なのは+『未完の護り手』   作:黒影翼

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第十話・切り札交錯

 

第十話・切り札交錯

 

 

 

Side~月村雫

 

 

 

攻めに来ているのはフレアさん。

まして突きの構えで挑発までしているんだ、必ず向こうからくる。

 

私が何かを狙っていることに気付いたのか、キャロも横槍を入れるつもりは無いみたいだ。

 

そして…

 

 

 

一閃。

 

 

 

並の人間じゃ身をすくめるのが精一杯の鋭い突きに、私は右足で踏み込んで…

 

 

 

 

手にした右の刀を放し、槍の軌道を逸らした。

 

 

…ただでさえ、最強の突きを扱うフレアさんに、小太刀で槍の突きに勝てるわけも無い。

 

だから、初めから最初の構えは囮。踏み込みとともに手にしていた刀を放して突きを体から外すのが目的。

 

そして…突き出された槍に右手を添えたままで、手放した刀は左手に。

初めから狙いはこの…左での銃刺突『ガンブレード』。

 

私は右手で逸らした槍をそのままに、左を踏み

 

 

「え?」

 

 

 

込もうとして、尻餅をついていた。

やわらかく、突き倒されると言うよりは自分から壁を押して跳ね返ってきた力で姿勢が崩れたような、そんな感覚。

 

一瞬驚いたけど、覚えがあった。

 

これ…合気…っ!?

細かいところは最早『理論や言語に翻訳できない』ような技術。

低レベルな理解でいいのなら、相手の力と同調、流れを自分のものにして望む結果を得る技。

 

当然、戦闘で使用するとなると超高難度技術。

 

「見事だが、足りなかったな。」

「っ…」

 

倒れた私の喉元には、すでにフレアさんの槍が突きつけられていた。

 

 

 

Side~ルーテシア=アルピーノ

 

 

 

ヴィヴィオが視線を向けて動かなくなったモニターを見れば、あのフレアさん相手に善戦してる雫の姿があった。

正直、コンクリートに顔面から擦り付けられて拘束されて以来、あの人にはいいイメージはないんだけど…

 

 

 

『強い』。それだけは絶対の保障があった。

 

 

 

って事は補助があるとはいえ彼の得意分野の近接戦で戦えてる雫は…

 

「あれ?アクアさんあんなところで何を…」

 

ヴィヴィオの声に、雫への感想を打ち切った私は、見晴らしのいいビルに立つアクアの姿に少し呆れた。

 

もうアインハルトも片付きかけてる…つまり、なのはさんがフリーになりかけてるって言うのに、近接型があんな見晴らしのいいところに立って…

 

 

 

…あの娘近接型だなんて『言ってたっけ』?

 

 

 

まずい、と思ったときにはすでに手遅れだった。

 

 

 

Side~月村雫

 

 

 

フレアさんの背からいきなり飛来した砲撃。

あまりにも部外からの攻撃で、想定しきれていなかったのだろうフレアさん。

それでも、反射的に振り返りながら振るった槍で砲撃を切り裂いた。

 

ただ…アクアのしたたかさは私の想像を超えていた。

 

「っ!」

 

二発目が直後に続いていた。

砲撃を消すために振りぬいた姿勢では、さすがにもう一度砲撃を消すだけの斬撃は打てないのか、咄嗟に槍本体で防御姿勢をとる。

 

ここしかない。

 

私は後転から立ち直り、そのまま左で突きの姿勢をとる。

槍と、それを持つ手を凍らされたフレアさんに、私は今度こそ躊躇無く銃刺突『ガンブレード』を放った。

 

振り返りうけようとするフレアさん。けど、他所を向いた状態であるどころか、槍の持ち手が自由にならなくなったままですばやく動くことが出来ず…

 

 

私の突きは、振り返ったフレアさんの水月に吸い込まれた。

 

 

硬いようなやわらかいような、そんな何かが砕けた感触とともにフレアさんは吹き飛んで、地面を転がって…

 

 

 

止まったところで、デバイスをしまった。

 

 

「やたっ!勝利っ!」

 

 

キャロの声を聞いて、ようやくフレアさんのライフを減らしきれたのだと知った。

は…ぁっ…3人でやっとか…

 

 

 

Side~アクア=トーティア

 

 

 

