「……ここですね」
――もういいから帰りな! いつまでも病人扱いすんじゃないよ! あたしのことはいいから学校行きな! 遅刻なんかしたら許さないよ! なんだいその顔、人の話ちゃんと聞いてんのかい? 全くお前はいつも返事も愛想も無さすぎなんだよ!
――そんなに怒鳴ってると血圧上がるってば
――あたしの血圧の心配する前に、自分の生活の心配するんだね!
(すごい剣幕だな……)
「か、帰ります……?」
「いえ、せっかく来たんですからここは突撃です」
「五十鈴殿って、結構肝据わってますよね……」
(確かに)
「失礼します」
「あ、華」
「失礼します」
「先輩にゆかりんも はいってはいって」
「なんだい? あんたたち」
「戦車道一緒にやってる友達」
「戦車道? あんたがかい」
「うん」
「西住まほです」
「五十鈴華です」
「秋山優花里です」
「私たち、全国大会の1回戦勝ったんだよ」
「1回戦くらい勝てなくてどうすんだい で? 戦車さんたちがどうしたんだい」
「試合が終わった後、おばぁが倒れたって連絡があって…… それで心配してお見舞いに」
「あたしのことじゃなくてあんたのこと心配してくれたんだろ!」
「わかってるよ……」
「だったらちゃんとお礼言いな」
「……わざわざ、ありがとう」
「少しは愛想よく言えないのかい!」
「……ありがとう」
「さっきと同じだよ!」
「だから怒鳴ったらまた血圧上がるから……」
「おばあちゃん、今朝まで意識なかったんだけど目が覚めるなりこれだもん」
「寝てなんかいられないよ! 明日には退院するからね」
「いや、だからまだ無理だって」
「何言ってんだい! こんなとこで寝てなんかいられないんだよ!」
「おばぁ、みんなの前だからそれぐらいに……」
「取り繕ったって仕方ないだろ! ありのまんまでいるのが人間ってもんだろ!」
「そういうことじゃなくて……」
「あの、沙織さん 花瓶あります?」
「ないけど、ナースセンターで借りられると思うよ 行こっか」
「はい」
「あんたたちもこんなところで油売ってないで、戦車に油さしたらどうだい お前もさっさと
帰りな どうせみなさんの足引っ張ってるだけだろうけどさ」
「……そんなことはありません」
「ん?」
「いつも冷静で助かっています」
「それに戦車の操縦が上手で、憧れています!」
「戦車が操縦できたって、おまんま食べらんないだろ!」
「……また来るよ」
「失礼します」
「……あんな愛想のない子だけどね よろしく」
「はい」
「冷泉さんのおばあさま、思ったより元気でよかったですね」
「ああ」
「冷泉殿が、絶対単位が欲しい、落第できないっていう気持ちがわかりました」
「おばあ様を安心させてあげたいんですね」
「卒業して早くそばにいてあげたいみたい 麻子、あんまり寝てないんだ おばあちゃん、
もう何度も倒れてて」
「おばあ様がご無事で安心したのかも」
「でも、この前はすごく動揺してましたね あんな冷泉殿を見たのは初めてです」
「……たった一人の家族だから」
「たった一人?」
「麻子が小学生の時、事故で」
「そうだったんですか……」
(たった一人の家族、か……)
「先輩、ここにいたんですね」
「沙織か 皆は?」
「寝てます ……どうかしました?」
「……いや、なんでもない ただ、皆色々なものを抱えているのだなと思っただけだ」
「麻子のこと、ですか?」
「……ああ」
「麻子、前に先輩のこと心配してましたよ」
「え?」
「先輩、一人で暮らしてるじゃないですか 家族と離れて」
(…………)
「麻子のお母さんはおばあちゃんにそっくりで、亡くなる前に喧嘩しちゃったらしいんです
謝れなかったって、ずっと後悔してて……」
(私はまだ、縁を戻すことができるかもしれない 縁を戻せるのなら……)
翌日
「先輩……っ! おはようございます……っ!」
「またか 大丈夫か?」
「なん、っとか……!」
「冷泉さん 寝ながら登校とは良いご身分ね」
「お~、そど子~ ちゃんとおきてるぞ~」
「そど子って呼ばないでって言ってるでしょ! 園みどり子ときちんと呼びなさい!」
「あ! すごい! 私たち注目の的になっちゃうかな!」
「……どうだろうな」
「生徒会が勝手にやっただけだから…… それより冷泉さんを何とかしてよ!」
(さて、課題を……)
「西住さん、見たよ!」
「見た? ……何を?」
「生徒会新聞の号外だよ 戦車道の試合、勝ったんだってね!」
「新聞の号外?」
「うん まだ見てないの?」
「どこにある?」
「掲示板に掲示されてるよ」
「そうか」
「頑張ってね! 応援してるよ!」
「あ、ありがとう」
(……これか)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一回戦に大勝利!我が校は圧倒的ではないか
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
第63回戦車道全国高校生大会<1回戦>大洗女子学園 対 知波単学園
(隊長 大洗:西住/チハ:辻)一時間二十一分
フラッグ車撃破勝利。フラッグ車撃破:大洗M3(車長:澤/山郷、丸山、阪口、宇津木、大野)
今年度より復活した戦車道選択科目の一環として参加することになった本大会。先の練習試合では見事勝利したものの、初心者の集まりであり練度不足は明らかで不安視された今大会。
唯一の戦車道経験者である西住まほ(普通科3年)を隊長とし、一回戦に臨んだ。試合は車両数で劣る大洗が有利な場所を陣取り砲撃 突撃する知波単を一方的に攻撃し、勝利を収めた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
角谷会長コメント「ま、当然じゃな~い」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一回戦に勝利した生徒会主要メンバーのコメント。
角谷会長「ま、西住ちゃんはじめ、みんな良くやってくれたんじゃな~い? まーこれからもバンバン進んでガンガン撃ってどんどん勝っていこうって感じだね」
小山副会長「勝てて良かったですぅ~。 もし負けてたら………(涙目) 違います違います!次も頑張って勝ちたいと思います。 でも桃ちゃん(広報河嶋氏と思われる)はもっと練習をしたほうが良いと思います。」
河嶋広報「西住は所詮戦術レベルで作戦を立てたに過ぎない。 単に、知波単の行動が非常に読みやすかっただけのことだ」
三者三様ながら先に期待を持つことができるコメントであり、編集部も彼女ら戦車道履修クラスの大会模様を逐一取材していこうと企画している。読者の方々には以降も注目をお願いしたい。(新聞部)
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伝統の味 大洗銘菓「かんそういも」学食、購買他で好評発売中!!
