Alternative Frontier    作:狼中年

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03 インターベイション《介入》

ヴォーパル

 「…………むぅ。」

 

 ヴォーパルはエクスからの報告を聞き終え、一人、艦長室で思案する。

 エクス達セイバー小隊が持ち帰った情報や記録・映像は信じがたいものだったのだ。

 エクス達を信用していない訳ではないが、内容が突拍子すぎる。

 もう少し情報を収集するべきかとも考える。

 それともマクェクスで直接地球に赴き、調査すべきかとも考える。 

 今、確実に言えるのは地球人類と得体の知れないバケモノ(便宜上、バグズと命名)が存在しているということだった。

 

 数時間後、意を決したヴォーパルはマクェクスのブリッジにてマイクを手に取り、艦内放送のスイッチをONにする。

 

 ヴォーパル

 「マクェクス全クルーに告げる。 馬鹿馬鹿しい話ではあるが、本艦は今、おそらく我々の知らない次元にいるのだろう。 しかし、この次元に地球が存在しているの事は間違いなく、それが見知らぬ地球だとしてもバケモノを巣食わせて置くわけにはいかない。 地球では今もたくさんの兵士達が戦っているだろう。 我々も人として、兵士として母なる地球を守らねばならない。 そして我々の知る地球に戻る為にもここで手をこまねいている訳にもいかないだろう。 バグズを駆逐出来れば地球からも元の次元への帰還の協力を得られよう。 

 このような大事を私一人で決めてしまうのは私の傲慢なのかもしれない… それでも諸君、私についてきてくれるか?」

 

 ヴォーパルの言葉を聞き、反対の声を上げる者はいなかった。

 

 ヴォーパル

 「諸君、感謝する!! 此より本艦は地球に向けて発進する。 総員、配置に着け!」

 

 クルー全員から了解という言葉が発せられたのだった。

 

◆◆◆◆◆

 

 地球までの道程の合間に現在の情勢を調べた結果、信じがたい事が判明していった。

 この人類全体の、いや地球圏全体の未曾有の危機にも係わらず各国の足並みがまったく揃っていないどころか、劣勢もしくは人類滅亡の危機に瀕していながら自国のみの利益、さらには戦後の覇権争いをしているのだ。

 その中でも、もっとも酷いのはアメリカだ。

 アメリカはまだ国土を侵略されておらず国力を温存している。

 他の国が力を失った事をいいことに力に物を言わせ国連軍を影から支配している。

 国連軍は国を失ってしまった者にとって最後の拠り所だ。

 それを支配し、傀儡組織とするなど言語道断、まさに鬼畜の所業だ。 

 さらには、アメリカ軍以外の友軍を巻き添えにして大規模攻撃をしたりもする。 

 

 地球に向かう途中、これら収集した情報をふまえ今後の行動指針を決めるためブリーフィングが行われていた。

 

 ヴォーパル

 「我々だけで戦闘を継続すれば直ぐに限界に達するのは火を見るより明らか。 統一政権が存在しないのであれば、いずれかの国家と事に当たるのが常道だが……」

 

 ヴォーパルの意見はもっともなのだが、どの国家と協力体制を取るかで決めかねていた。 

 

 ティア

 「効率を一番に考えた場合、アメリカなんでしょうけどねぇ…」

 

 クラウ

 「はい。 ですが、アメリカは私達が協力したとしたら今以上に助長するでしょう。 良いように利用、使い捨てにする可能性すらあります。 最悪、こちらの装備だけを接収して私達は…、と言う可能性すらも…」

 

 ティアとクラウはアメリカに対しかなり懐疑的だ。

 集めた情報を鑑みれば二人の意見はあながち間違いではないだろう。

 それほどまでにアメリカは好き放題しているのだ。

 

 エクス

 「だったらどうする? ヨーロッパとかユーラシアなんて目も当てられない状態だし、まだ国力を残しているソ連や中国と連携したってたかが知れてるぜ?」

 

 確かにエクスの言う通り、ソ連と中国はまだ国力を残してはいるが国土を失い他の土地を間借りしている状態だ。 

 ヨーロッパ、ユーラシア諸国に関してはほぼ壊滅状態なので、もはや語ることすら無意味に近いだろう。

 

