幕間・命を燃やす刃
Side~フェイト=T=ハラオウン
斬撃、移動、斬撃斬撃、移動、斬撃移動斬撃斬撃移斬斬移斬斬移斬移斬斬移斬斬…
「はあぁぁぁっ!!」
思考で間に合わせられないくらいの全速連撃。
ソニック+ライオットの二刀でブリッツアクションを連発する。
調査や報告、事務なんかに裂かれて訓練が久々な私とティアナは、同じ訓練でエリオやキャロよりバテるのが早い有り様だった。
そんな私が、この人相手に遠慮なんて出来る筈がなかった。
一般局員や魔導師は勿論、『ただの人間』には絶対に過ぎた戦法だけど…
「っ!!」
目の前の『ただの人間』には、そんな常識は通用しないようだった。
踏み込みにあわせて足に糸を絡めて引かれ、体勢を崩される。
踏みとどまるのも一瞬、横薙の一閃から魔力刃を飛ばして糸を…
切断しようと思っていた剣を弾かれた。
…出鱈目過ぎる、恭也さん。
恭也さんは、わたしを飛び越えつつ、伸ばした糸で私の周囲に螺旋を描く。
まずい、抜けられない。
残った左の一刀を振るって糸を斬る。
速人の五指鋼線と違ってリールから伸びる一本だけだから、どこを切っても縛られるのは避けられる。
恭也さんの着地…多分跳躍に合わせて放たれたのだろう誘導弾が、全方位を埋めるように恭也さんに襲いかかる。
中空にいる間に近付いてきた数発の魔力弾を切り裂いた恭也さんの足が地面に…
「っ!!」
ついたのを確認した瞬間ブリッツアクション。
距離をとって、もといた場所目掛けてソニックシューターを展開する。
予想通り高速移動に入って残りの魔力弾を回避した恭也さん。
恭也さん達の使う高速移動にも持続時間がある。
だから、シューターの平射で時間を稼いで…
「はあぁぁぁっ!!」
ザンバーを大剣にして、『周囲の木々ごと』薙払う。
大剣を伏せてか跳躍かでかわされても周囲の木々に潰される。まして高速移動の終わりならなおさら…
倒れ行く木々から、木片が飛び散った。
「っ!!」
倒れ行く木々を足場に接近してくる恭也さん。
下手に大剣にしてしまったのが命取りになったのか、逃げるのもままならず頭に衝撃が走った。
これは…駄目だ。
『なのは…っ!』
薄れて行く意識の中、念話を使うと同時に桜色の光が迫ってくるのが見えた。
いくら恭也さんでもこれは避けられないだろう。
安心した瞬間、意識がとぎれた。
Side~高町なのは
砲撃を放った体勢のままでいるわけにも行かずにすぐさま構えなおす。
「アレまで避ける?」
構えなおした先には、荒い息を吐き両の刀を鞘に収めた恭也お兄ちゃんの姿があった。
「文句があるのはこっちだ…殺す気か…」
「フェイトちゃんはともかく、砲撃は非殺傷だよ。」
木々で潰そうとした時にはさすがにちょっとびっくりした。
多分相手が人間なのを忘れてたんだろう。
相手は陸戦最強の人間だ、無理もない。
距離は十以上…バインドも射砲も使う余裕はある。
でも構えて何もしないのは、一手しか使う余裕がないから。
それを外したら詰む。
そしてお兄ちゃんならただの一手は必ず外す。
…だから、狙うのは恭也お兄ちゃんが動いた瞬間。
その瞬間に、全面プロテクションを張る。
小技なら止められるし、斬りかかってきたならバリアバーストを使う。
それに、もう何度も高速移動使えないはずだ。多分ここで決めに来る。
問題は受けた瞬間、バリアバーストを投擲相手に使えば隙だらけになるし、斬撃にいつまでも使わないと徹される。その瞬間の一手を即座に決めないと…
「…いくぞ。」
だから…恭也お兄ちゃんが短い声と共に抜刀体勢になった時…
まさかその瞬間に、試合が終わっていたなんて、まるで気づかなかった。
恭也お兄ちゃんの姿が消えた。
私はそれに合わせてプロテクションを展開する。
即座に来るだろう衝撃に備え、集中…
展開された障壁越しに恭也お兄ちゃんが刀を鞘に収める姿があった。
「え?」
おかしい。
戦闘中にこんな隙だらけになるはずがない。
何で…何…
「ぇ…」
プロテクションの内側、私の身体に赤い線。
右脇腹から左胸まで、バリアジャケットが斬り開かれて、内側の私の身体から血が出てきていた。
皮一枚裂いた程度の軽い傷。
でもそれは加減の結果で、呆然とプロテクションを展開したままで固まる私の前で地面に腰を下ろした恭也お兄ちゃんの姿が、全てを物語っていた。