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「もしかして、隊長の西住先輩ですか?」
「そうだ」
「あ、あの、頑張ってください! 応援してます!」
「……ありがとう」
(戦車道が注目され始めているということか 去年まで戦車道すらなかったわけだ、結果が
出れば当然と言ったところか ……と、そろそろ授業が始まるな)
(すごいな、戦車道…… もしあの2人が同じように興味を持ってたら、参加できないかな?)
昼休み
(2回戦、この戦力で勝てるだろうか……)
「あれ、西住殿?」
「優花里、なぜここに?」
「今日は戦車と一緒にお弁当食べようと思いまして」
「あ、先輩もいたんですね 一緒にどうですか?」
「悪いが、昼食をまだ買って」
「よかったらお1つどうですか?」
「……すまない」
「私にも分けてくれ」
「あ! 授業サボったの!?」
「自主的に休養した」
「もー…… おばぁに言いつけるよ」
「えっ…… それは困る」
「母がこれ、戦車だって言い張るんです」
「すごい! キャラ弁じゃん!」
「食べるのがもったいないですね」
「あっそうだ 写メ撮っとこ」
「そう言えば見ましたか? 生徒会新聞の号外」
「ああ」
「1回戦とはいっても、勝ちましたから話題にもなりますよね」
「次も勝ちましょう!」
「当然だ」
「はい!」
「……皆」
「なんですか?」
「変な質問かもしれないが…… 戦車道は楽しいか?」
「? 当然じゃないですか ですよね?」
「うん」
「聖グロリアーナとの試合も、マジノとの試合も、知波単との試合も それに練習だって整備
だって練習帰りの寄り道だって、全部楽しいですよ」
「最初は狭くてお尻痛くて大変だったけど、戦車に乗るの楽しいです!」
「……そうか」
「どうしたんですか? 急に」
「……なんでもない」
「はぁ…… 今の戦力で2回戦勝てるかなあ」
「絶対勝たねばならんのだ!」
「でも、2回戦は継続高校ですよ?」
「うーん…… 実力よくわかんないからねぇ」
「勝ったからと言って気を抜くな 次も絶対に勝つぞ」
「はい!」
「頑張りまーす!」
「『勝って兜の緒を締めよ』だーっ!」
「おーっ!」
「えいえいおーっ!」
『えいえいおーっ!』
「あまり調子に乗るな 浮ついた状態はミスを生む それくらいにしておけ」
――――……はい
「これより練習を始める 礼!」
――――よろしくお願いします!
――――お疲れ様でした!
「練習きつかったねー」
「うん……」
「どうしたの? 梓」
「……ううん なんでもない」
「お疲れ様でした いい汗かきましたね」
「私、戦車に乗り始めてから痩せたよ!」
「そういえば私も、少しだけ低血圧が改善されたような」
「血行が良くなったんですかね」
「戦車乗りは頭に血が上りやすい人が多いらしいからな」
「それ関係ないような……」
「西住 次の試合の戦術会議をするぞ」
「それと、交換したほうがいい部品のリストを作るのを手伝ってほしいのですが……」
「わかった」
「先輩、照準をもっと速く合わせるにはどうしたらいいですか?」
「どうしてもカーブがうまく曲がれないんです」
「待て 順番に」
「隊長、躍進射撃の射撃時間短縮について」
「ずっと乗ってると臀部がこすれて痛いんですがどうすれば……」
「隊長、戦車の中にクーラーってつけられないんですか?」
「戦車の話をすると男友達が引いちゃうんです~」
「私は彼氏に逃げられました!」
(その質問はおかしいだろう……)
「あの、メカニカルな質問なら私が多少わかりますので……」
「書類の整理くらいなら私でもできると思います」
「……操縦関係なら私が」
「恋愛関係なら任せて!」
(皆……)
「皆で分担してやりましょう!」
「1人じゃないんですから!」
「……ありがとう」
「そういえば、Ⅲ突とは戦車なのか?」
「いえ、砲兵科扱いの歩兵直協車輌ですから、支援車両ですよ」
「軽装歩兵のようだな」
「単純に自走砲じゃないですか?」
――――それだ!
