東方龍球伝~弱虫ラディッツが幻想入り~   作:わかなべ

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其の弐 サイヤ人をナメるな!! ラディッツの猛攻

 話の通じない少女に、唐突に勝負を挑まれてしまったラディッツ。闇に包まれた空間から不気味に響き渡る少女の笑い声は、明確な殺意をもった残酷な笑い声であった。

 それを感じ取った瞬間、闇の奥から一閃、そして一閃、複数の閃光がラディッツを襲う。

 

「むっ!? ヤツめ、ベジータのような技を……生意気な!!」

 

 全身に力を込めると、避ける仕草も見せずにラディッツはその場で仁王立ちをした。

 攻撃を受け切るつもりである。

 

「おバカさん、ただの人間が喰らったら死んじゃうよ?」

 

 そんな警告も無視して、ラディッツは迫りくる無数のエネルギー弾を意識しながら力を高めてゆく。

 

「──()ァッッ!!」

 

 しかし少女が放ったエネルギー弾の数々を、気合いだけで、大きな掛け声が消えていくと同時に弾き飛ばしていった。

 戦闘力650程度が放つエネルギー弾など、ラディッツの肉体を傷つけるには至らない。

 しかし蚊に刺された程度の(かゆ)みを、ほんのちょっとだけ覚えた。

 

「ちっ、ガキの癖にやってくれるじゃないか…………んんっ!?」

 

 気づけば、後方から円弧状に青色の弾幕が張られては、それら一つ一つがラディッツの命を奪おうと超スピードで迫りつつあった。

 直撃の瞬間、ラディッツは勢いよく跳躍して、そのまま(くう)を舞う。

 しかし弾幕はラディッツを逃そうとはせず、徐々にだが、彼がいる方向へと軌道を修正してくる。

 

「ちっ、しつこいヤツめ!!」

 

 両手を開き、超強力なエネルギーを手のひらの中で圧縮する。

 

()っ!!」

 

 両手から、一気にそれを放出した。

 高圧の、二つのエネルギー波は少女の細々とした弾幕を弾きながら、南北へ飛散していく。

 しかし二つの大きなエネルギー波でかき消せる弾幕の量には限りがある。暗闇の中から、規則的ながらも不規則な場所から、数多のエネルギー弾が放たれ続ける。

 防ぎきれないと悟ったラディッツは、エネルギー弾を一つ一つ、高速で避けていった。

 その速さは人間の達人の域、さらにはかつて世界を恐怖に陥れた大魔王のそれを遥かに凌駕し、制止した状態以外は目では捕捉できないほどであった。

 素早く、音を鳴らしながら高速移動するラディッツ。だが、無数のエネルギー波は留まるところを知らず、ラディッツめがけて常に軌道を修正してくる。

 

「ちっ、根本を絶たねばキリが無い……だが、こう暗くてはヤツの姿が見えん!!」

 

 戦闘力の低い雑魚の癖に生意気な、と思いながらも、ラディッツは弾幕を避けながら冷静にスカウターを操作する。

 スカウターさえあれば、敵の居場所が座標で表示される。

 そこまで相手が反応できないほどの高速で移動し、殴打の一発でも浴びせれば勝てる。

 そういう計算の下、ラディッツは少女を探した。

 

「むっ……ふふふ、見つけたぞ」

 

 ラディッツが笑みを浮かべる。

 ピピピという音と共に、スカウターが相手の正確な位置を示したのだ。

 

「居場所さえ分かればこっちのものだ!!」

 

 咆哮し、弾幕を避けながらジェット戦闘機をも凌駕する超高速で相手に肉薄する。

 着々と距離が縮まり、やがて弾幕を放つ一瞬の光から、相手の姿を視認することができた。

 やはり相手は先ほどの金髪の少女。その少女の笑顔が、ラディッツの接近と共に消失する。

 

「ちぇああーーっ!!」

 

 右手から必発、強力なエネルギー波を放つ。わずか、一瞬で着弾したエネルギー波は大爆発を起こし、大地を大きく抉った。

 しかしラディッツは気配を感じていたのだ。

 直撃の瞬間、猛スピードでそれを避け、(くう)に舞った少女の気配を。

 

 

「ちっ、スピードだけは中々のものだ……だがキサマの場所は筒抜けだ!!」

 

 ラディッツも少女が飛んで行った方向に向かって飛行し、それを迎撃するシステムのように、四方八方に向かって黄色弾を放ってきた。

 かなりの高圧エネルギーだと感じたものの、その少女最大とも言える技には大きな欠点があった。

 

