もしも大洗に来たのがまほだったら   作:イティ

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第1話「戦車道」

ジリリリリリリ   バンッ

(大洗女子学園での生活が始まって早数日 そろそろ行動を起こさなければ……)

 

 

「ごちそうさまでした」

(……そろそろ出るか)

バタン  ガチャ   ガッガッ

「……よし」

 

(パン屋は相変わらずいい匂いだ 今度買ってみるか ……ん?)

「あ~……」

「大丈夫か?」

「……つらい」

「?」

「なぜ朝は来るのだろう……」

「哲学だな  急がないと遅刻するぞ」

「ああ……」

「……肩を貸してやる」

「すまない……」

「毎朝こうなのか」

「眠い……  もっと寝ていたい……」

「気持ちは分かる だがな」

「麻子~! まさかまた?」

「お~、沙織ぃ~」

「まったく…… すいません、ご迷惑をおかけして」

「彼女の友人か?」

「はい、あとは私がなんとかしますから」

「そうか 遅刻しないように」

 

 

 

放課後

(さて、戦車道の…… そもそも戦車道を復活させるために誰に提案しに行けばいいんだ?

 生徒会でいいのか?)

 

 

 

(しかし、まともに取り合ってくれるだろうか……)

「誰だ? ここは生徒会役員以外立ち入り禁止だ」

「生徒会長に話がある 生徒会長はいるか?」

「会長は今、席を外されている  悪いがまた」

「かーしま 呼んだか?」

「会長 この生徒が話があると」

「ふーん 入って入って」

「失礼します」

「で、なに? 話って」

「戦車道を復活させようと考えています」

「!」

「ふーん なんで?」

「それは……」

「ま、いいや」

(え?)

「実は数年後に戦車道の世界大会があってさ、それに向けて力を入れるようにって文科省から

 お達しがあったんだよね だからどのみち復活させるつもりだし」

(なんだ、そうだったのか……)

「戦車道復活させるってことは経験者なんでしょ? じゃあさ、隊長やってくんない?」

「そのつもりです」

「よろしくね えーと……」

「3年A組、西住まほです」

「よろしくね 西住ちゃん」

「よろしくお願いします」

「別に敬語なんて使わなくていいよ」

「ですが」

「いいからいいから」

「……わかりました」

「ほら、早速」

「……わかった  で、いいのか?」

「うん」

 

「失礼する」

「…………」

「一安心ですね、会長」

「なにが?」

「戦車道経験者が見つかったことです それもやる気のある」

「そだね  でも、なーんか隠してそうなんだよなぁ」

「隠している?」

「『西住』ねぇ……」

 

 

 

 

数日後  昼休み

「今日は混んでるねー どうしよっか」

「どこか空いている席があればよいのですが……」

「あそこだめかな?」

「一人いらっしゃいますよ もしかしたら誰かを待っているのかも」

「あ、ほんとだ  あれ? あの人……」

 

 

(先日のオリエンテーションで戦車道のことも紹介された 人数はあまり集まらないかも

 しれないが……)

「あのー、すいません」

「……?」

(私に言っているのか?)

「やっぱり、この前の 麻子がご迷惑をおかけしました」

「あの生徒の友人か  学校には間に合ったのか?」

「はい、なんとか」

「お知り合いですか?」

「ちょっとね  ここ空いてますか?」

「構わない」

「ありがとうございまーす」

「失礼します」

「……2人とも2年生か?」

「はい それがどうかしましたか?」

「……いや、なんでもない」

「この前オリエンテーションがありましたけど、先輩は何を選んだんですか?」

「戦車道だ」

「戦車道!? 私たちもなんですよ!」

「……なぜ戦車道を」

ファーン ファーン

『普通Ⅰ科、3年A組西住まほ 普通Ⅰ科、3年A組西住まほ 至急生徒会室に来ること 以上』

「失礼する」 

「あ、どうぞ」

 

 

 

「呼び出されたから来たが、いったい何の用件だ」

「西住ちゃん 聞きたいことがあるんだけど、答えてくれる?」

「なんだ」

「調べたんだけどさ 西住ちゃんって、あの『西住』?」

「……そうだ」

「黒森峰にいたんでしょ? なんでこんな学校に?」

「それは……」

「あの噂、本当?」

「噂? なんのことだ」

「とぼけちゃってぇ 知ってるでしょ?」

「さあな」

「答えるまで帰さないよ」

「横暴だな」

「横暴は生徒会に与えられた特権だ」

「……破門の噂のことだろう  事実だ」

「だから戦車道を復活させようとしたんだ  仕返しでもするの?」

「いや、違う ただ……」

「ま、それはいいや  ごめんねー、勝手に色々調べちゃって」

「謝罪が軽いな」

「そう? じゃあ、代わりに何か聞きたいことがあったら何でも聞いていいよ 1つだけね」

(何でも……)

「……戦車道を復活させた本当の目的はなんだ?」

「本当の目的?」

「数年後に全国大会があるから力を入れる…… 本当にそれだけか?」

「どういう意味よ」

「20年も前に戦車道が廃止されたこの学校にそんな話を出すのか、仮に話が出たことが事実

 だったとしても何故、ほぼ何もないこの学校で様々な特典を付けてまで人を集めるのか」

「…………」

「そこまでしなければならない理由があるのではないか?」

「……いやー、鋭いね 降参」

「やはり何かあるのか」

「うん」

「会長! 本当に話すんですか!?」

「約束だからね」

「……それで、理由とは?」

「まだうちの生徒は知らないことだけど、この学校はここ数年、生徒数が減っているし大した

 実績を残していない だから文科省の学園艦統廃合の方針で今年度限りの廃校が決定した」

(!?)

「ただ、担当と交渉した結果、『戦車道全国大会で優勝すれば』廃校を免れることができる」

「……だから戦車道を復活させた」

「そう もう後には退けないんだよね」

(全国大会に出る…… そうなれば私のことも確実にお母様の耳にも入るだろう 私が西住流の

 戦いを見せれば、私が西住流だと証明することができれば……)

「……後に退けないのは私も同じだ 絶対に負けることはできない」

「協力してくれるの?」

「ああ よろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくね」

「話はそれだけか?」

「そだよ」

「では、失礼する」

「……西住ちゃん」

(?)

「     」

「何か言ったか?」

「……いや、何でも」

バタン

「会長、よかったのですか? 話してしまって」

「約束は約束だからね 口固そうだし大丈夫でしょ」

「会長……」

「ま、なるようになるよ」

 

 

(全国大会に出ることは黒森峰だけでなく西住流も敵に回すことになるだろう

 だが、私は『西住まほ』だ  菊代さんが言うように、戦車道をしない私は私ではない

 西住流の戦い方をしても、お母様は私のことを認めないかもしれない  それでも私の

 根幹は西住流にあることを示したい  私という存在のために……)

 

 

 

 

 





黒森峰女学園 

「隊長が転校した!?」
「……はい」
「どういうことよ」
「それは、その……」
「どこに転校したの? 答えて」
「……私も知らないの」
「はぁ?」
「…………」
「ちょっと! なんとか言いなさいよ!」
「……ごめんなさい」
「……もういいわ」

(隊長、どうして……)
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