なのは+『未完の護り手』   作:黒影翼

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第八話・開始早々大混乱

 

第八話・開始早々大混乱

 

 

 

Side~月村雫

 

 

 

練習会とか言う試合への参加が決まった翌日の早朝、私は一人ベッドを抜け出して外に出ていた。

 

青竹。

 

素人だと生えてるものすら刀で切れないそれを、紙の紐で木の枝に吊るす。

 

「…ふっ!」

 

袈裟切りに一閃。

二つに断ち切れた竹は地面に落ちて乾いた音を立てた。

 

「見事だな。」

「おはようございます、フレアさん。」

「おはよう。」

 

朝食もまだって時間なのに、時差ぼけとか大丈夫なんだろうか?

それにしても…結構砕けてきたなぁ。

 

初めて会った頃は、お父様もびっくりするくらい必要最低限以外笑みも挨拶もないくらいだったのに。

 

「フェイトさんに呼ばれたんですか?」

「あぁ、『人数が少ないから』とな。」

 

なるほど。

高レベルの団体戦ができる機会は貴重らしいし、せっかくなら対1より多対多として機能したほうがいい。

フレアさんにチーム戦ができるんだろうか、という問題はおいておいて。個人としての力量は最高クラスだと聞いている。

 

「やっほー雫ちゃん。」

 

と、フレアさんに続くようにして現れたアクアとクラウ。

って、何でこの二人が…

 

「…あ、そう言えば来るんだっけ。」

「おーいっ!何その脇役扱い!」

 

今思い出したのをそのまま言葉にすると、思いっきりハイテンションで抗議の声を上げるアクア。

…そうは言うけど…ねぇ。

 

「何戦全敗?」

「う…ぐっ…」

 

チラッとフレアさんを見た後に、脇役たる原因を聞いてみる。

聞いたとおりフレアさん相手に全敗中で、しかもアクアとクラウの二人がかりでだ。

何戦したかは知らないけど、主役には程遠い。

もっとも、お父様に全力すら出して貰えてない私が人の事言えたものじゃないけど。

 

「大丈夫。」

「え?」

「ヴィヴィオ達なら何とかなる。」

「そ、そうだよね!アレだけ修行したんだしそれくらい…」

 

クラウの強気なんだか弱気なんだか微妙な発言に、ガッツポーズで答えるアクア。

 

いや、それ大丈夫じゃないでしょ…

 

「まったく、敵のほうが楽そうね。」

「あ、残念でした。雫ちゃん私達と同じチームだよ。」

「え?」

 

言いつつ、アクアは私に小包を差し出した。

 

包みを開くと、中から出てきたのは、見覚えのある二刀だった。

 

「ナギハ?いや、違うこれは…」

 

確かナギハが局預かりのときに予備で作ったデバイスがあった。

魔力に関してはわからないけど、刀身を見ている限り間違いない。

 

「魔法戦混じるなら通信とか、最低限のシステムとか防御詰んでないと駄目でしょ?単独で機能するように作ってあるから使ってってアリシアさんから。チーム構成表のデータとかも入ってるからそれで見ておいて。」

「そう、ありがとう。」

 

デバイスはともかく、この世界の通信端末くらいは使った事はある。

一応同チームらしいアクア達からも話を聞きながら、私は端末のチーム構成や作戦の連絡について目を通す事にした。

 

 

 

Side~高町ヴィヴィオ

 

 

 

昨日温泉で聞くまで知らなかった四人の参戦を聞いてから、私はかなりワクワクしてきていた。

とっても強いフレアさんは勿論、戦うの自体初めてのアクアさんとクラウさんがどんなことをするのか、今から気になって仕方ない。

 

チームごとに整列する。

 

私の組の青組は…

センターガード、なのはママ。

フルバック、ルールー。

フロントアタッカー、スバルさんと私。

ガードウイング、エリオさんとフレアさんとリオ。

ウイングバック、コロナ。

 

赤組には他の皆。

センターガード、ティアナさん。

フルバック、キャロさん。

フロントアタッカー、ノーヴェ、アインハルトさん、クラウさん。

ガードウイング、フェイトママ、アクアさん。

そして、雫さんなんだけど…

 

 

「あの、このフロントイレイザーって?」

 

 

聞き覚えの無い名前に質問を投げると、ノーヴェは雫さんに視線を移す。

 

「生身で魔導師とやりあう人間に割り振るポジションってのも普通ねーからな。フロントアタッカーにするにはライフ多い訳もないし、ガードウイングにするほど広くも対応してねぇ。だから雫用に決めたデータだ。意味は特にねぇ。」

 

意味は無いってノーヴェは言うけど、ライフもフルバックより低い2000に設定されているのに前衛設定。

って言うか、『前衛を消す者』って名前が、雫さんの全てを物語ってる気がする。

それでもさすがにフルバックより低い2000はやりすぎじゃないかとも思ったけど…

 

「食らったら終わりだしね、これでも多いくらいよ。」

 

不満なんてまったく見せない様子で、あっさりとそう言う雫さん。

 

「質問は以上か?それじゃ、皆正々堂々怪我の無いように。」

 