「はははははっ、愚か者が!! 丸見えだぞ!!」

 

 姿を消すほどの高速で少女の背後に回り込み、少女が気づいて振り向いた時には既に遅かった。右腕を大きく振り上げたラディッツは、ハンマーのような拳骨を少女の脳天に叩きつけたのだ。

 岩を砕くような轟音と同時に、真下へ叩き落される少女。今の一撃で少女の集中が切れたのか、周囲を覆っていた闇が一気に晴れる。

 視界が開け、ラディッツは墜落する少女を追うが。

 

「──このっ!!」

 

 勢いよく地べたに手足をついた少女は、そのまま後方へと大きく跳躍した。

 

「ほーう、中々タフだ……だがサイヤ人の戦闘レベルには到底及ばぬ!!」

 

 着地したラディッツも、少女を追おうと遥かに速いスピードでダッシュした。

 ものの数秒で追いついたラディッツに対し、少女は身構える。ラディッツもまた、少女を甚振ろうと右拳を腰まで引いた構えを取った。

 そして始まったラディッツのラッシュに、防戦一方の少女。パワー、スピード、全てにおいて少女を上回るラディッツの猛攻に、少女のブロックか崩れてゆく。腕が、体が、骨身に染みてダメージを受けていく。全くと言っていいほど受けが通用していない状態であった。

 そして、少女のブロックは完全に崩れ去った。

 

「これで終わりだ、せあッ!!」

 

 大きく振りかぶった右の拳を、左手を引くと同時に腰と右拳の180度螺旋回転を与えた突きが、少女の顔面を歪ませた。

 戦闘民族サイヤ人の、大きな殴打を受けた少女は、曲がった鼻と切れた唇から血を流して、大きく吹っ飛んだ。

 小さな体であるにも関わらず、樹木に激突した音は交通事故さながらの轟音であった。

 

「あ、あぅ、……っ」

 

 勢いよく背中を打ちつけられた少女は、呼吸もままならない状態で、力なく前のめりに倒れてしまった。

 

「ふふふ、暇つぶしにはなったな」

 

 腕を組み、満足そうに、憎たらしい笑みを浮かべながらラディッツは少女の前に着地する。

 歩いて近づき、しゃがむと少女の髪を掴んだラディッツは、傷だらけの少女を持ち上げた。

 

「おい小娘、素直に答えたならトドメは刺さんでおいてやろう……質問に答えろ」

 

「な、なに……?」

 

 力なく、少女は聞き返した。

 

「幻想郷、と言ったな? ここは宇宙のどこにある?」

 

「ち、地球……、博麗大結界の中……っ」

 

 半目だけ開けながら、苦しそうに少女は語った。

 地球。その名前に聞き覚えはあるし、何より因縁もある。だが、博麗大結界などという非科学的な場所は聞いたことがなかった。

 とはいえ、ラディッツも地球の全てを知っているわけではない。そういう地域もあるのか、と解釈した。

 

「では二つ目の質問だ。この星にカカロット、もしくは孫悟空と呼ばれている男はいるか?」

 

「知……らない。聞いた、こと……ない」

 

 嘘をついている様子はない。少女は小刻みに震えて、涙を浮かべながら答えていた。

 この言葉に嘘はないだろう。それに、孫悟空(カカロット)が有名人だという証拠もない。

 

「では最後の質問だ。この星に、宇宙船を作れるような科学者はいるか?」

 

「い、る……でも、あなたは……たぶん、博麗、神社に……行ったほうが、いいと……思う」

 

「なんだと? 博麗神社だと? どういう意味だ?」

 

「あなた、たぶん……外の、人…………っ」

 

 そう言い切ると、少女の体から力が抜けてしまった。

 左斜めに曲がった首と、力なく閉じられた瞼。そしてぼたぼたと流れ続ける鼻血。

 

「ちっ、気絶しやがったか……まあいい」

 

 荒々しく少女を投げ捨てると、ラディッツはスカウターを操作して、自動的に戦闘力を検出する自動(オート)モードに切り替えた。

 そしてゆっくりと宙に浮かび、四方を見渡す。

 

「今度はもうちょっと、話の通じる奴に聞くとするか……」

 

 そう言いながら、ラディッツはどこかへ飛んでいった。

 

 

 

   †

 

 

 

「あややや、ひょっとしてルーミア!? えっ、どうしたんですかその怪我!?」

 

「う、うう…………髪の、長い男……」

 

「髪の長い男……さっき飛んでいった人ですか?」

 

「すごい、強さ…………ううっ」

 

「これは、スクープの臭いがプンプンしますね……っ!!」

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