なのは+『未完の護り手』   作:黒影翼

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エピローグ~大切なものを護れるように

 

 

 

エピローグ~大切なものを護れるように

 

 

 

Side~月村雫

 

 

 

一通りの治療も済んで、退院も済ませた翌日、私はヴィヴィオとアインハルトを呼び出していた。

人通りの少ない川沿い。丁度夕日が綺麗な時間だった。

 

結構早めについておいたのに、案の定と言うべきかすぐに顔を出す二人。

 

 

「こんばんは、雫さん。」

「…こんばんは。」

 

明るいヴィヴィオに軽く会釈をするアインハルト。

一騒ぎあっても相変わらず…少なくとも、相変わらずの体を保てるようで何よりだ。

 

「ま、大した用じゃない…かな?うん、多分…」

 

自分で言ってて、今更ながらに躊躇う。

あーもう、告白前の学生じゃないんだから、こんな所でどきどきしてなくてもいいのに…

…うん、理屈と感情がまるっきり別で機能してるのがよく分かる。頭で理屈こねても全然気が楽にならない。

 

「えーと…今までみたいに頻繁には、しばらく会えなくなる。」

 

告げた途端、ちょっとヴィヴィオの笑顔が驚きに変わる。

 

よかった…と、思ってしまった。

『そっか、またねー』なんて、本当に大したことじゃないように返されたら、地味にショックだから。

 

「見つかったのですか?強くなるのに必要なもの。」

 

アインハルトから出てきた質問はまぁ当然と言ったところだった。アインハルトとしては気になる所なのは間違いない。

 

口先で述べた言葉そのものより、抱いた気持ちの方が大事だから、なのはさんもお父様も言わなかったのだと分かっている今、少し教えるべきか迷った。

けれど、強くなるためにと独りになろうとし続けてきたアインハルトには教えておいたほうが機会が出来やすそうだ。

 

「守りたいものだって。抽象的なのじゃなくて、どうしようもないほど…ね。独りでいたら出来ないわけだわ。」

「ぁ…」

 

アインハルトがヴィヴィオを見て俯く。

なんだかんだ人から離れて修行、独りで修行とやってきたから、今更ながらに申し訳なくなったのかもしれない。

 

「私も…無理してたけどね、楽しかったの。簡単に友達だ何だって、言っていいと思ってなかったから。」

「え?」

 

二人の表情に不理解が混じる。

なりたいなりたくないで無く、名乗っていいと思わない。

そんなことを言うとは思わなかったんだろう。

 

「今回の一件、重傷者を出したのは聞いてる?」

「あ…でもそれは」

「故意、よ。私が望んだ事の為に私の力と意思を以って傷つけた人。そして、このまま進むなら、いつかきっと望んで人を殺す。」

「っ…」

 

反省する訳でもない殺人犯を友達ですなんて紹介させられないし、堂々と笑顔で握手を交わした手が実は血みどろだったなんて後から知るのも悲しい話だ。

 

「だからまぁ、ヴィヴィオに友達だなんて紹介された時も、本音を言えば凄く嬉しかったのに、言うに言えなかったんだ。」

 

隠していた心中を明かしつつ、私はポケットからアクセサリーを取り出す。

 

それは、二つに分かれた二刀のネックレス。

私がインターミドルに出るに当たって使っていた、速人さんの予備デバイス、カゲハ。

 

「それでその…もし私がそんな身だって知った上で、まだ友達だって言ってくれるなら…コレ、受け取ってくれないかなって。」

「これ…って、カゲハじゃないですか!」

 

デバイスと友達みたいに過ごしてる二人からすれば、意外なことなのかもしれない。

けれど、ちゃんと訳はある。

 

「この間の一件で中途半端に踏み込んじゃった場所にちゃんと辿り着かないと、半端なのが半端なままだと危ないから、家の修行地に篭もって修行する事になったんだ。」

 

聞いた話だと、私が一瞬踏み込んだ領域は、御神の扉の一つらしい。

辿り着いて、使えるようになって、使いこなせるようにならないと…半端な状態でうろうろする事になる。

 

勝手に変わったあの時、私は本気で消耗していた。怪我とか考慮しなくても。

使おうとして使えなくても、勝手に使って消耗しても、どっちでも危ない。

 

そういう事で、篭もってしばらく出られなくなる。速人さんですら半年かかったらしいし、私は1年以上見込む必要があるという事だった。

 