質問が出ない事を確認したノーヴェが挨拶を締めくくったところで、割り当てられたチーム空間のそれぞれの位置に移動する。

 

 

『皆準備はいい?それじゃ試合開始!!』

 

 

メガーヌさんから通信越しに合図があり、ガリューが大きなドラを叩く。

 

音が響くと共に空に青と黄の道が縦横無尽に走る。

陸戦だから、ノーヴェとスバルさんの作る道が、結構戦いのキーになる。

 

えっと…近くにいる人は…

 

「やっ!一試合どう?」

「はい!」

 

 

気軽に声をかけてきたのはアクアさん。

戦闘スタイルとかもまったく知らないし、戦ってみたいと思ってたからちょっとラッキーだ。

 

「ソニックシューター!」

 

今回は魔法もアリだから、私もいろんな能力をフルに使える。

距離があるうちにシューターを撃って、別ルートで接近。

 

格闘だと距離を詰めないと話にならないし、シューターにどう対処するかで何が得意なのか少しはわかる。

 

アクアさんは手にした槍状のデバイスで、シューターを次々に破壊して行った。

でも、当然ながらその間に距離をつめた私は…

 

「はぁ…あれっ!?」

 

振りぬいた拳をあっさりとかわされた。

見ればアクアさんは私から数歩分距離を離してゆらゆらと揺れている。

 

「ウェイブステップ。残念だけど、水は斬れない殴れない。」

 

デバイスを手に、構えるというよりはむしろ力を感じさせないように腕を下げて揺らしているアクアさん。

でも、動きを見てるとただやってるんじゃないのがよくわかる。

歩く、走るにある、つけた足が止まる踏み込みの瞬間がまったく無いすべるような動き。

アレでデバイスを振るってたから、シューターを壊しながらすぐ回避に移れたんだ。

でも…

 

「殴りますっ!全力で!」

「たはは…字面だけだと怖いって。」

 

苦笑されて『確かに』と自分で思いつつ、改めて構え直した。

さすがあの雫さんと一緒にいる人だ、やっぱり楽しい人だ。

よーし、絶対当ててやるっ!!!

 

 

 

Side~月村雫

 

 

 

開始直後にかけて貰ったキャロのブースト魔法の効果を、走りながら実感する。

力が入るし体が軽い。

これでも本職の身体強化ほどじゃないらしいから、まともに力と力で当たったらまずいとは言われたけど、十二分だ。

 

フレアさんは、フェイトさんが抑えるらしい。

あのフレアさんを抑えられる人なんて本当に限られた人だけだし、フェイトさんにしても勝利するとは言い難い。

とっとと一人二人倒しておかないと。

 

 

視界の端をフレアさんが陣地奥に向かって飛来するのが見えた。

 

 

 

…え?

 

 

『ちょ!?マジ!?』

 

通信から、ティアナさんの悲鳴。

見ればフレアさんは一直線にティアナさんに向かっていた。

 

フェイトさんは何を…

 

姿を探すと、エリオに互角の戦いを演じさせられていた。

彼のほうも高速系能力者の為、抜けようにも抜けられないらしい。

 

そして…

 

「仲良しコンビ参上!ヴィヴィオがいないけど、3人相手に戦うくらいならっ!」

「いけるよね、ゴライアス!」

 

前にリオ、その後ろに馬鹿でかい石のゴーレムに乗ったコロナがいた。

何でかリオも大人になっている。まぁ魔法といえばなんでも済む世界だけど。

エリオと戦う予定でいたアインハルトと、リオとコロナと戦う予定でいた私とクラウが揃っているけど…

 

「…アインハルト、先行しておばさんの所へ。」

「え?」

「ティアナさんは間違いなく負ける。そうなれば、あの大砲がいつどこに打たれるかわからない、やりたい放題の戦場になる。」

 

フレアさんは中遠距離で簡単に攻撃が当てられる相手じゃないし、近距離が最強クラス。勝ち目が無い。

指揮を握ってるのはティアナさんだけど、フレアさん相手にしながらそんな余裕は無いから、勝手だけど動かせて貰う。

コンビネーションって意味でも、三人が三人よく知らないんじゃ動きづらいし。

 

「わかりました。」

 

まずい状況を悟ってか、それとも一流と戦いたかったからか、割と素直にアインハルトは先行してくれた。

 

「止めないの?」

「抜刀体勢に入ってる雫さんを前に余所見なんてできないって。」

 

威圧しないで挑発してみたけど、無駄だったらしい。リオもコロナも、私とクラウから目を離さない。

確かにアインハルト一人じゃあの人落とすのも無理だし、相手にする必要は無いか。

 

だけど…甘い。

 

 

「いくよ!双竜…え?」

 

 

魔法陣を展開して戦闘態勢に『なろうとした』瞬間を狙って、私は『一歩で』踏み込んだ。

視覚誤認を利用した長距離移動方。縮地とか言う人もいるらしいけど…御神の剣では、奥義のためにも使う。

 

開かれた腕の隙間から、わき腹に向かって右の抜刀。

さらに右を振りぬいた勢いをそのままに伸ばした左手で、リオの右手を掴む。

 

