Alternative Frontier    作:狼中年

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12 リコン《偵察》

 

 クラウ

 「大気圏からの離脱を確認。 艦体各部に異常ありません。」

 

 ヴォーパル

 「うむ。 本艦は地球衛星軌道を離れ、月に向かう。」

 

 今、マクェクスは月に向かっている。

 なぜ、この様な事になったのかは数日前に遡る。

 

◆◆◆◆◆

 

 ヴォーパル

 「月に懸念がある。」

 

 夕呼

 『懸念? 月なんて懸念だらけでしょ。』

 

 確かに夕呼の言いたい事は分かる。

 現在の月は、完全にBETAの勢力圏になっている。

 ある意味、魔窟と化している月に懸念以外になにがあると言うのか。 

 

 ヴォーパル

 「そう言う事ではない。 月を現状のままにしておく事に懸念があるのだ。」

 

 夕呼

 『どう言う事よ?』

 

 ヴォーパル

 「早い話が、偵察と間引きだ。」

 

 つまりは、こう言うことだ。

 月を占領した後、BETAは月より降下ユニットで地球に降りてきた。

 今後、ハイヴの攻略時や進行してくるBETAの迎撃時に、頭上からの増援等あったらたまったものじゃない。

 BETAがその様に戦術を行使した例はないが、用心するに越したことはない。

 月のハイヴを攻略する訳ではないが、月面上に這い出てきたBETAのみを駆逐するのである。

 狭いハイヴ内でなければ、バルキリーは十二分に性能を発揮出来る。

 そう、一撃離脱を繰り返すだけで、かなりの個体数を削れるはずだ。

 確かに、一時的には数が減るだろうが、また暫くすれば、元に戻るだろう。

 焼け石に水かも知れないが、やらないよりはマシだろう。

 

 夕呼

 『あんな、化け物が戦術じみた事するとは思えないけど…… まぁ、いいわ。 数を減らす事自体に反論は無いわ。』

 

 ヴォーパル

 「では、準備が終了したい月に向かう。 何か不測の事態が発生した時は、連絡を入れて欲しい。」

 

 夕呼

 『はぁ? そんなの私じゃなくてもいいじゃない。 私は忙しいのよ。』

 

 ヴォーパル

 「いや、是非とも博士にお願いしたい。 と言うのも、それを実際に使用、解析してこの世界に広めて欲しいのだ。」

 

 そう言うと、夕呼の前に二つの物体が置かれていた。

 小型のフォールド通信機だ。

 

 夕呼

 『これはなんなの?』

 

 ヴォーパル

 「我々の世界で使われている、フォールド通信機だ。 これならば、フォールド断層が無い限り、遠距離だろうが、地下だろうが通信を阻害される事は無い。」

 

 夕呼

 『へぇ~。 便利じゃない。 要するに此を解析して量産しろ、と。』

 

 ヴォーパル

 「うむ。 頼めるか、と言うか香月博士以外に解析出来そうな人物が思い当たらん。」

 

 夕呼

 『私も暇じゃないんだけど。 まぁいいわ。 やってあげようじゃない。 ただし、条件があるわ!』

 

 ヴォーパル

 「条件?」

 

 夕呼

 『えぇ……』

 

◆◆◆◆◆

 

 クラウ

 「まもなく月軌道上に到着します。」

 

 ヴォーパル

 「うむ。 月軌道上に到着次第、各小隊は順次発進。 なお、セイバー1には反応弾及びMDE弾の使用を許可する。 BETAに対する効果を確認せよ。」

 

 ヴォーパルからの命令にブリッジとハンガーからどよめきが起きる。

 反応兵器にしろ、MDE弾にしろ、プラント艦では生産出来ない弾頭だ。

 つまりは弾数に限りがあり、撃ち尽くせば使用出来なくなるのだ。

 マテリアルがあれば、生産出来るが、この世界に有るか無いかは、解らない。

 故に、虎の子と言うべき兵装であり、いざと言うときの為に温存すべき弾頭である。

 しかし、実際BETAに対してどの程度の効果があるか確認は必須である。

 温存し切り札としておきならが、使用の際、効果がありませんでしたでは、洒落にならない。

 然るに、一度実際に使用して効果を確認するのだ。

 

 エクス

 「整備班長! 反応弾の使用許可が出た! 急いで装着してくれ。」

 

 「弾数はどうするんだ?」

 

