その二日後、曹操は白髪の男を呼び、転生輪廻の話から始めた。 「王として生まれた者は、次の世でも王になるのかな?」 「それは定かではないようです。仏教僧の話では・・・・・。」 老人がそう答えると、「例えば?」と魏王が問い質した。 「例えば・・・・・、前世が姫の場合は次の世では不幸な境遇だし、殺したりすると殺されたりとか・・・・・。」 老人が答えると、「なる程、貸し借りのようなものか。」と曹操は頷いて、少考し始めた。
数分後、曹操は沈黙を破った。 「それならやはり、袁紹は劉邦の生まれ変わりだろう?」「魏王様の、袁紹説ですね。」曹操の言葉に老人はそう説明し、その後は沈黙していたが、魏王の方から違うかなと続けてきた。 「さあ、どうでしょうか。」老人は首を傾げたが、曹操は続けた。 「漢の高祖の三傑の内、韓信と張良がいなければ袁紹と似たようなものだと思うが・・・・・。」 「確かに或る意味ではそうかも知れませんね。」少しの間の後、老人は静かに頷いた。 「あの時代に、地味ながらも重要な食糧補給の任務を果たしたショウカも偉大な功労者だったが、誰でも出来る仕事だ。やはり、外交や内政に手腕を発揮した張良、天才将軍の韓信だろう。特に韓信だ。」 魏王の言葉に老人は黙って耳を傾けた。 曹操は構わず楚漢の時代の人物評を続けた。「項羽は戦略が無かったし、敵を作りまくった。劉邦はその勢力の一部をまとめたに過ぎず、天下は獲ったが無能に近い。私に言わせれば、項羽がいなければ、今は亡き袁紹と変わらない。」 曹操の自慢げな分析に、老人は頷きながらも沈黙を続けた。
「四百年前は運があったから天下人になれたが、今回は私に滅ぼされたのでは?」 「なる程、一理ありますね。」 老人は、魏王の劉邦や袁紹を見下した発言にも、白髪を触りながら同意した。そして胸を張って、自慢げに語った。「そうです。ですから、魏王様と漢の高祖には天運があったのです。」 「私と劉邦に?」 曹操は顔をしかめ、「もう一度訊くが、私は劉邦の生まれ変わりではないのだろうね?」と尋ねた。「恐らく、ただし劉邦殿が袁紹殿という説はうかびませんでしたよ、私にね。だから考えたことがないのです。もう少し時間がほしいのですが・・・・・。」 老人は魏王に頼み込んだ。「いいだろう、その返答が楽しみだ。」 曹操は微笑みながらそう言った。それに対して白髪の男は笑顔で、それでは失礼しますと退室した。魏王の鋭い指摘に、聡明さを感じる同時に、困惑も持ったのだ。