俺の素晴らしい世界に祝福を!   作:蒼樹物書

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この素晴らしい現代知識無双(嘘)に祝福を!

 「「ばっくれつ、ばっくれつっ」」

 

 爆裂しろお前ら。

 カズマ達の様子を伺い、観察。改変が起こっていないか確認するというが、実際にやっているのはただのストーカーだった。

 

 あれから、アニメ版の話の流れを一度整理した。まずは正しい流れを再度確認する為だ。記憶のみが頼りだがアニメ版は何回か見直しているので、ある程度は正確なはず。

 まず、今俺が新しく習得した潜伏スキルを使って後を付いてきている通称爆裂デート。めぐみんの一日一爆裂の為、デュラハンのベルディアの居城に毎日赴くという話だ。

 

 一応、覚悟していたのだが、これがキツい。

 朝からカズマ達のいる小屋に行き、めぐみんが訪れるまで待つ。

 それは朝だったり、昼だったり。夜までかかることはないが、めぐみんが訪れる時間はまちまちだ。

 で、仲睦まじく古城へ向かう二人にこっそり付いていって爆裂鑑賞。

 めぐみんを背負って帰るカズマに指をくわえながらまた付いていく。

 

 これを毎日。

 毎日だ。

 

 既に十日以上続いている。

 クリスにはしばらくソロで鍛えたい、と言って出かけている。クリスはクリスで別の用事、まだ俺には秘密のようだが神器回収をしているようだ。

 

 そろそろ俺の我慢が限界近い。

 このストーキング行為の必要性について何度も頭の中で考えている。何が悲しくてカップルのデート覗かなければならんのだ。何時終わるんだ。早く来いよ首無し野朗。

 

 「エクスプロージョンッ!!」

 

 たーまやー。

 ずん、と腹に響くような爆発音、一瞬遅れて届く爆風。今日は一段と良い爆裂だ。カズマの採点後、何時ものように帰る二人。そしてそれにこっそり付いていく俺。ナイス爆裂。バッドストーキング。

 

 

 さて、そんな毎日を続けつつもいくらか余暇がある。

 毎日の爆裂魔法に怒った魔王軍幹部、ベルディアが来るまで他に大きなイベントはない。

 ダクネスは実家で筋トレ、アクア様はバイトしている。たまに店先でキャベツだのコロッケだの売ってるアクア様を遠目に確認するくらいだ。

 

 余った時間はレベル面と資金面の強化に使う。

 と言っても資金面の強化、つまりは金稼ぎはレベル向上に繋がっている。

 レベルを上げるには俺が知る限り二つ方法がある。これまでのようにモンスターを倒す、もしくは経験値の上がる物を食べるかだ。前者はクエスト報酬やモンスターの肉がお金になるのが利点。後者は金はかかるが安全性の高さが利点だ。安全性の高さは蘇生不可能な転生者の俺にとっては大きな利点となる。

 

 そして後者にはもう一つ、拘束される時間が比較的少ないという利点がある。

 これは俺にとってかなり重要なポイントだ。今後もカズマ達の動向を確認する以上、時間的な拘束はどうしても長くなる。そうなるとクエストでレベル上げというのが難しくなるのだ。

 

 だから俺は後者、経験値の上がる食べ物やアイテムでレベルを上げていく方針にした。

 しかしそういった食べ物やアイテムは当然だが高価、貴族達の食べ物だ。金がかかる。それはもうとても。

 この間のレタス……原作ではキャベツだが、出来の良く経験値の詰まった物は一玉一万エリス。貨幣価値は大体一エリス一円だから、レタス一玉が一万円。それでもレベルがいくつも上がるわけではない。

 

 どこまでレベルを上げるか、という問題もある。

 介入するという以上、仮想敵はある程度見えている。まずはベルディア、そして冬将軍、場合によってはミツルギも。後は……あれは流石にどうしようもない気がする。何かしら考えておくべきだが……まだ時間があるから先送りだな。

 しかし揃いも揃って強敵ばかりだ。チート級の強さであるクリスの協力を想定しても生き残る自信すらない。

 となると、レベルは可能な限り上げるしかない。想定外の状況に介入する必要がある以上、スキルも幅広く取る必要もある。

 

 というわけで金稼ぎだ。

 時間が多くかけられないという問題から、選んだ方法はアイデア商品の販売。

 要は原作小説でカズマがバニルと協力して稼いでいた方法を真似させてもらう。

 正直かなり悩んだ。それこそ、この世界に大きな影響を与えることではないかと。しかし強力な仮想敵に対応しなければならない以上、レベル、つまり金は必要。ジレンマに陥った。

