先日、中学校生活の中で最後のイベントとなる文化祭が終わりようやく落ち着きを取り戻した十月。受験勉強のため俺の家に来ている高坂さんと絢瀬さんが悲鳴に近い大きな声を同時に出した。
今年から始まったスクールアイドルの大会、通称【 ラブライブ! 】その第一回大会はスクールアイドルランキングの一位に君臨するA-RIZEの優勝を待って終了した。ネットや有料チャンネルが中心に配信されたのだが大会の運営側が驚くほどの盛況ぶりだったらしく、この秋に第二回大会の開催が急遽決定。その情報が二人の携帯にメールで届き、今のようなリアクションを取った。
一通りメールの内容を確認した後、詳しい情報が知りたいという事でリビングにあるパソコンの元へと行ってしまった二人を追うようにして一階に降りる。俺がリビングに入った頃には部活から帰って来たばかりの雫も話に加わり、賑やかになっていた。
前回大会はランキング上位二十組以内に入ることで自動的に大会へと進むことができた。しかし、今回の大会では各地区ごとに予選を行い、その予選を勝ち抜いたグループが地区代表として本大会に出場する。つまり現時点でのランキングに関係なく、予選のパフォーマンス次第で本大会に出場できる可能性が出てくる。そうなると前回大会の直前に出場を辞退してしまったμ'sにも本大会に出場できるチャンスがあるということになる。という高坂さんの分かりやすい説明のおかげですぐに状況が理解出来た。
「丁度良いタイミングでみんな揃ったし、ご飯にしましょう。雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんも座って。雫は着替えて来なさい」
「「はーい」」
台所から聞こえてくる母さんの言葉に反応し、絢瀬さんはテーブルの元へ、雫は自分の部屋、高坂さんは母さんの元へと向かった。だんだんと定位置化しつつある席に着いた絢瀬さんだったが、母さんの元へと行った高坂さんの姿に気が付き、再び立ち上がって台所へと向かった。
「すみません。いつもありがとうございます」
「ありがとうございます」
横並びになった二人は椅子に座って様子を見ていた俺が見えなくなるほど深く頭を下げた。こういうちゃんとした礼儀がしっかりと出来る二人だからこそ母さんも好き好んで面倒を見たがる原因の一つなのだろう。
賑やかな雰囲気のまま夕食を食べ終え、雫にピアノを教えてもらっている絢瀬さんの携帯に絵里さんから連絡が入り、帰ることになった。外はすっかり暗くなっており高坂さんと別れた後は絢瀬さん一人になってしまうということなので俺が二人を送ることにした。
「今日は私も一緒に行く」
帰り支度をしている二人にちょっと待っててと言い残しリビングから出て行った雫はわざわざ着替えをしてきて戻ってきた。いつもなら玄関までしか見送らないのだが今日は一緒に家まで送るつもりらしい。それなら俺は行かなくてもいいんじゃないかなと思ったものの俺が行かないとなると絢瀬さんを送り届けた後に雫が一人になってしまうのに気が付き、結果として行くことになった。
「ラブライブ!楽しみだねー」
「うん!早くμ'sのライブが見たいよ」
俺と高坂さんの前を歩く二人は相変わらずラブライブ!の話題で盛り上がっているが高坂さんは心なしかどこか浮かない顔をしている。前回大会の直前に穂乃果さんが体調不良で倒れる瞬間を目の当たりにした高坂さんからすると今回も同じ事を繰り返してしまうのではないかと心配しているのだろう。それに、穂乃果さんはこの秋から絵里さんの後を継いで音ノ木坂学院の生徒会長になっている。μ'sのリーダー、センターとしてメンバーを引っ張るだけではなく、生徒会長としての役割も果たさなければいけなくなる。そんな事をしていれば誰が同じ立場になろうと必然的に無理をせざるを得ない状況になってしまうのは目に見えている。幸いな事に幼馴染みの二人も生徒会に入ったらしいので上手く三人で分担すればいいのかもしれない。
しばらく経っても表情を変えなかった高坂さんだが、何かを思い出したかのように目線を上げ、口を開いた。
「そういえば今度の本大会って二月なんだよね?」
「うん。それがどうしたの?」
