰り出し機体を思うがままに操る。
エクス
「んじゃ、一気に上がってみるか!」
そう言うと、機体を垂直に上昇させ始め、エンジン出力を最大まで上げる。
瞬く間に機体は大空を駆け上がり、僅かな時間で成層圏近くまで到達した。
エクス
「空力限界高度まで、たったの27秒。 良い吹け上がりだな!」
機体の仕上がり具合に満足し、自然と笑みが浮かんでくる。
エクス
「! そうだ。 折角だから、あれ、やってみるか!」
そう言うやいなや、エンジン出力をカットする。
当然、運動エネルギーが無くなった訳だから、機体は墜落・急降下を始めるものかと思うだろう。
しかし、機体は悠然と飛行を続け、高度は少しずつしか落ちていない。
エクス
「なんだったけか… え~と、あぁ、竜鳥飛びだったけ!」
そう、これは現在はS .M .Sに所属しているエースパイロット、イサム・ダイソン中尉が考案したテクニック、"竜鳥飛び"である。
下から吹き上げる上昇気流に機体を任せ、風に乗る。
言葉にすると簡単そうだが、実際は高等テクニックである。
ちなみに、考案者のイサムは"名付けて、必殺、竜鳥飛びだぜ"と言ったらしいが、何が必殺なのかよくわからない…
機体を風に任せ、のんびりと遊覧飛行を続け、ゆったりと降下してくる。
バルキリーは大気圏内での飛行は、航続距離が無制限だ。
故に節約もクソも無いのだが、たまにはこう言うのもいいだろう。
エクスは、今、ヘルメットすら被っていない。
エクス
「まったりするのも、悪かない。」
ゆっくりと降下している感覚を楽しんでいると、突如、警報がコクピット内に鳴り響く。
ロックオンアラートだ。
エクス
「こんな時にロックオンだと!? 何処のどいつだ!」
ロックオンアラートが出るという事は相手はBETAではない、人類が創った兵器という事だ。
直ぐ様、ヘルメットを被り直し、エンジンに火を入れる。
エンジンが目を覚まし、アフターバーナーから爆炎を吹き出し始め、加速を開始する。
ロックオンアラートはまだ、鳴り続けている。
エクスがレーダーを確認すると、光点が12個ほど点滅している。
ハッキリと点灯しないという事は、相手は恐らく、ステルス機だろう。
エクス
「お粗末なステルスだな。 殆ど丸見えだぜ。 まぁ、折角のステルス機能もロックオンで存在を晒した時点で二流もいいとこだがな。」
VF-25に搭載されているレーダーシステムはフォールドレーダーだ。
フォールドレーダーにかかれば、通常のステルスなど、なんの意味も成さない。
さらには、折角のステルス機能にも拘わらず、ロックオンした事により、相手に存在を知らせてしまっている。
まさにマヌケな話だ。
さして慌てずに其のまま飛行を続けると、ロックオンアラートからミサイルアラートに警報が切り替わる。
どうやら、此方をロックオンしていた機体がミサイルを発射したようだ。
警告無しのロックオン、予告無しのミサイル発射、どうやら、むこうさんは一戦やる気のようだ。
エクス機に向かってくるミサイルは20発程度。
直ぐ様、機体をバトロイド形態に変形させ、重量子ビームガンポットを構える。
此方に飛来するミサイルを次々にロックオンし、ビームを発射。
ビームに撃ち抜かれたミサイルは次から次へと爆発、一発もエクス機に到達する事は無かった。
エクス
「気の抜けた攻撃だな。 んじゃ、お返しと行きますか!」
敵機をロックオンし、トリガーを引く。
ところが、コクピット内にエラー音が鳴り響く。
エクス
「あっ! ミサイル、積んでねぇ…」
あくまで、シェイクダウンの為、ミサイルは今回、搭載していない。
エクス
「仕方ねぇな。 ドッグファイトと洒落込みますか!」
再度、ファイター形態に変形させ、敵機に向かい加速し突撃していく。
