IS 天災の愚弟   作:奇述師

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頭が混乱中


しのの● こうよう

1

 

AM5時30分、更識 楯無は手にした資料、自分の経験と記憶、そして今までのIS学園で生活の情報を整理し首を捻った。

 

─変わった?違う、成り代わったと表現した方が正しいのかしら?…でも所々昔の片鱗はある、けれど鈍いわね

 

無意識のうちに『不自然』と扇子を広げた自分に失笑する、まさかキャラ作りのつもりでやっていた行為が癖になっていたのだから可笑しくなっても不思議ではない。

 

東雲 煌燿という人物と篠ノ之 煌燿という人物が違いすぎるのだ、煌燿と言う人物を形成するポリシーを除き、全くの真逆、出来すぎている程に…

 

何があったのか解らない、資料による情報の信憑性と客観的事実に基づいて判断するのなら徐々にではなくある時期を境にきっぱりと、篠ノ之 束が世にISを知らしめた時とその後3~4年後では何かが決定的に違っていた。

 

更識 楯無は横目でベッドで寝ている煌燿へ目を向け殺気を向ける、が何の変化も見られず楯無は毒気を抜かれた、東雲 煌燿は牙の抜け、爪を丁寧に危害の及ばないように手入れされた獣だ。

 

しかしセシリアとの戦い通り牙や爪は抜け落ちても獣であることには変わりがない、もし虎だと思っていた者の正体が豚であったとしても飼い主(姉である篠ノ之 束)が手の付けられない危険人物なので丁重に、そして逆鱗に触れないように扱う事に越したことはないし、デメリットは全くない。

 

そうは言うもののやはり頭では理解しているが気持ちの整理ができないのも事実だ。

 

そして他の資料にも目を通しふと思い付く

 

─そう言えば今日は中国から転入生が来る予定だったわね、はぁ仕事が増えて嫌になっちゃう

 

『憂鬱』と書かれた扇子を広げるが嫌そうな表情は全く無く嬉しそうだった。

 

 

「煌燿く~ん、朝ですよ!」

 

そして煌燿の眠るベッドへダイブする、ムギュっと可愛らしい音を残しその後暫くじゃれあいは続いた。

 

 

2

 

一方煌燿が楯無を振り切ろうとしている頃

 

「織斑くんおはよー、ねえ、転校生の噂聞いた?」

 

朝、教室に入って席につくなり、一夏はそう話題を振られた。

 

「転校生? 今の時期に? まだ四月だぞ」

 

入学式が四月の三日。そこからまだ二週間ちょっとしか経っていないというのに転校生とは?一夏の疑問は最もだ、何か事情があったのだろうか?一夏には思い当たる節が一つだけある

 

「もしかして、その転校生って代表候補生だったりするのか?」

 

「あれ? なんで知ってるの? もしかして誰かに聞いた?」

 

「いや、何となくだけど」

 

勘で言ってみたがどうやら当たっていたらしい。

 

代表候補生、それは一夏へ苦い思いを経験させたセシリアと同じ実力を持ち、まぁ恐らくセシリア同様プライドが塔のようにそびえ立っているのだろうと苦い表情をする。

 

「なんでも中国の代表候補生なんだってさ」

 

「ほー、中国か……」

 

「まあ!私の存在を気にしてのことでしょう」

 

 

「とはいえ、このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐほどの事でもあるまい」

 

噂に敏感なのは女子特有とでも言うべきか、さっき席に行ったはずの箒がいつの間にか混ざっていた、いつの間にか一夏の周りには大きな蟠りが出来上がる。

 

「そうだけどさ。やっぱり気になるだろ? だって代表候補生っていうからには強いんだし、もしかしたらクラス対抗戦で当たるかもしれないわけだし」

 

「……」

 

「…………フッ」

 

─何故か箒が不機嫌そうな顔をする。なんでだ?しかもセシリアに鼻で笑われた!

 

「一夏、まぁ何だ、気にするな?」

 

─なんか嬉しくねぇ!

