IS 天災の愚弟   作:奇述師

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信頼と言う名の偽り

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シャルル・デュノアの思惑とは見当違いで、授業自体は至極当然のようにいつも通りに進んだ。そもそもの話最大限警戒をして正体を隠している彼女に対してあたかも間違い探しのように、簡単な謎解きゲームをじっくりと

楽しんでいるのに過ぎない煌耀。

 

シャルル・デュノアからすれば最も知りたい相手ではあるのだが、一番関わりたくない相手となっている、つかみどころがないのだから。正体を探っているのは分かってはいるがそれ以上は全く持って検討もつかない、腹の底で何を考えているのかわからないのは当たり前だが、その特殊な境遇を経て成長したシャルル・デュノアの第六感が大音量で警戒音を鳴らしていた。

 

煙に巻かれているかのように、疑心暗鬼の思考がぐるぐると頭からまとわりついて離れない。

 

一度気になり始めると、その思考はどこまでも続いていく、ほんの些細な動きですらも何気無い仕草も真実とは歪んで見えてしまう。

 

そして昼食、休息のひと時も安堵する暇なく、再び対峙することとなる。

 

IS学園での生活は極秘任務の一環で本来休む暇などないのだが、ただでさえストレスがかかってしまう状況でさらに異質のストレスを感じ続けているのだから休みたくなる気持ちも出てくる。

 

煌耀は既にそのことを知っていたので警戒心を薄れさせるいいイベントだと思いつつ参加していた、警戒すればするほど人は何かを隠そうとするあまりぼろが出やすいものだ、それでは難易度は下がってしまうし、面白くもなんともない。

 

「あ、シャルル。遅かったじゃないか、一夏と一緒に迷子にでもなったのか?」

 

一夏の提案により箒、鈴音は自分の分と共に一夏の分の弁当を作ってきたらしく、其々が自分の自信作を持ち込み胃袋を狙った狙撃戦が今にも始まろうとしている。

しかし、セシリアだけは納得のいかない表情で煌耀へ不満を言う。

 

「煌耀さん?いったいどうして私だけ仲間はずれにしようと?」

 

「いや…きちんと言っただろう?『今日は箒ちゃんと鈴音がご馳走してくれるらしいから屋上に集合』って早朝に…それにしてもあいつ遅いな」

 

その意図は全くと言っていいほど煌耀には届いていない、もちろんそんなことはセシリアも承知の上で理解はしていた。短い付き合いではあるけれどおおよそのことは分かっていた。

 

人為的に、運命的に、宿命のように新たなスタートとなった煌耀ではあるが、表面上取り繕っていた時と今遊びのためにわざと取り繕っている煌耀とは非常によく似ているからだ。

 

「わたくしも、今日は煌耀さんのためにお弁当を用意してみまして……お口に合うかわかりませんが、よろしければおひとつどうぞ」

 

そう言って差し出されたのは、見た目は非常においしそうなイギリス発祥の食べ物〈サンドイッチ〉であった、どうでしょうとばかりのどや顔でみんなに披露をする。

 

「スゲェ…セシリアが作ったのか?」

 

 

一夏が問う、イギリスの飯は不味い発言のことなどすっかり忘れているのだろう、セシリアが汚物を見るような目線も気づかずにただ感心している。

 

「私の祖国の誇る料理ですわ、さぁ召し上がってください」

 

本当に、見た目は美味しそうなサンドイッチだった。

 

「それじゃあ…鈴はいないけどお先にいただきます!」

 

「あ!…最初は煌耀さんに」

 

セシリアの静止もすでに遅く、一夏はすでにサンドイッチを頬張ろうとしていた。

 

あーん、と美味しそうに口に入れモグモグと咀嚼。

 

 

次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

ゴッッ!!!!

 

 

頭蓋骨とコンクリートの凄まじい激突音が、場の空気を凍てつかせた。

 

頭部の自由落下と筋肉の収縮による加速を経た落下速度は冗談にならないくらいの威力を誇る。

 

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

「一夏~大丈夫だよな?」

 

「一夏、大丈夫?」

 

「一夏!しっかりしろ!」

 

「お、織斑一夏さん!?」

 

セシリアからも悪意は欠片も感じられない。首を傾げて疑問符を浮かべている、ついでに少しの心配も。

 

「────ッ」

 

漢、一夏死の淵からの生還。

 

ゆっくりと立ち上がり、親指を立てて何かを必死にアピール。

 

「美味しいって…言ってるんじゃないかな?」

 

シャルル・デュノアがうまくフォローをするが、その笑顔は引きつっていた。

 

納得したのはセシリアだけで、箒、煌耀、シャルル・デュノアは一名を除き恐怖によってカタカタと手を震わせている。

 

一夏は親指を立てているものの瞳孔は開きっぱなしで目はうつろだ、筋肉は弛緩していてだらしなく舌が出ている、足は生まれたての小鹿かK,O寸前のボクサーのように小刻みに震えている。

 

『兄さん、私はまだ心の準備ができていないのだが…多分一夏は不味いものに対しての耐性が異常に低いんだ、あいつ自身意外と食にうるさい』

 

『そうなんだ…』

 

『箒ちゃん、食べちゃダメだ。逃げなさい、シャルルが何とかするから』

 

『ちょっと!僕も心の準備が出来ていないよ!ってなんで僕だけが!?』

 

『こんなもの人が食べたら取り返しがつかないだろう?箒ちゃんに食べさせるわけにはいかないし俺も食べたくない』

 

『そんなの僕だって同じだよ…ちょっとあれは…』

 

『仕方ない、…箒ちゃんは置いといて俺たち男でどうにかするか』

 

