「それじゃ、私がジャイアント・トードの注意を引きつけるからその隙に攻撃してね」
「お、おう!」
アクセルの町から少し離れた平原。
そこで俺とクリスはクエストに出ていた。
朝食の後、俺はギルドにパーティーメンバー募集の張り紙を出しクリスはダクネスとの面接の為の連絡を済ませた。上級職の後衛に限るというピンポイントな内容だ。募集の方は希望者がいれば夕方に面接、ダクネスの方も夕方には会えるそうだ。
そして予定通り合流、昼食をとってから装備、とりあえず武器を見繕った。
知力と器用さがそこそこ以外は冒険者くらいにしかなれないという低ステータス、悩んだが短剣と弓を使うことにした。長剣とか格好いいと思ったが、実際持ってみると滅茶苦茶重くて碌に振れなかったのだ。
弓は器用さがそこそこあることから選択。本職には及ばないだろうが、遠距離攻撃の有無は大きい。
結局は原作でのカズマの装備と同じようになったが……冒険者は多彩なスキルが扱えるのが唯一の強みだ、下手に大物の武器を選ぶよりは組み合わせで多くの状況に対応できるようにするのが良いだろう、という結論だった。
それからまだ約束の時間まで少しあるので試し切りと俺のレベル上げを兼ねて、ジャイアント・トード討伐のクエストを受けることにしたのだ。例の三日間で五匹討伐するあれ。
アニメの方では苦戦、そこでメンバー募集の流れだったのだが。
「うおぉぉぉおおッ!!」
舌を鞭の様にしならせて、クリスに攻撃を繰り返すジャイアント・トード。それを軽い身のこなしで次々と避けるクリス。俺はその無防備なジャイアント・トードの背後を叩き切るだけ。
クリスが何らかのスキルを使用しているのか、もしくはそういう性質なのか巨大な蛙は稚拙な攻撃を続ける俺には見向きもしない。先ほどから切ったり突いたりしているのだが完全に無視。
そしてようやくダメージが蓄積し切ったのか、巨体が力なく倒れ伏した。大体五分くらいか。心臓が破裂しそうな程に暴れている。元引き籠りにはきつい。
しかし、冒険者となったことでいくらか身体能力が上がっているようだ。深く息を吸って、ゆっくりと吐き出していると肉体の疲労がどんどん抜けていく。
「うん。次は弓を使ってみようか。いくよー!」
「お、おす!」
一匹目のジャイアント・トードを倒したのを確認すると、クリスは足元の手頃な石を手に取る。
「そぉい!」
ぶん投げるといったフォーム。しかしそれに反し投石は見る見る距離を伸ばしていき、小高い丘の向こうへと消えていった。ごちゅ、と何かに当たる音。
「一名様ご案内! さぁ、次も頑張ってね!」
哀れにも投石が直撃、怒り狂った次のジャイアント・トードは脇目も振らずクリスに殺到する。
やはり盗賊スキルの一つらしい。挑発してモンスターの攻撃を誘導するという点では、クルセイダーのスキル、デコイと同じだがやり方がえげつない。盗賊らしいっちゃらしいけど。
「ほらほら、早く早く」
「は、はい!」
一応、女神様なんだけどなこの人……魔物にはやはり容赦がないらしい。俺は急かされるままに弓矢を番える。
短弓というのだろうか、俺の身長半分より少し短いくらいの長さの弓。一通りの扱い方は武器屋で教えてもらったし、ほとんど接射の距離だ。狙いは外しようがないので、次々と射る。三本、四本目。
そこで、ジャイアント・トードは倒れた。要した時間は先ほどから大きく短縮。
やはり俺のステータスだと弓メインの方がいいかもしれない。ただ本職には劣るので短剣もしっかり扱えた方がいいだろう。
そうして、先ほどの繰り返し。クリスがジャイアント・トードを挑発、壁になってもらい俺が後ろから叩く。合計五回。一時間も経たない内にクエストの目標である五匹討伐達成。マジかよ、こんな簡単でいいのか。
原作ではかなり苦戦したクエストなのだが、そういえば元々初心者向けのクエストだった。
効果のない打撃で挑んで食われるアクア様や、一匹相手に一発しか撃てない爆裂魔法を叩きこんで倒れた所を食われるめぐみんはいない。真っ当に回避力のある前衛が壁をやって、普通に切るなり撃つなりすれば勝てる相手なのだ。原作のカズマに思わず同情すると同時に、本当に彼女達をパーティーに加えて大丈夫か不安になる。
ぴ、ピーキーだけど性能は確かだから! 扱い方もちゃんと把握してるから! そう自分に言い聞かせながら、クリスと共に町へ戻ることにする。クエスト達成報酬受け取りを済ませたら、いよいよダクネスと面接だ。めぐみんも募集に引っかかってるといいのだが。
◇
夕暮れ時のギルド。
活気に満ち溢れておりテーブルはほぼ満席、冒険者達がジョッキ片手に酒盛りを始めている。
俺達はクエスト報酬とジャイアント・トードの肉の買い取りで得たお金を折半、俺の取り分の内半分はクリスへの借金返済へ充てた。僅かずつでも返していかないとな。
ちなみにギルドに出した募集には誰も応募していなかったようだ。外伝の『爆焔を!』だとめぐみんはカズマとほぼ同時期にアクセルに着いているはずなのだが……荒くれ者がいたようにアニメ準拠で、小説版と微妙に違っているかもしれない。
とりあえずめぐみんについてはしばらく待つ必要がある。今はこっちだ。
「こ、これが……!」
「確かに珍しいかもだけど、そんなに感動するかな、これ」
そして俺達のテーブルにはジャイアント・トードのから揚げ。アクセルの名物だ。アニメを見てでかいフライドチキンみたいですげぇ美味そうだと思ってたのだ、実際少し固めながら美味しいらしいし。
どうしても食べてみたかった俺は、買い取りの一部を自分の取り分で買い戻してこうして調理してもらったというわけだ。
「い、いただきます!」
手掴みでがぶり。程よい熱さを感じると同時、さくさくに揚げられた衣が香ばしく歯触りが心地いい。口いっぱいに肉を頬張ると、確かに少し硬い。ささ身や胸肉のようだが、少し変わった歯応えが面白い。何より味だ、淡泊そうなイメージと違い意外と肉汁が詰まっていてその旨みが口内に広がる。やべぇ、これ俺大好きだわ。
「美味しそうに食べるねぇ、君……あ、ダクネスー、こっちこっち!」
貪るようにから揚げを口に運ぶ俺に呆れたようなクリス。ってダクネス来た!?