「すごいです!」
「どうやったらそんなにうまく操縦できるんですか?」
「マニュアル通りになんとなくやればできる」
「普通はできません!」
「……?」
「恋愛も、戦車と一緒だと思うんだ 前進あるのみって感じかな?」
「すごい! 恋愛の達人!」
「先輩、今まで何人くらい付き合ったんですか?」
「えっ……」
「あっ、せ、先輩 大丈夫ですよ!」
「戦車が恋人でいいじゃないですか」
「そうです、元気出してください!」
「そちらの書類は?」
「戦車関係の古い資料、ここで一緒に整理しようと思って」
「お手伝いします」
「ほんと!? 助かるよ~ ……あっ やっぱりお花があるといいね 私も華道やってみたい
な~」
「小山先輩、お花の名前ついてますものね 確か…… 桃さん」
「私は柚子 桃ちゃんはね…… 桃ちゃーん!」
「桃ちゃん呼ぶな!」
「西住ちゃん、チームもいい感じにまとまってきたんじゃない?」
「結束をより強固なものにするつもりだ」
「そっか 西住ちゃんのおかげだよ ありがとね」
「……礼を言いたいのはこちらの方だ」
「そう? ところで、2回戦も勝てそう?」
「今の戦力では難しいだろうな だが……」
「必ず勝つ でしょ?」
「そうだ」
「あの、お話し中すみません 書類上では他にも戦車があった形跡が……」
「本当か」
「はい」
「……明日、探してみるか」
翌日
「戦車なんだからすぐ見つかりますよね!」
「おそらくな」
「手がかりはないのか?」
「冷泉先輩、刑事みたいです!」
「部室が昔と移動していて、よくわからないそうだ」
「戦車道って随分昔からやってるんですね」
「そうですね~」
「……まだか! まだ見つからないのか!」
「捨てられちゃったかな…… でも、処分したらその書類もあるはずだけど」
「大丈夫でしょうか この学校で戦車道をやっていたのは20年も前ですし……」
「果報は寝て待てだよ~」
「これで最後の部室ですよ 手がかりになりそうなものないですね……」
「これはお手上げですね」
「……どこの部だ こんなところに洗濯物を干したのは」
「見つかりました! ルノーB1bisです!」
「さすがはモントゴメリー」
「あのー、それはちょっと……」
「グデーリアン、ではどうかな」
「!」
「了解 ルノーB1bisだそうだ」
「最大装甲60mm、75mm砲と47mm砲搭載ですね」
「八九式よりはいっか」
「新しいチームもできますね」
「戻ってきませんね 沙織さんと一年生チーム……」
ニャー ニャー ニャー
「……遭難、したそうだ」
「えっ!? そうなんですか!?」
「……優花里、わざとか?」
「一度言ってみたくて」
「船の底だが、どこにいるかわからないと」
「何か表示があるはずだ それを探して伝えろと言え」
「はい、これ船の地図ね 捜索隊行ってきてー」
「わかった」
「……なんかお化け屋敷みたいですね」
「暗いだけだ 何ともない」
「そうですが……」
「そうですよ」
「西住殿も五十鈴殿も、肝据わってますよね」
「……麻子 大丈夫か?」
「お、お化けはダメなんだ……!」
「第17予備倉庫近くならこのあたりのはずだが……」
「! あっ、携帯…… カエサル殿だ」
『西を探せ、グデーリアン』
「西部戦線ですね 了解です!」
「誰だそれは」
「魂の名前を付けて頂いたんです!」
「西と言っても……」
「大丈夫です! コンパスは持ってます!」
「だが、なんで西なんだ?」
「『卦』だそうです」
「当たるも八卦、当たらぬも八卦ですね」
「……! いた!」
「あ! 先輩!」
「よかったー!」
「救助隊だー!」
「助かったー!」
「……もう大丈夫だよ」
「武部殿、モテモテです」
「希望していたモテ方とは違うようだが……」
(……ん?)
「優花里、あの奥を見ろ」
「……あ!」
「ひとまず連絡して帰ろう」
大浴場
「皆遅くまでご苦労だった 次の試合には間に合わないが、これで先を勝ち抜く希望が
見えてきた 次の継続高校戦もやるぞ! 西住、締めろ」
「……次も必ず勝つぞ」
――――おーっ!
