艦隊これくしょん外伝 壊れた懐中時計   作:焼き鳥タレ派

9 / 18
第8話:あの日見た夢

雪の降る街。明るい光の灯る高層ビル群が立ち並ぶ。建物の向こうを眺めると、

そのビルをも遥かに凌ぐ、まさに天を衝かんばかりの摩天楼が見える。

厚着をした人々が楽しそうに行き交い、その中に見知った顔を見る。艦娘達だ。

皆、恋人と手を組んだり、友人たちとウィンドウショッピングをしたり、

この街の賑わいを思い思いに楽しんでいる。共通しているのは、皆、笑顔だということ。

涙なき世界。そう、まさに俺が目指す世界そのものだ。俺はみんなに手を振ろうとした。

が、身体が動かない。何かに拘束されているのか?いや、違う。身体が、なくなっていく!

俺も、“こんごう”のように、消えるのか!?なぜだ、俺は、一体……?

 

ぐわっ!!

 

「……あぁ、ちくしょう。なんだったんだ今の」

 

思わず起き上がる。俺はいつもの万年床で目を覚ました。何の夢だったんだろう。

いい夢だったし、悪夢だったような気もする。まぁ、考えてもしょうがない。

どうせ夢なんだから。時計を見ると朝6時。出勤の準備をするにはちょうどいい頃合いだ。

とりあえず俺は顔を洗う。そして台所へ行き、冷蔵庫の冷や飯を電波調理器にぶち込んで

目盛りを合わせる。ブーンと音を立てて中の皿が回転を始めた。

その間に俺は歯を磨き、髭を剃った。調理器がチン!と鳴る。あちち、温めすぎた。

俺は温めた冷や飯のタッパの上に、梅干しと余り物のメザシを乗せてちゃぶ台に着いた。

 

「いただきまーす」

 

質素な朝食をただ口に放り込み、お茶で流し込んだ。

 

「ごっそさん」

 

タッパや箸を炊事場のシンクに投げ込むと、着替えを始めた。

くしゃくしゃの寝間着からいつも軍服へ。ズボンを履き、

上着を着てボタンとホックを留める。そして軍帽を被って準備完了。鞄を持って出発する。

俺が住んでいるのは2階建ての古い集合住宅“コーポ渦潮”だ。

薄い鉄製の階段をカンカンと音を立てながら降りると、

ゴミ捨て場の掃除をする大家のおばあちゃんに会った。

 

「おはようございまーす」

「おはよう、軍人さん」

 

大通りまで少し歩き、路面電車停留所に並ぶ。しばらく待つと、

道路に敷かれたレールに沿って路面電車が走ってきた。

他の勤め人や学生に混じって俺も乗り込む。そして電車に揺られること15分。

 

「次は~鎮守府前、鎮守府前でございます。お降りの方はボタンでお知らせ下さい」

 

俺は目的の停留所で降りる。鎮守府はもう目の前だ。しばし歩くと見慣れた門。

門をくぐり、詰め所の警備員に軽く挨拶する。

 

「よっ、おはようさん」

「おはようございます、提督!」

 

こうして、俺の提督としての1日が始まるのだ。

 

「提督、おはようございます。今日も頑張りましょうね!」

「ああ。おはよう、三日月」

 

執務室に入ると、中で書類を分類していた三日月が元気よく出迎えてくれた。

彼女は宿舎で寝泊まりしているので早めに出勤することが多い。

一応提督用の生活スペースもあるのだが、たまの休みまで仕事の事なんか考えたくない俺は

通勤を選んでいた。……この懐中時計を拾うまでは。

だが、少しでも歴史・世界に関する情報を探したい今の状況を考えると、

鎮守府に引っ越すことも検討している。

 

