1
さて自問自答だ
一夏とシャルロット・デュノア、セシリア・オルコット、凰 鈴音のために無償で働いてやるつもりはあるか。
友人のため馬鹿げた国家機密を共有し、リスクを承知で楯無のアドバイスを受け俺に直談判しにきたこいつらのために、知人が無様に国へ戻されそれ相応の処罰を受けるのを見ていられないと言う気持ちは俺にはあるか?
NOだ絶対にない
下手をすれば俺はその状況を楽しんでしまうだろう、実際に今楽しんでいる。
ならばローラ・ログリエ(仮)という病にかかりそれでも娘を守って亡くなってしまった、今は亡き母親のためなら俺は無償で何かが出来るだろうか。
NOだ、誰だそいつは知らん。
ならばかつて(今現在も進行形で)遊び道具にしてしまった純情な娘であるシャルロットに償うという気持ちをもとにすればどうだ?
楽しむための道具ではなく、たった数日の知人という間柄してシャルロット個人・デュノアに対してあるいはに対して何かしようという気持ちなら俺にはあるか
NOだ、そんな気持ちなんてない、その件について俺はなんとも思っていない
たとえ俺の遊びの結果シャルロット・デュノアという純情な娘が身売りするはめになったところで俺の生き方は1mmも動かないだろう。
だったら凰 鈴音はどうだ?そうあいつをいじめたことがあったな、それに中国から金をせしめるためにあいつの情報をうったこともあったな、そのささやかなお返しとして、つまりお釣りとしてこのどうでも良いボランティアに参加してやるつもりが俺にはあるか。
いやNOだ、例えお釣りがあったとしても割りに合わない 、ここまでの相談料としてそんなものは消えている。
あとはそうそう、セシリア・オルコットという少しは気に入っている娘であったらどうだ、友人のため自らを犠牲にし国に直談判したその娘の健気さに打たれてみるのはどうだろう。
そう言えばオルコット家はとんでもない金持ちだったはずだ、ではオルコット家からせしめるというのは──NOだ
一瞬も考える事はなかった、と言うか言葉を一切るまでもなかった、金に今さら興味はない。
うん、だめだ、いくら考えてもこのボランティアを引き受ける理由が見当たらない、なんの得もないどころか引き受けること自体が俺の損にしかならない
ああ、そうだ、俺自身はどうだ、俺自身がシャルル・デュノアに恩を売り付けて良いボランティアをした、と充足を得るためならこの少女を助けることは出来るだろうか…
NOだ、いつからそんな良い奴になった、あり得ないししたくない。
そう言えば、あいつの家は世界第3位のシェアを誇る大企業だったな、それも量産機ISのシェアが世界第3位の大企業。
しかし、設立当初から技術・情報力不足に悩まされ、未だ生産できるISが第2世代止まりであることから経営危機に陥った死に体の状況の。
経営危機の回避のための苦肉の策として、シャルロット…シャルル・デュノアを男装させ広告塔および第3世代以降のISのデータ収集のためにIS学園へ送り込む…そんなシナリオを苦肉の策にするにしても愚かすぎる。
もし、この事実の裏に隠された真実が、俺を満足させてくれるものであるのならあの不幸の真っ只中にいると思い込んでいる少女にそうなるはずの状況をわざわざ俺が与えてやるというのはどうだろう?
