超えられない壁   作:食べきりサイズ

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#1 ただの友達

 

 

 

「はーい、みんな聞いてー。今から進路希望調査の紙を配ります。まだ先の話って思ってる子もいると思うけど早めに自分の将来の事を考えておいて損はないから、しっかり考えて書くように!」

 

俺は音乃木坂中学校に通う三嶋和樹。

休み明け特有の怠さがまだ抜けてない四月。

帰りのホームルーム中に配られた紙を自分の部屋で頭を抱えながら見ていた。

 

 

正直言って三年生になったという自覚があるのがどうかさえ怪しいのに来年の高校受験の事なんて考えられるわけがなかった。

 

一人で考えても全く考えがまとまらないため自室を出てリビングへ向かった。

 

「母さん。再来週から三者面談があるっていうのは伝えたよね?

その時の内容が進路についてらしいんだけど、はっきり言って自分でも何をしたいかが思いつかなくて困ってるんだけど母さん的にはどう思ってるのか教えてくれるかな?」

 

リビングで洗濯物をたたんでいる母に向けて伝えると少し困った表情をしながらこっちを向いた。

 

「何か難しい事言った?」

 

 

 

 

「和樹。三者面談の事なんて今初めて聞いたわ。」

 

 

 

 

「え。………そうだっけ?」

 

 

 

 

「はぁ。まぁいいわ。それで?」

 

 

 

「………」

 

 

 

 

「………」

「え?なんで黙ってるの?もしかして話聞いてなかった?」

 

 

 

「ん?あぁ進路希望のことだったわね。」

 

 

 

 

俺の母親は少し抜けている所がある。

息子としては気になるところだが今に始まったことではないので何も言わないでおこう。

 

 

 

 

「私自身、和樹にどうしてほしいとかどういう職に就いてほしいとかは思ってないわよ。ただ、最近は料理に興味が出てきたって言って自分から料理するようになったわよね。それが今あなたがやりたい事ならそういう道も考えてみてもいいんじゃないの?

まぁ料理の勉強っていっても大学からでも遅くはないと思うし焦らなくていいんじゃないかしら。後でお父さんにも聞いてみなさい。」

 

 

 

 

 

確かに春休み中から少しずつ料理をするようになってきのは確かだが将来的に料理人になりたいとかは全く考えてない。そもそも料理を手伝い出してからまだ一ヶ月も経っていない。このまま続くのかどうかさえ分からない。

 

 

 

 

 

それに母の言う通り、料理を本格的に学びたいのなら大学からでも遅くはないと思う。結局進路については何も解決しないまま一日が終わった。

 

 

「はぁ。」

 

 

 

 

「朝からどうしたの?あ、まだ白紙なんだ。」

 

 

 

 

 

あれから数日後、提出期限当日まで考えがまとまらず朝から大きな溜息をついた時に隣の席の子から声をかけられた。

 

 

 

 

 

「おはよう高坂さん」

 

 

 

 

 

「おはよう。考えすぎなんじゃないかな?まだ四月なんだしとりあえずって感じで決めちゃっていいと思うよ」

 

 

 

 

 

「高坂さんはどこにしたの?」

 

 

 

 

「私はUTXにしようと思ってる」

 

 

 

 

「そっかー。あそこはスクールアイドルっていうのがいて人気だから倍率高そうだね。」

 

 

 

 

 

「A-RIZEだったよね?私はそういうのに興味はあまりないんだけどね。」

 

 

 

 

UTX学院高校

最近、秋葉原からすぐ近くになんともオシャレな高校が新設された。

A-RIZEはUTX高校のスクールアイドルというもので人気はすでに全国区だそうだ。その影響もあって倍率が高いのは誰もが周知しているはず。

 

 

 

 

 

ちなみに隣の席の子は高坂雪穂さん。

ショートカットがすごく似合う子で二年生の時も同じクラスだったため気軽に会話をすることができる。俺はどちらかというと人見知りなのだが彼女に対しては最初から壁を感じることはなかった。それは彼女の人柄というものなのだろうか、誰に対しても明るく素直に接することができるからだと思う。

 

 

 

 

 

 

「でも三嶋君は成績いいし、どこを志望しても大丈夫だと思うよ。」

 

 

 

 

 

優しく微笑みながら彼女はそう言ってくれた。素直に嬉しかった。少し顔が熱いのは気のせい…………だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

「三嶋君。進路希望調査の紙を提出してないのは君だけだから今日中に提出するように。いいですね。先生達も全員分の紙に目を通してまとめなきゃいけないから時間が無いの。いい?絶対に今日中ですからね!」

 

帰りのホームルームの最後にこう言われ落胆した。自分のせいでもあるが。

 

 

「うーーーん。うーーーーーん。」

 

放課後の教室に響く唸り声

ここまでだと自分でも考え過ぎだと思う。昔から優柔不断で外食先の料理を決めるのも一苦労するほどで、それが進路ならなおさらだ。

自分の人生を左右するかもしれない選択なのに簡単には決められない。

そんな時に高坂さんの言葉を思い出した。

 

『考えすぎなんじゃないかな?まだ四月なんだしーーー』

 

直接言われた時には何も感じなかったが思い出した瞬間に少し気が楽になった。

 

「それもそうだな。とりあえずでいいか。早く帰りたいし。」

 

やっと書けた紙を持って勢いよく教室を出た時に誰かとぶつかってしまった。

 

「痛っ!」

 

そう言いながら尻餅をついたのは高坂さんだった。

 

「え!どうしたの?」

「どうしたのって。三嶋君とぶつかって尻餅ついたんだけど!っていうか、ぶつかった後の第一声がそれ?」

 

少し頬を膨らませて見上げてくる。

 

あ、かわいい。

 

違う違う。そうじゃない。そうだけどそうじゃない。

自分でもよく分からなくなってしまったがとにかく高坂さんに謝らなきゃ。

 

「ごめん!進路調査表が書けたから出しに行こうと思って急いでた!」

「そっか。まぁ私も走ってたからお互い様ってことで! それより高校はどこにするの?」

「とりあえずここかな。」

「げ!とりあえずで選べるような高校じゃないよ!」

 

"とりあえず"選んだ高校は家から少し遠い進学校だった。

成績自体に問題はないため行こうと思えば行ける高校だが、家から遠いのがネックだ。

 

「まぁとりあえずだからね。それより高坂さんは忘れ物?」

「数学のノート忘れちゃったから取りに来たの。」

「そっか!じゃあ俺は職員室行かなきゃいけないから。また明日ね!」

「うん。じゃあね!」

 

帰れるのが嬉しいか高坂さんの膨れた顔が見れたのが嬉しいのか分からなかったが気分が良かった。居残りも悪くなかった…かな。

 

次の日からは晴れやかな気分で登校できた

 

 

 

 

「今日は何と無く一日中楽しそうだったね!何か良い事でもあったの?」

「秘密だよ!じゃあね高坂さん!また明日!」

「気になるけど教えてくれそうにないからいいや!またね三嶋君!」

 

 

去年に引き続き今年も同じクラス。ましてや隣の席なんだしもう少し高坂さんと仲良くなりたい。友達なんだし。

 

 

 

 




こんな感じで進めて行こうと思っています。
初めてなので至らぬ所もあると思いますがよろしくお願いします。
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