……さて、今日は何をするべきか。あれから1週間。大和を送り出して以来、

“落雷”の音が多くなったとの報告が増えている。危険だから極力

当該海域に近寄らぬよう、と指示を出しておいた。頑張ってくれているんだな。

俺も俺で彼女のために資材をくすね……ゲフンゲフン。都合したり、

折を見て会いに行ってはいる。だが、それ以上にしてやれることが見つからない。

いや、勘違いするな俺。艦娘は大和だけじゃない。

戦艦をはじめ、重巡や駆逐のみんなの努力も忘れてはならない。

演習指示や遠征派遣の計画を立てたり、時には差し入れを持っていったり。

やることはいくらでもある。……とはいえ、今日は皆出払っており、

具体的行動を伴う仕事がガチで何もない。

 

そうだ、この間気づいた歴史の矛盾。あれが放ったらかしになっていた。

せっかく糸口を見つけたというのに、何やってたんだ俺は。

今日は状況整理も兼ねて、この矛盾について考察することにしよう。

俺は考えをまとめるため、白紙を取り出し、今の状況や気になること、

気づいた点を書き出していった。

 

ええと、まず大前提として、

“時間は連続していない、歴史は変わらないが世界は変わる”だ。

“こんごう”が残してくれたヒント。次に深海に沈む艦艇の残骸。

様々な時代の艦がごちゃ混ぜになっているのは、これまた“こんごう”自身が証明している。

そして、先だって見つけた歴史の矛盾。夕雲の死だ。なぜ彼女の死がMIと前後したのか。

さぁ、書き出したこれらのピースの足りないパズルを組み合わせてみよう。

 

まずいきなりデカイ矛盾にぶち当たる。前提の“歴史は変わらない”ないし

“歴史は繰り返す”が既に成り立っていない。

『昭和海戦全記』ではMI後に死亡するはずの夕雲が、

史実より2年以上も前に撃沈されている。どういうことだ?シルクハットはともかく、

“こんごう”が嘘をつくはずがない。あぁ、わからん。これは保留だ。

 

次に“時間は連続していない”だ。これはもう俺の中で1つ仮説が立っている。

時間はカレンダー通りに並んでいるわけではなく、俺達が気づかないうちに、

さまざまな出来事のポイントをあちこちジャンプしているという考えだ。

だが、これは今の夕雲の死亡時期の矛盾から生まれた説だから、やはり根拠に欠ける。

単にスタート地点(つまり時計を拾った日)から3ヶ月後に、

何らかのアクシデントでMIの2年前にジャンプしたんじゃないかなぁ、程度の

確証に欠けるおぼろげな想像にすぎない。

そのアクシデントが何かわかればいいのだが……次。

 

で、最後にこの大海原に沈む様々な時代の艦艇。

これまでの“時間点在説”と照らし合わせるとやはりおかしい。

朽ちた艦艇が存在すること自体はずっと以前から知られており、

“こんごう”ともそこで出会った。しかし、大昔の艦艇と最新鋭のイージス艦。

同じ海に在り続けるなんて変じゃないか。さっそく“時間点在説”が否定されてしまう

可能性が濃厚になる。否定しないのは正しくないとも証明できないから。

 

「だめだ、結局のところ“何もわかりません”だ。くそ」

 

「結構頑張ってらっしゃるみたいですわね」

 

チッ、またシルクハットだ。ドアの前にいつの間にか立っていた。

もう驚かない。ただ消えてほしい。この慇懃無礼なクソガキの顔を見るだけで

苛つきが治まらない。磨かれた上等な赤い靴を踏み鳴らしながら、デスクに近づいてくる。

 

「おい、来るんじゃねえ、お前に用はない」

 

だが、シルクハットは俺を無視してデスクのメモ書きを覗き込む。

俺は乱暴に掴んでゴミ箱に捨てたが、奴はもう読んでしまったようで、

顎に人差し指をあてて考え事だ。

 

「ふむふむ、あまり賢くなさそうな貴方にしてはいい線行ってますわね。

特に“時間点在説”?彼女のヒント、無駄にならなくて何よりですわね、フフ」

 

小馬鹿にしたような表情で笑うシルクハット。

 

