東方龍球伝~弱虫ラディッツが幻想入り~   作:わかなべ

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幻想入り編
其の壱 信じられねえ、強いヤツらがいっぱいの世界


 宇宙最強の強戦士・サイヤ人の襲来に、悪戦苦闘する孫悟空とピッコロ。

 

「お父さんを、いじめるなぁーーーーーっ!!」

 

 しかし、孫悟空の息子・孫悟飯の底知れぬ超パワーにより、悟空の兄・ラディッツは大ダメージを負った。

 そして悟空は、自らの命を捨てる覚悟でラディッツにしがみ付いた。

 

「はなせっ!!! オ……オレがわるかった!!! にどと、もうこの星には来んっ!!」

 

「待たせたなぁ、覚悟はいいか!?」

 

「やれぇーーーーーーーーーーーーッッッ!!」

 

「ま、待てぇぇぇぇぇぇーッ!!」

 

「うおおああああ!! 魔貫光殺砲(まかんこうさっぽう)ッッッッ!!」

 

 ピッコロの新必殺技・魔貫光殺砲は、孫悟空諸共ラディッツを貫き、地球は脅威から救われたのだ。

 だが。

 

「ひ……ひっひっひっ……つ、つかのまのよろこびだったな…………しょせんきキサマは…ただの虫ケラにすぎんのだ……」

 

 ラディッツは、一年後に自分よりもさらに強い仲間のサイヤ人が地球を襲うことを告げた。大きな衝撃を与えたのち、ピッコロは彼にトドメを刺した。

 やがて孫悟空も力尽き、死と共に肉体はあの世へと転送された。

 こうして、新たな危機を前にピッコロは孫悟飯を鍛え上げ、そしてクリリン達は天界で修業を積むこととなる。

 一方、遥か遠く離れた星では、ベジータとナッパが地球を目指して宇宙船に乗り込んでいた。

 ラディッツを「弱虫」と吐き捨てながら……。

 

 そして、死んだラディッツは──。

 

 

 

   †

 

 

 

 鬱蒼(うっそう)とした森の中、長い黒髪の筋肉質な男がうつ伏せになって倒れていた。

 男──ラディッツは、重たく感じる(まぶた)を無理やり開けて、目を覚ます。

 

「……ここは?」

 

 戦闘民族サイヤ人からしてみれば、森という点では特に珍しいものではない。彼らにとっては森、市街地、砂漠、雪原、屋内、どこであろうと戦場となりうるからだ。

 しかしラディッツは、先ほどまで孫悟空(カカロット)緑の生物(ピッコロ)と死闘を繰り広げ、敗れた末に殺されたはずである。

 天国にしては気味の悪い場所であり、かといって地獄というほど窮屈な場所ではない。なにより、拳を握った感じや体に流れるパワーが、生きていることを明確に示していた為、何らかの要因であの戦いを生き抜いたと考えたほうが自然であるはず。

 しかし、その考えすら不自然になってしまう現象が起きていた。

 

「き、傷が……!? あの野郎に開けられた腹の傷が、消えてやがる!?」

 

 ピッコロの魔貫光殺砲(まかんこうさっぽう)は、確かに自分の弟諸共、腹部に大穴を開けてどこか遠くへ飛んでいったはずだ。その際に開けられた大穴が、自身と弟にとって致命傷となったはずだ。

 それなのに、自分は生きている。愉快である反面、奇妙であり、恐怖さえ感じる現象だ。

 

「むっ、スカウターもそのままか……カカロットのヤツはどうなった?」

 

 自分も復活したならば、孫悟空(カカロット)も復活していても不思議ではない。そして、孫悟空(カカロット)と共に自分と戦った緑の生物(ピッコロ)も、恐らくどこかに居るはずである。

 見つけ次第、先ほどの仕返しをしてやろうとラディッツは企んでいた。

 だが、その企みはすぐに泡と消えてしまった。

 

「な、なんだここは……ッ!?」

 

 ラディッツの額に汗が浮かび、思わず二、三歩ほど後退してしまうほどの衝撃。

 スカウターと呼ばれる、相手の戦闘能力を計測できる機械によって表示された数値には、にわかに信じがたい数値がいくつも表示されていた。

 

「戦闘力100や200を越える反応が1つや2つではない。それどころか、1,000や2,000を越える反応までありやがる…………まさか、カカロットとの戦いで故障しやがったのか?」

 

 少なくとも、ここが地球ではないことを彼は確信する。

 地球へ降り立った時、最初に計測した地球人の戦闘力はたったの5。それから高い戦闘力を求めていく中でも、緑の生物(ピッコロ)の322と孫悟空(カカロット)の334を越える数値は無かった。ごく少数のみ、100や200を越える達人は観測されたが、少なくとも今観測された人数ほど多くはなかった。

 そして信じがたい事に、その中には戦闘力1,000。そして、ラディッツ自身の戦闘力を大きく上回る2,000を越えた戦闘力を持つ者が、幾人か観測されたのだ。

 孫悟空(カカロット)緑の生物(ピッコロ)でさえ、どう頑張っても戦闘力は400台。最大限にエネルギーを高めても、ラディッツの1,500には及ばない程度の戦闘力だ。孫悟空(カカロット)を上回る孫悟空の息子(そんごはん)ですら、最大戦闘力は1,307であった。

 ラディッツもサイヤ人の中では最下級レベルとはいえ、決して宇宙の中では低くはない数値。少なくとも、フリーザ軍の下級兵士や、銀河パトロールのエリート隊員よりは高い戦闘力を誇っていた。