 ヴォーパル

 「ふむ… では、まだ国力を残しつつも最前線になりつつある日本はどうだろう? 我々の次元の歴史では日本は世界でも1、2位を争う技術大国であったはずだ。 こちら側での日本もそれなりの技術力を保有しているだろう。」

 

 日本はいくらか国土を侵略されているもののまだ健在である。

 しかし、日本は日本ではなく日本帝国となっているのが気にかかるが、そもそも選択肢はそれほど多くないのが現状だ。

 

 クラウ

 「国連はどうでしょうか?」

 

 エクス

 「ぶっちゃけ、アメリカとかわんねぇだろう。」

 

 ティア

 「悩み所ねぇ…… 艦長の言う通り日本が無難かなぁ」

 

 現状では日本と協力体制を取るのがベターなのでは、と言う意見で纏まっていく。 

 

 ヴォーパル

 「日本と連携するとして、どの様に誰とどこにコンタクトを取るかだが。」

 

 クラウ

 「今、日本では大規模な反抗作戦を控えているようです。 強引ですがこれに介入し、こちらをアピールしたらどうでしょうか?」

 

 エクス

 「それ、下手したらとんでもない数で迎撃されるぞ。」

 

 クラウ

 「でしたら、こちらに手が出しにくくなるように、劣勢になった所で介入と言うのはどうでしょう?」

 

 確かに劣勢になってからだとこちらを迎撃する余裕は無いだろうが、あちら側の損害を無視して頃合いを待つのと同義なので、簡単に頷ける話ではない。 

 しかし、他に手が無いのも事実だ。

 手をこまねいていて、タイミングを逸してしまったら意味がない。

 

 ヴォーパル

 「仕方あるまい…… その方向で行こう……」

 

◆◆◆◆◆

 

 今、日本では"明星作戦"の真っ只中だ。 

 明星作戦、侵略された領土を奪還するため、人類初のハイヴ攻略を目指す作戦だ。

 ほとんどの部隊がハイヴに突入している為、司令部の防御は手薄となっていた。

 

 「し、司令!! 海岸部より新たなBETAの反応が!!  真っ直ぐこちらに向かって来ます!!」

 

 「!? 反対方向にもレーダーに感あり!! 反応が大きい。 400m前後あります。 しかし、この反応はBETAではありません!!」

 

 まさに"前門の虎、後門の狼"である。

 司令部は差挟み撃ちの状態にある。

 このままでは司令部が陥落してしまうだろう。

 司令部が落ちてしまってはハイヴ攻略どころではなくなってしまう。

 しかし、戦術機はほとんど出払っている今の状況では迎撃出来る部隊がいない。

 もはや、これまでかと思った瞬間、

 

 「正体不明の物体より、通信!! 司令、繋ぎますか?」

 

 通信を入れてくると言う事は相手は人間なのかとも考える。

 しかし、援軍が来るとは聞いていない。

 そもそも400m級の大型なモノだと戦艦くらいしか当てはまらないが内陸部から戦艦が進攻してくる訳が無い。 

 

 「取り敢えず、繋げ。」

 

 司令からの命令を聞き、通信士が通信を繋げる。 

 

 ヴォーパル

 『こちらは、民間軍事プロバイダS .M .S所属のマクェクス艦長、ヴォーパル・アロンダイト大佐だ。 こちらに司令官は居られるか?』

 

 「私が司令だが、民間軍事プロバイダ? S .M .S? なんだそれは? 聞いた事もないぞ?」

 

 ヴォーパル

 『それは後程。 現在、そちらの前線司令部は敵性体に急襲されかかっているかと思われるが、援護は必要か?』

 

 今のこの状況では確かに援護は有り難い。

 しかし、素性も解らぬ輩に背中を預けても良いものだろうか。 

 いや、今は悩んでいる時間さえもが惜しい。

 このままで司令部がBETAに呑み込まれるのは時間の問題なのだ。

 

 「……頼む。」

 

 「司令!? よろしいのですか?」

 

 司令官の決断にどよめきが起こる。

 それも当然だろう。

 どこの誰だかわかりもしない奴に助けてもらおうと言うのだから。

 

 「背に腹は代えられん。 責任は私が取る。」

 

 ヴォーパル

 『了解した。 強引な介入を認めていただき感謝する。 これより援護行動を開始する。』

 

 暫くすると空中に巨大な物体が見えてきた。

 シルエットからすると戦艦や空母のように見える。 

 

 「空中戦艦だと!? そんな馬鹿な……」

 