YESだ。
2
上空37,000フィート、メートル法に準じるのならば上空約11キロ、氷点下約50度の空気の希薄な上空で最新鋭旅客機のパイロットは黒い何かが常軌を逸した速さで通りすぎていくのを確かに見た。
音速の壁を容易く破り衝撃波に魅せられながら黒い一筋の閃光が通過していくのを呆気にとられながらも既視感を覚えていた。
軍人上がりの彼はその光景を一度だけ見たことがあるからだ、それと同時に恐怖と安心感が一瞬で駆け巡る、ここ最近は大人しかった筈なのに何故急に、どこに行くんだ。
副操縦士に梶を完全に任せ、震える体を誤魔化して再び思う、私はなにも見なかった、何も知らない。
操縦席で、あれなんですか?UFO!?とテンションを上げる部下を微笑ましく思いそんな無邪気な青年に癒されながら完全にリラックスをした。
─あれはお前が知らなくて良い
これからどこかで起こるであろう悲劇に冥福を祈りながらUFOな訳ないだろと軽口を叩いて日常へと必死に戻る。
そう言えばあの日もこんな青空だったなぁと雲の上を飛びながら思っていた。
日本からドイツへ直線距離にして約9000キロメートル、そして煌燿の乗っている機体《アンチェイン》はリミッターを解除した状態でマッハ9.8の速度で飛行することが可能だ。
時速約1200キロメートル、シールドエネルギーと煌燿の特異な体、特殊な呼吸法によりようやく耐えきれる移動方法である。
IS学園を出発して僅か45分足らずで9000キロを駆けた煌燿は被害を最小限に、しかし派手な爆音と煙幕を巻き上げフランスの地、正確にはデュノア社の広大な敷地へ降り立った。
別に周りを気にかけて被害を最小限に留めたのではない、ことが大きくなりすぎると結構面倒くさいことになるかもしれないのを繰り返すこと何回かで学習したからだ。
しかもここはヨーロッパど真ん中、ドイツ、イギリスを初めとする多様な国に訪れていたためこの騒動は直ぐに広がるだろうと推測していた、颯爽と来仏しゆっくり対談をして速攻で帰ろうと決めていた。
現在日本時間にしてAM2:00、ドイツはPM19:00季節はまだ夏に差し掛かる前で少し明るい、しかし警戒体制は整っておらず平和ボケもしくはそれほどまでに財政状況が緊迫しているのか煌燿は《アンチェイン》を用いずとも容易に進入することができた。
『侵入者に告げる、今すぐ止まれ。これは警告だでないと…なに!?おい!第一級警戒体制を…』
スピーカーを砕き、誇示するかのように監視カメラに目線を合わせ不敵に笑う
─この俺がわざわざ裏口から入ってくると思うか?
襲いかかる警備を何事もなかったかのようにかわし、正々堂々と正面から乗り込む。
弾幕を高速で蛇行しながら避けていき、鋼鉄で閉鎖されたドアを勢いのままに蹴り飛ばす、時間にして本社に進入するまで僅か5分。
「ピーピー、ピーピーうるせぇな…社長室よりか先に警備の頭を潰しにいくか。いやでもさっさとあいつの親に逃げられても困るし…さて、どうするか。クソッ…せめて内部構造を一回見るべきだった」
だがしかし、煌燿に常識などやはり無かった。
思い付いた作戦は頭脳を全く使うことなく導かれた悪魔的発想、《とにかく暴れまくって誘き出す》ごく単純なやり方だ。
床を壁を天井を縦横無尽に突き破り、壊し、粉砕する、目にも留まらぬ速さで行われたそれは監視カメラ程度の性能では追い付けるはずもなく、ただ壊れ行く様と黒い閃光が映るのみ。
『や、止めてください!一体うちが何をしたっていうんだ!』
「いや~あんたらの送り込んだ女のことでデュノア社のCEOと話がしたいだけなんだ、あんたらがそういう対応するなら俺もそういう対応をしないといけないだろう?」
『分かった、分かったからとりあえず落ち着いてください。社長は今不在です』
「あ?そうなの」
『そ、そうなんですよ!だから出来れば大人しく帰っていただけたらなぁと思いまして』
「いねぇなら仕方ないな、どうやって出ればいい?」
『それではですねまずは先の曲がり角を左に…』
「成る程、じゃあ右にいくか」
『え!?ちょっ』
ニヤリと煌燿は笑って警告とは逆方向に進む、アナウンスが聞こえてきたのも縦横無尽に動き回り社長に危害が加わりそうかもしくはそれと同等に大事なものが付近にあるかの2択に絞り、その上で社長が近くにいることを確認、大人しく引き下がる振りをしてからの逆行動をとるという至極単純な作戦で、非常事態になれていれば決して通用することのない作戦、この現状から見越してこの作戦に変えた煌燿のファインプレー?である。