「だから、しばらく会えなくなるんだけど…そうなると、魔導競技や模擬戦にでも出なきゃ使われないカゲハはただの飾りになっちゃうから。二人とも格闘戦技使いだからいらないとは思うけど、それでも魔導師の手元にあったほうが…と思ってね。ただ、知らない人にあげるほど適当なものでもないし。だからその…」

 

友達であってくれるなら、持ってて欲しい。

 

恥ずかしいのか怖いのか、言い切る事が出来なかった。

剣を振るうときとは別なんだろうけど、ものすっごい緊張だ。今更ながら断られたらとか思うと。

 

私の掌に乗る二つに分かれたデバイス。それに手を重ねたヴィヴィオは…

握りこまずに私の目を見た。

 

「一つ約束してくれませんか?」

「何を?」

「確かに、雫さんが目指してる形にちゃんとなるなら、人を取り返しがつかないほど傷つけたり…殺してしまったり、きっとあるとは思います。けど、それでも…今回みたいにどうしても必要な時以外は、そういう事はしないって。」

 

真っ直ぐ私を見るヴィヴィオの目は、なのはさんを思い起こさせた。

全く、血縁何て関係なく継ぐものは継ぐんだな。

 

「無理を言ってるとは思います、雫さんが間違ってたって言う訳でもないです。でも…初めてあった時みたいにあちこちで傷つく人が出るのはやっぱり違うって思うから…」

「分かってる、それは今回思い知ったから。約束する。」

 

 

この問いに揺らぎを見せる訳には行かないと思って、真っ直ぐヴィヴィオの瞳を見て約束を交わす。

そうすると、ヴィヴィオは満面の笑みを見せて、その手にカゲハの片割れを握ってくれた。

 

 

護ろうとして悪かったなんて言わないで。

命や力を扱う事の重さ、その先の結果。それにばかり目が行き過ぎて、見ているようで見ていなかった人の気持ち。

ジークリンデにしろファビアにしろ、必須ってわけでもないのに結構無茶やって傷つけてきた。

正しければ何でもいいってものじゃない。

命と折り合いをつけるんだから下手に甘い事は言えないし出来ないけれど、一から十まで厳しくあればそれで護りたいものが護れるのかって言ったら、それはまた別の話だ。

 

今回だって、黙ってみてたら確実に助かった代わりにヴィヴィオはきっとトラウマものの傷を負う事になってた。そして、そんな心の傷、大事な人で無い限りさして気にも留めなかっただろう。

 

 

手に残ったもう一つ、それをアインハルトに向ける。

結構色々あったし、断られるかとも思ったけど…

 

「いつか、私が胸を張れる様になった時…再戦を。」

 

アインハルトから告げられたのは、そんな約束だった。

試合としては汚い手で倒して、その逆で満足行かなくて、インターミドルでも直接意趣返しできてないし、覇を以って和をなすって言えば、御神ほど裏方でないにしろ似たような願いではある。

ある意味、らしい約束だ。

 

「喜んで。負けてはあげられないけどね。」

 

戦えば勝つ御神の剣士にちゃんとなるなら、ここまでが私に出来る約束だった。

アインハルトはそれでもカゲハの片割れを受け取ってくれた。

 

「…それじゃ、またね。」

「「はい!」」

 

仲良く返事を返してくれた二人に手を振って、私は帰路に着いた。

 

 

 

修行内容の関係でしばらく地球に行く事になるため、家の皆に挨拶を済ませ、お父様と共に家を出る。

別に帰るって訳じゃないので、母さんはこっちで開発作業を続けるらしい。

どの道、ついて地球に来た所で修行地に一緒にはいられない。山奥じゃノエルの整備出来ないし。

 

 

「ただ刃を鍛えても修羅になるだけだ。」

 

剣や力に関しての話の時に、笑顔なんて見せる事は殆ど無いって言ってよかった。

けれど、そう言って私を見るお父様は、修行中見るような厳しいものでなくて…

 

「お前の大切なものの事、忘れるなよ。」

 

優しく微笑んで私の肩を軽く叩いた。

 

 

師として、尊敬すべき目標として、先に見ていたお父様。

けれど…大切なもの…か。

 

ヴィヴィオがなのはさんを護る気で進んでいると言うのなら…

私もいつか、お父様や速人さんを護れるほど強くなる。

思い上がりと避けていた事だけれど…出来るからではなく、大切だから。

 

進んでいこう、大切なものを護れる御神の剣士になる為に。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 




ただでさえ世の中離れ気味なのに山篭り。
10そこそこなのに仙人のようですね(汗)
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