1
篠ノ之 束が開発した無人稼働IS俗称、ゴーレム。
アリーナのシールドバリアーを破壊するほどの威力を持つ強力なビーム兵器を搭載しており尚且つ大型ブレードの装備やシールドビット搭載などの改良が施されている殺戮兵器、その上篠ノ之 束自ら作成した超高性能AIを組み込まれている。
1国や2国は簡単に潰せてしまいそうな─実際には潰せるのだが─殺戮兵器は煌耀のISを確認すると一夏や鈴には目にもくれず襲いかかる。
煌耀のISはセシリアと戦ったときの形態(いびつな形のインフィニット・ストラトス、その身に纏われた機体は皆が知りうる形には程遠い、洗練された鋭さをもち、威風堂々たる雰囲気を持ち合っているが、皆が知りうる従来の機体よりも1回り以上も小さい)代物であったが今の煌耀の機体はその形態より大きく(通常のISより少し大きい)、
煌耀とゴーレムがぶつかり合う度、衝撃波が発生し、轟音を轟かせ続ける。
「これが篠ノ之 煌耀の実力?…でも、相手が、状況が悪すぎる」
楯無は呆気にとられるなかで静かに呟いた、煌耀は武器を持っていない、手足についた特殊な装甲が付いておりそこで攻撃しなければISの特徴として両方とも同じだけ削られる、高性能なAIを積んでいるだけにその傾向はあっさり見破られ、そこを突かれていた。
─
さらにゴーレムは強力なビーム兵器を搭載、尚且つ大型ブレードの装備やシールドビット搭載、全距離対応可能な万能兵器、煌耀も元の
─なにバカなこと考えてるんだ…どうして相手を過剰評価する?俺の勝っているのは速さという一点だけか?違う、全てにおいて俺は最強だ!
煌耀を叩き潰すという点において戦うゴーレムと未だに揺れ続ける煌耀。徐々に、しかし確実に煌耀は押され始めていた。
─いつからだ…自分を最強だと信じて疑わなかったのは?
互いにリミッターを外した状態、競技用ではなく戦闘用のIS、ぶつかり合いは一層激しさを増していく。
─一体いつからだ……?相手のことを認めて、その上で最大限まで警戒し始めたのは?
1000をこえる拳と武器、レーザーが飛び交うなか、遂にその時は訪れた。
─ゴシャッ
潰される音が煌耀を襲った瞬間、地面にクレーターを作りながらめり込まされていた。
─万事休す、か
ゆっくりと見下すようにゴーレムは降りてくる
─結局俺は、元に戻ることはなかったんだな…いいことなのだろうか?悪いことなのだろうか?でもただ一つ、俺は姉貴に最後まで勝てなかったってことか…
そして地面に着地、レーザーを至近距離で射つべく更に急接近、そして銃口が紅く染まる。
─これにておしま…
「兄さん!!」
「…箒?」
その瞬間、ゴーレムは途端に標的を変更、その声の主、篠ノ之 箒の方へ銃口を向ける
─嘘だろ、姉貴!?