「……この距離でナイフ出されると避けられないって知ってるか?」

「そうカリカリなさらないで。ほんの僅かとはいえ、

世界の仕組みの一端にたどり着いた貴方にご褒美を差し上げようと思っていますのに」

「褒美だ?」

「そう。ある世界のお伽噺」

「どういう意味だ……」

「“こんごう”さん、でしたっけ?彼女が健在だった時代の物語ですわ」

「彼女が生きていた時代……?」

「まぁ、正確には生きていた“世界”……あらら、ここから先は最後のお楽しみ~」

 

口元で人差し指を立ててケトケトと笑う。奴が竜頭を押すのと、俺が刺すのと、

どちらが早いか試したくなってきた。

 

「いいから話せ!」

「焦らない焦らな~い。まず、彼女がまだ生きていた頃、

世界はと~ってもギスギスしていましたの。どこもかしこも核兵器を抱え込んで、

互いに突きつけ合うチキンレースを日々繰り返し、

世界の覇権を虎視眈々と狙っていましたわ」

「核、兵器?」

「あぁ、確かこの世界には存在しないものですわね。う~ん、簡単に言うと、

ウランをはじめとした核物質を臨界させる新型爆弾ですわ。

1発で都市を一つ壊滅させるその破壊力はもちろん、一番やっかいなのは

人類にとっては永久とも言えるほどの長い年月、放射線、いわば目に見えない“毒の光”を

放ち続けること。そんなものが世界中に数千発も常に発射可能状態で存在していましたの」

「……毒の光って、解毒剤とかは」

「そんな甘っちょろいものじゃありませんわ。防ぐには厚さ十数センチの鉛の壁が必要。

一瞬でも浴びたら即アウト。線量にもよりますけど、私が見た世界では

即死するレベルでしたわ」

「浴びただけで死ぬって……どんだけめちゃくちゃになってんだよ、その世界。

そんなハッタリ地味た話信じられるか!」

「疑うならご案内しても構いませんが、辿り着いた瞬間、貴方、死にますわよ。

目安としては、死に至る線量が10SVで、あの世界の平均線量が20SV。

まぁ、生きているのが辛くなった方にはおすすめですわ」

「なんでそんなことになった……どの国もお互い喉元に刃突きつけ合って、

身動きできない状態なんじゃなかったのか!?」

「お隣さん」

「は……?」

「ある日、中国が開発したコンピューターウィルスで、

世界中の軍事施設・核兵器を含む兵器のコントロールが掌握されましたの。

“イージスを凌駕する天竺の叡智”とか宣ってましたけど。

世界の核を手に入れたと勘違いしたデブの指導者が、世界に向けて勝利宣言してましたわ」

「コンピューターウィルスってなんだ」

「ああもう、発展途上の世界で会話をするのは疲れますわね……」

 

シルクハットが大げさに肩をすくめて両手を上げる。お前が始めたんだろうが。

 

「ええと、ここにも未発達ながら人工知能で動いている物はありますわよね?」

「ああ。司令部の計器類なんかがそうだ」

「その人工知能に不正に入り込んで記録を改ざん・盗難したり、今言ったように

操作権限を奪取したりする、悪意ある者に作られた電子知能の塊みたいなものですわ」

「それがお伽噺ってオチじゃないだろうな」

「とことん疑り深い方。では実例をご覧に入れますわ」

 

するとシルクハットは、ステッキの足先を持って高く掲げ、ゆっくりと何回か回した。

間もなく、デスクの電話が鳴り出した。

 

「私だ」

“提督、緊急事態です!あの、どう申し上げていいか……”

 

大淀がパニックに陥った様子で電話を掛けてきた。後ろの方で長門達の喧騒が聞こえる。

 

「落ち着くんだ、何が起きている」

“あの、電子計器のモニターに、その、私の顔が!!……本当なんです、

とにかくご指示を!”

