なのは+『未完の護り手』   作:黒影翼

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幕間・アクアレポート

 

 

 

幕間・アクアレポート

 

 

 

Side~アクア=トーティア

 

 

 

皆さん揃ってエース級の局員さんや、伝説の王様の血を引く人。

 

それに、インターミドルでも上位といい勝負しそうな強い子勢ぞろいのこの環境。

 

 

こーんなおいしい状況で…

 

 

「この私が動かないわけにはいかないでしょ!やっぱり!」

 

 

なんでか情報マニアとまで言われた私としては、こういう時は逃せない。

いい感じにへとへとくたくただし、少し口が緩くなっててくれてるかもしれない。

 

 

ふっふっふ…いろいろ聞かせて貰いましょうか!

 

 

 

 

「と言うわけで!呼ばれず飛び出てこんにちは!アクアでーす!!」

「テンションたっけぇなぁお前…」

 

ノーヴェさんが呆れ混じりの視線を向けてくる浴場。

とりあえず足が運びやすかったので、私はそこに顔を出した。

 

「早めに答えておくけど、あんまり貴女にはいろいろ話せないわよ。」

「へっ?」

「『アクアはある意味一番手ごわいから気をつけろ』って前情報があってね。実際自力でいいとこまで速人さん達の調査推察進めちゃったし、少なくともここの局員は皆警戒してるわよ。」

「うえぇ!?」

 

ティアナさんに微笑み混じりに告げられた話は、結構な絶望感をあおるものだった。

こういう時に一番話をうっかり漏らしてまずいのは子供勢だと思ったけど、まさか私が一番警戒されてるとは。

 

「まー、油断できないよね。連戦でくたくたのお風呂上りでいい気持ちのところを狙ってくる所とか。」

「はうわ!ばれてるっ!」

 

苦笑気味のスバルさんに、全部見抜かれてることを告げられた。

状況とか心境も、話を聞くのに必要な要素。

その辺のお姉さん(主婦)方に話を聞くときには、特に重要だ。

 

「うーん…別に機密とかを暴きたいわけじゃないんだけど…そういうことならしょうが無いか。コレも無駄になっちゃったなぁ…」

 

ポケットから取り出したチケットを眺めて溜息を吐く。

いろいろ話を聞けたなら、お礼として渡してくるといいってそう言ってフレイアさんに渡された割引券。

しかも、普段宣伝で配ってるものと違って、シューアイス限定とはいえ30%OFFと言う、うれしい豪華チケット。

 

ヴィヴィオちゃん達からだけでも話を聞こうと踵を返して…

 

 

 

チケットを握った右腕を、がっしりと掴まれた。

 

 

 

「ま、まぁあたし達個人の話とかなら出来るし、何が聞きたかったのだけでも教えて欲しいなー…」

「スバル…あんたねぇ…」

 

私の腕を掴んでいたのは、椅子に座っていたはずのスバルさんだった。

な、なんか腕から軋む様な感触がするんですけどー…

 

「オイこら馬鹿姉。」

「だって!エメラルドスイーツのシューアイスだよ?30%オフだよ!?元々安物使ってないから高いんだよ!?普通に食べたら財布空になるくらいにっ!!!」

「『普通に』店の一日分買い潰すな!そりゃ財布も空になるっての!」

 

涙目のスバルさんに怒鳴るノーヴェさん。

…あー…なんかこの券を渡してくれたときにフレイアさんがなんだか軽く疲れてたような気がしたのは、またそうなることを悟ってたからか。

 

「それじゃちょっと気になったんですけど…」

「あ、何々?」

「なのはさんって怖いんですか?」

 

とりあえず、腕が壊れないうちにスバルさんに手を離して貰って聞いてみる。

 

「噂では、『鬼教官』とか言われてるみたいですけど、なんか見てる限り真剣になったり訓練内容がきつかったりってのはありそうですけど、鬼って言うような怖いイメージはあんまりなさそうで。」

 

正直、気のいいお母さんだ。

魔法戦ってなると、恐ろしい技量は発揮するけど技量だけでそこまで怖がられるんだろうか?

昔訓練受けてたらしいし、なにかエピソードとか聞けるかなーと。

 

まさか本人に、『貴女怖いですか?』って聞くわけには行かないし。

 

けど、ノーヴェさんが肩を竦めた。

 

「所詮噂は噂って事だろ?確かに未熟な内にあの砲撃はちと怖いだろうけどな。」

「そうだね、叱責とか指摘はずばずば飛ぶけど、フレア空尉みたいな感じの怖さは…」

 

言いかけたスバルさんが硬直して首だけ動かす。

あまりに異様な動作に、首の向き先を見ると…

 

 

 

「めん…い…ごめ…さ…ごめ…な…い…」

 

 

 

うつむいて何かをぶつぶつと小さく呟いているティアナさんの姿があった。

目が死んでる。地面を見てるようで焦点がどこと無くあってない。

 

「お…おい?スバル?これ…」

「あー…うん、少しそっとしといてあげて。」

 

ノーヴェさんも見覚えが無い姿なのか、ティアナさんを見て心配していた。

 