数日後 生徒会室 第2回戦 継続高校対策会議
「かーしまー 次のステージどこ?」
「継続高校との対戦は砂漠ステージに決まりました」
「はーい質問 継続高校ってどんな学校?」
「フィンランド風の学校だ 先の試合で使用した戦車はこれだ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
BT-42 1輌
Ⅲ号突撃砲G型 1輌
Ⅳ号戦車G型 1輌
T-34/76 1輌
T-34/85 1輌
T-26 1輌
BT-5 2輌
BT-7 2輌
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「戦車の種類多いね」
「そもそも純フィンランド産戦車の種類は片手で数えられるくらいだ 他の国の戦車が混ざる
のも無理はない」
「そうなんですか」
「なんかあんまり強くなさそう……」
「いや、強い」
「そうなんですか?」
「黒森峰にいたころに練習試合をしたことがあるが、相当苦戦させられた」
「え!? あの黒森峰が!?」
「隊長がかなり優秀で相当な切れ者だ それまでの継続も強いと言えば強いが、今の継続の
ほうが強い 五本の指の五番目と言ってもいいかもしれないな」
「そ、そんなに……」
「それで西住、作戦はどうするつもりだ?」
「……実のところ、まだ決めかねている」
「なぜだ?」
「ステージが砂漠だ 1回戦のように有利な状況を作り出すことはほぼ不可能だろう」
「まー、確かにね」
「作戦は西住に一任してはいるが、早く頼むぞ」
「……ああ」
「それと、戦車のデータについてだが」
「それなら……」
「西住殿は作戦を考えることに専念してください! 我々がデータをまとめます!」
「そうか、頼んだぞ」
「はい!」
「でもゆかりん 当てあるの?」
「エルヴィン殿が持っていると思うので聞いてみようかと」
「じゃ、さっそくいこう!」
「それでは、会議を終了する」
歴女宅
「えっと、確かこのあたり……」
「ここじゃないですか?」
「……ここもソウルネームなんだ」
「ごめんください」
(歴女さんたちは共同生活なんだね)
「いらっしゃい!」
「お茶入ったよ」
「ありがとうございます」
「隊長は一緒じゃないのか?」
「はい、作戦立案に専念しています」
「そうか で、継続高校の使ってる戦車の資料だけど……」
「うわっ、すごい量」
「まあ種類多いからこれくらいになるよ あまり細かいところまでは載ってないんだけど」
「……何語?」
「この量はコピーが必要ですね」
「コンビニでコピーしようか」
「そうしましょう」
「ただいまー」
「お帰り優花里 ご飯出来てるわよー」
「はーい」
「あら、戦車の資料?」
「うん、次の試合に向けて」
「ちょっと見てもいい?」
「うん」
「次はなんて高校と試合なの?」
「継続高校っていう結構強いところ」
「継続高校……」
「うん」
「……さ、ご飯にしましょう」
「はーい」
「ごちそう様でした」
「食器片づけておいてね」
(継続高校、か……)
「部屋行ってるね」
「ええ」
(……電話してみようかしら)
「…………………………」
(やっぱり、繋がらないかな)
『もしもし?』
「も、もしもし 万年さんですか?」
『……どちら様ですか?』
「秋山好子、です」
『秋山好子…… もしかして、大洗の?』
「はい お久しぶりです、マンネルハイムさん」
『懐かしいわね~、その呼び方 本当に久しぶりね 十何年ぶりかしら』
「はい 結婚してから疎遠になりましたし……」
『お互いに、ね どうして急に電話を?』
「今年の戦車道の高校生の大会、ご存知ですか?」
『ええ ……あ、そういうこと?』
「はい まだ戦車道はご覧になっているのですか?」
『それはもちろん 娘も戦車道をしていますし』
「私の娘も大洗で戦車道をしていまして」
『あら、ほんと?』
「娘さんは継続高校ですか?」
『ええ、装填手を』
「私の娘も装填手なんですよ」
『昔のあなたと同じじゃない あなたが勧めたの?』
「いえ そもそも、娘に私の学生時代の話をしたことないですから」
『そうなの? もったいない』
「まあ、その、昔は……」
『……そういうことね』
「……はい」
『それで、昔の話でもしに電話をしてきたの?』
「いえ、実は」
『?』
「継続高校と戦うにあたって戦車のデータを集めていたみたいなんですけど、どうにも細かい データが載っていないようで」
『……それで?』
「マンネルハイムさんならいろいろ資料を持ってそうですし、資料を貸していただけないかと
思ったのですが」
『…………』
「……娘さんが継続高校で戦車道をされているみたいですし、やめておきます」
『あら、いいわよそれくらい』
「えっ」
『戦車も実力も継続のほうが有利だし、情報があるくらいで負けられたら困るわよ』
「……そうですか」
『気を悪くしたらごめんなさいね』
「いえ、確かに大洗は継続高校と比べると全くその通りですし」
『あの時は拮抗してたわね』
「……ええ 懐かしいです」
『あの大会でベスト4に入ってからだったかしら 継続高校が強くなったのは』
「大洗もきっと、そうなりますよ」
『それは楽しみね』
「はい マンネルハイムさんは次の試合は見にいらっしゃるんですか?」
『どうしようかと思っていたけれど…… あなたはどうするの?』
「もちろん、見に行きますよ」
『だったら私も行こうかしら 久々に会ってみたいし』
「あまり変わっていませんよ?」
『そんなこと言って、昔は』
「その話は無しで」
『はいはい で、戦車の資料だったわね』
