その三日後、曹操は老人を呼んだ。顔を会わすと同時に、疑念を尋ねた。 「御老人は、呂布は項羽の生まれ変わりだと言っていたが?」 「ええ、そうです。唯・・・・・。」 老人は、そこまで言って口を閉じた。 「唯?」 「実は、呂布に関してはもう一人候補がいます。」 「もう一人?それは誰かな?」 曹操が苦笑しながら問いただすと、「魏王様は誰だと思いますか?」と、白髪の男が逆に笑顔で訊いてきた。曹操はまたしても苦笑し、少考し始めた。
「鯨布と呼ばれた英布だろう。」 数分後に曹操が口を開くと、そのとおりですと、老人は頷いた。それを見て曹操は笑い出し、「それでは呂布に対して二人の候補の人物がいることになる。そなたの説は怪しいではないか?」と、問い質した。老人は困惑した様子を見せながらも、次のように弁明した。「確かに、その人物に対してはそうです。それ以外の人物には自信がありますが・・・・。」
「例えば?」 「まあ、今ではなく前世の人物で言うと、張良や劉邦がそうです。それ以上は言えませんがね。」老人はそう言って微笑んだ。
曹操は少しの間の後、「それでは確実なことは、私が項羽や英布の生まれ変わりではないということだな?」と言って笑った。「ごもっともです。何より、その二人には似ていないでしょう。」と、 老人は笑みを浮かべながら説明した。
曹操は暫し黙考していたが、やがて口を開いた。 「御老人、劉邦の生まれ変わりなら、もう一人候補がいる。この前私が言った袁紹が違うならね。」 曹操は既に袁紹と覇権争いをし、彼を滅ぼしていた。今は亡き人物の話題である。その言葉に対して、老人は静かに説明し始めた。 「先日は意外な名に驚きましたが、確かに言われてみればありえます。袁紹殿もね。」「そうだろう、優柔不断なところなど似てるとおもうが・・・・・。」 曹操はそう言ったが、老人は首を傾げながら、無言で応対するだけだった。 「違うかな?」「ええ、私の分析ではその人物ではないのですが・・・・・。」 老人は、静かに否定した。 「それはどういうことかな?」曹操は続けた。「その答えは約束の日に。」「分かったよ。唯、私は劉邦ではないのだろう?」「勿論です。ただし共通しているのは、天運があったことでしょう。」老人は新たな意見を言い放った。 「私と劉邦に天運が?」曹操は驚いた顔で訊きかえし、さらに続けた。「では、まだ天下統一を果たしていないが、これから可能だと?」「それは分かりませんが、既に三国の内最大勢力ではありませんか。」 その老人の言葉に魏王は確かにと頷いた。この国の六割以上を彼が治めているのだ。だが、今後の展開が予測できれば申し分ないから訊いたのだ。
「もう少し考えてみるよ、御老人。」 曹操は退室した。