だがまだ少しだけ余暇は残っている、煌耀に残された選択肢は2つ
─箒を見捨てて
未だに揺らぎ続ける2つの意思
─ほっとけよ、今までも放置してたんだし、そもそも
─箒ちゃんを助けるのが最優先だ、今までの償いは命をなくしても償えない
─償いって何だ?放置したことか?自分だけいい思いをし、箒には苦しい思いをさせたってことか?あいつは姉貴の計画に気づかずのうのうと暮らしていたからそうなっただけだ、俺は何も悪くない
「…ぐっ」
激しい痛みが煌耀を襲う、相反していた2つの人格が突如として現れたため脳の中を引っ掻き回されたような感覚に襲われていた。
─けれど、俺は
─邪魔すんな
煌耀にとって今はどちらにも傾くことができる状態、鬼が出るか仏が出るか…
天災の姉、普通の妹、その間の煌耀は規格外でどこにでもいそうな少年、一見して矛盾した者。
ゴーレムは無情にも待ってくれたりはしない、虎視眈々とエネルギーをため、骨をも溶かす死線を放つ準備をしているだけだ。
「助けて、兄さん!」
─箒ちゃんを守るためなら鬼にだって、悪魔にだってなってやる…後は任せた
─ごちゃごちゃうるせぇ、もうお前は終わっているんだよ
レーザーが放たれる刹那、煌耀が動く
意識のみがかろうじて捉える残像を追いながら、ある感情に支配されていた。
昔の自分への賞讃と哀惜。
─こう振り替えると…色々と世話になったな、俺は到底出来ないしやろうとも思わないことをよ、さて箒を助けるにはどうすればいいか…
本当の自分自身を理解し、自身の感情を爆発させ、機体を前に突き出す。
そして、無意識下で出ていた武器を手にその軌跡がゴーレムのレーザーの銃口を切り刻んだ。
銃口がないとはいえエネルギーは溜まっている、暴発するのを防ぐため即座に顔面に蹴りを入れた。
箒は迫り来る死から目を背けていた、しかし、暫く経っても熱はおろか風さえも肌に触れてない、目を見開くと陽炎が煌耀の姿を揺るがせているだけ。
「あ"~スッキリした、ようやく歯に詰まった何かが取れた感覚だ…良いことなのか?悪いことなのか?…まぁどうでもいい」
『ははは…流石にこの展開は束さんも予想できなかったな…箒ちゃん狙った時はさすがの束さんでもヒヤリとしたよ、まさか戻るのでもなく、変わるのではなく、醒めるのでもなく、全てを喰らい成長するなんて…次に会うときは初めましてになるのかな?それとどうせ聞こえないだろうけど───箒ちゃんを守ってくれてありがとう』
「さて、せっかく姉貴が用意してくれたガラクタだ、その腕一本無くなったところでまだやれるだろ?」
天災の愚弟…篠ノ之 煌耀、遂に完了
元に戻る訳でもなく、現状を維持するのでもなく、一旦止まっても必ず前に進んできた煌耀、自分の中の鬼が甘さも温情も、過去も現在も喰らいつくし今全てが結び付く。
ゴーレムを通して束が見る煌耀は見たことのない表情で心の底から笑っていた。
2
煌耀は痛む体と目に射し込む眩しい光に一旦顔をしかめて最寄りの空へ焦点を合わせた、見知った天井に心地よい部屋の空気を堪能し最後の記憶を思い出す。
と同時に恥ずかしさのあまり音を立てて歯軋りをする、自分の事とは言えヘドが出るほど甘い自分、先日遂に戻ったとはいえ元々は確かに自分自身が生み出したもう一人の自分。
─確かに箒に対して何か出来ることはないかと考えて柄にでもなくアメリカと契約してしまったからな、どうやら相当なストレスが懸かったんだろう…出なければ
「あら、ようやく起きたのね煌耀くん」
ぼんやりとした西陽の残光が窓から差し込み微かに部屋を照らしていたが途端に遮られる、楯無が煌耀を覗きこみふふんと楽しそうに笑う。
「ん…刀奈、俺はどのくらい寝ていた?」
「今は楯無、まる一日+5時間ほどよ…」
「ふ~ん、でこの部屋の状況を察するにようやく俺は1人で安息できるんだろう?」
煌耀が部屋の中を見渡す、楯無の備品はなく、元々煌耀の荷物も少ないのでスッキリとしていた、決定的なのはベッドがようやく2つに増えていたことだが…
「そうね、今日までは」
「嫌な予感がするんだが…」
「ここで重大発表!近々転校生がやって来まーす」
「厄介事の押し付けって訳か…訳ありだろ?」
「あら、随分と察しがいいじゃない、キミ変わった?」
「さあ?想像に任せるとしようか」