 

 

結論。ほとんど出会うことは無いけど、たまに現役の執務官すら思い出すだけで怯えるような恐ろしさを振るう事がある。

…私も二度と下手な挑発はしないようにしよう、うん。

 

 

 

 

 

 

割引券を渡すだけ渡して次へ。

 

「はぁっ!」

「遅い。」

 

外に出ると、クラウと一緒にいたフレアさん。

クラウが剣を思いっきり振り下ろして硬直したタイミングを狙って放たれたフレアさんの突きがクラウの肩を捕らえた。

 

うわー…アレだけやった後にまだ連戦。無茶するなぁ。

 

「こらこら、もうやめときなさいって。」

「あ、姉さん…」

「加減は知っている、もう終わりだ。」

 

いやいや、ただでさえ今日の三連戦で明日午前は休みってことになってるのに、今動き回ってる時点でどうかしてる。

 

「所で、フレアさんに聞きたいことがあるんですけど…」

「何だ?」

「フレアさんの本命って…フェイトさんなんですか?」

 

執務官としてバリバリ働いてる超多忙かつ、プライベートをヴィヴィオちゃんとエリオ君とキャロちゃんに裂いてる日常、男の影となるとフレアさん位だろう。しかも、接点はプライベートらしいし。

 

 

なにしろ私も乙女なもので、こういう話に興味がわかない訳が無い。

 

 

「本命?」

「そのー…恋人とか結婚とか。」

 

首を傾げられそうな勢いだったのでぶっちゃけ気味に聞いてみる。

と、フレアさんは考えるように手で口元を隠す。

 

「あまり考えたことが無いからわからん、同期を見る限り考えるに遅いくらいなのだろうがな。」

「あー…」

「第一、私のような者をあのフェイトが相手にするとも思えない。」

 

自信+努力家、と言うか、揺らぐって事がなさそうなこのフレアさんが、自分を卑下するような言い方をするなんて思わなかったのでちょっとびっくりする。

 

「えと、どうして?」

「無辜の民を守る力として前線にいるためにいろいろと評価を下げているからな。戦力として私ほどのものがそういない為、前線の兵として使われるような位置で居続けているが、単純評価で『仕事を真面目にやらない冷血漢』だ。万人に優しく真面目な彼女からすれば見ていられまい。」

「あー…」

 

卑下という程でもない単純な自己評価だった。

戦闘となると社交辞令もなにもかもスルーらしいしなぁ…

 

「人柄も良く器もある出来た美人だ、相手によほどの断る理由でもない限り成立するだろうから、私よりフェイトに本命とやらを聞いたほうがわかり易いだろう。」

「そ、そうですか。」

 

うーん…フェイトさん本人にフレアさんが本命かって直接聞いたってうまい事はぐらかされるのがオチだと思ってフレアさんに聞いてみたのに、こうも真面目に答えられて『わからない』んじゃ失敗だったかな…

 

 

しょうがない、フェイトさんのほうに聞いてみるか。

 

 

「あ、ちなみにコレいります?」

「…あぁ、感謝する。」

 

割引券を渡すとお礼を言われた。ちょっと予想外だ。

 

 

 

 

 

 

と言うわけで、フェイトさんのいるはずの部屋に向かったんだけど…

 

 

「あれ?エリオ君、キャロちゃん?」

 

なぜか部屋の前に揃っているエリオ君とキャロちゃんの二人。

二人は揃って私を見る。

 

「アクアさんにはお引取り願うようにって。」

「ものすごい慌てて部屋に戻ってきたフェイトさんにそう言われまして…」

「うえあ!?」

 

まさかあのフェイトさんに突っぱねられるとは思わなかった。門前払いて…

 

「うぅ…やっぱりパパラッチは嫌われる運命なんだ…ってパパラッチじゃないしっ!!」

「はは…」

「ノリツッコミ…」

 

苦笑する二人。

うーん、けど二人の今の言い方だとフェイトさん部屋か出てどこかに行…アレ?

 

 

 

まさか……フレアさんとの会話聞かれた?

 

 

 

あの人一切照れとか無いから普通の声で喋ってたし、聞こえててもおかしくは無い。

と言うか、私名指しで遭わないようにする理由がそれしかない。

 

…なんとも思ってなかったら、こんなに照れる必要ないよなぁ。

 

「あー、うん。もう大丈夫。」

「あんまり変な話は広めないでくださいよ?」

「聞かれなきゃね、コレフェイトさんに渡しておいて。」

 

例によって割引券を渡して次へ…

 

うーん、後1枚か。やっぱりヴィヴィオちゃん達のところがいいかな。

 

DSAA出るし、少しでも足しになる話が聞ければお得だ。

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけでインタビューターイム!」

「いきなりだねぇ。はい、アクアちゃんもドリンク。」

「あ、どもです。」

 

ヴィヴィオちゃん達がいる場所に再度顔を出すと、雫ちゃんがいなくなって代わりになのはさんとメガーヌさんが居た。

 

「いきなり言われても、アクアさんも大会参加するんですよね?」

「下手なこと喋れませんよー。」

 

うっわ、子供達にまでバッサリと!