「本当に送ってくださるんですね」
『ええ 私は娘たちを、継続高校を信頼していますから』
「ありがとうございます」
『ところで、どんな戦車の資料? 昔とは編成が違うと思うから』
「えっと確か…… T-34の76と85、T-26とBT-5とBT-7と、あとBT-42だったかしら」
『あら、それだけ?』
「はい、Ⅳ号やⅢ突はデータがそろってましたし ……こんな遅くにすみませんでした」
『いえ 夕食をとって少し暇でしたから』
「それでは」
『あっそうだ 好子さんは今、学園艦に住んでいるんだったわね』
「はい」
『なら送るのに少し時間がかかりそうね』
「そろそろ寄港日ですから、多分その日に届きますよ」
『あ、そうなの じゃあ明日にでも送っておくわね』
「ありがとうございます」
『それじゃあね』
「はい」
(懐かしいわね…… 私が戦車道をやってたこと知ったら、優花里驚くかしら)
翌日
「会長 B1bisの乗員はどうするんだ?」
「んー…… 風紀委員でも徴集しようかねぇ」
「なぜ風紀委員を?」
「そど子ってわかる?」
「よく校門前で遅刻者を注意している風紀委員だろう?」
「知ってるなら早いや なんでも視力2.0あるらしいんだよ 目がいいほうがいいと思って」
「なるほど」
「それに風紀委員同士なら意思疎通もしやすいだろうしね」
「そうか ポルシェティーガーはどうする?」
「自動車部に任せよっかなー」
「クセのある車両だが大丈夫か?」
「大丈夫でしょ 自動車部なんだし」
(さて、昼食は何にするか……)
「あの、西住さん……」
「なんだ?」
「えっと……」
「確か…… C組の、丹だったか?」
「は、はい 私、C組の丹ひよりと言います ……西住さん」
「なんだ」
「今からでも戦車道を取れたりできないですかね……?」
「戦車に興味があるのか?」
「はい……」
「1人では無理だぞ」
「それは大丈夫です 2人だけですが、戦車道をやりたいという友達がいるので」
「そうか 今からでも戦車道を取れないか会長に確認しておこう ただ……」
「ただ?」
「今、空いている戦車がない だから新しい戦車が見つかるまで待ってくれ」
「そうなんですか…… わかりました」
「どうせなら新しい戦車を見つけてくれても構わないぞ 昔の戦車がまだどこかにあるかも
しれないからな」
「あの、もし話が通って戦車が見つかったら、よ、よろしくお願いします」
「ああ」
「ところで……」
「?」
「私がC組だってご存知だったんですか?」
「顔と苗字だけは知っていた それだけだ」
「……すごいですね 話してもいない生徒の顔を覚えているなんて」
「そうか?」
「そうですよ」
「……とにかく、会長に聞いておく」
「はい、よろしくお願いします」
「失礼する」
「あ、西住さん」
「会長はいるか?」
「つい先ほど、風紀委員の方に例の件を伝えに行かれましたよ」
「……そうか」
「どうかしましたか?」
「いや、戦車道に興味を持った生徒に今からでも間に合うかと聞かれてな」
「そうでしたか 私から会長に伝えておきますよ」
「すまない よろしく頼む」
「人数は何人ですか?」
「全部で3人だ」
「わかりました」
「というわけです、会長」
「んー、たぶん大丈夫じゃない?」
「そんな適当でいいんですか?」
「冗談冗談 確認しとくよ」
「大丈夫だってさ 西住ちゃんにそう伝えるように伝えといてー」
「わかりました」
「ところでさ、その生徒どんな生徒だって?」
「……すみません 確認していませんでした」
「じゃあ聞いといてくれない?」
「はい」
「西住さん」
「副会長 例の話か?」
「はい 今からでも可能だそうです」
「わかった そう伝えておく」
「ところで、その、戦車道に興味を持ったという生徒はどんな感じの方なんですか?」
「……普通、だな」
「普通、ですか」
「普通の生徒だ 声をかけてきた生徒以外の2人はどうかは知らないが」
「会長にはそう伝えておきますね あ、そうだ 申請については自分でやるようにと伝えて
おいてください」
「わかった」
(さて、丹を探すか……)
(……居ない どこだ?)
ドンッ
「痛っ」
「すまない 大丈夫か?」
「は、はい…… 大丈夫です」
「すみませんでした! 本っ当にすみませんでした!」
「いや、そこまで謝らなくても……」
「あ、西住さん」
「丹か 探したぞ」
「こここ、この人が西住さんなのですか!?」
「うん」
「すみませんでした! 本っ当にすみませんでした!」
「いや、だから」
「気にしないでください ねこにゃーさん、少しチキンハートなところがあるので……」
「ねこ……?」
「ぼ、僕、猫田と言います! ぴよたん殿とはオンラインネットゲームで知り合いまして」
「ぴよ…… 丹のことか?」
「はい ネットではそう名乗っています」
「私のことを聞いて驚いたということは、彼女が戦車道をやりたいという友人の1人か」
「その通りです 私のことを探していたみたいですけど、もしかしてその件で?」
「ああ 今からでも可能だそうだ」
「やった!」
(これで本物の戦車に乗れる!)
「もう1人は一緒ではないのか?」
「さっきお手洗いに……」
「お待たせしましたなり~」
「あ、来た来た」
「ん? 何の話です?」
「この人が、戦車道の隊長の西住さん」
「わわっ は、はじめまして」
「彼女がもう1人の?」
「はい、ももがーさんです ももがーさん、今からでも戦車道取れるって」
「ほ、本当ですか!?」
「申請は本人たちでということだから、今からでも申請してくるといい」
――――ありがとうございます!