 他に何か手を思いつけばいいが、時間は有限だ。そこで少しずつ、状況を見つつ売る物を増やしていくことにした。

 商人とコネを作り、アイテムを作ってくれる業者を探してそれを卸して販売してもらう。

 自身でも鍛冶スキルを取って作る。別の目的でも取るつもりでいたので丁度いい。

 

 そんな毎日を送っていると、ある日。

 ついに、というか漸く、奴が来た。

 

 

 曇天、雷鳴響く中。

 魔王幹部、ベルディアさんはそれはもうお怒りだった。

 カズマ達の後ろでこっそり様子を見守る。めぐみんを糾弾するベルディア、あまりにも正論だ……そりゃ怒るわ……性質の悪いピンポンダッシュどころじゃないもんな……。

 

 とりあえず二人のやりとりに異常は見られない。滅茶苦茶な説明をするめぐみんも原作通りだ。

 で、結論から言うと何も問題、改変は起こらなかった。前に出るアクア、めぐみんを庇って死の宣告を受けるダクネス。ベルディアが帰った後、即アクア様が解呪。あれ、普通に四話終わったな。

 何だか拍子抜け。良いことなんだが……勝利の花鳥風月で場を盛り上げるアクア様を背にその場を離れる。

 

 

 

 「タクヤ君」

 

 宿に帰り、アイテム作りをしていると部屋にクリスが訪れた。朝や晩、顔を合わすが最近あまり話していない。

 それぞれに用があり一緒に行動していなかったのと、内心魔王討伐を諦めている後ろめたさから俺自身が距離を取ってしまっているからだ。

 

 「明日、久々にクエスト行かないかい?」

 

 聞くと、用事が一段落したらしい。既に目ぼしいクエストも見つけたきたとのことだ。

 ク、クエストかぁ……この後、湖浄化のクエスト、ミツルギとの勝負とイベントが起こるはずなので目を離したくないのだが……。

 今日のベルディア襲来は特に問題が起こっていなかった。それだけで次に異常が起こらないとするのは危険にも思うが……クリスはやる気だ。実はやんちゃとはアクア様の評だが、冒険とか結構好きらしい。

 わくわくしているクリスの視線が突き刺さる。

 

 「……ダメかな?」

 

 上目遣いでそんな不安そうな顔で聞いても駄目だからな! 絶対に屈しないからな!

 

 

 ひぎぃ。

 姫騎士ばりの即堕ちでした。俺はクリスと共にアクセルの町から少し離れた場所、森の奥深くまでやってきていた。

 なおクエスト内容は、グリフォンとマンティコアが縄張り争いをしているのでまとめて討伐して欲しいというやつだ。いや待てよ。

 

 「なぁ……やっぱやめないかクリス……」

 「大丈夫大丈夫! いざとなれば私一人でもやれるから!」

 

 憂鬱な俺と対照的に楽しそうなクリス。このクエストをやる、と聞いた時は必死に止めた。それはもう必死に。確かアニメで少しだけ言及があった気がする。文句なしに危険なクエストだ。

 あー……確かあの首無し野郎のせいで弱いモンスターが姿を見せなくなっているんだっけか……おのれ……。

 

 だが結局俺はクリスに押し切られ、こうして森を歩いている。出来る限りの準備はしてきたが……死んだら蘇生できないのだから慎重に動きたいと思った矢先にこれだ。

 グリフォンにマンティコアと言えば、割とゲームなどでもメジャーなモンスターになる。

 マンティコアはともかく、グリフォンは鷲の上半身に獅子の下半身だっけか。確か紅魔族の里に石像……石化の魔法で固められたのがいたはず。後は少なくとも俺の記憶では原作に登場したことはないはずだ。

 俺のレベルも少しずつ伸ばしてはいるが、それでも危険には違いない。どうしたものか。

 

 「……いた。潜伏、使うよ」

 「了解……」

 

 クリスの敵感知に引っかかったようだ。揃って潜伏スキルを使用して見つからないよう身を潜める。

 黙したまま森の少し開けた所を指すクリス。それに従いゆっくりとそちらへ進むと、段々と獣の咆哮が聞こえてくる。二匹分、今正に争っているようだ。

 ゆっくり、ゆっくりと気づかれないよう接近。いよいよその姿を捉える。

 

 グリフォン。やはり想像していた通りの姿形。見るからに鋭い嘴に前脚となっている鉤爪。

 マンティコア。真紅の獅子、頭は人のそれに近い。尾にはサソリのような針が付いている。毒針、だろうか。

 

 あかんガチな奴やこれ。

 隣のクリスに小さな声で、しかし必死に懇願する。

 

 「不味いって! 明らかに俺のレベルでどうこうできないって!!」

 「うーん、それじゃグリフォンの方を私がやるから、マンティコアの足止めだけしてもらえるかな?」

 

 譲歩してくれているようで無茶振りだ。お家帰りたい。

 

 「タクヤ君もそろそろ格上との戦闘も慣れた方がいいよ?」

 

 曰く、魔王討伐の為にもそろそろ次の段階に進むべきということだ。

 そんなやる気に満ちた顔で言われると断りづらい。そもそも魔王討伐自体諦めてることも言えない。

 ええい、くそ!