…私、何をされたかも解らないまま負けたんだ。
「はー…強いや。」
空を見上げ思う。
事件にも絡み、エースオブエースと呼ばれるほどになっても、私はまだ高町家の末っ子なんだなぁ…と。
負けたのは私とフェイトちゃん。
何だけど…
『奥義』を連発しすぎた恭也お兄ちゃんのほうがいろいろとばてばてだった。
顔色は一番悪いし汗だくだし、足も痙攣気味で頭と膝を撫でるように座っている。
人間の限界を超えられるお兄ちゃん達の奥義の弱点。
本来出しちゃいけない力を搾り出す反動と消耗による、戦闘時間の短さ。
魔導師相手でも使えば勝てる位の代物だけど、使わなきゃ少し運動神経のいい生身の人間。使用が過ぎれば攻撃に当たらなくても下手すると数日、数ヶ月戦えなくなってしまう程の消耗。
フェイトちゃんが恭也お兄ちゃんの予想より持ちこたえたせいか、無茶が過ぎたらしい。
「そこまで無茶しなくても。」
「…妹相手に負けてやれるか。」
ここまで疲れると完治には大分時間がかかるんじゃないかと心配したんだけど、少しすねたように返された。
エースオブエースと現役執務官の二人がかり何だけど、貪欲と言うかなんというか。
疲れきって座っている恭也お兄ちゃん。
少なくともフェイトちゃんが起きるまでは休まないといけないから、子供達が誰もいない今のうちに聞きたかった事を聞いてみることにした。
「雫ちゃんを魔導師と…ううん、ヴィヴィオ達と関わらせたのは何で?」
あえて言い直して聞いてみる。
恭也お兄ちゃんは私の顔を一瞬だけみて、呟くように話を始めた。
「必要なものがある。」
「必要なもの?」
「アイツが家で戦う誰より弱く、俺や速人が強すぎるせいで手には入らなかったものだ。」
少し考えて、心当たりが一つ。
「それを言うなら恭也お兄ちゃんだってあんな小さな頃は無かったんじゃない?物心ついたときから剣持ってたんでしょ?」
修行が先にきたのはお兄ちゃんも同じ筈。
そう思ったんだけど…
「…俺達に勝てない。事実だが、素直過ぎてその事実を受け入れてしまっている。」
実戦において、勝てない敵に正々堂々なんて危険な真似が許される機会は無い。
逆に言えば、未完の雫ちゃんにとって、今の実戦は…どうやってお兄ちゃん達、達人に引き継ぐか。
これだけになり、素直と称される雫ちゃんは、多少の我慢でその事実を受け入れている。
物分かりがいいと言えば褒められるかもしれないけど…気持ちに蓋をしたまま強くなんてなれるわけもない。
そして…それだと、雫ちゃんはいつまでも恭也お兄ちゃんが言う『必要なもの』を手に入れることができないだろう。
「すまないな、愛娘を巻き込んでしまって。」
「それは全然。ヴィヴィオが雫ちゃん嫌ってる訳でもないし、広い経験つめるなら多少のトラブルもあったほうがいいしね。」
「スパルタだな。」
「恭也お兄ちゃんにだけは言われたくない。」
言い合って、互いに笑う。
と、チクリと少しさすような痛みが傷から走る。
皮一枚、血が少し出る程度に斬られた傷。
いつ何されたのか、わからなかった。
こんな技が使えるなら、地上ならリライヴちゃんにも勝てるって話もあながち嘘じゃないんだな、きっと。
「戦えば勝つってホントなんだね。さすがに二人がかりで負けるとは思わなかった。」
私の言葉を聞いた恭也お兄ちゃんは小さく笑う。
微笑むと言うよりは、どこか悪戯な笑み。
「ヒーロー以外には…な。」
意味深に告げられた意味を噛み砕くのに数瞬。
つまり…何?
私とフェイトちゃん二人でやっても力関係的には速人お兄ちゃんに…
「いたた…フレアの提案を真似するのはやっぱり無茶だね。そろそろ帰」
「修行!修行しようフェイトちゃん!いますぐっ!!」
起きてきたフェイトちゃんの手をひったくるように掴む。
「い、今すぐは無茶だよ。明日だって試合あるんだし。」
「ううぅぅぅ…」
恭也お兄ちゃんに負けたのは我慢と言うか何というか、受け入れられるけど、速人お兄ちゃんとそんな差になってるって言うのは納得いかなかった。
あーもー!絶対追いついてやる!!
SIDE OUT
恭也がなのはを上回れる証拠を雫に残せるタイミングがここだなーとは思ってたんですが…話を2対1にするのに疑問が出ませんでした。恭也…(汗)