「心配いらない。すぐに収まる。そのまま待機せよ」

 

俺は電話を切るとすぐシルクハットを怒鳴った。

 

「おい、何をした!?今すぐやめろ!」

「はい、おしまい」

 

シルクハットがステッキを下ろすと再び電話が鳴った。

 

「どうなった」

“あ、提督の仰った通り、すぐ元に戻りました。お騒がせして申し訳ありません”

「あ、気にしないでくれ。それは極稀にそうなるんだ。前は私の顔だったし、ハハ。

とにかく、通常の任務に戻ってくれたまえ」

“はい、ありがとうございました”

 

ガチャン。俺は受話器を下ろした。

 

「納得していただけました?こんな風に電子制御されているものに悪さをするのが、

コンピューターウィルス」

「ああわかったよ!信じりゃいいんだろう!それで続きは!?」

「やっと前進ですわね。……で、その中国製のコンピューターウィルス、

確かにしばらく世界の国々の核兵器を使用不能にしたんですけど、ここで誤算が」

「誤算?」

「ウィルスに致命的なバグがありましたの。バグというのは、

主にプログラム、つまり電子命令文の書き間違いなどで起こる不具合のこと。

さっきの騒ぎみたいな事がウィルスなしで起こったらそれがバグ」

「そのバグがどうしたっていうんだ」

「ウィルスを作ったバカが攻撃目標と防衛対象をあべこべに入力したせいで、

指導部の間抜けが発射ボタンを押した瞬間、全世界の核を含むあらゆる兵器が

中国に向けて発射されましたの。まったく、開発を急いで、

ろくにデバッグしないからこうなるんですわ。

……デバッグはプログラムの間違い探しのことね。質問厳禁!」

「それで、世界はどうなった……?」

「ウィルスが暴れた“世界”のことなら……まず中国は焼け野原。

肥えた成金が過ぎた野望を持った報いですわね。それはいいとして、

数千発の核ミサイルが一点で炸裂したエネルギーで

ちょっと困ったことが起きちゃいましたの」

「ああそりゃ困ったろうさ!中国が吹っ飛ぶほどの爆弾が弾けたら日本もどうなったか……」

「そんなレベルの問題じゃなくてよ。そのあまりに膨大なエネルギーの影響で、

世界がちょっと“ずれ”ちゃいまして」

「“ずれ”、だと?」

「貴方はもうご覧になっているはずですわよ。海底に眠る過去の残骸」

「!!……お前は、つまり、あの艦は異世界のものだと言いたいのか!」

「ご名答。貴方が導き出した“時間点在説”のアクシデントもこれに当たりますわね。

平行世界が融合しちゃったから時間のポイントにもいくつもズレが……

あらやだ私ったら!ついヒントをあげすぎてしまいましたわ。

無知なる者が必死に頑張って頼りない手がかりにすがって答えにたどり着くのが面白いのに、

ウフフフ」

 

もういちいち奴の相手をしている理由はなくなった。

ここに来て打開の鍵がもう一つ手に入ったからだ。平行世界は俺も知っている。

空想科学小説なんかに出てくる、要は異次元だ。

念のため最後に気になったことを聞いてみる。

 

「その……破滅した世界はどうなってる。お前の上司はなんでもできるんじゃないのか」

「局長も匙を投げるほどの惨状ですわ。

“う~ん、直してもいいけど、もうみんな住みよい新世界にいるんだから

それでいいじゃないか”、が局長の見解で私も同意ですわ」

「新世界?」

「あ、いやだ私としたことが!今日はこれにて失礼!」

 

シルクハットの少女は振り向くとパッと消えていった。妙に慌てて出ていったな。

つまり最後の“新世界”は戯れのヒントではなく、本当に知られたくない何かということだ。

俺はゴミ箱から捨てたメモ書きを広い、新情報を書き足した。

 

“異世界崩壊”

“平行世界”

“超爆発による世界融合”

“新世界”

 

これらのキーワードで鍵のかかっていた金庫がいくつも開いた気がする。

この世には俺達が生きる世界だけでなく、複数の世界があるということ。

膨大なエネルギーがあればその壁を乗り越えることがあること。

そして最後の手がかり、“局長”とやらが言っていた“新世界”

……俺は次の3ヶ月後、ある実験を行うことに決めた。

メモ書きに書き足す。“時計の制御”、と。

 

それからの3ヶ月、俺はいつものボロい我が家、“コーポ渦潮”で寝泊まりし、

大和に生活に必要なものを送り、仕事を無難にこなして過ごした。

そしてこの日がやってきた。俺は母港の先端に立ち、深く息を吸う。

俺はポケットから銀の懐中時計を取り出し、腹に力を入れ、集中し、覚悟を決め、

竜頭を押した。

 

ギュオォォン!