社内に進入して僅か3分足らずで全体の10%が破壊、使用不可に陥りこのまま見過ごしても被害が増すことが明らかに目に見えている、それに今の煌燿の座標とデュノア社の頭の位置はあまりにも近い。
その事実を確認した直後、先にデュノア社側が被害を最小限に食い止めようと即座に判断し再び大音量で間接的に告げた。
「やっと折れてくれたか…10分程度かかってしまったな。久々すぎて機体に身体の方が付いていってない、ブランクが長すぎると流石の俺でも例外ではないって訳なのか…まぁ、そこはたいして重要じゃないな。ようやっとゴール直前って訳だな」
『それではそのまま直進してください』
「もし嘘だったら上空37.000フィートから自由落下してここら辺一帯を更地にするぞ」
『…次の角を右折してください』
「ったく、気が抜けないやつらだ」
進むこと距離にして約200m、遂に扉の前にたどり着く、煌燿の望むものと期待しているものはそこにあるのか。
「さてデュノア社のCEO、俺をがっかりさせるなよ」
「一体私に何のようだ」
大理石の敷き詰められた床に高級ブランドのソファーや机が並ぶ贅沢な一室に貫禄のある壮年の男性が静かに煌燿を睨み付けていた、が煌燿はというと高級ブランドのソファーに大きくてを広げ足を組み机に靴を置いてリラックスしていた。
「そう身構えんなって、俺も少しは大人になったんだ。昔みたいに暴れまわったりしねぇよ」
「我が社の警備を意図も簡単に、何も無かったかのように突破しその挙げ句この惨状を見せつけられて何を安心しろと?」
煌燿の座る右側には硝子張りで普段であればフランスの夜景が綺麗に見える仕組みになっているだろうがその目下は黒い煙や警備員が蠢き瓦礫などもあちこちに散らばって負傷者まで出ている状況でそれに応じて騒がしく、慌ただしくなっていた。
「死人は出てないだろ、そこで善処はしてくれよ?それに俺には時間がないんだ。さっさと本題に入らせてもらおうか、シャルル…いやシャルロット・デュノアについていくつか聞きたいことがある」
「………構わんよ」
空気が一段と重くなる、煌燿の圧力ではなくデュノア社CEOにしてシャルロット・デュノアの父親が放つ煌燿には計り知ることが出来ないとてつもなく複雑で重い思いで、煌燿は思わず頬を緩ませていた。
何時もみたくハッキリとしたものではなく無意識の内に出た微笑だ。
「よくここで話す気になったな」
「ああ、それがお前の望みならな」
「そんな意味じゃねぇよ、よくそんな
「……っ」
「これ以上、嘘をつくのは止そうぜ。俺はここ数年間自分に嘘をついて生きていた。恐らく今のお前と同じように同じように、最悪の気分だった…
何か良いことでもあんのか?そんな事をして、少なくと俺は無かったぜ」
「確かめたい、お前があいつの日本行きを決めたのか?」
「ああ」
「お前にはもう一人娘がいただろう、何でそっちにしなかった?」
「自分の本当に愛した妻との間に出来たかわいい娘をお前のような輩がいるIS学園にノコノコといかせるわけには行かないだろう」
「では何故、あいつの母親が死んだときあいつを迎えにいったんだ?別にそのまま放って置いてもかったんじゃないか?あの容姿にあの身体だ、それを売りにして生きていけば別に幸せとは言えなくとも充分生きていけただろう、こんな時代だし少しだけ考え方を変えれば」
「調度好きに使える駒がほしかった、必要な時期に必要なものが手に入った、想像以上に良い駒だっただけだ」
「お前が命じたのか?第三世代の日本の技術を盗んでこいと」
「そうだ、今我が社に足りないものは君もよく知っているはずだ」
煌燿には何故目の前の男が見たことの無い表情をしているのか分からなかった、嘘をついているのは解る、それが苦痛であることもなんとなく解る、だがその目が何を物語っているのかが一切分からなかった。
恐らく脅せばそのなかは簡単に分かるだろう、だが本物の奥底にあるものは絶対に導き出せないと直感で感じ取っていた。
だからこそ、煌燿がとった行動にデュノア社CEOは自らの目を疑った、先程までふんぞり返っていたはずの煌燿が姿勢を正し、頭を下げていたからだ。
「デュノア…俺は今生まれて初めて人に頭を下げている、俺が力ずくで聞き出したところで思うような結果は得られない、だから本心で話してくれ。恥も外聞も無いくらいに全てをさらけ出して…でないと俺はお前にこの会社をまるごと消すか、シャルロット・デュノアを殺すかの2択を迫らなければならない」
あまりにも有り得なさすぎる提案に一瞬怯んでしまうが、そのまま頭を下げ続ける煌燿を見て暫く考えようやく、口を開いた。