 

「まあいい。クラス対抗戦に向けて放課後にみっちりとしごいてやる。ありがたく思え」

 

「あ、そのことなんだけどさ。訓練するとき、煌燿にもお願いして指導してもらおうかと思ってるんだけど」

 

「なっ……!?」

 

箒が驚く、一夏が見たなかでトップ3へ食い込む驚き方だ。寧ろその背景が気になるが空気を読んで質問しない、鉄拳が飛んできそうな気もするのも含めてしない。

 

「に、兄さ…こ、煌燿を呼ぶのか、た、確かにいい方法ではあるが私が困る!」

 

「いやいや、動揺しすぎだろ、なんでそうなるんだよ。箒も知ってるだろ?昔の事を思い出さないか?」

 

「そ、それは……ハッ」

 

「何で鼻で笑った!?」

 

「お前がに…煌燿に教えられても理解できるはずないだろう!」

 

「なあ頼むから会話を噛み合わそうぜ!」

 

「それは置いといて煌燿が教えると言うなら私はただの付き添いだ、主にタオルを投げ込むことが私にできる精一杯のことだがな」

 

「グッ…確かに、ものは試しに頼み込んでみよう、覚悟はできている俺だって負けたくないからさ」

 

「お待ちなさい!」

 

バンッ、と一夏の机を叩いて制止の声をかけたのはセシリアだった。このイギリス代表候補生、言葉や態度はツンツンしているが何気に一夏との仲は良かったりする。

 

一夏は何故かフルネームで呼ばれているが最初の時のような扱いは受けていないので気にしていない。

 

 

「わたくしの許可無く煌燿さんに指導を受けようなど言語道断ですわ!そもそも直接頼もうと言うのも烏滸がましいですわ!せめて私を通しませんと煌燿さんに失礼というもの」

 

「なんで煌燿から指導を受けるのにセシリアを通さないといけないんだよ……。別にいいだろ? 減るもんじゃないし」

 

「はぁ…これだから織斑 一夏さんは織斑 一夏さんのままなのですわ!煌燿さんの時間が減るのです! そもそもあなたと煌燿さんではレベルが違います、まずは基本的なことが一通り出来るようになってから私のところに来て、そして私に勝つことができたら煌燿さんに依頼するのを認めてあげましょう」

 

「厳しい母親か!」

 

思わず突っ込む一夏

 

─なんか盛大にブレてる気がするんだけど…最初の頃の高貴なオーラは何処へやった、無くてもいいけど。

 

ふと、今まで黙っていた箒が口を開いた。

 

「そういえば、その…煌燿はまだ来てないのか」

 

「そう言われれば……。いつもならもう教室にいてもおかしくない時間ですのに」

 

「食堂には…いつもいないしな」

 

「煌燿さんには私が毎日朝食と昼食と夕食と夜食を運んでおりますが…そう言えば今日は珍しく、と言うより初めて『持ってこなくていい』とのお言葉がありまして…」

 

「セシリア、何してるの!?」

 

「黙りなさい織斑 一夏さん、これだから貴様は織斑 一夏のままなのですわ」

 

「いや、だから何なの?その表現」

 

「一夏、変態1は放っておけ」

 

ぐるりと教室を見渡すも、あの煌燿の姿は見当たらなかった、しかし声は幻聴でない。

 

「いや~朝から変態2を振り払ってのパルクールは流石にきついな、無駄にあいつ巧かったし…おいセシリア」

 

なんて事を余所に、女子たちが嬉々として一夏に激励の言葉をかける。

 

「織斑くん、がんばってね!」

 

「勝てばフリーパスだよ~」

 

「ちょっと待てそれが目的かお前ら、てか煌燿!お前キャラ変わりすぎだろ!?」

 

煌燿は周りになるべく聞こえないように一夏の耳元で話す。

 

「いや~本性見られちゃったしぃ、もう別に隠す必要ないかなぁって」

 

「………」

 

「絶句するな、まぁあの件以来皆とも距離おけたしこちらとしても都合がいいのさ」

 

『やっぱり東雲君が攻めだよね!』

 

『いやいや案外受けだったりして』

 

不穏な会話が聞こえてくるが煌燿は聞き逃す。

 

「フリーパスはまあどうでもいいのですが、織斑 一夏さんクラス代表に就いたのですから、無様に負けたりしたら承知しませんわよ?」

 

瞳から光を消したセシリアが確かな声で呟いていた。

 

どうやら一夏の味方はここにはいないようだ、主に煌燿とセシリアの扱いが荒くなっているのをわかっているので大きくため息をついた。

 

─待てよ…セシリアだって代表候補生じゃないか?

