結構キャラの口調やら性格が違ったりするかもです…。
眩しい。まず頭によぎったのがそんな感想だった。
瞼の裏からでも感じる陽の光。多少眩しさを感じるものの、暖かでもう一眠りしたくなるような、そんな、そんな暖かな……。
「いや、寝てる場合じゃなくね⁉︎」
ガバァッと起き上がる。だってそうだろう?
閉め切った自分の部屋にいたはずなのに、太陽の光を全身に感じるだなんてそんなこと、あるはずないじゃないか!
慌てて周りを見渡してみる。まず目に入ったのは青空。
どこまでも続く綺麗な青空。良かった、もし大雨に降られたりしていたら最悪だった。
「いや、そんな呑気なこと考えてる場合じゃなくね?」
わざわざ声に出して言う必要は特にないのだが、そうでもしないとこののどかな環境に身体を委ねてしまいそうになるため、一人突っ込みを入れている次第である。
悲しいやつだと思うか?安心してくれ、俺自身その自覚はある。
気を取り直して、辺りを見回す。
野原だった。一面の野原。遠くに家が集まっているところが見えるが、おそらくそこに人がいるのだろう。
「なーんで家にいたはずなのにこんなところにいるんだろうな」
そんな今更な呟きに誰も答えてくれるはずがなかった。
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街に向かい始めてから数刻。
「ゼェ…ゼェ…」
俺は早くも息を切らして走っていた。
いや、運動不足って自覚はある。普段バイトや何やらで移動はしても、中高生の時みたいにガッツリ運動なんかしてない。
だが、理由は運動不足以外にもあり。
「なんで追っかけてくるんだこいつらはああアァァ!」
絶賛全力疾走で逃亡中だった。
何故こうなったのか、説明するのは大変だから一言で言うと、
歩きスマホはやめよう☆
ってことだ。
…簡潔すぎてわからないので詳しく言うと、持ち物がスマホ以外に何もなく、仕方ないからどこかにつながることを期待して色々と弄ってたわけだ。
今いるここはだだっ広い野原。誰かに迷惑をかけることもないだろうと思い、余裕ぶっこいて堂々と歩きスマホをしていた結果。
「ぐおおおぉぉぉ…!!!」
何やらスライム状のモンスターに追われる羽目になったというわけだ。正直すごく見覚えがあるのだが、思い出せない。例えていうなら、メアレス2イベに出てきた「シチュージン」みたいなやつ。
……ここで、普通に素手で殴り倒せるのではないか?と思われるかもしれないが、正直に言おう。無理だ。
理由はいくつかあるが、主に2つ。1つ目は奴らの身体が非常に軟らかいボディである、ということだ。殴ったり蹴ったりしても衝撃を吸収されてしまううえに、あまつさえこちらを取り込もうとしてくるという恐怖体験をさせてくれた。もう少し尖ったものがあれば変わってくるのかもしれないが、今現在手元にないのだから仕方ない。
2つ目は、数だ。一対一ならまだ撃退する方も考えられるのだが…。
「ぐおおおぉぉぉ」
「ぐおおおぉぉぉ」
「ぐおおおぉぉぉ」
何体かが常に声をあげながら猛進してくる。その声に呼ばれてなのか、徐々にどこからか数を増やし、追ってきているというわけだ。お前ら、仲間を呼ぶなら限度を決めろ。あと8体集まったら合体しろ。キングになれよ。
まあそんなこんなで必死に逃げているうちに、街に近づいてきていた。
正直助かった、と思ったのだが。
あれ?これ、こいつら引き連れて街に入ることになるんじゃね?
そう思った瞬間、街の入り口から大きく外れるようにルートを変えた。
後ろを振り返ると、見覚えのあるスライムみたいなやつらは若干の距離を離したものの、まだ追ってきていた。
「あぁもう…しつこいなぁ…」
そんなことを思いながらチラチラと振り返っていたのが悪かったのだろう。
何かに足を取られ思い切りすっころんだ。
地面との濃厚なキスの後、唇には切なさだけが残された(訳…土の味がした)。
「いって…って、ぅぐっ!?」
若干余裕ぶった思考をしてたのだが、足の痛みで冷や汗が流れる。
この状態だとあいつらに追いつかれてしま「ぐおおおおおおぉぉ!」追いつかれてた!しかも囲まれてる!?
「っとおおおお!」
起き上がった瞬間から前、横から飛びかかってくる奴らを紙一重で躱すという、普段なら絶対無理な動きでなんとか躱していく。
正直、何も打開策がないのだが、なんとか逃げ切るしかない。
「うぐっ」
しかし、そんな早々上手くいくはずもなく、後ろからのしかかられてしまった。
やばいやばいやばい!これ完全に取り込もうとしてるよねこいつ!俺嫌なんだけど!?こんなわけのわからない状況でいきなり死ぬとか納得いかないんだけど!?
「消し飛びなさい」
パニックに陥ってる中、どこかからそんな声が聞こえた。と同時に、スライムたちが吹き飛ばされていく。
「ぎゃああああああああああああああああああぁぁぁ!」
そしてなぜか俺もろとも、だけど。
え、俺飛んでる?なんか身体痛いけど、なんで飛んでるの!?
そんなことを思ってる間に地面に自由落下するあああああああああああああああ!