「大会が終わったら三年生は卒業だなって思って」
第二回大会は秋に一次予選、年末に二次予選、二月に本大会という日程になっており、本大会への出場が決まったグループはほぼ半年間もの間ラブライブ!の練習や準備を行わなければならない。この時期の高校三年生は就職活動や受験などが控えており、特に大学を受験する生徒にとってはこれからの人生を左右するとても大事な時期なのだ。
一、二年生のみで構成されているグループならば関係の無い話だがμ'sはそうではない。希ちゃんに絵里さん、そして部長のにこさんの三人が三年生。在学中にもう一度ラブライブ!に出場出来るチャンスが生まれたからといってその事だけを考えて浮かれている場合ではない事は本人達が一番良く分かっているだろう。
「今度は良い結果が残せると良いね」
卒業という言葉に対して高坂さんがどこまでの考えがあるのかは分からなかったので今はこれくらいしか言えなかった。
「え?出ないの?」
『うーん。出ないって言ってるわけじゃないんだけど、様子が変なんだよね』
絢瀬さんを家まで送り届け、帰って来ると家に忘れていた携帯に高坂さんから少し話があるというメッセージが入っていたので電話をかけた。
家に着いた後すぐに穂乃果さんの元へ行き、ラブライブ!の話題を出すと高坂さんが予想していたような反応が無く何かを気にしている様に見えたそうだ。
「もしかしたらこの前の大会の事を気にしちゃってるのかな?」
『……だとしたら、そんなのお姉ちゃんらしくないよ』
「まぁ出る出ないはみんなで決めるだろうから大丈夫じゃないかな?」
『そう…だよね。あ、でもね、今度の本大会の時期が三年生の卒業とほとんど同時なんだから少しは考えなよ。とは言った』
俺達中学三年生と絵里さん達高校三年生は来年卒業という観点から見れば同じだがその意味や重みが違う事を高坂さんも理解していた。穂乃果さんが今回の大会の時期についてどこまで考えているか分からないが高坂さんがその言葉を伝えた時に考え込むような表情を見せたのならこの先の状況を把握できているのは妹の方である。エントリーするかどうかをメンバー同士で話し合うとなれば必然的に【 卒業 】というワードは出てくるはず。その時に考え込んでしまい場の空気が重くなってしまうのであれば今のうちに少しでも考え、自分なりの答えを出しておいた方がいいだろう。
翌日、μ'sメンバーの説得と部長である矢澤さんとのラブライブ!出場をかけた階段ダッシュ競走のおかげで第二回大会へのエントリーが決まった。絢瀬さんは喜んでいるが高坂さんはどこかホッとした様子がチャットの文章から見て取れる。普段から穂乃果さんの話になると何も気にしていない様に少し冷たい素振りを見せることが多いのだが高坂さんだがこういう反応を見る限り、何だかんだ心配もするし穂乃果さんのことが好きなのだろうと改めて思った。何はともあれ、これでまたμ'sのライブが見られる機会が出来たので楽しみだ。
そして、エントリー締め切りの三日前になったある日、高坂さんと絢瀬さんの元へ驚くべき知らせが届く。
帰りのホームルーム中、終わったら職員室に来るように言われ、二人揃って不思議そうな顔をしていた。何か悪さをして怒られる事をするような二人ではないため、呼ばれた要件の見当も付かない。そんな二人に軽く挨拶をして一人で帰路についた。
今日は週に一度の塾に行かない日。そして今日も、というか今週も二人が家に来る。
先週の帰り間際、玄関まで見送りに来た母さんが毎週金曜日は家に来て勉強会するなり雫と遊ぶなりするのはどうかいう話を持ちかけた。その話に賛同した雫と絢瀬さんを俺と高坂さんだけでは止められるわけもなく、二人が毎週末家に泊まる事に決まった。
「和樹!ほら、起きなさい!二人と一緒に雪穂ちゃんのお母様もいらっしゃったから挨拶しなさい」
気がつくとソファの上で寝てしまっていて、意識を失う前に確認した携帯の時計は三十分ほど進んでおり、さらには高坂さんからのメッセージが三件ほど入っていた。おそらく学校を出る時と家を出る時、そろそろ着くなどの連絡をこまめに入れてくれたのだろう。その連絡に対して何も対応出来なかった事に対しての謝罪は後でするとして今日は高坂さんのお母さんも来ているようなので小走りで玄関へと向かう。俺が挨拶をしようとした頃には内容についてはっきり分かるわけではないが母親同士で盛り上がっていたので一言だけ声をかけながら会釈をする程度で済ませた。