 

「じゃあ、セシリアが俺の指導してくれないか?」

 

「なんだと!?」

 

ガタンッ!と先程よりも過敏に反応する箒、しかし一夏に体裁やらうんぬんを気にしている余裕はない。負けっぱなしは性に合わないしなりふりかまっていられなかった、強くなるためなら何でもすると決めたのだから。

 

「わたくしに訓練の指導をしてほしいと?」

 

「ああ。だって、セシリアは代表候補生なんだろ? 普通の生徒より知識も経験も豊富だから、指導してくれればこれほど心強いことはないしさ。ダメか?」

 

「……はぁ」

 

「な、なんだよそのため息は」

 

『何を言ってるんだこいつは』みたいな顔をしてため息をつくセシリアが腰に手を当てて説明をする。

 

「……いいですか織斑 一夏さん、ISには武装によってそれぞれ得意とする間合いがあります、私のブルー・ティアーズは射撃メインの武装構成なので中・遠距離。では、あなたの白式の得意とする間合いは?」

 

「そりゃあ超近距離だろ。雪片弐型しか武装ないし、それとセシリア、俺が頼むのは戦闘訓練ではなくて基本的な動作訓練だ、ISを先ずは扱えるようになるのが一番の近道だと思うんだ」

 

「織斑 一夏さん」

 

「……あ」

 

 

「そ、そこまで仰るのだったら別に教えてあげてもよろしくてよ!別に貴方のためでなくクラスのためと言うことをお忘れなく」

 

そのわりには嬉しそうに席に戻っていくセシリア、席に座るや否や頬を緩ませる、本来プライドが高いため頼られることは嫌いでないのだ

 

「よし……セシリアには基礎訓練と言い張って戦闘訓練までしてもらおう」

 

「な!?だから私が教えてやると言っているだろう!それに、クラス代表の専用機持ちはお前含め二人だけだ。力をつければそうそう負けることはあるまい」

 

と、箒がそう言ったときだった、開いたままのドアから可憐な声が響く。

 

 

 

 

「──その情報、古いよ」

 

 

 

教室の入り口から、一夏にとって懐かしい声が聞こえてくる、この高いソプラノボイスは一夏がよく知る人物だった。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

「鈴……? お前、鈴か?」

 

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

ふっと小さく笑みを漏らすと、トレードマークのツインテールが軽く左右に揺れた。

 

「何格好つけてるんだ? すげえ似合わないぞ」

 

「んなっ!? 言うに事欠いてなんてこと言うのよアンタは!ったくどっかの戦闘狂思い出すからやめてくれない?」

 

「あ!?」

 

「なによ!? ……うわぁ、アンタこのクラスだったのね」

 

少し奥から響いた声に反応して振り向く鈴、そこには非常に気だるそうにガンを飛ばしている煌燿がいた。というか、のそのそとわざわざ席を立って近づく当たり仲が良いのだろうが…

 

 

 

「おはようございます、煌燿さん」

 

「おはよう」

 

「おう」

 

軽く挨拶を交わし鈴の前に立ちはだかる

 

「なによ!?」

 

「…ハハッ、相変わらず手も足も胸もバストもほっそりしていて足の親指を躊躇なく踏み抜くのはやめようか」

 

ミシッ!と言う恐ろしい音に鈴が反応すると鍛え抜かれた美しい足がゆっくりと引き戻されそれと同時に頭に出席簿(凶器)が振り下ろされる

 

「東雲今のは言ったらいけないことだ、もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん……」

 

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

 

「す、すみません……」

 

先程の元気はどこへやら、借りてきた猫のように大人しく言うことを聞く鈴。ちなみに猫と言う表現は本人も気に入っているようだ。

 

「またあとで来るからね! 逃げないでよ、一夏!来ないでよ狂人」

 

「さっさと戻れ」

 

「は、はいっ!」

 

脱兎のごとく、風呂に入りたくない猫のように二組へと駆けていく鈴を眺めつつ、世間は案外狭いものだと改めて思う一夏だった。

 