 司令官を含む司令部の兵士達は目の前の事実を飲み込めずにいた。

 戦艦が空を飛ぶなど常識の範疇を超えていた。

 驚きはこれだけでは無かった。

 遠方からのレーザーが艦体に被弾する直前、バリアらしきものがレーザーを弾くのだ。

 

 バリアらしきもの。

 正確には"ピンポイントバリア"と呼ばれる防御機構だ。

 高密度のバリアを部分展開し、被弾予想位置にバリアを張るシステムである。

 バルキリーにも搭載されており、防御のみらなず、手足に展開、保護し殴る蹴る等の攻撃にも転用可能だ。

 

 司令官達が呆然としている中、例の空中戦艦から通信が入る。 

 

 ヴォーパル

 『海岸部から上陸中の奴等を薙ぎ払う。 本艦との軸線上の友軍機に退避勧告を。』

 

 「りょ、了解した。 直ぐに退避勧告を通達する。」

 

 マクェクス艦首付近に装着されているバスターキャノンの砲口が展開し、凄まじい量のエネルギーが収束していく。 

 

 ヴォーパル

 『司令官殿、退避のほうは?』

 

 「既に完了している。」

 

 ヴォーパル

 『了解した。 奴等を薙ぎ払う!! マクロスキャノン、発射ぁーーー!!』

 

 ヴォーパルの号令と共にマクェクスの主砲、マクロスキャノンが放たれる。

 螺旋状に渦巻きながら、極大の重量子反応エネルギーが直線上にある全てを呑み込み突き進む。 

 BETAどもは成す術もなく、呑み込まれていき次々とこの世から消滅していく。

 あれほどの大軍がたった一撃でほとんどが薙ぎ払れ、死骸の痕跡すら残らず消滅していた。

 BETAの大軍を喰い破ったエネルギーは地表を抉りながら直進を続けそのまま成層圏を突破、宇宙空間まで飛び出た後、漸く減衰・消滅した。

 

 「電磁投射砲? いや、実用化もされていなければ、これほどまでの馬鹿げた威力は無いはずだ……」

 

 司令官の呟きに答えられる者はいるはずもなかった。

 

◆◆◆◆◆

 

 マクェクスでは既に次の行動に出ていた。

 

 ヴォーパル

 「よし! 掃討戦に移る。 全小隊、出撃! バグズどもを殲滅せよ。」

 

 クラウ

 「各小隊は順次発進してください。 出撃後の指揮権はセイバー1に委譲します。」

 

 マクェクスには、4機編成の小隊が6隊存在する。 

 打撃力重視のアックス小隊。 

 突破力重視のランス小隊。 

 攻守バランス重視のスピア小隊。 

 火力支援重視のアロー小隊。 

 防衛戦重視のシールド小隊。 

 そしてエースクラスのみで編成され全てに秀でたセイバー小隊の6小隊だ。

 

 マクェクスから、次々とバルキリーが発進していく。 

 

 エクス

 「セイバー1から各小隊へ。 アックス、ランス、スピアは俺に続け。 アロー小隊は司令部の後方警戒しつつ前衛支援。 シールド小隊は司令部の直援にまわれ。」

 

 『アックス1、了解。 アックス2、3、4。 セイバー1に続け!』

 

 『ランス1も了解。 小隊各機、聞いての通りだ。 いくぞ。』

 

 『スピア1、了解です。 敵性体の殲滅に向かいます。』

 

 『アロー1、後方警戒を開始、索敵を密にする。』

 

 『シールド小隊は司令部直援に着きます。』

 

 各小隊の小隊長から返信が入る。

 総勢24機の可変戦闘機が小隊毎に編隊を組み海岸部と司令部を目指し飛翔する。

 もちろん、空を飛んでいる訳だからレーザーでの迎撃を受ける。

 しかし一発も被弾することもなく目的地に到着し目標を視界に捉える。

 

 エクス

 「見えた! 全機、オールウェポンズフリー! コンバットオープン!! 撃ちまくれ!!」

 

 エクスの号令と共に乱れ飛ぶミサイル。

 前回の遭遇戦とは違い、今回はバルキリーが16機、4小隊だ。

 更にはVF-25はアーマードパックを、VF-19はファストパックを装備している。

 それが意味するのはミサイルの総数が桁違いだと言う事である。

 4桁に近い数のミサイルが次々に着弾、爆発し大小問わずバグズを片っ端から吹き飛ばし数を減らしていく。

 しかしまだまだバグズの残存数はバカには出来ない。

 