 

「なのはさーん、私どこ行ってもこんな感じで苛められるんですけどー。」

「諦めるしかないかなぁ、アクアちゃんしたたか過ぎるし。」

 

あんまりあちこちでこんなことばかり言われるので、良心と思われたなのはさんに泣き付いて見たものの、にっこりとバッサリと行かれた。

うわー…確かに怖いとかでないけどキッツイ…

 

「と、とにかく、抱負くらいでいいからさ。サクッと。」

「抱負…って言うか、とりあえず私達の目標は都市本戦出場ですね。」

「それ以上はさすがに数年計画って言うか…」

 

気を取り直して答えてくれそうな所を聞いてみると、ヴィヴィオちゃんとリオちゃんが目標を答えてくれた。

おぉ、結構な目標だ。

と言うか、出場までこぎつける…各区で勝ち抜けるなら、本戦上位に勝つ必要が出てくる可能性が高い。

むしろ達成できたら優勝見えるレベルだし。

 

「アクアさんは?」

「私は大それた事は言えない身で…どちらかと言うと出来るだけやってみるって感じ…だったんだけどねー…」

 

答えながら遠くを見る。

 

「いい所まで行って頑張ってるってとこちゃんと雫ちゃんに見せて、かたくなな気分解いて貰おうと思ったんだけど…いい所って当然優勝よね。とか念押されて…」

「うわぁ、雫さんらしいというか…」

「舐めすぎだーっ!」

 

ヴィヴィオちゃんとコロナちゃんが苦笑いで、リオちゃんがほえるように手を上げる。

正直私もそう思ってたんだけど…違う見解の人が一人いた。

 

「でも、せっかくなら前へ前へもいいんじゃない?目標より先には普通辿り着けないから、目指すところから低いんじゃ全然進めないよ。六課の皆は最初から私達が対戦相手だったしね。」

 

なのはさんが胸を張って自慢げにそう答える。

 

それを聞いて、一同皆納得するように頷いていた。

だって、なのはさん達はとんでもなく強かったし、フォワードの皆もいい勝負出来てた。

 

…そこに至るまでに、きっとボッコボコにされ続けて来たのは、シュテルちゃん達にメタメタにやられてきた私にとっては想像に難くない。

 

「んー…ま、個人的に目標無いことも無いけど、達成前にジークさんとかと当たらないといいなぁ…」

「ジーク…って、まさかジークリンデさん!?知り合いなんですか!?」

「あ。」

 

口が滑った。そして聞き逃してくれない耳聡い子供達。

しまった、紹介しろとか何とか騒ぎになるの嫌いそうだったから誰にも話さないつもりだったのに。

 

目立ちたくないだろうジークさんに、時々スイーツ渡しに行ったり買ってあげたりしてたんだよねぇ。

少しは話したり軽い組み手くらいならやって貰ったりしたけど…べらべら喋ったら怒られそうだ。

 

「…ごめん!なのはさん、大人なら察して収拾つけてー!!」

「にゃ!?丸投げ!?」

 

結局言い訳まるで思いつかなかった私は、最後の割引券を投げるように部屋に置いて、ダッシュで部屋を飛び出した。

 

「私もいるんだけどー…」

 

去り際、メガーヌさんの遠い声が聞こえてきた。

うんごめんなさい、何というかなのはさんのほうがいろいろうまくやりそうで。

 

 

 

 

「ふー、とりあえずいろいろ聞けて収穫にはなったかな。」

 

貰って来た分は配っていいって言われてたとはいえ、結構大変なことになりそうだな、フレイアさん。

 

でも…うん、今聞いた話だけじゃなく、外でやる集団戦もなかなか為になった。

 

なった…けど…

 

「不安?」

「っ!?な、なんだクラウか。脅かさないでよ。」

 

いきなり背後から話しかけられてビクッとして振り返ると、クラウがそこにいた。

 

「大丈夫。」

「な、なに?」

「姉さんはずっと強くなってる。だから、大丈夫。」

 

勝てる。そう断言できるほど甘い大会じゃないのはクラウだってわかってる。

今日だって、いろいろ小出しに謀ったけど、出したものは次から次へと見切られたし。

けど…ううん、だからこそ、大丈夫だって繰り返してくれるクラウ。

 

「…うん。」

 

…正直、怖い部分もある。

一年積んだものがある、一年分しか積み上げきれてない。

大したこともしないまま自惚れてた頃と違っていろいろやってきた。でも、それでも結果が変わらなかったら、本当に救われないくらい辛い。

それがすごく怖い。

 

「頑張れ。」

 

クラウはそう言って私の頭を一撫でした。

 

「ってコラー!私がお姉ちゃんなんだからね!!」

「うん、ごめん。」

 

恥ずかしくなって照れ隠しに怒ってみたけど、クラウが素直に謝ってしまい、なんだか余計に姉の威厳が失墜した気がする。

うぅー…優勝とまで行かなくても、絶対高記録残してやるっ!!!

 

 

 

SIDE OUT

 

 




せっかく多数集まってるので、こんな感じで焦点を当てていければと。
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