りぜろぼつSSしう   作:カリフォルニア饅頭

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ひとところ流行った『傲慢』スバルなるものを書こうとした結果。どうしてこうなったのか。


傲慢なる主従

 

 走る。ただ、走る。ほの暗い廊下を、ただ駆け抜ける。踏みしめる足に、硬い感覚。この廊下の床はどうやら、何かの金属で出来ているのだろう。聞こえるのはタンタンタンと、自分の足が立てた音だけ。

 そうしてどれだけ走ったのだろうか。やがて、行く先に部屋のようなものが見えてくる。それを見つけて、走る速度を更に上げる。

 ――あそこに、きっと彼がいる。

「着いた!」

 廊下を抜け、部屋のようなところに着く。そびえ立つ丸い柱を中心に円く広がるほの暗い部屋。柱のそばに人影を認めて、エミリアは確信する。――彼だ。

「……久しぶりね、スバル」

「……やあ、エミリアたん。久しぶり。ホントにこんなとこまで来るなんてね」

 彼の表情は、かつてと全く変わらない。自分に向けられる、親しげな微笑。それが、この場所の異様な雰囲気と相反していて、いわく言い難い違和感を感じる。そんな中でも、久々に彼を見て高鳴る鼓動。やっぱり、自分は彼のことを。

 でも、彼はそんなことお構いなしだ。とーへんぼくめ。

「どうやって、サテラとパンドラの守りを抜いてきたんだ? 弱っちい俺ならともかく、二人が守ってるんだ。どうやったって抜けやしないと思うんだけど」

「言ったでしょ? たとえ大瀑布の向こう側だって、追いかけてって連れ戻すって」

 そうだ、自分はあのときに誓った。彼を、必ず取り戻して見せると。

「ラインハルトやユリウス、ヴィルヘルムさんにロズワール、ミミさんたちやガーフィール、ラムとレムにシャウラ、ベアトリスにフェリス、プリシラさんやクルシュ様。皆が力を貸してくれたの。――あなたを取り戻すために」

「そうか、それでさしもの二人も守りきれなかったってことか。でも、俺なんかにそこまでする価値なんて無いぜ?」

「それは私たちが決めることよ、スバル。それに、ホントはそんなこと、欠片も思ってないんでしょう?」

「……なんだと?」

「皆に追いかけてきてほしい。自分はそれだけの価値がある。口では謙虚を装っても、ホントはそう思ってるの、知ってるんだから」

「……どうして、それを」

 図星を突かれた様子のスバルが、うろたえている。そんなの、当然だ。こっちが、一体どれだけあなたのことを想っているのかなんて知りもしないくせに!

「あなたが変わってしまってからも、ずっと見てたもの。それにスバルのこと、全部知りたいから。」

「全部知りたいだなんて、ずいぶん傲慢な願いだね。エミリアたん」

「そうね。でも、あなたもそういう風に知って欲しいんでしょ、スバル? ――それこそ、傲慢に」

 お互いのことを、傲慢だと言い合う主従。誰か見ている人がいたら、それこそすごーくおかしい光景かもしれない。それでも、言葉は止まらない。

「驚いた。俺の考えが浅いとはいえ、本当に何でもわかってるんだね。エミリアたん」

「またそんな思ってもみないこと……。でも、知っていてもイヤだって思うこともあるもの」

「そうだな。ほら、俺ってみみっちくてせせこましい人間だし。そのなかでも、例えばどんなところ?」

「そうね。……例えば、私たちの意見も聞かずに、勝手に世界をしゅーせー? しようとしてる所とかよ」

 スバルの表情が、苦々しいものに変わる。彼が今しようとしていることに否定を突きつけたのだから、当然といえば当然である。

 そうだ、知っていることと、それを受け入れることは別だ。それがお前たちにとって幸せなんだと、こっちの意見なんて知ったこっちゃないといわんばかりに救いを押し付けてくるのが、すごーく気に食わない。

「困っちまうぜ。そんな事いわれても、こうしたほうが皆にとって幸せだろう?」

「それが、傲慢だって言ってるのよ、スバル? それを決めるのは私たち。そして、少なくとも外でサテラとパンドラを何とか抑えてる皆は、そうは思わないみたい。――もちろん、私もそう」

 当然だ、自分の道は自分で選ぶ。そんな、押し付けられた救いなんていらない。スバルのいない世界なんて、いらない。

「自分と引き換えに、世界を変えようだなんて傲慢、許さないんだから。勝手に、スバルのいない世界にしようだなんて間違ってるわ。私が望むのは、どんなに辛くても、スバルがいる世界。たとえそのために、救われるはずの人が救われなくなったとしても、私はあなたを望みます」

「エミリアたん、傲慢だね」

「スバルには、負けるわ」

 スバルが、目をつぶる。もう交わす言葉なんて無いと言わんばかりに。そうして、いつかの王都で見せたように、右腕を挙げて指を天に突きつけ、左手を左斜め下に向けて伸ばす。足を開いて、全力で、どうだかっこいいだろうと言わんばかりの表情で。

「――俺の名前は、ナツキ・スバル。無知蒙昧な一文無しにして、魔女教大罪司教怠惰、強欲、暴食、憤怒、色欲兼『傲慢』担当!」

 名乗りを上げた。なら、私も返さなくっちゃ。いつか、聖域で魔女を前に名乗ったのと同じように。ぴんとまっすぐに突き出した右腕と指を天に掲げる。左手は斜め下で、足は肩幅。そしてなにより、自信があるかのように胸を張って。愛しい彼に名乗りをあげる。

「――私の名前は、ただのエミリア。今は、一人の愛しい人を取り戻しに来た――ただのめんどくさい女!」

 主従そろって、何をやっているんだろう。でも、これはきっと必要なこと。さあ、最後の仕上げよ。

「サテラには悪いけど、今度こそ私のところに戻ってきてもらうわ。私の騎士、ナツキ・スバル! ――私のお腹の、この子のためにも!」

 瞬間、正しく彼の表情は凍りついた。うん、びっくらこいてる。意趣返し、成功!――ここまで来るの、すごーく大変だったから、これくらいは許されるわよね?

「え、エミリアたん……? そんな、嘘だろ……?」

「もちろん、嘘よ!」

 きっと今自分は、これ以上無いほどの笑みを浮かべているのだろう。

「え、エミリアァァァァ」

 おちょくられた彼の怒りなんてどこ吹く風。最後の一言を紡ぐ。

「さあ始めましょう、スバル! 私とあなたの、三度目の大ゲンカを!」

 スバルは、見えない手なんて厄介なものを使うし、触っただけでもこちらの記憶を消してくるか、そうでなくても姿を変えられてしまう。さらに呪いでこちらの正気を奪ってくるから、時間制限まである。おまけに、限定的ではあれど、無敵にだってなれる。どう考えたって、厄介極まりない相手。倒せるはずなんて無い。――でも、負けられない。負けてなんて、あげない。絶対に、取り戻すのだ。

 傲慢な主従の、世界を巻き込んだ盛大な痴話喧嘩が――ついに始まる。

 

 





没理由
①なんか、謙虚っぽくない(傲慢の大罪司教なので普段の振る舞いは謙虚?それっぽくしようとして失敗)
②エミリアたんがこんなこと言っているのに違和感
③これ、リゼロじゃなくてスクライドじゃね?
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