もしも大洗に来たのがまほだったら   作:イティ

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○月=×日
大会が近付いてきた。
私は隊長である『彼女』を支える立場だ。
『彼女』のことでどう考えていようと、彼女を支えなければならない。
目指すは優勝
でも、このまま行ってしまったら一体『彼女』はどうなってしまうのだろうか。




○月=△日
戦車道の仲間のAが相談に来た。
Aも戦車道の時の『彼女』がまるで『あの人』のようだと言っていた。
別の人格が形成される際に基になるものがあるとしたら、『あの人』についての記憶だろう。




○月=□日
もう一つの人格には自分が本来の人格ではないという認識はあるのだろうか。
もしあるのなら、『彼女』を救うことができるかもしれない。
救うという表現が正しいのかはわからない。
実際、本来の『彼女』は戦車道の時の『彼女』のおかげで守られているからだ。
一体どうするのが正しいのか、わからなくなってきた。

本来の『彼女』が相談に来た。
戦車道とは全く関係ない学校での日常生活などの記憶も無くなってきたと言っていた。
それと、記憶が無くなる直前に頭痛がするという。
相当おびえていた。
だが、あの事を話すわけにはいかない。
苦しい。
何もできていない。
他のチームメイトは何も知らず『彼女』について行っている。
おかしいとは微塵も思わないのだろうか。




○月=■日
大会の抽選が行われた。
『あの人』が大洗女子学園という学校の隊長として現れた。
仲間たちは驚いていた。
当然だ。
私と『彼女』は聖グロの隊長から聞いていた。
ただ、聞いていたのは本来の『彼女』なので、戦車道の時の『彼女』は知らないはず。
抽選会後にルクレールに行ったところ、偶然『あの人』と出会った。
『あの人』のチームメイトであろう人たちも一緒だった。
私たち黒森峰とは違う、普通の人という印象を受けた。
『あの人』も同じように『彼女』に対して違和感を抱いていたのだろうか
・・・もしそうなら『あの人』ならなんとかできるかもしれない




▲月|日
サンダース大付属に無事勝利した。完勝だった。
まるで『あの人』の立てるような作戦で。
サンダースの隊長はフレンドリーだった。
『あの人』の事も知っていたようで、『あの人』とそっくりだと言っていた。
・・・同じ流派なのだから似ているのかもしれない でもどうしても気になる
・・・やはり戦車道の時の『彼女』は『あの人』を基として形成された人格なのだろうか




▲月×日
『あの人』の試合を戦車道の時の『彼女』と一緒に観戦しに行った。
『あの人』にしては珍しい、有利な状況を作って一方的に攻撃するというものだった。
戦車数の差があったので仕方がなかったのかもしれないとは思う。
ただ、『彼女』も同じ戦法を思いついていた。
・・・戦車道の時の『彼女』が『あの人』を基として形成されたとみて間違いない




▲月―△日
『あの人』の試合を観戦しに行った。
決着がついた時、何が起こったかわからなかった。
戦車道の時の『彼女』の予想は、Ⅲ突で狙い撃つというものだった。
その通りだったと言ってもいいかもしれない。
・・・戦車道の時の『彼女』が『あの人』を基として形成されたのなら、予想が当たることも当然だろう




▲月―■日
アンツィオ高校に無事勝利した。圧倒的だった。
ハリボテでこちらを足止めしようとしたのだろうが、そんなことは全く意味がなかった。
試合後、アンツィオが恒例の食事会を開いた。
戦車道の時の『彼女』はカレーばかり食べていた。
人格が変わると好みまで変わるのだろうか。
そもそもなぜイタリア料理でもないカレーがあるのか まったくわからない。
・・・最後はどうでもいいことだった
・・・でも、好みが変わることはあり得るのかもしれない




▲月―○日
普段の『彼女』が相談に来た。
なんと、一日中記憶がない日が何度かあるという。
戦車道の試合の日だけでなく普通の日まで記憶がないと言っていた。

・・・このままでは普段の『彼女』の人格が消え、戦車道の時の『彼女』の人格だけになってしまうかもしれない
・・・一体どうすればいいのか 考えよう





▲月=@日
『あの人』の試合を見に行こうと思った。
だが、戦車道の時の『彼女』は西住流の次期家元である母と見に行くと言った。
なので行かなかった。
・・・このファイルをまとめることに専念する