 エクス

 「フォーメーションリバース! 全機、逆加速に移り相対速度を合わせ後退しつつ迎撃を続けろ!」

 

 全機、逆加速による急減速をすると共にガウォーク形態に変形、ガンポットやレーザー機銃、ビーム砲で攻撃を加えていく。

 VF-19が装備しているガトリングガンポットは実体弾型だが、初速1100m/s、毎分60~2500発の連射が可能で、マガジン式なのでリロードも速い。

 流石に重量子ビームガンポットには劣るが、そこらへんのライフルや突撃砲、マシンガンとは比べ物ならない性能・攻撃力を誇る。

 

 16機からのビームやレーザー、銃弾の嵐を受けてバグズどもは次々と風穴を空けられ屍と化していく。 

 

 エクス 

 「このまま殲滅するぞ。 残弾が乏しくなった機体は一旦補給に帰還しろ。」

 

 全てのバグズを駆逐するには今暫く時間が掛かりそうだった。

 

◆◆◆◆◆

 

 司令部では司令官をはじめ、ほぼ全員が唖然としていた。

 空中戦艦からの一撃で多数のBETAが一気に消し飛んだとか思ったら、次々と戦闘機が発進してきたのだ。

 戦闘機などを出撃させるなどなんの冗談だ、と思うがとある逸話を思い出す。

 

 "戦闘機から戦術機に変形する機体が瞬く間にBETAを殲滅した"

 

 眉唾物と思っていたがまさかとも思う。

 空中戦艦から発進した戦闘機が8機、此方に向かってくる。

 司令部前方まで来ると司令部を護るかのように散開し人型に変形、防衛の体制を取った。

 

 「戦闘機が戦術機に…… 噂は真実だったのか……」

 

 戦闘機が変形するなどこの眼でみても信じられない。

 しかし、目の前にはそれが間違いなく存在している。

 

 「変形する戦術機なんて、何処の誰が造ったんでしょう?」

 

 「私が知るわけがなかろう…」

 

 そんな不毛な会話をしている間に、前衛を抜けて来たBETAが散発的に司令部に向けて侵攻してくるが、司令部到達前に変形する戦術機に迎撃、撃破されている。

 しかし、此方に向かってくるBETAの数が少ない。

 疑問に思い海岸部の前線の状況を確認させた。

 すると、海岸部ではたった16機で4桁を超えるBETAを相手取り優位に戦闘を展開していた。

 

 色々言いたいことはあるが、これで司令部が陥落する心配はほぼ無いだろう。 

 となれば、後はハイヴを攻略出来るか、出来ないかだが…

 

 「レーダーに反応あり。 司令、アメリカ軍所属の機体が2機接近中。 !?、は、ハイヴ付近に向けナニかを投下した模様。」

 

 「ナニかとはなんだ? 報告は簡潔明瞭にしろ!」

 

 「ハッ、申し訳ありません。 形状、大きさからして爆弾だと思われます。 地上着弾まであと240秒。」

 

 爆弾にしてはまた高々度から投下したものだと思った瞬間、まさかという考えが司令官の頭を過る。

 

 「G弾…!?」

 

 通常、著しく命中精度が落ちる為、あんな高々度から爆弾を投下したりはしない。

 高々度からの投下は退避する時間稼ぎと考えれば辻褄はあう。

 しかも劣勢時というタイミング、G弾を使用したがっていたアメリカ、そして今回の作戦に参戦していないアメリカ軍。

 G弾使用に踏み切るピースが揃っている。

 

 「ハイヴ攻略中の全部隊に緊急通信!! 撤退命令を出せ!! 急げ、このままでは全滅だ。 例の空中戦艦にも撤退しろと伝えろ。」

 

 司令部に悲痛にも似た声が響き渡った数分後、ハイヴを中心に全てが消え去った……

 




 第4話、如何だったでしょうか?

 展開がかなり強引な気もしないでもない…
 
 いきなり、マクロス・キャノンをブッぱなしましたが、ヤル時は最大火力で!が攻撃の鉄則だそうです。(誰が言ったかは忘れましたが…)

 感想、意見、評価等がありましたら宜しくお願いします。

 では、また次回で。

 
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