 

3

 

昼休み

 

煌燿は屋上で昼食を食べていた

 

最初の頃は食堂で食事をしていたのだが、IS学園の雰囲気を知ることもできたし、何より煌燿が食堂に行くと色々と面倒なことなので専ら人気のない屋上で摂ることにしたらしい、最も人が多いところが苦手なので時々来ることのあった立ち入り禁止の屋上へいるので人気がないのは当たり前だが…

 

トレイに乗せる必要のある丼ものや定食、麺類は食べれないため調理パン等のファストフードが主な食事だがアメリカに長年いたので苦にならない

 

とにかく自分の時間を確保できればいいのだ。

 

手早く昼食を胃袋に収めた煌燿は、食後のサンドイッチを口に含みながらぼんやりと物思いに耽っていた。心地のよい潮風が漆黒の黒髪を撫でた。

 

 

 

「お昼寝? 気持ち良さそうね」

 

 

 

聞こえてきたその声で一気に現実へ引き戻される。

 

目を開き声の方向へ視線を向けると、そこには楯無が扇子を開いて立っていた。煌燿は跳び起き、臨戦態勢に。

 

「……何か用か」

 

「あら、別に用事はないわよ?"偶然"屋上に来てみたら"たまたま"煌燿くんが"偶然"いただけなんだから」

 

「帰れ変態、ここは立ち入り禁止の場所だ。それとその言葉の信憑性は非常に低い」

 

あーんひどーい、とわざとらしく身をくねらせる楯無、しかしその後意外な言葉が飛び出す。

 

「ちなみにここ立ち入り禁止にしたの私よ。"生徒会長の権限"でね」

 

「んん? あれ、煌燿くーん?」

 

「……職権濫用って言葉を学んでこい」

 

「あれれ~可笑しい聞こえな~い」

 

「……はぁ。で、話がないならどっか行け、寧ろ俺がどっか行ってやる。食後の鬼ごっこは勘弁だ」

 

「規格外の君なら私を巻くことくらい簡単でしょ?」

 

たはは、と笑う楯無、『野暮用』と書かれた扇子をパチンと閉じると、煌燿の隣に腰をおろした。

 

「煌燿くん、今の君は──誰?」

 

「…面白いこと聞くな」

 

ぬくぬくとした光の世界で生きている東雲 煌燿と、じめじめとした闇の世界で生きてきた篠ノ之 煌燿、どちらが本物か?と言う質問は間違っている。2人で1人、裏があれば表があるように篠ノ之がいれば東雲がいないと今は成り立たない。

 

 

「目的はなに?」

 

再び楯無の問い。

 

「……唯一無二の完全なブラックボックスは俺という凶器を経て、俺の狂気を得て完成へと至るのさ」

 

「完成へと…至る?」

 

「これが俺の目的であり姉貴の夢でもある…っと話しすぎたな」

 

ゾッとするほどの冷たい声音が、楯無を包み込み唾を飲み込むことすら躊躇わせた。ようやく「なら」と楯無は付け加える、が言葉を繋げれない。そしてようやく言葉を絞り出す

 

 

「わからないわ、けれど煌燿君はそんなことしたくないってなんとなくそう思うのよ。私はこれでも人を見る目はあるつもり、だから」

 

「……止めとけ、無駄な信頼を寄せるのは無駄だ。それにもう止められないし、止まらない」

 

 

 

そう言って笑う煌燿。対照的に哀しみの表情を浮かべていた。

 

煌燿は埃を払い柵へと向かう。その姿が消え行く直前、振り絞ってこう言った。

 

 

 

「煌燿君は味方だって、信じてるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石に嘘と真実を半々に織り混ぜて殺気を向けるとあいつレベルでも誤魔化せれるんだな…さて羊の皮を被るのはもう疲れたし今この状況で裏の顔を通すのもねぇ」

 

 

愚弟と称す煌燿の姉すらも見たことのない表情でケタケタと高らかに笑った。




ここまで連載しているのですが最早ごちゃごちゃなりすぎて何が何だかわからなくなってしまいました…

矛盾点、設定等の不明点があればどうかご指摘下さい
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