「ただ、戦車が見つかるまで待ってもらう形にはなる」
「あ、そうでしたね……」
「じゃあ僕たちで探しませんか?」
「そうしましょうか ……西住さん、ありがとうございました」
「話をつけたのは会長だ 私は何もしていない」
「それでは、今から申請してきますのでこれで」
「練習の様子や大会の試合も見に来るといい 勉強になるぞ」
「はい ぜひ、そうさせてもらいます それでは」
3日後
「会長、届け物です」
「なにそれ?」
「え? 会長が頼まれたのではないのですか?」
「いや、知らんよ?」
「てっきり会長が頼んだものだとばかり……」
「差出人は?」
「『卒業生より』と書かれています」
「卒業生ねぇ…… 開けてみよっか」
「はい、では開けます」
「……書類?」
「戦車のデータだね」
「我々の予想する継続高校が使用する戦車のデータですかね?」
「みたいだね でも、データはもうまとめたし…… ん?」
「どうされました?」
「これ、すごい細かいとこまで載ってるよ」
「……! 本当、ですね」
「一体どうやってここまで細かい資料を……」
「さあ? せっかくだし使わせてもらおうか」
「そうしましょう 早速印刷にかけてきます」
「あ、その前に 小山ー、西住ちゃん呼んできてー」
「はい」
「西住さん 会長がお呼びです」
「わかった すぐに行く」
「会長 用件は」
「これ見て」
「これは…… どこでこれを?」
「なんか卒業生から送られてきた」
「卒業生から……」
(一体何者だ? ここまで詳しいデータを持っているとは……)
「ありがたく使わせてもらおうよ」
「……そうだな」
「で、作戦のほうはどう?」
「先程決まったところだ」
「集合かける?」
「そうだな」
「さて 西住、作戦は?」
「作戦は――――――」
「……なるほど」
「確かにこれならば!」
「絶対に失敗してはならない いいな?」
――――はい!
「さっき言ってた物はこっちで用意しとくよ」
「わかった 試合当日は防暑対策を各自しておくように」
(細心の注意を払わねばな……)
全国大会2回戦会場
「あっつ……!」
「溶けそうですね」
「相手も同じだ 耐えろ」
「それはそうですが……」
「皆、準備はできているか?」
「問題なし!」
「大丈夫です!」
「準備万端」
「こちらも準備できています!」
(あの人かな? いや、あの人だ、間違いない)
「好子さーん」
「お久しぶりです、万年さん やっぱりいらっしゃってたんですね」
「結婚したから、もうその苗字ではないわよ」
「あ、そうでしたね」
「知り合いか?」
「ええ、学生時代の」
「は、初めまして 秋山淳五郎と言います 大洗で理髪店をしております」
「初めまして」
「万年さん、ですか 珍しい苗字ですね」
「よく言われました 今は夫の苗字になりましたが」
「お元気そうで何よりです」
「好子さんこそ、元気そうで」
「娘さんはどの戦車に?」
「BT-42ですよ」
「えっ、あなたが昔乗ってた戦車じゃないですか」
「そうよ 言ってなかったかしら」
「聞いてないですね」
「言ったと思ったけど」
「言ってないですね」
(……ん?)
「ちょ、ちょっと待って」
「何?」
「戦車道、やってたのか?」
「ええ ……あれ? 言ったことなかったかしら」
「初耳だよ!」
「あ、あら そうだったかしら」
(好子さん、言ってなかったのね)
「ちなみに私が好子さんと知り合ったのは……」
(そ、その話はやめにしません? ね?)
(あら、いいじゃない別に)
(話してないのよ 察してください)
(あら、そんなに恥ずかしいこと? あの時のあなた、とっても魅力的でしたよ?)
(えっ)
「どう知り合ったんですか?」
(話したらダメって顔してるなぁ……)
「……どうだったかしら 好子さん覚えてます? 陸だったことは覚えてますが……」
「いえ あまりよく」
「ですよね 学生時代の話ですし」
『それでは、大洗女子学園 対 継続高校の試合を開始する!』
「黒森峰以来だね」
「そうだな ……今回も勝たせてもらうぞ」
「結果が楽しみだね」
(……相変わらずだな)
「皆、作戦通り行くぞ!」
――――はい!
「相手はあの西住まほさんですけど、どう戦うんですか?」
「いつも通りの戦車道をするだけさ」
『試合開始!』
「戦車前進」 「行くよ 前進」
「街へ急行するぞ 隊列を維持しつつついてこい」
――――はい!
(視認すれば向かってくるだろう この作戦は誘いに乗ってくれなければ成り立たない……
居場所を曝す必要があるな)
(土煙…… あそこか)
「優花里 装填を」
「はい!」
「華 当てる必要はない」
「わかりました ……撃ちます」
ズドンッ!
ズドンッ!