 エクス

 「あくまで、試し撃ちだからな。 反応弾を2発、MDE 弾を10発だ。」

 

 「ガンポッドの方はどうする?」

 

 エクス

 「そっちはいい! ビームガンポッドのままで行く。」

 

 「わかった。 5分くれ!」

 

 エクス

 「了解だ! よろしく頼む。」

 

 エクスは機体に乗り込み、武装変更が終了するのを待つ。

 マイクロミサイルをMDE弾頭に変更し、翼下のパイロンには4発の反応弾を装着される。

 

 「換装完了だ。 いつでも行けるぞ!」

 

 エクス

 「了解! クラウ、カタパルトに誘導してくれ。」

 

 クラウ

 「解りました。 エレベーターまで機体を移動させて下さい。」

 

 機体をエレベーターに乗せるとエレベーターが上昇しカタパルトデッキに機体が現れる。

 

 エクス

 「セイバー1からシース1。 発進準備完了だ。」

 

 クラウ

 「了解しました。 セイバー1、発進してください。」

 

 エクス

 「セイバー1、エクス・レーヴァテイン。 出撃する!」

 

◆◆◆◆◆

 

 エクスが全速力で機体を飛ばし、先行していたセイバー小隊の面々や他の小隊に追い付く。

 エクスが追い付く頃には、月が目前に迫っており、肉眼で確認出来た。

 

 エクス

 「これから、月面に降下する。 各機、警戒を怠るなよ。」

 

 ティア

 「了解よ。 さて、またうじゃうじゃ居るのかしらね。」

 

 カロン

 「まぁ、居るだろうな。 これでもか、と言うくらいは。」

 

 月面に降下すると、各小隊ごとに行動を開始する。

 エクス率いるセイバー小隊は、本来ならば月に存在しない筈の塔のような構造物を目指し飛行している。

 塔のような構造物に近づくにつれ、相対的に月面上に群がるBETAが増えていく。

 

 エクス

 「相変わらずの物量だが、奴等からの迎撃行動はないな…」

 

 ティア

 「そうね。 地上の様にレーザーが飛んでこないわ。」

 

 そう、地上ではあれほど五月蝿かった光線級による対空攻撃が全くないのだ。

 

 グラム

 「もしかすると、月面上には光線級が存在しないのでは?」

 

 エクス

 「…かもしれないな。 セイバー1から各小隊リーダー。 光線級は確認出来るか?」

 

 『此方アックス1。 今の所、見当たらん。』

 

 『ランス1。 此方でも確認出来ず。』

 

 各小隊のリーダーからも光線級存在の報は入ってこない。

 そう、エクス達が予想した"月には光線級が存在しない"と言うのは当たっている。

 そもそも、光線級は地上における人類の航空戦力に対するカウンターの為に産み出されたBETAだ。

 故に、人類の航空戦力が存在しない月面には光線級もまた存在しないのが道理だ。

 

 エクス

 「なんにせよ、居ないんであればそれでいい。 居たら居たで地上の光線級より厄介だろうからな。」

 

 月面上となると、大気によるレーザーの減衰率は無くなり、威力や命中率共に向上するだろう。

 いかに高性能な機体に乗っているとはいえ、リスクは低ければ低いほどよい。

 

 エクス

 「兎も角、反応弾を打ち込んでみる! 各機、爆発に巻き込まれるなよ。」

 

 ティア

 「了解よ。 後方に下がるわね。」

 

 カロン

 「あぁ、巻き込まれたらひと溜まりもないからな。」

 

 僚機の後退を確認し、エクスは一発のミサイルをBETAの群れめがけて撃ち込む。

 撃ち込んだミサイルはたった一発だが、唯の弾頭ではない。

 ミサイルが月面に着弾すると同時に、爆発が起こるがこの爆発が本命ではない。

 この爆発を起爆剤として、広範囲に対消滅反応が起こる。

 対消滅反応に触れたBETAが文字通り、消滅していく。

 砕け散るとか吹き飛ぶとかではない。

 まさしく、消えていくのだ。

 恐らく、BETAは勿論、エクス達でも触れたら最後、防ぐ事は叶わないだろう。

 

 エクス

 「着弾、効果を確認。 どうやら、反応弾はBETAにも有効だな。」

 

 グラム

 「その様ですね。 効果が無かったらとも考えましたが。」

 