『!…そうだね、僕たち男でどうにかしないとね!』

『すまない…』

 

─よし、だいぶん警戒心は薄れたか…上手くいけば信頼なんてものも生まれているのかもしれないな

 

「あの~3人ともなにを話してらっしゃるのですか?」

 

「いやいや、なんてことないさ。次の犠牲者をきめ「いや~失神するくらい美味しいサンドイッチを誰が先に食べるか決めていたところなんだよ!」」

 

ははは、と乾いた笑い声を何とか絞り出してゆっくりとした動きでシャルル・デュノアは腰を下ろした、続いて煌耀も気怠そうに腰を落とす。

 

むしろここまでの殺傷能力を誇るのにも関わらず、形がきれいなのに3人は感心していた。先ほどは輝かんばかりのオーラを放っていたサンドイッチは今ドクロのようなオーラを感じさせ、禍々しいものが溢れているように思われた。

 

「ど、どうでしょうか? 」

 

おずおずと訊いてくるセシリア。

 

その問いに答えるのには、あまりにもハードルが高い。

 

「……」

 

「…………」

 

「え、えーと……」

 

「…………」

 

無言で、ただ無言で一度だけセシリアが声を発するも3人は頑なに口を開かない、箒は必死にセシリアと目を合わせないようにし、シャルル・デュノアは必死に言葉を探し、煌耀に至っては何をどうすれば口にしただけでこうも人間を攻撃できるのだろうと完全に別のことを考えていた。

 

「は~疲れたぁ~、まだ時差ボケしているのよね。遅くなってごめんごめん。あれ何で一夏は倒れているの?」

 

「あはは…さっきの授業で相当疲れているみたいだね~」

 

「そ、そうだな、きっと疲れているんだろう」

 

「へ~、だらしないわね。あ、美味しそう!も~らい」

 

「あ、それは…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビタンッ!!

 

シャルル・デュノアの静止も空しく、サンドイッチを頬ぼった結果、一夏と同様悲惨な結果となる。

 

「…デュノア、どうやらあれは本物らしい」

 

「そうみたいだね、ちょっと決心がグラついてしまったよ」

 

しかし、目の前で自分の料理を食し倒れていったのを連続で見るとさすがに気づく、何かがおかしいことに。

 

—ドクヲ、モッタワネ?

 

―違う、それがセシリアの実力だ

 

「あははは、さっき楽しみすぎて階段を急いで登ったからなのかな?足がつっちゃった」

 

流石は代表候補生というべきか、体の頑丈さは人一倍長けている。一夏はいまだにうわごとを呟いているが鈴はすぐに持ち直している。

 

『おい、どんな味だ?』

 

『外はフワフワ、中はもう表現ができないくらいの触感、甘すぎず辛すぎず苦すぎず酸っぱすぎない微妙なデスハーモニーが形成されているわ』

 

「そんなに簡単に代表候補生である鈴さんがつるものですか?」

 

—よ、余計なことを…

 

「おい、セシリアそこにGきぶりがいるぞ」

 

「ヒッ…!キャァァァアアアア!!!」

—今だ、デュノア!

 

—了解!ゴメンね

 

―ちょ、え!?ホントやばいって!!

 

「ご飯はよくかみましょう!」

 

 

 

「「い、一夏……!」」

 

「よし、ミッションコンプリート」

 

「デュノア、お前結構鬼畜だな」

 

煌燿のシャルル・デュノアにたいする評価は上がった。

 

そして見るも無残に口に劇物を押し込まれ、死の淵を彷徨っている一夏のすがたがそこにはあった。

 

 

 

そして、もうしばらく後の話ではあるが心優しい女の子たちが傷つけないようにやさしく状況説明と現状確認をさせてもらえたのは余談である。

 

 

2

 

「ねぇ煌燿…あの言葉ってどういう意味?」

 

「それは、どういうことだ?」

 

「『作り笑いが綺麗に張り付いているな』って意味だよ」

 

昼食後の一悶着が非常に長引いてしまい、夜もずいぶん遅くなってしまっていた。

 

ベッドの入ってたわいもない雑談をポツリポツリとしていると不意にシャルル・デュノアが切り出した。それは純粋な質問だ、正体を知られているのかそれともその言葉が本当なのかということの2択。

 

出来ることなら、それは嘘であってほしいと言うのがシャルル・デュノアの本音だ。短い間でいい人を演じていたためその思いは強い。

 

それでいてその演技が板に付いているから性質(たち)が悪い。

 

どんなにシャルル・デュノアが思っていても、煌燿は変わることはない、一貫して自分のために行動するだけで、シャルル・デュノアに対する好意も気遣いもすべては偽りなのだ。

 

「ああ、その事か…」

 

だから息をするように平然と嘘をつく、自分が楽しむためだけに。

 

「悪いね言葉が色々抜けていた、あの時は時間がなかったしね。作り笑いが綺麗に張り付いている、それじゃきっと疲れるだろうし、やっぱり皆女だからそういうことには敏感なんだ。もっと自然体で過ごした方がいいんじゃないかって俺は思うよ」

 

 

「そっかぁ、あはは煌燿は優しいね。何だか眠くなってきちゃった、お休み」

 

「お休み」

 

 

 

─悪いなシャルル・デュノア、俺はお前を助けることはまずない

 

シャルル・デュノアは眠りについた、開けない夜はないと信じて。




ヤバイ、時間が飽きすぎて煌燿のキャラがわからない…

この話は某必殺料理人が登場するラノベの話をぱく…引用させてもらいました。

またご指摘、アドバイス、要望等ありましたらお願いいたします
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