「砲撃? どこからかな?」
『真正面からです!』
「……ん? あんな距離から?」
『これは間違いなく誘いです 無視しましょう』
「いや、このまま行くよ」
『え!? 誘いだって隊長もわかってますよね!?』
「だからだよ 誘いに乗らないことは失礼じゃないかな?」
『……これ戦車道の試合だってわかってます?』
「もちろん」
『敵、転回してします おそらく街へ向かっているものかと』
「街に? じゃあ追おうか」
「了解!」
(大丈夫かなぁ……)
「こちらへ向かってきたか 進路を維持、作戦通りに行くぞ M3以外の車両は榴弾装填」
『完了しています』
『装填完了』
『装填完了!』
『本当にこの作戦で大丈夫か?』
「やるしかない 以上」
「街へ入って行ったね ペル、ヤルコ、ヤスカ、回り込んで」
(街の中で待ち伏せするつもりなのかな でも、あの街の中では待ち伏せはできないはず
どうするつもりか見ものだね)
「こちらM3 継続高校が追ってきています、撃ちますか?」
『撃て』
「了解しました! あや、真後ろに来たら撃って」
「おっけい!」
『澤 何輌来ているかわかるか?』
「いえ、先頭車両が偶に見えるくらいで何輌いるかまでは……」
(間が空きすぎていたか、わざと見えないようにしているのか……)
『長い直線街路に入る 撃ちつつ確認しろ』
「了解しました!」
(脇の街路は細すぎる、入ることはできないはずだ となると、何輌いるかだな)
「……!」
(見えた! 1,2,3…… 7?)
「隊長、見える限りでは7輌です!」
『わかった 出口直前で作戦を決行する とにかく当たらないようにしつつ撃ちかえせ』
「はい!」
(7輌か……)
(やっぱり5輌全部いるね 待ち伏せじゃないなら何が目的なのかな?)
「隊長 どうするんですか?」
「回り込んだ3輌に任せるよ」
ガンッ!
「うーん、やっぱりだめか 正面だし」
「砲塔正面65mmだっけ」
「M3が50mmだから……」
「結構堅いね」
「そろそろ予定地点だ 射撃用意」
『用意!』
『準備完了』
『用意できました!』
『用意できてます!』
「……撃て」
(ん? 砲撃音? しかも多数……)
『隊長!周りの建物の壁が崩れて進路をふさがれました!』
「……」
(なるほど、これが狙いか)
「脇道…… は通れそうにないね 全車後退、入口まで戻るよ」
『継続高校、来る気配はありません』
「そうか ……全車両停止」
『どうした、西住』
(居るなら左か?)
「……Ⅲ突 出口、左の壁に砲を向けろ それと徹甲弾を装填」
『? 了解』
「優花里 榴弾装填」
「は、はい」
「華 出口左の壁を撃て」
「はい」
ズバン!
(必ずここを通る 確か前から3輌目だったはずだから……)
『ペル そろそろそっちに大洗が行くはずだよ 用意を』
「はい!」
(来い…… 来い!)
ズバン!
(……えっ)
「やばい!後退!後退!」
ドガンッ!
「え、ちょっと ばれてるじゃない!」
「逃げましょう! 合流です!」
「こちらヤルコ Ⅲ突がやられました!」
(……さすがだね)
『2輌ともこちらに合流して 入口まで戻って君たちが通った道を通る』
「はい!」
(もう1輌は逃げた…… 念のため右も撃っておくか)
「優花里 もう一度榴弾装填」
「はい!」
「次は右の壁を撃て」
「はい」
ズバン!
(居ない、か)
「全車両、このまま進むぞ」
『こちらM3 継続高校は見えません』
「撒いたか ……作戦にかかるぞ 全車両停止」
――――了解!
「澤 準備をしておけ」
『はい!』
「麻子 監視を頼む」
「わかった」
「してやられたね」
「そうだね」
「そうだねって……」
「急ぐよ 全車速度を上げて」
「……まだ見つからないかい?」
『はい 履帯の跡ももう見えなくなっています』
(街で待ち伏せすると思ったのが後手に回った原因だね)
「! 見つけた! 隊長、大洗の車両です!」
『見つかった?』
「見つかったんですが、その……」
『? どうかしたのかい?』
「……それが、止まっています」
『? 止まっている?』
「はい」
『……構わない 攻撃準備』
「了解です!」
「終わったぞ!」
「西住先輩 継続高校が来てる」
「急いで乗り込め! 麻子、来い!」
「! そんなに早く走られると……」
『大洗車両 動き出しました』
「追うよ 全車両、大洗部隊に指向」
――――了解!
「……Tulta!」
「全車前進!」
(……少し危なかったな 砂山で隊の前のほうは見えていないはずだ)
「フラッグ車は前から何輌目だ!」
『……前から数えると4番目です! 1番前に1輌、2番目と3番目に2輌ずついます!
その次です!』
「わかった 聞こえたか」
『了解!』
『大洗、土煙を上げながら逃げて行きます!』
(外したか まあ、この距離なら外れても仕方がないかな ……でも停車して何をしていたの
だろうか この誘いは何か危ない香りがする)
「どうしました? 隊長」
(地図だと確か…… 待ち伏せして射撃を決めるためにわざと誘っている? だとすれば、
場所は砂山が切れる場所かな)
「エイノ、アールネ」
『はい なんでしょうか隊長』
「大洗が姿を消していった砂山が切れるところに、おそらくⅢ突が構えている 砂山の右側を
通ってⅢ突の撃破を」
『任せてください! BT-7、2輌 先行します!』
「どういうこと?」
「これは危ない誘いだ 先に危ないものを取り除くよ」
「ふーん」
「左衛門佐、聞こえるか?」
『……ああ 聞こえている』
「前から4番目 1輌、2輌、2輌の次がフラッグ車だ そろそろ来るぞ」
(これで決めれば……!)