後で結果を聞いたところ、『あの人』が勝利を収めた。
フラッグ車は護衛に任せ、Ⅳ号とⅢ突の2両でフラッグ車を撃破したそうだ。
仲間を相当信頼しているのだろう。
私たちは信頼されていたのだろうか。
私たちは信頼に応えることができていたのだろうか。




▲月=×日
プラウダとの試合は勝利を収めた。
西住流そのものと言えるような戦い方だった。
戦車道の時の『彼女』はまるであの人のようだが『彼女』は『あの人』ではない。
以前、普段の『彼女』から聞いたことがある。
『自分だけの戦車道を見つけなさい』と言われたそうだ。
これでは『彼女』の戦車道ではない。
『あの人』の戦車道だ。
・・・だが、黒森峰の生徒が求めていたのは『あの人』の戦車道だ
・・・こうなってしまったのも仕方のないことかもしれない




▲月=△日
こうなったら戦車道の時の『彼女』と直接話すしかない。
・・・考えはある
下手すれば本当に戦車道の時の『彼女』の人格だけになってしまうかもしれない。
・・・でも、何もしなければいずれそうなる
・・・やるしかない




第7.5話「Mファイル」

 

 

「隊長」

「エリカか どうした、こんな時間に」

「話があります 外で話しましょう」

 

 

「話とはなんだ」

「隊長は二重人格というものをご存じですか?」

「……1人の人間の内に、2つの人格があること でいいか?」

「その通りです 1つの人格が表に出ている間、もう1つの人格にその間の記憶はない

 そうです」

「…………」

「隊長、単刀直入に申し上げます  隊長は二重人格です」

「……何を言っている、エリカ  私は西住みほだ」

「私は黒森峰に入ってからずっとあなたと いえ、西住みほとともに戦車道をしてきました

 あなたはそのころの西住みほとは違う あなたは西住みほのもう一つの人格です」

「……根拠は」

「記憶がないときがあるでしょう」

(…………)

「あなたにはその自覚はないかもしれません でも、事実なんです」

「……いつから気づいていた?」

(……気づいていた?)

「気づいていたか、と聞くということは自覚しているんですか?」

「ああ」

(!)

「私は西住みほを守る為に生まれた人格だ 自覚はある いつから気づいていた?」

「……今のあなたが出てきた頃から、違和感を持っていました みほから相談を受けた時から

 調べ始め、この結論にたどり着きました」

「……そうか」

「守る為、というのはまわりの重圧から……」

「そうだ 西住みほは西住まほではない、だが周りのほとんどはそれをわかっていない

 エリカ、お前は分かっているようだな」

『……当然よ みほは大切な仲間だもの』

(?)

「エリカ?」

『わたしも いえ、逸見エリカも、二重人格よ』

(!?)

『とは言っても二重人格になったのはごく最近だし、互いに互いのことを認識しているわ』

「一体、なぜ」

『みほを救えないことに、エリカは苦しんでいた だからわたしが生まれた 協力してくれる

 人が欲しかったのでしょう みほを救うために あなたの様子がおかしいと思っている者は

 いるものの、本当のことを話すわけにはいかないから』 

「私は西住みほを守っている 何の問題がある」

『みほの人格が表に出ている時間がどんどん短くなっている』

「…………」

『つまり、守るべき人格がどんどん薄くなっている 言いたいことは分かるわね』

「……ああ」

『考えがあるの』

「……どんな考えだ」

『決勝戦をみほに任せる』

「!? 何を考えている!?」

『その気になればあなたが表に出てこない、ということも可能でしょう? きっとうまくいく

 そうすればみほは変われる』

「……どうなっても知らないぞ」

『 "あの人" に託すのよ 西住まほに』

(西住まほに託すだと? 西住みほがこうなった原因は彼女が作ったようなものだぞ)

「正気か?」

『ええ』

「……いいだろう」

(うまくいくとは思えない そんなことで……)

『頼むわね』

「ただし、もしそれによって西住みほが傷つき立ち直れなくなったら、西住みほは私が守る」

『……ええ』

(あの人なら絶対に……)

「……もう一人の私から話は聞きましたね」

「ああ」

「話は以上です 失礼します」

(……エリカ)

 

 

 

 






▲月=□日
このファイルを『あの人』に渡すことにした。
きっと、『あの人』なら・・・
・・・お願いします 『彼女』を、みほを助けてください


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