 ティア

 「嫌な想像しないでよ。」

 

 エクス

 「まぁ、兎に角、反応弾は使えそうだ。 弾数に限りがあるけどな……」

 

 強力であるが故に使用に制限がかかっている兵装、更には、現状では生産が出来るかどうか自体も怪しい。

 有効な攻撃手段であるが故に勿体無いと言う考えが浮かんでしまう。

 

 カロン

 「使い物になるだけ、良しとするしかないだろうな。」

 

 ティア

 「……そうね。 乱用は無理だけど、使いどころを間違わなければ殲滅にはもってこいね。」

 

 月面上では、次第に対消滅反応が収縮していき、反応自体が消失した。

 その後には、抉れた月面と抉れた面積分のBETAが居なくなっていた。

 

 エクス

 「続いて、MDE弾を使う。 ターゲットロック。 発射!!」

 

 続けざまに2発のミサイルが発射された。

 先程の反応弾に比べると小型のミサイルであるが、此方も特殊な弾数である。

 着弾・爆発までは通常の弾頭と同じであるが、効果が全く違う。

 爆発と同時に擬似ブラックホールを発生させ、強制的に空間を削り取り、フォールドさせてしまうものである。

 故に、反応弾同様、防御は事実上、不可能である。

 着弾点周辺に存在していたBETAは例外なく擬似ブラックホールに呑み込まれ、この宇宙のどこかに強制フォールドさせられた。

 

 ティア

 「MDE弾も大丈夫のようね。 ひと安心だわ。」

 

 グラム

 「しかし、此方の生産は……」

 

 そう、MDE弾に関しては完全に生産不能だ。

 生産マテリアルに純度の高いフォールドクォーツが必要なのだが、こちらの世界ではまず入手は不可能だろう。

 

 エクス

 「それはしょうがないだろう…… うまく使っていくしかないさ。」

 

 カロン

 「無い物ねだりをしても、仕方ないだろう。 有る分だけでなんとかしようや。」

 

 カロンの言う事も、尤もである。

 数に限りが有るのであれば、それを有効に使うしかないのだ。

 

 エクス

 「ともあれ、どっちもBETAに通用するのはわかった。

後は通常弾頭で、頭数を削るぞ。」

 

 ティア・カロン・グラム

 「「「了解。」」」 

 

 エクスからの指示が入り、BETAへの攻撃を開始する。

 反撃の手段を持たない月面を這いつくばるだけのBETAの群体は、なす術もなく次々と刈り取られていく。

 もちろん、セイバー小隊だけでなく、他の小隊も一切の容赦のない攻撃を加え続けている。

 ものの数分で、月面上に存在していたBETAはこの世界から存在を抹消された。

 

◆◆◆◆◆

 

 エクス

 『セイバー1からシース1。 任務完了だ。 帰還する。』

 

 クラウ

 「シース1、了解しました。 直ちにきか……」

 

 帰還してください、と言おうとした矢先、突如マクェクスのブリッジにアラートが鳴り響く。

 しかし、通常のアラートとは違う。

 この世界では鳴る筈のないアラートだ。

 

 ヴォーパル

 「どういう事だ? ソラス中尉!」

 

 クラウ

 「しょ、詳細は解りませんが、3つのデフォールド反応を確認しました。」

 

 今しがたのアラートはフォールドの反応に対してのアラートだったのだ。

 現在、この世界でフォールド機能を単体で使用できるのはマクェクスだけである筈である。

 故に、デフォールドアラートが鳴る訳がないのだ。

 

 クラウ

 「詳細を確認。 こ、これは……!?」

 

 ヴォーパル

 「どうなっている!? 至急、セイバー小隊を向かわせろ!!」

 

 「りょ、了解。 シース1からセイバー小隊全機。 至急、デフォールド地点に急行してください!!」

 

 有り得ないデフォールドから出現したのは……

 

 




 大変、遅くなりました。
 第12話です。

 ここの所、ゴタゴタが続き、執筆があまり出来ない状況にありました。
 今暫くはこのような状況が続きそうな感じなので、不定期投稿が続くと思います。

 このような駄文な作品を楽しみにしてくださっている方がいらっしゃっるとしたら大変申し訳無く思っていますが、何卒、ご理解をお願いします。

 感想や意見、評価等がありましたなら、宜しくお願いします。
 
 では、まさ次回で!!


 
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