楯無は真剣そのものだが煌耀はどこ吹く風、余裕そのもので試すようにどうだ?とばかりに嘲笑う。
そして再び楯無が問う
「煌燿くん、今の君は──誰?」
「面白い事を聞くな」
煌耀の解答、今回は即答だった
「俺は俺だよ」
その姿を見て楯無は口には出さない
─懐かしい感じ、でも優しい笑顔…
ただ心の中でそう思った。
そして楯無が出ていったあと煌耀は最大の疑問が思い浮かんだ。
─そう言えばどうしてあの時、箒を助けると真っ先に思ったんだ…?それにアンチェインに新たに搭載されていた武器はいったい?疑問が尽きねぇ…仕方ない寝るか
どうやらだいぶいい加減になった煌耀、眠気にそのまま誘われまた眠りについた。
3
月曜日の朝。
大抵朝は賑やかなのが一組の日常風景なのだが、今日はいつにも増して騒がしい、女子たちが手に手にカタログを持っている、今日から始まる実践訓練、その為のISスーツの参考といったところだろう。
担任である千冬が壇上で話をしているところだった、壇上にたった瞬間に静まるのは千冬にこそなせる業だが煌耀はただ単純に感心していた
「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう、ちなみに男どもは忘れたら学校指定の女物を着て貰うからな」
ざわつく女子、青ざめる一夏と煌耀
─多分それは絶対に忘れるな、と言うことだろう。それに実戦(笑)ときたか…
実戦、その意味を本当に理解してこの学園に在籍している人間が果たしてどれ程いるだろうか?国家代表候補生、国家代表とは戦争が起こったとき真っ先に戦場へ送り込まれる精鋭である。しかし、その国家代表候補生のセシリア、鈴(楯無は除く)は本当の意味でわかってはいない。
ISは殺戮兵器、操縦技術は殺人技術、弾丸一発受ければ致命傷になってしまう脆い人間vsISであればたとえどんな武装をしようとも基本ISが勝つだろう
兵器としての危険性よりも、スポーツとしての万能性が認知されている今日、ISをファッションや何かと勘違いしている女性や『格好いい』『美しい』という感覚だけを持ち『危険だ』という感覚を持たない女性も多い、束が宇宙へと進出するために作り出したISを兵器やスポーツ用具として見ている時点で、既に誤った認識をしているのだが…
実際弟である煌耀は兵器扱いしており束も煌耀の事だけは切り替えて今現在煌耀と零番目のコア《アンチェイン》の行く末を見守っている。
「では山田先生、ホームルームを」
「は、はいっ」
「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します! じゃあデュノア君、入ってきて下さい」
「デュノア…くん!?」
「「「「えぇぇぇぇっ!?」」」」
先月に続いての転校生にクラス中が大きくざわめく、女子特有の高い声が耳を塞ぐ手の上から煌耀の鼓膜を刺激した。
─中国代表候補生の凰は二組に転入。ここにはイギリス候補生のセシリアが居る、それ以前に転校生はおろか男子生徒もここへ密集、学園側も厄介事はちーちゃんに全面的に任せるってことか?不味いな…裏の世界を知っていたら非常に面倒くさい、警戒するか
「失礼します」
「……………」
入ってきた転校生、教室の中もしんと静まり返る、生徒たちは興が覚めたのではなく言葉を失っている。そして煌耀は苦虫を噛んだかのように…
男、その転入生は煌耀のストライクゾーンのど真ん中を抉って来たのだから
いくら『天災の愚弟』と言えど『例外中の例外の1人』だとしても煌燿は年頃の男で、それに『可愛い』もの、可愛い人は姉同様(束は守備範囲が狭すぎるが)嫌いでないし、むしろ結構好きだったりする
しかし可愛い男は好きではない、強い男は好きだが意味は全く別物だ、だからこそこの状況で狼狽えている。
─俺は…本気で狂ってしまったのか!?
中性的な顔立ちでスリムな体格、女と言われても納得してしまいそうな程に、綺麗で長い金髪がそれを彷彿させていた。
その静けさは噴火の予兆だったようだ、直後に来る大絶叫を前に煌耀は耳を塞いだ。
自分にはこのまとめ方が限界…
ようやく一人称で物語をかけ始めるかも知れないです。
そしてようやくシャルロットを出せそうなので良かった
ご指摘、アドバイス、要望等ありましたらお願いいたします。