なのは+『未完の護り手』   作:黒影翼

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???・舞台の影で

 

 

 

???・舞台の影で

 

 

 

Side~リライヴ

 

 

 

ヴィヴィオ達の誘拐騒ぎの中、なのはのフォロー…と言うか、真犯人捕縛の為に私はなのはが呼ばれた世界に忍び込んだ。

 

放送機材やら揃えてにたにた笑ってる男集団を見ていると少々そっちを先に葬りたくなったけど、ヴィヴィオ達が助かったら連絡が行くはずだし、逮捕は公務員の仕事。私はそっちにでしゃばらずに目的の敵を探し出した。

 

「…あら、見つかりましたな。」

「ずいぶん余裕だね。」

 

着物姿の…女性、と言うには顔立ちに幼さを残す少女の姿があった。

大人と間違えたのは…とんでもなくスタイルがいいから。胸半分位覆ってる着物は、つつましいどころかかえって卑猥なくらい。撫子の衣装が聞いて呆れる。

 

「あんさんが…噂の白い堕天使で?何や可愛らしい方どすなぁ。」

「ほっといてよ!」

「堪忍え、馬鹿にするつもりやおまへんけど、うちが喋ると…なぁ。」

 

手に持った扇子を開いて口元を隠しながら肩を縮める少女。胸が収まりきらずに腕に押されて形を変える。

 

うぅ…科学に関しては私の世界より大幅に遅れのあるこの世界で後から身体の調整なんてしようもない。まして、さすがに成長期ではないし。尚更どうしようもない。

 

「やけど、何や用どすか?」

「私は局員じゃない、しらばっくれるなら倒すだけ。」

「物騒なかたどすなぁ。」

 

何の用か、と言えば勿論決まっていた。

今回の一件で動いた彼ら、そのボスに当たる人は確かになのはによって捕まってる。

盗みなんかも働いてはいたけど…魔導師に有益な世界のなかや状況で不利益をこうむったり、戦闘なんかの巻き添えを食って親兄弟を失った人を集めて保護してた義賊っぽい人たちだ。

尊敬されていたボスを捕らえたなのは本人のみを標的にしている所と言い、一見彼らだけでやったように見えなくも無いが…

 

世界をまたいで施設を用意、AMF装備まで揃えられるだけの技術や資金、その両方をただの成り上がり、それもボスを失った一団に出来るはずがない。

 

 

状況を利用している外部の人間が居る。

高町なのは一人の排除か、ベルカ王族の血液でも盗む気だったのか、それは分からない。

 

あるいは…私達が出回る事まで読んでたか。

 

「噂を聞いて来た野次馬どす、うちは殿方に囲まれんの好きでなぁ…代われるものなら是非譲って欲しいもんやわ。」

 

自分の肩を抱いて身を震わせる少女。

…なるほど、そういう事か。

 

「良かった。」

「え?」

「なんとなく君にいらついてた理由、単なる僻みじゃないかってちょっと心配だったんだけど…それじゃ、私が嫌いなのも無理ないね。」

 

私はそこまで言ってデバイスを抜いた。

彼女を信頼しているのか、捨て駒扱いなのか、他に誰も見張っている気配は感じない。

なら…倒して聞く事は聞けばいい。

ただの野次馬なわけが無いし…この子は私とはとことんあわない。

 

「ところで…うちが何でゆるりと会話に興じとると思います?」

「何…」

 

最初から思ってはいたが確かに妙だ。

疑われるのは間違いなく、私の事を知っているなら尚更一人で余裕でいられる訳がない。余程の自信家でもない限りは。

ゆっくりと、閉じた扇子を私に向かって突きつけ…

 

 

 

瞳が揺―

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

咄嗟に目を閉じバックステップ。

だが、手遅れだった。

 

身体が…麻痺してる。

催眠、洗脳系の術だ。

 

「やりますなぁ…これでもうちのとっておきやのに。」

「なるほどね…私をさらうか殺すかする気だったって訳か。」

 

自信家…それも、この一件に関わってる連中のとっておきの一人らしい。

ここで彼女を逃がす手は無い。けど…まいったな、確実に勝てるって言い切れないぞコレは。

 

「ここは引かせて貰います。」

「何?」

「うちは薊といいます。生きとったらまた会いまひょか、堕天使はん。」

 

引き際の良すぎる彼女は、名乗った直後に服を脱いで投げてきた。

 

生きてたら。その言葉に引っかかりを覚え…

 

 

「鳳仙花。」

 

 