先に部屋へ向かった二人の分の飲み物を用意して部屋へ入った後、放課後の件を聞いてみることにした。
「二人まとめて呼ばれた件って何だったの?」
「えーっと、ちょっと困った事になっちゃって私も亜里沙もまだ状況が理解できない感じ…なんだ」
高坂さんは髪の毛先を親指と人差し指でいじりながら苦笑い、絢瀬さんに関してはぼーっとカップに注がれているココアを眺めている。二人の反応からすると良い知らせではなかったのは見て取れるが二人がこんな事になってしまうような内容とは一体何なのだろうか。
「実はね今日の放課後、私達が行ったのは職員室じゃなくて校長室だったんだ。それで、こんな紙をもらったの」
勉強道具が入っている鞄からクリアファイルと一枚の紙を取り出し、俺の前に置いた。その紙には
【 第二回ラブライブ!出場打診の概要 】
と記されている。
ホッチキスで留められている十枚近くの紙の説明を一緒に見ながら内容を教えてもらった。簡単に言ってしまえば高坂さんと絢瀬さんの二人にも今回の大会に参加して欲しいとのこと。
まだ正式にアイドル活動をしているわけでもないのにこんな通知が大会本部から送られてきたのにはちゃんとした理由がある。
「やっぱりこれが原因……だよね?」
そう言った絢瀬さんの携帯からつい先日行われた二人のライブの音声が聞こえてきた。中学校の文化祭に来ていた保護者の人がビデオカメラで撮影したと思われる映像が動画サイトにアップされてしまっているが本人達の許可が無いということでサイト側に消してもらった。それでも、すでに多くの人がダウンロードしてしまっているので何度消してもまた別の人がアップしてしまう。文化祭自体を撮影していた保護者を特定したとしてもどうしようもないくらい広がってしまっている。
動画自体が出回ってしまったのは仕方のないことなのだが問題はそれだけでは無い。最も大きな問題なのはこの動画に対する反響の大きさなのだ。人気のあるスクールアイドルの曲を使い、踊りや歌を真似して撮影し動画サイトにアップするという人達はたくさん出てきた。その中でもA-RIZEとμ'sの人気は高く、検索すれば見切れない程の数がある。そういった括りで考えると二人のライブも同じ扱いになるはずなのだがスクールアイドル活動を応援、注目している人達の間でどんどんと噂が広がってしまい他の動画と比べ物にならないくらいの再生回数になっている。今では第二回大会のダークフォースとも呼ばれる程になってしまい、μ'sとの姉妹対決が騒がれているらしい。
その噂が大会運営側の耳に入り今回の大会への出場を打診してきたのだ。確かにこの二人がちゃんとしたユニットを組んで大会に参加するとなれば同地区のA-RIZEだけでなくμ'sのライバルになる可能性はあるし一気に話題性が出てくる。
「でもさ……私達ってまだスクールアイドルを始めたわけじゃないんだよ?こんなの…変……だよ」
「そうだよね。これだって言い換えればお姉ちゃん達μ'sの曲を歌って、他の人達と同じ事をしてるだけ。ねぇ…雪穂はどうしたい?」
「私は………」
パタンというドアが静かに閉まる音と微かに感じた人の気配で目が覚めた。寝ぼけながら携帯を探し、時間を確認すると時刻は五時半。絢瀬さんの姿が見えないのでトイレにでもいったのだろう。もう一度寝る前に乾いた喉を潤そうと階段を降りてリビングへ向かうと電気が点いていた。誰かが消し忘れたのだと思い中に入るとトイレに行ったと思っていた絢瀬さんの姿があり、膝を抱え込むような姿勢でノートを見ている。何度も一緒に勉強をしているためそのノートがどんなノートなのかが分かるようになっていた。ちなみに今、絢瀬さんが見ているのは主に数字と英語の主要点がまとめられているノートだ。
「おはよう三嶋君。随分と早起きさんなんだね」