 

 「……わかった、準備するからちょっと待ってくれ」

 

 足止めだけとはいえ正面からいけば間違いなく死ぬ。グリフォンとの戦いっぷりを見るに、足は早いしその牙や尾の針を捌ける気がしない。用意した物を全て使い切るつもりでやるべきだ。

 

 「よし、俺がマンティコア、クリスはグリフォン。同時に仕掛けよう」

 

 準備完了。弓に矢を番えて、クリスに声をかける。

 クリスは片手にダガー、もう一方には石を手にしている。

 左右に別れて遠距離攻撃、目標を引き離して一対一の状況を二つ作るわけだ。ただしこちらは足止めが本分。

 倒せてしまえば一番いいが、欲を出して死ぬわけにもいかない。

 弓を引き絞る。狙いを定める。

 

 クリスへの合図。矢を放つ。

 

 「「ギャウゥッ!!?」」

 

 ほぼ同時、俺の矢がマンティコアに、クリスの投石がグリフォンへと命中した。

 クリスは木の陰から躍り出て迎え撃つ。狙い通りグリフォンは向こうに行ったようだ。

 

 さて、こっちは。

 

 「グルルルゥ……ッ」

 

 かかった。

 マンティコアは人面に近いその顔を怒り狂わせてこちらに向かってくる。

 俺も身を晒して注意を引く。よし、いいぞ……来い……来い……!

 

 「ガァッ!!」

 

 少しふら付きながらもこちらへ駆けるマンティコア。

 初撃の矢には毒を塗ってある。しかし大きな体躯の奴を即死させるには至らないようだ。毒に耐性があるかもしれない。だが、まだだ。

 

 がちん、と金属音。

 マンティコアがその激痛に咆哮し足を止める。

 

 トラバサミ。

 鍛冶スキルで自作した罠だ。バネ仕掛けにより、中心部に圧がかかることで対象の足を挟み込むという物だが今回使用しているのは熊などの大型獣を想定した大きく、そして挟む力の強い物だ。人間が踏むと足が折れるどころか骨を粉砕できるレベル。

 しかし大型の猫科動物を思わせる太い足を持つマンティコアに対してはそこまでの効果はないようだ、突然の罠に暴れてはいるがこれで決定打にはならない。

 

 「……ティンダー! おらッ!」

 

 なので次。

 習得した火の初級魔法、ティンダーでそれに火を灯して投げつける。

 頭に命中。投げつけたそれ、瓶が割れると同時にマンティコアが火達磨となる。

 火炎瓶。

 製造が容易な手投げ弾の一種だ。全身が毛に覆われている獣相手、よく燃える。

 燃えすぎて火災が怖い……開けた場所だが、周囲に火が回るようならクリエイトウォーターで消火しないとな。

 これだけやれば、これ以上姿を晒す意味はない。

 傍に掘ってあった穴に身を隠す。

 携帯用のシャベルで作った即席の塹壕。タコ壺という程の深さもないが、相手は獣ではなく魔獣。火でも吹いてくる可能性は無視できない為、用意したものだ。

 

 後はマンティコアが早く力尽きてくれるのを祈りながら矢を撃ち続ける。

 

 「ガアァァァァ!!」

 

 ひっ。

 目の前の地面に針のような物が突き刺さる。

 見れば毒々しい色合いの液体が纏わりついており、どうもマンティコアの尾先から放たれたらしい。毒針飛ばすのかよこいつ。慌てて身を隠す。

 

 「グア、ガ、ァ……」

 

 どさり。断末魔の声を上げて、ようやくマンティコアが地に倒れる。恐る恐る確認すると、あちこちに矢が突き刺さった上に黒焦げになって完全に絶命したようだ。とりあえず火災の危険性もなし、と……クリスがこちらに駆けて来る。向こうも決着したようだ。

 

 「……うわぁ」

 

 やったぜクリス! マンティコア倒したぞ! と意気揚々と立ち上がって迎えようとしたら、クリスさんは頬を掻きながらとてもドン引きされておられました。なんでだ。

 

 「いや、確かに内心荷が重いかなぁ、と思って戦いながら様子見てたんだけどさ」

 

 マンティコアと同等に強力なグリフォンを倒しつつ、こっちも見てたとか流石だな……俺の方はこれだけ準備しても余裕なんてなかったっていうのに。最後の毒針当たってたら死んでたし。

 

 「……ファンタジー感ゼロだね、さっきの戦い方」

 

 ……俺もそう思う。




次回首無し野朗、再襲。
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