声が聞こえてくると同時、視界を覆うように投げられた着物が散弾になった。

咄嗟に張った防御魔法で受けるも、いつも通りの強度にならずあっさり砕け…

 

転がるようにして急所への着弾を避けた。

 

「っ…ぐっ…」

 

続いている麻痺と上手くいかなかった魔法の原因を探る。

洗脳系の防御と解除は、忍さん達の力を借りて練習を積んでいる。

 

けれど、どうも掴みどころがないというか薄いと言うか…紐解くのに時間がかかった。

 

「無事ですか?」

「あ、シュテル。うん、なんとか。」

 

心配してるんだかしてないんだか、あんまり表情の分からないシュテルの声に苦笑交じりに答える。

 

「しかし、まさか貴女が負けるとは…」

「視線交わしただけでかかる洗脳術使われてね。全身麻痺+魔法制御不全にされた。」

「…逆によく凌げましたね、化物。」

 

一言余計だ。

 

「洗脳にかかる直前にフォトンバレット4発放り込んだだけだよ、まだ動けたのに引くあたりは結構冷静で出来る娘だったね。」

 

私の事を知っているなら、いやらしい話が嫌いだとか位は聞いてて不思議は無い。

会話の段階から緩やかに洗脳を侵食させていたのだとしたら、かなり知恵の回る娘だ。

 

「…とにかく、洗脳術をかけられたなら一度検査はしておきましょう。キーワードで何か仕掛けられないとも限りません。」

「分かってる、とりあえず帰ろう。」

 

帰路に着きながら思う。

平穏な時なんて10年も続けばいい方だ、そんな話も聞く世界だけれど…

 

本当の問題をちゃんと片付けないと、諦めるには早すぎるよね。

 

 

 

Side~高町ヴィヴィオ

 

 

 

ダブルKOなんて微妙な結果の大会以来、ろくに遊んでいなかった今までを取り返すように、プールに旅行にと色々はっちゃけて楽しんでみた。

訓練も忘れるってわけじゃないけど、今までから比べたらちょっと加減しすぎちゃうくらいに。

アインハルトさんの方は…私達と遊んだ上で鍛錬までこなそうとして眠たげだったりふらふらだったりしてノーヴェに怒られたりしてた。

 

 

そして、あれから…雫さんと最後に会った日から一年。

 

 

この日ばっかりは、『みんなと』って枠からアインハルトさんと二人で抜けた。

近場のベンチに並んで腰掛ける。

何を言うでもなくただ座ってる状態が何だかむずがゆいというか悲しいと言うか。

 

「…なんだか、形見のようになってしまっていますね。」

 

掌に乗せたカゲハを見ながら、悲しげに呟くアインハルトさん。

あれから一度も連絡を取れていない雫さん相手には丁度いいコメントだと思いつつ、私は小さく笑って首を横に振った。

 

「大丈夫ですよ。それに、アインハルトさんが『大切な人』を放っておく訳無いんですから、大丈夫だって思ってるんでしょう?」

「あの人の心配はするだけ無駄な気はしてます。」

 

すねたように言うアインハルトさん。

エレミアの手記の時のようなすれ違いを知っている上、私達がなにか危険と言うわけでも無いから裏切ったとかは思わないようにしてるけど…やっぱり『連絡くらいよこせ』とは思ってるんだろう。

分からないようで、よく見てると分かりやすい人だ。まぁ、私も同じ気持ちだって言うのもあるけど。

 

「無茶はしてるでしょうから、少し心配ですけどね。雫さんは自分で茨を必死になって掴んでかき集めてる人ですから。」

 

縛られる、と言う表現でもなく苦難の中人とろくに交わる事もできず学校にすら通わず修行に篭もっていた雫さん。

家系から色々大変だったらしいヴィクターさんやジークさんと違って、憧れて手にしようとしたものを、女の子が無理して苦痛に耐えた挙句殺人剣なんてと『手放す事を勧める』速人さんが傍にいた結果、アインハルトさんと似て非なる形でかたくなになったんだ。

 

綺麗だと思った宝物を手放さない為に。

だから、きっと今も…

 

 

私達はちょっとの不安を打ち消しながら、少しの間話をしていた。

 

 

 

看板の外れたお店を眺めながら。

 

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 




後書き


雫の成長が早かった気もしますが、学校行かずに訓練してた上、筋力とかはそこまで鍛えなくても元から並よりしっかりしているので、ムラは出てもこんな感じかな…
と言うのと、時系列的なつ(以下略)

とはいえ、『未完の護り手』としては、これで終了となります。
重ね重ねにはなりますが、ここまで読んで下さっている皆様、ありがとうございます!
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