お前のような踏み台がいるか!(白目) 作:ジャック・ザ・リッパー
「知らない天井だ。」
寝起きで悪いが、踏み台転生者の伊織朱音です。
目が覚めると、知らない天井だって言いたくなるよね。実際、見たことの無い場所だから仕方無いんだろうけど。えっと、確か俺はオリ主君と戦って......ああ、そう言うことか。
俺は、感覚の無い無くなった右腕を上げる。右腕は、二の腕からスッパリと切断されたようである。切断面は丸くなり、包帯がぐるぐると巻かれていた。
「おや?あんた、気がついたのかい?」
突然、声をかけられた。声をかけた主に視線を送ると、痩せてゲッソリとした犬耳の女の人が栄養材片手に椅子に座っていた。
「あの、ここは何処であなたは誰ですか?」
「私は、フェイトの使い魔のアルフって言うんだ。フェイトに頼まれて、あんたを診ていたのさ。」
「そうですか、ありがとうございます。でも、使い魔ならフェイトと一緒にいるんじゃ?」
「ああ、実はフェイトに頼まれてプレシアのババアの面倒を見ていたんだよ。ババアはヒステリックを起こすし、私の食べるものは栄養材だけ。お陰で私の胃は荒れて穴が開きそうだよ。」
「......御愁傷様です。」
使い魔なのに、アルフは介護疲れした人みたいになっていた。俺は、ベットから立ち上がろうとするが、バランスを崩して盛大に転けた。アルフは、ゆっくりと俺を持ち上げてベットに座らせた。
「あんた、今時分がどんな状態なのか分かってるのかい?右腕は無くなって、体のバランスが左右別々になってるんだよ。ほら、杖をやるからこれを支えにしな。」
アルフはそう言って、俺に杖を渡した。
俺はそのまま、アルフに案内を頼みフェイト達の元に向かった。本当にここは何処なんだ?多分、時の箱庭だと思うが...。
アルフに案内された部屋には、磔にされたフェイトと化粧の濃いおばさんが鞭を持って立っていた。フェイトは、何度も鞭で叩かれたのか体には痣が沢山できており、血も流れている。フェイトは、磔を解かれ地面に転がった。
「あら?貴方は、人形の連れてきた負傷者じゃない。何のよう?」
「あんた、今自分が何をしていたのか分かっているのか?」
「ええ、使えない人形に教育してるのよ。ジュエルシードを集めてこいと言ったのに、あれだけ時間があったのに、たった2個だけしか集められない出来の悪い人形にね!」
「この、糞ババア!」
俺は、杖を捨ててプレシアに向かって走り出した。プレシアは、的確に俺の足に向かって鞭を振るう。俺は、回避スキルで避けたが、右腕が無く体のバランスがとれずに倒れた。
「貴方、私がこの人形に頼まれて仕方無く治療したけど、私に害をなすなら殺されても仕方ないわよね。」
「ッ!!母さん、やめて!」
「人形が、口答えするんじゃない!」
俺に攻撃しようとするプレシアを止めにフェイトが立ち塞がったが、フェイトはプレシアの魔法を受けて吹き飛ばされた。フェイトはそのまま、意識を断たれた。
「何で......何でフェイトの事を人形って言うんだ!フェイトは、あんたの子だろ?」
「あの人形は、私の本当の娘のDNAを使って作ったクローンよ。名前もそのクローンを作る研究の名前をそのまま付けただけの只の使えない人形でしかないわ。」
「それでもフェイトは、フェイトはあんたの娘だろ!?何でそんな!そんな酷いことが出来るんだ!」
「私の娘は、アリシアだけだ!天才と言う理由だけで無理な実験をやらされた!そして、実験の失敗のせいで私の娘は死んだ!殺されたんだ!それなのに、全ての罪を私に擦り付けられた!私は、アリシアとまた一緒にいたくてフェイトを産み出した!だけどあの子は、アリシアのように笑ってくれない!あの子は、フェイトと利き腕が違う!あの子は、もっと可愛かった!こんな事なら、フェイトなんて人形、産み出さなければ良かった!」
「それが人間の言うことか!貴様ッ!!」
俺は、回避スキルで避ける事をやめ、ゆっくりとプレシアに向かって歩いていく。プレシアは、鞭で俺を攻撃するが、俺は歩く事をやめない。
「フェイトがアリシアって言う子に似せた人形だって?あいつは、人形なんかじゃない!フェイトは、何時もお腹が空いたって言って沢山食べるし、優しくされたら知らない俺に着いてくるようなアホの子だ。フェイトは、アリシアじゃない!フェイトは、一人の人間だ!」
「それを認めろですって?認められるわけ無いじゃない!」
プレシアの攻撃は、鞭から電撃に変わる。電撃は、直接俺に命中した。体から肉の焦げた臭いがする。それでも、歩く事をやめない。
「私がフェイトに何をしているのか、貴方なら分かるでしょ!録に食べ物を与えず、何処かに出ていけば探す事もない、私のストレスをぶつけている!私は、フェイトが大嫌いなのよ!」
俺は、その言葉を聞いてニヤリと笑った。この人は、俺に似ているのだ。そして言った。
「安心したよっ!プレシアっ!あんた...まだ母親だっ!天才でも狂人でも......心の歪んだ親でもない!只の優しい母親だ!」
「知ったような口をきくな!」
やっと辿り着いた、プレシアの目の前に!俺は、左腕を強く握りプレシアに向かって振りかぶった。しかし、オリ主君の時のように、俺の左腕はバインドで固定化された。
「ガアァァァァ!」
俺は、体に残された力を全て使い、バインドを引き千切ってプレシアの顔面を殴り飛ばした。プレシアは、杖をついて立ち上がった。
「私は......もう長くない。だから、私はあの子に嫌われないといけないのよ。なのに...何故、私の邪魔をするのよ!何故、私を嫌ってくれないのよ!」
「自分の親を嫌いになれる子供なんていないんだよ。あんた、自分の顔を見たことあるのかよ。あんたがフェイトを鞭で叩いている時、あんたの顔は叩かれてるフェイトより苦しそうにしてるんだよ。もう、長くないだって?そんなの子供は知るかよ!本当に自分の娘を愛してるなら、残りの命が燃え尽きるまで、最後まで愛してやれよ。」
俺は言い切った瞬間意識が途切れ、糸が切れた人形のようにその場に倒れた。