ガッガタン
(ん?)
「砂山が切れるところってあそこだよね姉さん」
「ええ、隊長が言うにはあそこにいるらしいね 同時に狙おう」
「うん!」
ガッガタン
「……せーっ! のっ!」
(……! 人!?)
「わ! 待て! 撃つな! 撃つな!」
「どうして人が!?」
「あれ、大洗の生徒だよね?」
「隊長! 例の地点、Ⅲ突は居ません! 大洗の生徒が3人いるだけです!」
『隊長! 例の地点、Ⅲ突は居ません! 大洗の生徒が3人いるだけです!』
(あれ、読みが外れたかな 生徒が3人…… 偵察? いや、そんなことをする必要は……)
(……おい、エルヴィン! 戦車! 戦車!)
(あっ!)
「左衛門佐! 来るぞ!」
『左衛門佐! 来るぞ!』
(1、2、3…… ここだ!)
ズバンッ!
ドガンッ!
(!? どこから……!?)
カタンッ
(……! 砂の下? まさか、埋めた? でも、戦車の数は…… そうか、あの土煙は)
『継続高校フラッグ車行動不能 よって、大洗女子学園の勝利!』
(……うまくいったか)
「やりましたね、西住殿!」
「……エルヴィン 掘り起こしてやれ」
『あ、はい!』
「大丈夫か、左衛門佐」
「……保冷剤をまいたタオルがあっても暑かった」
「とりあえずほら、水分取るぜよ」
「かたじけない」
「西住の作戦がうまく嵌ったな」
「読まれていれば負けていた もうこんなギリギリな戦いはしたくない」
「戦車の数のこともあったしね 次の試合までにはB1bisの整備終わるはずだし」
「……次の試合は15輌上限だがな」
「あっ、そっか」
「やぁ」
「……ミカか」
「さすがだね 待ち伏せするとは思っていたけど、埋めるとは」
「こうでもしないと勝てなかったのでな」
「勝ちを重んじる西住流の精神かな」
「…………」
「次の試合、期待しているよ」
「……どうも」
「西住さん」
「なんだ」
「……優勝することは大事だけど、君の戦車道はそれだけじゃない そうだろう?」
(!)
「戦車道はどこまでも続いていく道 君は、何を目指すんだい?」
「…………」
「それじゃあ 楽しみにしているよ」
(……何を目指す、か)
「負けちゃったね……」
「そうだね」
「勝利の女神があちらに微笑んだってところかなぁ」
「ミッコ 勝利の女神は誰かに向かって微笑むんじゃない、微笑んだ時に誰かが目の前にいる
だけさ」
「……よくわかんない」
「あーあ 負けちゃったわね あの時とは逆ね」
「はい 私たちの時は継続高校のⅢ突が大洗のフラッグ車を撃ちぬきましたね」
「ええ ……なんか、悲しいわ」
「万年さんの娘さんは今年で卒業ですか?」
「いえ 来年は勝ってほしいわね」
「私の娘も来年がありますから、また会えそうですね」
「そうね」
(完全に蚊帳の外だな……)
数日後
「それでは、練習を終了する! 礼!」
――――ありがとうございました!
「西住ちゃーん」
「会長、何の用だ?」
「黒森峰、今日の試合勝ったってさ」
「……そうか」
「あれ、興味なかった?」
「いや?」
「だよね 次の相手は聖グロだろうし、作戦考えといてねー」
「任せろ」
黒森峰女学園
「隊長 次の試合の件ですが」
「……エリカか 次はアンツィオだったな」
「はい」
「警戒するに足らず 問題はない」
「……わかりました」
「それと次の大洗の試合、見に行くぞ エリカも来い」
「はい」
「そろそろですね」
「エリカ どう見る」
「大洗の圧倒的不利です フラッグ車だけを狙い撃ちでもしない限りは勝てないかと」
「……そうか」
「隊長はどう考えますか」
「継続のフラッグ車の装甲は堅い エリカが言ったように、Ⅲ突で狙い撃ちでもしない限りは
勝てないだろう」
「街へ向かっているのでしょうか」
「だろうな」
「建物を撃った?!」
「瓦礫で道をふさぐためか」
「……その様ですね」
(!?)
「な、なにが起こったんですか!?」
「……Ⅲ突を埋めたのだろう」
「埋めた!?」
「継続のフラッグ車を安定して撃ち抜くことができるのはⅢ突だけだ」
「でも、掩体壕を掘るならまだしも埋めるなんて……」
「……帰るぞ」
「あ、待ってください隊長!」
『アンツィオ高校フラッグ車行動不能 よって、黒森峰女学園の勝利!』
西住流本家
「……そう、ありがとう 礼はするわ ……ええ」
(そういうことね でも、私には関係ないこと)
「奥様、夕食の用意ができました」
「すぐに行くわ 夕食は何?」
「カレーライスです 失礼いたします」
「…………」
(……元気にしているかしら)