フレアさんとの試合は課題として出されてるけど、私達の指導者は基本シュテルちゃんなんだよねー。

三連砲撃ディザスターヒートを教わってる真っ最中…なんだけど、今は二連が限界。

とはいえ火力は十二分。どーにかフレアさんは止められたらしい。

 

さて…と。

なのは大先生相手にいつまでもアインハルトちゃん一人でやらせておくわけにもいかない。ライフも300無いし。

 

と言うわけで…

 

 

 

「おーいおばさーん!っておわぁ!!」

 

 

 

とどめを狙われてたアインハルトちゃんに攻撃が行かないようにと、挑発がてら声をかけてシューターを撃とうとしたんだけど、声に出した瞬間に展開されてた全弾がこっちに一気に向かってきた。

 

16発って…片手間に撃っていい数じゃないでしょこれ!!

 

撃ちかけの3発のシューターを向かってくる桜色の弾に向かって適当に撃って、私は体から力を抜く。

 

 

ウェイブステップ。

 

 

本来一番使えるのは近接戦だけど、緩急自在のこの動きは基本回避全般に使える。

車や銃弾より、蝶や風に舞う木の葉のほうが捕らえ辛いものだ。

 

だから、誘導弾でも捌ききって…

 

 

みせようと思ったんだけどねっ!

 

 

あんまり数が多すぎてウェイブステップだけで避けきれず、防御魔法で受け止める。

シューターにしては必殺級の威力が防御越しに響く。

 

けど、それですまなかった。

 

「え?」

 

リングバインドが展開されて、あわてて槍を振って叩き斬る。

で、すぐその場を離れようとして…

 

 

 

足に桜色の鎖が絡みついた。

 

 

 

おーい!いくつ並列展開してたのー!?

 

「はーい、アクアちゃんご退場ー。」

 

綺麗な棒読みの声とともに、速射砲が放たれた。

あー、ヴィヴィオの敵討ちも入ってるのかなー、私の台詞と一緒だー。

 

 

って、言ってる場合かー!!

 

 

「空破断!!」

 

 

迫ってきてた桜色の砲撃が、唐突に掻き消えた。

 

「お母様は…一人では無理そうです。」

 

言いながら姿を見せたアインハルトちゃんは、ライフの通りの見た目だった。

なんというか、メッタメタのボロボロ。

 

確かに一人は無理がある。

 

「アインハルトちゃん、ライフ大丈夫?」

「変に挑発するのだけやめて貰えれば。」

「あはは…確かに怒らせたら怖いタイプだね。」

 

攻撃誘導するためとはいえ、さっきの連続攻撃はホント死ぬかと思った。

間違いなく怒ってたのにアレだけ丁寧に仕掛けてくるんだもんなぁ…さすが歴戦の英雄ってところだ。

 

子供二人でどうできるかわかったものじゃないけど…

 

ま、やってみますか!!

 

 

 

Side~高町ヴィヴィオ

 

 

 

さすがなのはママ。

アインハルトさんをほとんどノーダメージで落としかけて、そこにアクアさんが加わったのに、シューターでけん制したりプロテクション張ったりで凌いでる。

 

あと一撃で終わりのアインハルトさんが下手に攻勢に出られないのも原因だと思うけど、それでも二人に詰め寄られて凌いでるのは凄い。

 

一方で、さすがに一対一でフェイトママに勝ちきるのは無理だったのか、エリオさんが大分ピンチだった。

スバルさんとノーヴェは結構いい勝負で、コロナは…ライフぎりぎりのクラウさんにはどうにか勝てたけど、へたってるところに来た雫さんに斬られて落ちた。

 

あ、エリオさんも落ちた。フェイトママは一気になのはママのほうに向かって飛ぶ。

 

「さてと…そろそろ狙い目かしらね。」

 

なのはママのいる位置に戦力が集まった。

こっちも放置しないようにキャロさんが近づいては来てるけど…

 

「キャロ?残念だけど、もう手遅れよ。」

「え?」

「なのはさん以外高威力範囲攻撃が無いって思ったのは浅はかだったわね。」

 

ルールーがここまで小技すら使わず、私の回復のみで済ませてきた理由…

リライヴさんから教わったって言う、魔力弾の雨を降らせる凶悪な攻撃を展開する。

 

「シューティングスター、ツイン。」

「ぅえぇえ!?」

 

 

名前の通りに展開される二つの魔法陣。

そして、視界を覆いつくす紫色の光弾。

 