引き寄せるようにしながら、斬ったわき腹に右で膝蹴り。足が浮き上がったのを見ながら腕をひねるようにして地面に叩き付けた。あ、受身取ってる。

 

ライフが減りきらなかったらしく、置き去りにされていた炎と雷の竜が、倒れたリオに向かって動き出す。自分も巻き添えになりそうだけど、多分自分は食らわないんだろう。

このままここにいても消し炭にされる。だったら…

 

私は倒れたリオの顔面を踏み台に前方に跳躍して二匹の竜を回避した。

 

 

「今っ!!」

「クラウ!!」

 

 

リオから離れるのを狙い済ましたかのように振るわれた、ゴーレムの巨大な腕。

回避しきれない為、クラウ任せになるが…

 

いつも通りの無骨な大剣をゴーレムの腕に横から振るったクラウ。それでどうにか軌道がそれてくれた。

 

隣のビルに直撃した拳が撒き散らした破片を受けた私は、それが思ったより痛くないことに感心する。

普段なら擦り傷余裕で出来るけど…これもブーストのおかげなら、便利なものね。

 

鼻を抑えながらリオが立ち上がった。…落とせなかったか。

しかも見れば、喰らった竜のエネルギーなのか、炎と雷を纏ってバチバチと恐ろしいほどの力の塊になっている。

素だと近づくだけで火傷するわね、アレは。

 

「…雫ちゃん、やることがエグい。」

 

自然災害さながらの光景の中、若干恨めしげな視線を向けてくるリオ。

一応、喉にしなかったのが良心のつもりだったんだけど、まぁスポーツとしては確かに酷い手だ。

 

「殺人剣だから。」

 

でも、この一言で全てが済む。

リオの方も察していたのか、苦笑するだけで終わった。

 

計器を使ってライフポイントを見る。

リオが今ので2400減って残り400、ティアナさんが…残り900。

 

よくもってるけど、秒読に入ったか…

 

狙いは多分フレアさんに、ティアナさんとキャロを倒させて補助を断ち切っての殲滅。

その状況になってなのは叔母さんが自由なら、単なる砲撃と槍の処刑場になる。

 

ティアナさんを助けるのは無理だけど、キャロなら召喚してもらえばすぐ手伝いにいける。

 

なら…

 

「ティアナさんが無事な内に、一人落としてキャロさんを守る。一人任せられる?」

「大丈夫。」

 

小声で伝える事を伝え、戦闘に集中する。あまり時間も無い…確実に決めないと。

 

 

 

Side~メガーヌ=アルピーノ

 

 

 

なのはちゃん達がとんでもないのは十分わかってたけど、たまに森を修行場にする為に来てくれていた恭也さん達については何も知らなかった。

けどまさか…まだヴィヴィオちゃんより一つ上の程度の雫ちゃんが、完全な縮地まで使えるなんて思わなかった。

 

「確かに早かったけど、まるで反応できないって感じでもなかったよーな…」

「縮地よ。」

「縮地?」

 

当然とはいえ、見学していたセインは知らなかったらしく首を傾げる。

そんなセインの正面に向かって、私はまっすぐに左拳を伸ばした。

 

「他の動きがまったく見えない状態でまっすぐ伸びてくるものは、見ていて一番距離が判別しづらいの。縮地はそれを利用して一歩で一瞬で近づいたように見せる技術よ。」

「他の動きをまったく見せないって…無理じゃない?」

 

セインが足をゆっくり動かして前に出ようとするも、頭の高さが変わるようだとバレバレだ。

しかも、動きを見せないように実際の動きがスローモーションになると意味が無いし、体を動かせない為どうしても二歩では意味がない。つまり、一歩で距離そのものをつめる必要もある。

 

「歩法だから空戦じゃ使えないし、一瞬で近づいたように『見せる』位なら高位の高速移動魔法使ったほうが普通に一瞬で近づけるから、多分使える人は…」

「雫だけって事!?」

「だけ…って事はないと思うけど…ただ、クイントが試そうとして投げた位には難しいのよ。」

「うへぇ…」

 

冷や汗を流すセイン。正直気持ちはよくわかった。

体中に傷跡を残しているような雫ちゃんの生活も含めて、そんな気分にさせられる。

 

それにしても…

 

フレアさん相手に射撃と近接を織り交ぜてしのいでるティアナといい、こちらも高等技術な移動方を駆使してるアクアちゃんを息もつかせない攻勢で追いかけるヴィヴィオちゃんといい、互角の格闘戦をしているノーヴェとスバルといい…

 

「皆楽しそうでいいわねぇ。」

「いや、約一名死に物狂いっすけど…」

 

多分触れるだけでデバイスすら切断しかねない槍で追い回されてるティアナの事をさしているんだろうセイン。

けど、なんにしても必死でこういう事が出来るのは楽しそうだ。

 

休憩に用意するおやつを考えながら、展開がどんどん進んでいく試合を眺める。

これは目が離せないわ。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 




トーティア姉弟脱一般人のお知らせ(笑)。
フレアのおかげでチームバランスが大変なことに…
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