「ぐああああっ、折れた!絶対骨折れた!うわあああああ!」
「いや、あのちょっと」
「痛い、アー痛い、ほんと痛い、うわー痛い」
「落ち着きなさい」
「げふっ」
地面をのたうちまわっているとまたも衝撃を受けた。まあさっきみたいなのではなくて、頭にチョップを喰らった程度なのだが、すみません結構痛いです。
「一応あなたが落ちてきたところには衝撃緩衝の魔法をかけておいたから痛みもなければ折れてもないはずよ」
「えー、折れてないとかそんなはずないでしょ、だってこんなに、こんなに…あれ?」
言われて身体の下敷きになっていた腕を動かしてみる。動く。それどころか痛くない。
……………………………………。
「? どうしたの?」
恥ずかしっ!思い込みで痛がってた俺、恥ずかしっ!
余りの恥ずかしさに顔を上げられないんだけど!
「えと、本当に大丈夫? もしかして、うまくいってなかった?」
「いえ、大丈夫です。ちょっと大騒ぎしてた自分が恥ずかしくて」
悶えながらもなんとかそう返すと、「そう」と返ってきた。あああああああ、もうほんと恥ずかしい!
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「えっと、改めてですけどありがとうございました…」
しばらくして俺が落ち着いた頃、ようやく会話を始めることができた。
「いえ、たいしたことはしてないわ。」
そう言って、にこりと微笑むのは先程助けてくれた女性である。
…悶えている間にも。かけられる声から女性だとは推測していたのだが、本当に女性だったからびっくりした、というのは内緒だ。
それにしても、この女性。どこかで見おぼえがあるんだけど…。全体的に黒っぽい女性…うーん?
そんな俺の様子に気づかず女性は続ける。
「それに、迅速に魔物を退治できたのもあなたのお陰だしね」
「俺の?」
そう言われても、ぴんと来ず、疑問符が頭の上で精製される。
「ええ、あなた、魔物から追われてる時わざと町から遠ざかるように逃げていったでしょ、それのおかげよ」
「はぁ…、そうですか」
未だにぴんと来ない。
「あら、あなたもわかっててそうしたのだと思ってたんだけど、違ったのかしら?」
「俺は、その、あのまま駆け込んだら街が被害に遭うと思ったから、です」
正直に話すと、女性はクスクスと笑い始めた。
「あら、あそこの町が魔物に襲われると思って離れてくれてたわけなんだ。まあ結果オーライなんだけど」
「はぁ」
話が飲みこめず、ひたすら返事をするだけになってしまっている。
「確かに街だと被害が大きくなったかもしれないわ。でもそれは魔物が、というより私…私たちのせいでってことになるけど」
「???」
ますます意味が分からない。
「まあ、あなたが退治しようと私が退治しようと離れてたにこしたことはないってことね」
「いや、なんでさも俺が退治できたみたいなことになってるんですか」
「え?」
「え?」
お互いに疑問符が浮かび上がった瞬間だった。
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「魔法が使える!?マジで言ってるんですか!?」
「そうよ…っていうか、あなたの方こそ本当なの!? 気が付いたらこの世界にいたなんて」
「どうやらお互いに信じ合うしかないようですね……」
「そうみたいね……」
結論としては、お互いがお互いの話を信じ合うことになった。というより、俺の場合は信じざるを得ないことになった。
だって、目の前で火が急に現れたんだぞ?あとその火で今は女性が持っていたパンを軽く焼いて食べてるわけだし。美味しいし。
パンを食べているってことでさっきまでは感じていなかった、「今俺が置かれている状況」を再認識させられた。
(俺、マジで日本じゃないところ、それどころか現実と違うところに来てしまったんじゃ……)
日頃から「現実とかクソだから二次元にいきてー」って言ってたからって、急すぎるわ死に目に合うわで喜びよりも絶望に包まれたわ!
「で、これからどうするの?気が付いたらこの世界にいたってことは行くあてもないのでは?」
そして、女性がわざわざ言ってくれたことも問題の一つだ。こう、俺が望んでた異世界転生って、恵まれた環境を想像してたから宿無し身寄りなしという難易度ハードモードなんてどう対処していいかわからないんだよな。
「ええ、全然あてはないです……」
溜息をつきつつ、いくつか手段を考える。
方法としては
①女性についていってどうにか助けてもらう。
②そこらに穴を掘って住処にする。
といったところか。
①が無難だが、普通に考えたら身寄りもない正体不明の奴なんて誰も世話してくれないだろう。だとしたら②が現実的か。匠やゾンビがこの世界にいなければいいのだが。
…あ、俺ピッケルとか作り方知らないんだけど…何とかするしかないか。最悪手でなんとか。
「そうね、なら、私についてきてみる?」
「ふぇ?」
そこまで考えていたところで、まさか来ると思ってなかった提案をされ、間抜けな声が出る。なんだ、「ふぇっ?」って。
「確実ではないけど、可能性があるところに連れて行って頼んでみるわ。それでもいいかしら」
「え、ほんとにいいんですか? 申し訳ないような」
「いいのよ、じゃあ行きましょ」
「ええ、あっ」
そうだ、すっかり忘れていたことがあった。
「どうしたの?」
「その、すごく今更なんですが、お互いに名前…知らないですよね」
魔法でぶっとばされてそのまま話にシフトしたから、お互いに名前を知らないなんて状況だった。
「そういえば、そうね。私はエリス。エリス=マギア・シャルムがフルネームだけど、エリスでいいわ」
「あ、はい。俺は天城宗二で…………
………………………………………………………え?」
今、この人の名前、なんて言った?
「ソウジね、よろしく……ってどうしたの」
「エリス…エリスって、言いました?」
「? ええ、そうだけど」
「マ、マ……」
「マジかあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁ!?」
見覚えがあったのに出てこなかったのは、ここを現実として認めてなかったからなのだろう。
ただ、女性……エリスが目の前にいるってことで俺は確信した。
(俺、黒猫のウィズの世界……しかも超魔導列伝の世界に来てしまったってことぉ!?)