お前のような踏み台がいるか!(白目) 作:ジャック・ザ・リッパー
開戦の合図は、美遊が放った魔力弾だった。
魔力弾は、赤い少年の顔面に向かって放たれたが、オリ主君はその一撃をその手に持つ剣型デバイスで切り裂いた。だが美遊、初めからそんなことで倒せるとは考えていなかった。美遊の狙いは、相手の視界を奪いランサーのクラスカードをインストールすることだった。
美遊がランサーのクラスカードを手にした瞬間、無数の武器が美遊達に向かって放たれた。美遊は避けようと考えたが、後ろには怪我をした朱音とフェイトがいる。美遊はインストールを諦め、防御に入るしか出来なかった。
「フェイトさん!早く彼を連れて逃げて!」
今の美遊に出来ること、彼女が思い付いた方法。それは、自分が囮になって時間を稼ぎ、フェイト達を逃がすことである。
「でも、美遊は―」
「早く!このままじゃ全滅する!」
その言葉は、武器を大量に放つ赤い少年にも聞こえていた。そして、少年は美遊に向かってこう言ってきた。
「逃がすわけないだろ?王の財宝は、既に君たちを包囲しているんだから。」
「ッ!?しまった!」
美遊が後ろを振り替えると、後ろからも武器が出現し発射された。フェイトもプロテクションを使って守りを固めているが、さっきの戦闘で魔力を消費しているのか、どんどんプロテクションに罅が入っていく。割れるのは時間の問題だった。
そして、プロテクションは破られ、多くの武器がフェイト達に向かって襲いかかった。もうだめだとフェイトは目を瞑ったが、痛みはなかった。
フェイト達の目の前には、美遊のプロテクションが張られていた。フェイトが振り替えると、そこには無数の武器が突き刺さり、苦痛に歪んだ顔をした美遊がフェイト達を守るように腕を広げて立っていた。美遊はそのまま、力なく倒れた。
赤い少年は、彼女達に向かって話しかける。
「安心しなよ、君達は殺さないように非殺傷にして使ってるから。でも、死ぬほど痛いと思うよ。」
赤い少年は、美遊に近づいて質問した。
「君は、もしかして同類か?それなら何故、あんな女の子を洗脳して自分の物にする屑と一緒にいるんだ?」
「......っあなたには、関係...無い!彼は、洗脳なんてしていない!」
「......脅されているのか?そうか、君もあいつの被害者なのか。なら、心配いらない。俺が皆を救って見せる。だから、俺の仲間にならないか?」
「嫌だッ!」
『マスター、多分洗脳によるものでしょう。強い痛みを与えれば、意識が覚醒する可能性があります。』
「そうか。......不本意だけど、君を救うためだ。我慢してくれ。」
赤い少年は、背後に武器を取り出して美遊に向かって放とうとしたその瞬間、彼の声が聞こえた。
「おい、モブ野郎!女の子を串刺しにするなんて、随分良い趣味してるみたいだな!」
「おい、モブ野郎!女の子を串刺しにするなんて、随分良い趣味してるみたいだな!」
どうもすみません、踏み台転生者の伊織朱音です。
痛みで動けなかったけど、何とか動けるようになった。
王の財宝本当にヤバイ。全方位からの攻撃とか普通に死ねるし、非殺傷に設定可能とか、汎用性高すぎる。でも、それ以上にオリ主君がヤバイ!まるで悪魔だ!
だが、今はやることはひとつ!オリ主君を挑発して敵意をこっちに引き寄せる!
「踏み台、俺の技を生身で受けて良く意識があったな。」
「生憎、俺様はお前みたいなモブ野郎の雑魚の攻撃でやられる程、弱くないんだよ!何たって俺はオリ主様なんだからなぁ!」
「......良いだろう。そこまで言うなら、非殺傷を解除して王の財宝を使ってやる!」
おいバカやめろ!挑発には乗ってくれたけど、本当に殺される可能性が上がったんだけど!?
仕方無く、俺はオリ主君に向かって走り出した。飛んでくる無数の武器を回避スキルで躱し、防御スキルで横から武器を殴って軌道を反らす。
「デバイスを使わない!?嘗めているのか!!」
オリ主君は、俺の行動に対して怒りを爆発させた。いや、決して馬鹿になんてしてません!デバイス持ってないんです!俺は少しずつオリ主君に近づき、間合いに入ることができた。
「これで!どうだ!!」
俺は、オリ主君に向かって殴りかかった。しかし、オリ主君は笑っていた。俺は身の危険を感じ、急いで攻撃を止めて逃げようとしたが、右腕が鎖で縛られていた。
「天の鎖!踏み台、切り札は最後まで取っておくものだ。」
オリ主君はそう言うと、背後にある剣の一本が放たれた。気がついたら、右腕を鎖で繋がれていた筈の俺は地面に転がっていた。さっきまで俺の立っていた場所には、鎖に繋がれて血を流しながらぶら下がる右腕が見えた。俺は、右腕を抑え声にならない悲鳴をあげた。
「ぐっぎ□□□□□□□□□□□□ッ!!」
「無様だな、踏み台。最後のチャンスだ、皆にかけた洗脳を解け。そうすれば、命だけは助けてやる。」
あまりの痛みに、俺の意識は殆ど無かった。
オリ主君の言葉など、今の俺の耳には入ってこなかった。
「何もしないか。そうか、なら自分のした事を後悔しながら死ね。」
俺を取り囲む無数の武器が発射されようとしたその時、フェイトの声が聞こえた。
「やめろぉぉぉ!ランサー!インストオォォォル!!」
次の瞬間、フェイトが光に包まれ、フェイトのいた場所には、光り輝く槍を持ったフェイトに似た大人の女性が立っていた。
女性が持つ槍を振るうと、嵐が巻き起こりオリ主君を吹き飛ばした。吹き飛ばされたオリ主君は、建物の壁に後頭部を強く打ち付け気絶した。オリ主君が倒された事で、美遊に突き刺さった武器は消滅した。
フェイトの変身はすぐに解け、美遊と供に俺の元に駆け寄ってきた。
「フェイト!朱音から血が沢山出てる!このままじゃ朱音が死んじゃう!」
「こうなったら、彼処しかない!朱音、絶対に助けるから!」
その言葉を最後に、俺の意識は完全に途切れた。