 しかし、この世界で観測された数値は自身やそれら宇宙人をも遥かに上回る。

 サイヤ人の一般的な下級戦士レベルの戦闘力を持った者が、ごろごろ居たのだ。

 

「くそっ、信じられん!! オレは宇宙一の強戦士族、サイヤ人なんだぞ!?」

 

 ラディッツは、スカウターの計測モードを一旦リセットした。

 これ以上、戦闘力を見ていたら頭がおかしくなりそうな気分になったからだ。

 

「チッ、どうやらここは地球ではないらしいな……テキトーな奴を捕まえ、情報を得なければ」

 

 最下級戦士とはいえ、いくつかの死線を潜り抜けてきたことには変わりないラディッツ。

 彼の判断は冷静かつ、最良であった。

 いくらサイヤ人とて、情報もなく闇雲に動けば自滅しかねない。事実、雑魚と侮っていた弟や地球の戦士に、彼は一度殺されているのだ。

 先ほどの苦い経験もあり、ラディッツの行動には慎重さが増していた。

 ラディッツは再びスカウターのボタンを押し、戦闘力計測モードを表示する。

 

「ええと、ここから最も近いヤツは……距離北東に10キロ。戦闘力423……カカロットより上だが、所詮オレの敵ではない!!」

 

 そう叫び、ラディッツは超高速の舞空術(ぶくうじゅつ)で空を飛ぶ。

 周囲を見渡しながら飛ぶと、ただひたすら森が広がっていて、遠くに霧がかった場所が見えた。しかしスカウターに表示された戦闘力の持ち主は、その手前の森の中にするようである。

 ラディッツは安堵した。

 自分の理解が追いつかない、未知なる世界で不利な状況下には飛び込みたくはないと思ったからだ。

 

「この下か……」

 

 ラディッツの飛行速度であれば、10キロ程度は一分もかからず到着できる距離だ。

 座標の場所で飛び降りると、突然現れた男に少女は驚愕した。

 

「うわっ!?」

 

 少女はまだ幼く映り、白黒の洋服を着た金髪と、大きな赤いリボンが特徴的だ。

 少女は両手を広げたポーズで、ラディッツの姿をまじまじと見つめた。

 ラディッツもまた、少女のことを舐めるように凝視する。

 

「こ、こんなガキがカカロットの戦闘力を越えているというのか……一体どうなってやがるんだ?」

 

 戦闘力423というと、普段なら相手を舐めてかかる程度の戦闘力である。

 地球レベルで言えば超人的なレベルであるが、腐ってもサイヤ人であるラディッツからすれば赤子同然であり、子供を相手にするのと大差ない程度である。

 戦闘力だけなら、一切のダメージを受けることなく勝てる範囲だ。

 しかし問題は、その戦闘力を持っているのは10歳にも満たなそうな少女であること。これは、サイヤ人の子供に匹敵する戦闘能力であった。

 つまり、目の前の少女は成長すればサイヤ人と肩を並べる存在になると、ラディッツは思った。

 そして、それはサイヤ人にとっても都合が悪いと解釈した。

 

「ねーねー、あなた誰?」

 

「ふん。おいキサマ、今からこのオレの質問に答えろ……死にたくなければな」

 

 威勢よく答えると、少女はくるりんと一回転しながら無邪気な笑みを浮かべた。

 

「ねーねー、あなた食べられる人間?」

 

「キサマ、人の話を聞いてないのか?」

 

「話?」

 

「そうだ、死にたくなかったらここが何処か教えるんだな」

 

 すると少女はまた一回転して、上機嫌な様子で踊り始めた。

 その様子に若干のイラつきを覚えながらも、情報を得たいラディッツは殺傷本能を押し殺す。

 

「ここはね、幻想郷だよ?」

 

「幻想郷だと? 宇宙のどの辺にありやがる、説明しろ」

 

「んー、知らない。それよりおっさん食べられる人間なの?」

 

「お、おっさんだと……!? バカめ、このオレはまだ20代だ。失礼なガキめ……ッ!!」

 

「おっさんじゃん」

 

「…………。」

 

 そうか、10歳前後のガキからしてみれば、20を越えた男などおっさんでしかない。

 ラディッツは諦めた様子で、納得した。

 

「ねー、何回も聞いてるけど、人間?」

 

「ふん、そうだ。このオレは宇宙一の強戦士族、誇り高きサイヤ人だ」

 

「ふーん、美味しいの?」

 

「さあな……」

 

「そっか。じゃあ……た・べ・ちゃ・お・う・か・な?」

 

「ん……むむッッ!?」

 

 気づけば、ラディッツの周囲はどす黒い闇に包まれていた。

 そしてスカウターがせわしなく反応し、その方向を見つめながらラディッツは驚愕した。

 

「バカな、戦闘力514……532…………650!? あのガキか!?」

 

 ラディッツは拳を軽く握り、いつ攻撃が来てもいいように身構えた。

 

「くそっ、ここの連中もカカロットと同じか……パワーをコントロールしやがる!!」

 

「たべっちゃお、たべっちゃお♪」

 

 暗闇の中から響き渡る、可愛らしくて残酷な声。

 それが開戦の合図であった──。




 どうも、わかなべでございます。
 最近はドラゴンボール超が盛り上がっておりますが、超から見始めた人はラディッツって誰よ、と思っている人も居るかもしれませんね。それくらいマイナーなキャラなんですよ、主人公の兄貴なのに。

 あまりにも不遇なので、せめてあちらの世界では盛大に暴れてもらおうと思いました。
 ではまた次回の更新まで!
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