 

時間遡行が始まる。俺はこの現象に身を任せることで、

幾分楽に遡行できるようになったっが、今度はその逆。徹底的に抗う。

意識を失わないよう、踏ん張って脳に血液を集める。

 

「ぐううっ!」

 

俺の精神や肉体をぐしゃぐしゃにかき混ぜようとする時間に対し、俺は心だけで抵抗する。

耐えろ、今度は自分で掴み取るんだ、確証、可能性、手がかり、

理想の世界への足がかりになる何かを!

 

時間は、システムに抗おうとする俺を強烈な精神的ダメージで攻撃してくる。

人格をガリガリと削り取られていくような経験のない消耗感。

もう少し、もう少し耐えるんだ、俺の心!……そして、決着の時が来る。

突然、今まで俺をいじめ抜いた不快感が突然なくなり、不思議な世界が広がった。

 

それは、まるで宇宙空間のように真っ暗で周りを無数の星々が流れている。

いや、それらは星ではなく、ネガだった。

俺の近くを流れているネガを1枚手に取り覗いてみる。艦娘が何か話しているシーン。

これは……もしかして俺が言っている時間のポイントに当たるものなのか?

流れてきたもう1枚を手に取る。あっ、これは……物資を運んだ時に

手を振ってくれた大和だ。もう間違いない。時間、いや、世界は

この無数のネガをつなぎ合わせて作り上げられた1本の映画なんだ!

 

世界の成り立ちに触れ興奮していると、妙なネガが流れてきた。

上の空間から何かに挟まれているように1枚のネガがひらひらと飛び出している。

なんだろう。俺は背伸びして中を覗いてみる。……っ!言葉を失った。

それは3ヶ月前夢に見た、見たこともない大都市。

洗練された設計のビルが立ち並び、巨大な摩天楼が見えるあの街。

艦娘のみんなが幸せに生きる、あの涙なき世界だった。

 

「あれは、実在するんだ!やった……やったぞ!!」

 

理想郷の存在に驚喜していると、後ろから光源が迫ってきた。時間遡行の終わりだ。

さぁ、帰ろう。3ヶ月前の鎮守府へ。俺は光に包まれ、長い長い時間遡行を終えた。

精神を酷使した俺は頭を振り、周りを見渡す。……ここは、母港!?

そうか、意識を保ったまま遡行すると、肉体もスタート地点に固定されるのか。時計の新しい性質を見つけたのは思わぬ収穫だ。3ヶ月待った甲斐があったというものだ。

俺は3ヶ月をやり直すべく執務室に戻った。

 

俺は執務室に戻り、仕事をしているふりをしながら考え事をしていた。

それはもちろん、あの理想郷にたどり着く方法だ。シルクハットによると、

最終戦争クラスの莫大なエネルギーですら、世界を少し融合させるアクシデント程度しか

起こせなかったという。仮に俺が工廠の弾薬庫に火炎瓶を投げ込んだところで

何も起きないだろう。俺が死刑になるだけだ。

理想郷が写っていたネガ。こちらにはみ出すように何かに挟まっていたことを考えると、

この世界と隣接しているのは間違いないと考えていい。

エネルギーさえあればその扉はどこにでもあるのに。近くて遠い。くそ。何か方法はないか。

……だめだ。そんな力あるわけない。少なくとも地球を吹っ飛ばせるほどの。

 

ん?地球を、吹っ飛ばす……俺は、念のため、そのキーワードをメモして引き出しにしまい、

今度こそ真面目に仕事に戻った。今度シルクハットが来たらそれとなく確かめなければ。

しかし、時間遡行してからというもの、頭痛が治まらない。いや、頭痛なのか?

脳が削られたような痛みがずっと続いてる。とにかく三日月に頭痛薬を持ってきてもらおう。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。