慌てて飲み込む。気づけばクルセイダー、ダクネスはすぐ傍にいた。うおお、やっぱすげぇ美人だ。金髪巨乳だ。一気に上がるテンション。
「今日は誘ってもらい感謝している、クルセイダーのダクネスだ」
「ス、スズキタクヤ、ぼぼぼ冒険者っす!」
めっちゃ噛んだ。自分で望んでおいてこのレベルの美人はハードルが高過ぎる。
「ふーん」
「……」
何か言いたげなクリスからは黙って目を逸らす。俺の嗜好はおっぱいとロリだ。
「ま、とりあえず座りなよダクネス。要件は伝えた通りなんだけど」
「うむ。魔王討伐を目指すパーティーを組みたいということだな。望む所だ」
おお、やはりいい反応だ。今まで他からはその偏った性能で避けられていて、所属するパーティーを求めていたダクネス。そしてうちのパーティーの目的は魔王討伐、正義感があり過酷な道を自ら望む彼女ならば正攻法で食いついてくれるとは思っていたのだが。
「い、一応、俺は駆け出し冒険者で足引っ張るかもしれないんだが……本当にいいのか?」
「もちろんだ! 弱きを助けるのは騎士の務め、それにこれから強くなっていってくれればいい」
言葉通りなら格好いいんだけどなー。たぶん身代りになってモンスターからボコボコにされるの楽しみにしてるんだろうなー。顔赤いし微妙にはぁはぁしてるし。
とにかく、これでダクネスを確保、後はめぐみんとアクア様だな。本当に順調だ。
「ん? 何やら向こうが随分騒がしいな」
酒場の喧噪は何時ものことだろうが、一際大きく騒いでいる連中がいる。歌い踊っているご機嫌な連中に目を向けると。
げぇっ! カズマ!
奴がいた。アクア様もだ。そうだ、工事の後風呂入ってギルドの酒場行くんだったあいつら。
カズマはともかく、俺はアクア様に面が割れている。下手に接触すれば面倒なことになりかねない。
「どうした、タクヤ? あの連中が何か……」
「いや、何でもない!」
「サトウカズマ……」
慌てて向こうから顔が見えないよう背を向けるが、クリスが怯えたように奴の名を口にしてしまう。
「サトウカズマ……あの細身の奴か?」
「き、気をつけなよダクネス、あの男は――」
あ、やべ。
止める間もなく俺がクリスに語った、カズマの外道エピソードがダクネスに教えられる。
らめぇー! クリスさんもうやめて! ダクネスさん凄い興奮してる、めっちゃ興奮してるから!
「そ、そんな、恐ろしい男なのか、あのサトウカズマは……」
「は、はい! だからダクネスさんはあんな男に近づいちゃダメっす! 絶対ダメっす!」
「……うむ、そうだな。あ、パーティーの件だがちょっと保留にさせてくれ」
はい、これはダメな奴ですねわかります。クソァッ!
頬を紅潮させて目を潤ませているダクネスはとても色っぽい、色っぽいのだが視線はカズマに釘づけ。
おいおいおい、これ原作通りじゃね? カズマの悪い噂聞いて接近するダクネスってそのまんまじゃね?
どうしてこうなった。もう三回目だ、いい加減にしろ。
確かに俺の撒いた種だ。カズマを踏み台にしようとした罰とでも言うのだろうか。
何とか挽回策をと考えるがすぐには思い浮かばず、ダクネスはまた返事をさせてもらう、と席を立って行ってしまった。
「えっ、えっ、ダクネス、ちょっと! ……どうしたんだろ」
熱に浮かれた様子でテーブルを離れていったダクネスに、クリスは理由がわかっていないようだった。
あー、クソ! めぐみんは絶対押さえるからな!
原作主人公を踏み台にして成り代わりハーレム出来る思った?
おのれ主人公(真)!