丁度なのはママがいる位置と直線状に入ってきたキャロさんが聞いたことないような悲鳴を上げた。

 

うわ、実物を見たのは初めてだけど、まさかこんな凶悪な魔法だったなんて…

直射弾とはいえ、これじゃもう極大砲撃と変わんない。だって、全部撃たれたら隙間が無くなりそうな量がある。

 

 

 

「これで…決まり!」

 

 

 

ルールーが言い切ると同時に、紫色の流星が放たれた。

まず、目の前のキャロさんが、防いでそのまま障壁ごと飲まれて砕かれて墜ちた。

発動と同タイミングで離脱する予定のなのはママの姿も見えない。

ちょっと心配だけど、私には役目がある。

 

 

別の位置にいた雫さんがこっちに向かってきてる。

これを撃ち終えたらルールーはまともに戦えないから、雫さんに奇襲は受けないようにしないといけない。

キャロさんのブーストが切れたはずだからそこまで危なくない…と思えるけど、魔法がかかってあった魔力反応が無いから、気配とか音で察知するしか手が無い。

 

「……げ。」

 

ルールーが、苦い声を出す。

魔力弾の雨が収まって晴れた視界の先に、二人の人影があった。

 

アインハルトさんとアクアさん。

 

アクアさんがアインハルトさんを庇ったらしく、デバイスを翳した体勢のままで立っていた。

 

受け手に回ったアクアさんのライフは行動不能域の100未満まで落ちていたため、そのまま座り込む。けど、アインハルトさんは250のまま残っていた。

 

何が起こったのかはわからないけど、なのはママもフェイトママも落ちてしまったらしく、アインハルトさんがこっちに向かって接近してくる。

 

 

一瞬、本当に一瞬、その状況を確認するだけの間位しか意識がそれてなかった。

そのはずなのに…

 

 

 

「いっ!?」

 

背後に影が見えて、咄嗟に首を左腕で守る。

斬撃とジャケットの防御魔力が衝突した高い音と衝撃。

 

 

確認するまでも無く、背後に雫さんがいた。

 

咄嗟に反転。

アインハルトさんも向かってきてるけど、距離もあるしライフも減ってるからルールーに任せるしかない。

ブーストさえなければ防御力でどうにでもなる…って言うのがルールーの見解だけど…

 

正直、私はそこまで雫さんを甘く見れない。

 

前も普通の攻撃はジャケットで受けられたけど、拳と打ち合って手が斬れたし。

 

「ディバインバスター!」

 

だから、全力で。

生身の身体能力しかないはずの雫さんには物騒すぎる過ぎた技、砲撃魔法。

これなら避けられない、物理的に、絶対に。

 

 

 

 

私が撃つ前に雫さんが動いていなければ。

 

 

 

 

「え?」

 

何故か雫さんが私の懐にいた。

何?何時!?どうや

 

 

「枝葉落とし。」

 

 

動揺してる間なんてあるはずも無く、伸びきった腕をとられ、投げ技に入られた。

腕の関節に雫さんの刀を挟みこまれ…そのまま捻り投げられる。

 

「あ…ったぁっ!!」

 

間接技と斬撃を同時に食らうような激痛の後、背中から地面に落とされると言うオマケ付き。

せっかく全快近くまで回復してたライフがいきなり1500に減らされた。

 

追撃を警戒してあわてて立ち上がり…

 

雫さんは自分の背後に向かって刀を思いっきり投擲した。

 

「あ、ルールー!!」

「へっ?あたっ!」

 

投げで位置が変わったせいで、背にしていたはずのルールーの後頭部に刀が直撃する。

しかも、丁度やってきたアインハルトさんに、飛び込みから拳の一撃を受けて…

 

「…ごめんヴィヴィオ、墜ちちゃった。」

「嘘ぉっ!?」

 

ルールーが墜ちた。

 

私の前には、アインハルトさんと雫さん。クロスレンジでかなわない大敗中の二人。

 

…うわー、大ピンチ。

 

 

でも、アインハルトさんは撫でれば墜ちるライフだし、雫さんも頑丈じゃないから当てれば勝てる。

カウンターヒッターとして…乗り切ってみせる!!

 

 

 

SIDE OUT

 

 




奥様の噂話なんかからも情報収集してきたアクアは、怒らせる台詞も把握して…
…そんなもの知らなくても20代女性相手にアレは普通怒りますね(汗)
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