瞬く間に、敵機との距離が縮まり、視認出来る距離まで近付くと、敵機の姿形がハッキリと見えてくる。
コクピット内のディスプレイには捉えた敵機の情報が表示された。
エクス
「F-15E。 アメリカか…」
"F-15E ストライク・イーグル"
F-15イーグルをベースに総合的に攻撃力を強化した派生機で、米軍の主力となっている第2.5世代型戦術機。
国連軍でも活用されており軌道降下兵団が使用している。
F-15シリーズ最強と言える高い性能に加え、最新型である第3世代機と比べても遜色のない稼働率と信頼性を誇る。
外見は旧来のF-15系列機とほとんど変わらないが、内部は大幅に変更されており、まったくの別物と言っても過言ではない。
さらに、ステルス機能が試験的に実装されているとの事である。
F-15に向かい突撃を続けると、当然相手は銃弾をバラ蒔いてくる。
しかし、突撃砲の36mm弾など、エネルギー転換装甲の前では豆鉄砲同然だ。
コクピット周辺にはピンポイントバリアを張っている。
飛来する銃弾を気にもせず、突撃しそのまま敵機の横をすり抜ける。
すり抜けざま両脚部のみ展開、逆加速・急制動をかけ、そのままバトロイド形態に変形しながら急旋回、バックを取り、敵機が旋回を終える前に視界に捕らえロックオン、管制ユニットを避け重量子ビームガンポットのトリガーを引く。
撃ち出されたビームは2機のF-15Eの両腕部を撃ち抜き、被弾した腕部からは黒煙が立ち上ぼり、中破状態にまで追い込む。
エクス
「まずは2つ! あと、10機!」
流石に撃墜・大破させる訳にはいかないので、中破程度に抑えている。
もたついて旋回しきれていないF-15Eを視界に捕らえ、ロックオン、トリガーを引く寸前、別の機体が突撃砲を乱射しながら、突っ込んでくる。
エネルギー転換装甲のお陰でダメージは無いものの、貰い続けては相手が調子に乗るので、回避運動をとる。
しかし、相手もさるもの、回避先を予想して突撃砲を乱射しながら、体当りを敢行してきた。
機体と機体のぶつかり合いで、コクピットが揺さぶられる。
エクス
「チッ。 やるな!」
機体を引き剥がそうとしたその時、取り付いて密着しているF-15Eから接触回線での通信が入る。
???
『どうして、日本なんかに協力する?』
エクス
「あ? どういう事だ?」
???
『アンタ、アメリカ人なんだろ? 諜報部からそう聞いている。 なのに、なぜ、アメリカに協力しない?』
確かにエクスはアメリカ系だが、当然、此方の地球に戸籍や経歴がある訳では無い。
どうやってアメリカ系と断定したのか気になった。
エクス
「へぇ、よく割り出したもんだ。 どうやったんだ?」
???
『言葉のイントネーションだそうだ。』
エクス
「なるほどな。 確かに俺の祖先はアメリカ系だが、俺には関係無い。 そもそも、人種なんかどうでもいいさ!」
エクス達の世界では既に地球圏は統一されており、人種の差など些末な問題である。
ましてや、此方側の地球は絶滅の危険性がある状態である。
日本人だ、アメリカ人だの言っている場合では無い筈である。
???
『貴様! アメリカ人としての誇りは無いのか!』
エクス
「どうして、そこまで拘る? 今はそんな事に拘っている場合じゃない筈だ!」
???
『くっ!』
エクスからの問い掛けに言葉に詰まる。
どうやら、拘りの元は至極個人的な事のようだ。
エクス
「まぁ、いいさ。 だが、襲撃してきたからにはタダで済むと思うなよ! 俺はエクス・レーヴァテイン、お前ら全員、叩き落とす!」
???
『!! 俺はユウヤ・ブリッジスだ。 ヤれるもんなら、ヤってみろ!!」
まさか、襲撃側が名乗るとは思ってなかったのか、エクスが困惑の表情を浮かべる。
???
