IS 天災の愚弟   作:奇述師

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もうそろそろ気合いいれて頑張ります。


始動

  1

 

 気合とともに容赦のかけらもなく喉元へ飛んできた突きを打鉄から拝借したIS使用の刀で側面をなぞり軌道をずらす、耳の横、体の右方向を30㎝ほど通り過ぎ、火花を散らして、不協和音を散らかして白式の雪片が通り過ぎて行ったのを確認すると右手を持ち替えた。

 

 掌が自分側だったのを手の甲が自分側へ来るように、左手で柄を上げる。

 

 いったんずらされた直線軌道は簡単に扱えるため、よって左手一本で事足りている、その勢いのままに手首を外側へ入れ込み右腕で一夏の突きごと巻き込んで体勢を崩す、容赦なく狙ってきたのが仇となり簡単に崩れてしまう。

 

 綺麗に当たったら勝ちという非常に実践には不向きな競技を何年間か続けていたせいか、その癖は抜けておらずに一本仕掛けの一撃必殺狙いではそれ相応のレベルへ達成しなければ難しい。

 

 それに突き技とは本来隙が大きくなってしまうためそれだけでは不十分なため2段階に仕掛けたり、ここぞというときの攻め時に使ったりすることが多いが、目の前の馬鹿は考えもなしに突っ込んでくる、体勢が崩れた今いいようにやられている姿はなんとも情けない、たくさんのギャラリーがいるのに対して情けなく無様な姿だ。

 

 そのギャラリーの質はさて置いて。

 

 戦いとは血沸くもの、見る側も戦う側もそうでなければつまらない、まぁ相手が相手だから期待はできないしするつもりも大してない。

 

 手首を外側に、上に巻き上げるようにすることによって右腕は直線に柄は一夏の方へ、刃は後ろへ、一夏の突きはご丁寧なことに片腕で目一杯伸ばされていたため崩し、持ち替え伸ばした腕を引く、一夏の突きごと巻き込んだ引きは一夏自身もこちら側へ引き寄せられるため引いた後素早く柄を突き出す。

 

 2,30㎝ほど後退し、一夏側のシールドエネルギーが全損したという警告音が鳴り響いたところでお遊び(模擬戦)は終了した。

 

 模擬戦の終盤、焦ってはなった突きは結果を早める悪手となったが、焦るまでの試合運びは姉である千冬を僅かながらに、ほんの少しではあるが彷彿とさせるもので、僅かに、ほんの僅か微小なことではあるが揚がりそうになってしまっていた。

 

 まぁこのあともうすぐ面白いことが起きるように話をつけたからもしれないが…

 

 ここ最近、自分でも自分が分からない…わかっているがゆえに理解をして受け入れがたい自分がいる。

 

 こんな戯れが嫌いだったのに、和気藹々とそういった雰囲気にいつの間にか自分の居場所を感じてしまっている、不思議なくらい受け入れがたいがどういう訳かその一方でこんなことを楽しむ自分がいる。

 

 俺は俺であるはずなのに俺ではない。

 

  今楽しむべきことは分かっている、同情なんか欠片もなくいっそ清々しいほどに俺だ。

 

 しかし、そんな不協和音のようなむず痒くて排除したい雑音の中にいるというのに…

 

 その中でのやり取りを楽しんでしまっている自分がいる、ほんの僅かな気にしなければ気付かない程度ではあるが。

 

 そしてそんな俺を消そうとせずに共にいる俺も…今は篠ノ之 煌耀であって東雲 煌耀ではないのに。

 

 チラリともあんな弱いやつの影は見えないが、どこかに因子として、一部として、拒絶もせずに残っているのか?それとも確かにまだそこにいるのか。

 

 答えも、応えもない自問自答を頭の片隅で考えながらひと先ず本筋に思考を戻す、そこには見慣れた通りの一夏の顔とセシリア・オルコット、凰 鈴音、そして仮面をかぶり続けているシャルル・デュノアが一斉から一斉に視線が集まる。

 

 改善、というよりかは進歩と言うべきところだろうがシャルル…「デュノア」から警戒の色が僅かではあるが薄くなっているのは計画通りといったところだ。

 

 それはそうと、ようやく思い出した。

 

 あの時、あの時からずっと抜け落ちていて探していたもの、姉貴に言われて何となく来たはずの、頭の何所かに残っていた僅かな傷が再び開くように思い出せた。

 

 在るはずだ、現れるはずだ、確実に。

 

 ここにいれば見つかる筈だ。

 

「自分のケツは自分で拭かないと話にならない…あれだけは回収しないと」なんて思っていた時期もあったが回収する必要はないだろう、あれは存在していいものではないのだから。

 

  本気でどうかしてたな。

 

 

「あの、どうかしたの?」

 

 本筋に戻ろうとはしたものの戻りきれなかった俺の思考を呼び戻したのは、シャルル・デュノアだった。

 

 本当に心配そうな表情で俺は見つめられていた、それと同時に畏怖も交じって。

 

「いや、なんでもない。少し昔のことを思い出していただけさ」

 

「昔の事、か」

 

「なに、他愛もないことで失敗談みたいなもので、その尻拭いをまだ終えてない」

 

 何の企みも、策謀もない雑談すらも、全ては計算された上でのやり取り。

 

  俺は一貫して自分のために行動するだけで、シャルル・デュノアに対する好意も気遣いもすべては偽り。

 

  一夏に対しても、セシリア・オルコットにしても凰 鈴音にしてもだ。

 

  心と脳の不一致と言ったところだろうか、心が産み出す感情という不確かなものの一部ではあるがこの感情というものに思考が追い付いて、理解をしようとしていない、拒絶とまではいかないが受け入れることは容易ではない。