「今の妻とは…望まないとまではいかないが、それでも少し不本意な婚約ではあった。私はそれと同時期にシャルロットの母親の事を本気で愛していた、こんな世の中でもどんな男も決して見下すことはなく、ここまで純粋な女性がいるのだろうかと思わせる健気な女性で、私は惚れてしまっていたんだ。彼女が本当はどう思っていたかは分からないが私を『愛している』そう言ってくれたよ。が、しかし今の私の妻は女尊男卑の傾向が強く、自分の思い通りにことが進まないと気にくわない女性だ、金でものを言わせなんとしてでも決めたことはやりきる非常な面を持ち合わせていた。そんな中はシャルロットが彼女のなかにいることが分かったんだ…しかしこのままでは危ない、そう思って距離をおいた。勝手な判断でほとんど捨ててしまったも同然だ…何度も養育費を送ったが全て返されてしまってね…『私が勝手に産んだだけで貴方には何も関係ありません』その一点張りで私から何も貰おうとせず、強くはない体を酷使してシャルロットを育てた。今思うと墓場へその秘密は持っていかれたが私の迷惑にならないようにしてくれたと思うのは私の思い過ごしだろうか?」
「んなもん知るかよ」
「だろうな。案の定…体を壊してしまった彼女は日を追うごと弱っていき遂に帰らぬ人へなってしまった。シャルロットだけは守ってほしい、それが彼女の私にしてくれた最初で最後の願いだ、だがデュノア社にいること自体がシャルロットの身に危険を及ぼした。見てられなかった、シャルロットが母親の写真をつけたロケットをてから血が出るほど握り締めて泣いていたのは…運良くシャルロットはIS適正が高く、実力もあっただからシャルロットを守るため何人たりとも手が出せないIS学園へ送り出した、怪しまれないよう最低限の裏工作をして」
「それがお前の出した結果だとしたら…何故一番近くに置いて守らなかった?それが一番安全だろう?合理的かつ効率的だ」
「そうだ、だがようやく気付いたんだよ…答えは
それは違う、と煌燿は否定をした。
結果はそうかもしれないが最初は自分が自分でいるためにそうしたのだ、姉と同じように、目の前の恥も外聞も捨て娘を守ろうとした男とは話が違う。
「今からでも、充分間に合うんじゃないか?お前の思いはきっと届くはずなんじゃ」しかし、もう過去には戻れない…やり直すことは、もうできない!」
「私はシャルロットを心の底から愛している。愛した女性の娘だ…嫌う理由なんてあり得ない。こんな方法でしか守れない私に出来ることは…いくら恨まれようともシャルロットが幸せになる手助けをすることだけだ」
「お前、イカれてるぜ」
「シャルロットを守るためならば、悪魔にだって魂を喜んで売ってやろう…だから─────────────────」
「お前の前にいるのは悪魔なんかよりも、相当
「それでも私は私の命とこの会社を投げ捨ててでも…この願いは実現させる、させてみせる。貴様が引き受けてくれなくとも近い内に必ず実現させる、命を賭けて。」
「そのイカれ具合気に入ったぜ………その願い確と受け取った。勘違いするなよ?俺はこれから起こり得る事を分け与えるだけで言わば強制的に借りを作るだけ、面白かったぜ、じゃあなデュノア」
─歪んだ…真っ直ぐすぎて一周回った愛情、気圧されてしまったほどの『守りたい』という濁流のごとき感情、壊すことしか出来ない俺には程遠く手の届くことのないもの…決して俺が届くことのない種の狂気…か、シャルロット・デュノア、俺はお前を助けない、だがしかしお前の父親に免じて、そうなる筈であろう未来を恩着せがましく分け与えてやろう。
理由を探している時点で煌燿はそうせざるを得なかったかもしれない、だがその一方で自分とは違う強さをもった男に対していつの間にか敬意を払っていた、自分が絶対に出来ないことをやり遂げたあの男に。
満月が、赤黒いISを不思議なくらいに優しく照らしていた。
それでも、どうしてあんな目をしていたのか、何でそうしていたのかは今の煌燿に検討もつかない、だからこそその願いを引き受けたのかもしれない。
─シャルロット・デュノア、お前は愛されていたよ。父親からも母親からも。
本人の目の前では絶対に言わないであろう言葉を比較的遅い速さで飛びながら口のなかで転がした。
表情はとても晴れやかだった、まだまだ分からないものがたくさんある、そう思わせただけで煌燿は満足のいく結果が得られたからだ。
やはりこの作品は3人称がベストだと個人的に思いました。
深夜テンションで書ききったの不可解な所がある場合後日加筆修正をして再投稿するかもです。
ヒロインはもうひと段落ついてから考えたいと思います。