『ユウヤ、何をしている!? 自分から正体をバラすなど。』
ユウヤ
『レオンか! 五月蝿い! 黙ってろ!』
レオン
『なっ!? だから、名前を出すな!』
そんな会話を通信越しに聞きながら、エクスは構ってられるかと、ユウヤのF-15Eを振りほどき、攻撃体制に移るのだった。
◆◆◆◆◆
今、俺達は日本帝国に現れた正体不明の戦術機を捕獲・連行する為に、網を張っている。
しかし、網を張り始めてから数日、標的には動きがない。
戦術機と共に現れた空中戦艦の中にいる限り手の出しようがない。
そんな時、千載一遇のチャンスが訪れる。
『コマンドポストより、インフィニティーズ。 目標に動き有り。 どうやら、単独で動いている模様。 今がチャンスだ。 作戦を開始せよ。』
キース
『了解。 作戦を開始する。 行くぞ!』
いよいよだ。
作戦が始まる。
だが、俺は正体不明の戦術機の衛士の在り方に苛立ちを覚えていた。
ステルスを起動させ、低空飛行で目標に近付く。
ステルスが機能しているのだろう。
此方に気付いた様子は無い。
前衛を務める僚機がロックオンを掛け、ミサイルを発射する。
そこからの目標の行動は素早かった。
噂通り、戦闘機から戦術機に変形するとライフルでミサイルを迎撃した。
しかも、一発も撃ち漏らす事なくだ。
素直に凄まじい射撃技術だと思う。
ミサイルを迎撃してみせた後、戦術機から戦闘機に戻り、俺達に向かって突撃してくる。
俺達は突撃砲を構え、迎撃の為、36mm弾をばら蒔くが、そんなのお構い無しと突っ込んでくる。
『当たってる筈だ! なんで墜ちないんだよ!?』
そんな僚機からの通信が聞こえてくる。
確かに弾は当たっているが、目標がダメージを受けたようには見えない。
装甲強度が此方とは段違いのようだ。
そのまま、俺達の脇をすり抜け、俺達が旋回し目標を捉える前に、僚機2機が攻撃を受け、中破させられた。
あのスピードから急停止して此方よりも速く旋回するなど、乗っている衛士はミンチにならないのか。
続けざまに次の標的に攻撃を加えようとした所に俺は咄嗟に突撃砲を構え、乱射しながら、突進する。
やはり、弾は当たってはいるが、効果が無い。
ならば、このまま機体をぶち当てる。
目標に向かって体当たりをかますが、逆に此方の装甲が悲鳴を上げる始末だ。
いくらなんでも、固すぎだろ。
そんな苛立ちもある上に、相手衛士に覚えている苛立ちも重なって接触回線を開いてしまった。
ユウヤ
「どうして、日本なんかに協力する?」
???
『あ? どういう事だ?』
ユウヤ
「アンタ、アメリカ人なんだろ? 諜報部からそう聞いている。 なのに、なぜ、アメリカに協力しない?」
つい、思っていた事を聞いてしまった。
しかし、返ってきた言葉は俺の望むモノではなかった。
???
『へぇ、よく割り出したもんだ。 どうやったんだ?』
そんな、此方への疑問だった。
その後も問答を重ねるが、色好い返答が返ってくることはなく、逆に俺にとっては手痛い質問が返ってくる。
???
『どうして、そこまで拘る? 今はそんな事に拘っている場合じゃない筈だ!』
女々しすぎて答えられるか!
日本人の父親が俺達母子を残して失踪したのが原因で日本嫌いになったなど、こんな事を返答しようものなら、赤っ恥ものだ。
そのせいか、いや、他にも日本嫌いになった理由はあるんだが、言葉に詰まってしまった。
まぁ、それはいい。
驚いたのは目標の衛士が名乗った事だ。
まさか、堂々と名乗ってくるとは思っていなかった為、ついつい俺も名乗ってしまった。
……バカか、俺は……
襲撃者が名乗ってどうする…
レオン
「ユウヤ、何をしている!? 自分から正体をバラすなど。」
案の定、レオンからの叱責が入る。
勢いで言っちまったって言った所で余計に文句を言われるだけだ。
ユウヤ
「レオンか! 五月蝿い! 黙ってろ!」
レオン
「なっ!? だから、名前を出すな!」
また、やっちまった…
言われたそばから、今度はレオンの名前を出しちたまった。
まぁ、今更だな。
そもそも、俺達がアメリカ軍所属という事はとっくにバレてるだろうしな。
こんな、バカなやり取りをしていると、目標は俺の機体を振りほどき、俺達に銃口を向けた。
どうやら、此からが本番ようだ。
今度こそ、第8話です。
ついに、原作主人公の一人が登場です。(敵としてですが…)
ユウヤは本来であれば戦技研の所属ですが、勝手にインフィニティーズ所属に捏造してしまってます。
普通の部隊では主人公に瞬殺されてしまうので、この様にしました。
唯依とのフラグをへし折られ、険悪の仲の同期とその同期と恋人関係にある元恋人がいる部隊に所属してしまったユウヤの明日はどっちだ!?
感想や意見、評価等がありましたら、宜しくお願いします。
では、また次回で。