 

  自分が自分で解らなくなっている、ただそれに興じているのが今の現状だ、全くもって気味が悪い、気味が悪くて、一周回っていい気味だ。

 

「ねぇ、煌燿…」

 

  デュノアが問いかけてくると同時に、ようやく楽しみにしていたときが訪れた。

 

  その衝突は云わば必然であって不可避なものだ、戦う理由がない者と戦う理由がない者とが交わるのは。

 

  ぶつかり合う何とも言い難い両者の意見の対立が産み出すのは、結局争いで、憎悪と理不尽な感情の衝突は初めて見るが果たしてどんな結果になるか。

 

  憂さ晴らし…のつもりは毛頭もなかったが、丁度いいリフレッシュになりそうだ。

 

  さて、楽しませてくれよ2人とも、俺が退屈しないように。

 

  2

 

  煌燿との模擬戦の後、セシリアと鈴音が一夏に対して手取り足取り指導又はダメ出しをしているところ、煌燿の機体とは違い漆黒の機体を纏った小柄な少女、ドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒが無表情に一夏を見下ろしていた。

 

  その烈火のごとき褪せることの無い怒りは、一夏だけに焦点を合わせて確りと捉えていた、他のメンバー(煌燿以外)は既に臨戦体勢に入ってはいるがそんな事など一切気にも止めず、確かに見据えて舞い降りるように落ちて来る。

 

  洗礼された姿は思わずその場にいるパイロット達を魅せていた、その事実は自分達よりも遥かに遠い所にいると示すものであり、威風堂々とした様は充分に脅威を感じさせていた。

 

  赤い目は怒りで灯り更に赤く、一夏と千冬に対する思いを燃え上がっており約10メートルの近距離まで接近し必要最低限しか開かないであろう重い口が開いた。

 

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。なら好都合だ、私と戦え」

 

「断る、理由がねぇよ」

 

「貴様はな、しかし私にはある」

 

 

  ラウラ・ボーデヴィッヒが一夏に対し好戦的なのには理由があり、一夏もまたその理由にはなんとなくだが心当たりがあった、彼女と姉の関係を鑑みれば自ずと答えは出てくる。

 

 第二回IS世界大会『モンド・グロッソ』。その決勝戦当日、一夏は正体不明のテロリストたちに誘拐、監禁され決勝戦に出場する予定だった千冬はその報せを聞くや否や、大会を放り出して一夏を救出。

 

  当然、千冬の不戦敗という形で決勝戦は幕を閉じ、その後、千冬は一夏の居場所を掴んだ『対価』を返すという名目でドイツ軍の教官を勤めた。そして、その時の部下の一人が―――ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

「貴様がいなければ教官が大会二連覇を成し遂げただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を、貴様の存在を認めない」

 

「だからと言ってハイそうですかってなるわけないだろ」

 

「ふん。ならば―――戦わざるを得ないようにしてやる」

 

 そう言うと漆黒のISを戦闘状態へシフトさせたラウラは右肩のリボルバーカノンを一夏に向け一夏に向かって躊躇なく打ち出す。

 

「!」

 

  特有の衝突音が響き煙幕があがるが、その弾頭が白式の装甲を抉ることはなかった。

 

「……こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツの人は随分と沸点が低いんだね。それともドイツ軍では我慢のなんたるかについて教わらないのかな?」

 

「いい反応だな、流石は代表候補生といったところか…、貴様に用はない。どけ」

 

  間に割り込んだシャルルがシールドで砲弾を弾き飛ばし、瞬時に展開したアサルトカノン『ガルム』を油断無くラウラに突き付けていた。しかし、銃口を眼前にしても動じる気配は一切なく、寧ろ追撃を加える準備をしていたかのようにプラズマ手刀を一夏の方へ向けていた。

 

「ずいぶん用意周到だね」

 

「戦場では当たり前だ」

 

 涼しい顔をして睨み合う、それも長くは続かなかった。騒ぎを聞き付けてやってきた千冬の怒声がスピーカーから響き、それを聞いたラウラの方が先に戦闘態勢を解いたという形で一先ずこの場は落ち着いてしまったのだ。

 

「……ふん。今日は引こう」

 

─予想の範囲って訳か、流石はよく解っているな…はぁ面白くなると思ったんだが

 

「生憎IS学園(ここ)は貴様の遊び場ではないのでな、思い通りにさせると思うなよ。煌燿」

 

  現時点で千冬の煌燿に対しての警戒レベルは核弾頭をもつ小国家並みである、制御できている分、幾ばくかはまだ安心できるが天災と同様に読めず何を考えているのかも検討がつかない危険人物であることには代わりがない。

 

─遊び損ねた分は取り返さねぇとな。そうだ、こんな状況に陥ったときお前は一体どうするんだ?

 

「おい、一夏。頼みがあるんだが頼まれてくれるよな?」

 

 

 

 

─さて、煌燿次はどう出る…頼むからやむを得ない事態だけは避けてくれよ、世界中がどうにかなりかねん。

 

  千冬は久々にキリキリと痛む胃を抑え頭を抱えていた、他にもたくさんある問題と責任が余計に重く、のし掛かっているのだから。

 

  ふとアリーナへ目を落とすと煌燿の表情が映る、最初の爽やかで違和感だらけの笑顔より今の一般常識からした悪いことを悪いと思わない無邪気な笑顔に不思議なくらいに釘つけられた、本能的に意味もわからないまま何故か。




お久しぶりです。久々すぎて書くのが難しく悪戦苦闘をしております…

おかしな点、前回までの話との矛盾点、ご指摘やご意見がありましたら遠慮せずに言ってください。

またいい感想があるとテンションが上がります(笑)
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