昨晩は一時過ぎまで勉強していたので四時間弱しか寝ていないのと寝起きということもあり、絢瀬さんからは聞いたことのないくらいゆっくりとした口調で挨拶が返ってきた。とは言っても、俺も同じような感じだ。
「まだ眠そうだねもう少し寝てれば良かったのに。絢瀬さん、何か飲む?」
「んー、なんだか寝付きが悪くって。あ、飲み物は三嶋君と同じでいいー」
コップを持ってソファへと移動する。先程まで見ていたノートは近くに設置されているテーブルの上に置かれており今度は携帯を見ていた。携帯も部屋に置いてきてしまい特にする事もないので絢瀬さんのノートを手に取り、パラパラと流し読みをする。
「ねぇ三嶋君はさ、今回の件についてどう考えてる?」
昨日の話の流れからしてラブライブのエントリーについて言っているのだろう。勉強を始める前にこの件についてどう捉えどうしたいのかまとまらないなりに意見を出し合った。どうしたらいいのか分からないと言っていたように絢瀬さんはまだ迷っている。そんな絢瀬さんに対し、高坂さんはすでに答えを出していた。
『私は今回の件、断るべきだと思う』
絢瀬さんの目を真っ直ぐ見てその答えを告げていた。冬に受験を控えていること、準備期間が短いということが関係しているのだが一番の理由は “スクールアイドルではない” ということ。
μ'sだけに限った話ではないが全国でスクールアイドルとして活動している人達は普段の練習風景やそれぞれの曲を合わせたPVを作ってネットに配信することで自分達のグループをアピールしている。中には路上ライブを行って認知してもおうと頑張っている人達もいる。そんな人達と同じステージに立つのは今の段階では考えられないそうだ。
『今回はいくら亜里沙でも譲らない。私は出ないって決めたから』
こう最後に付け加えた。
「まずは二人がどうしたいか、じゃないかな?個人的には高坂さんの意見に賛成……だけど」
「それは雪穂のことが好きだから?」
「ち、違うよ!来年、受験も控えてるし、何よりスケジュールが恐ろしいことになるのは絢瀬さんも分かってるよね!?」
くるっと勢いよく姿勢を変え絢瀬さんの方を向く。ニヤニヤしながらこちらを見ていた絢瀬さんは小悪魔……というよりも悪魔に見えた。はぁ、と小さく溜息をつきながら姿勢を戻し、コップに手を伸ばす。保温効果のあるコップを使っているため中の飲み物はまだ暖かく、冷まそうとしてかけた息の返り熱はかなり熱い。
「……私はね」
絢瀬さんはソファの上に体育座りをしながら口を開く。
「何をするのも雪穂と一緒がいいの。音ノ木坂に進学するのも、スクールアイドルをやるのも。だから今回の大会、雪穂が出ないなら私も出ない……………まぁ、お姉ちゃんと同じ大会に出れないのはちょっと残念だけどね」
絢瀬さんがまだしっかりと決断出来ずに迷っている理由が最後の一言で分かった気がした。本来であれば三つ歳の離れている絢瀬さんと絵里さんは三年制である高校であれば二人が同じ学校に通う事はまずありえない。そして来年には俺や絢瀬さん達と入れ替わりで卒業してしまう絵里さんがその後もスクールアイドルを続けるかは分からない。卒業後もμ'sとして活動に参加し、絢瀬さん達がμ'sに加われば同じグループでライブや活動が出来る。それでも、今回の話を断ってしまうと同じ大会に参加出来る可能性がかなり低くなってしまう。絵里さんのことが大好きな絢瀬さんにとっては【絵里さんと一緒】というところに強いこだわりがあるのだろう。
週が明けた月曜日、朝のホームルームが終わるのと同時に二人は校長室へ行き、大会に参加しない事を伝えた。
昨日の夕方、もう一度二人で話し合って参加を辞退する事に異論は無いかを確認しあったという。その時に、これからもコンビを組んでいくなかで、お互いの意見や要望は隠さずに全部共有するべきだと高坂さんが言ってくれたと満面の笑みを浮かべる絢瀬さんから教えてもらった。その事を踏まえた上で絢瀬さんは絵里さんと同じ大会に参加出来ない事への後悔や喪失感を味わった。それでも、その気持ち以上に高坂さんと共に活動したいという気持ちが自分の中では強いのだと伝えられた。
そして、この話し合いの最中、不意に絢瀬さんは泣き出してしまったらしい。
「その事は言わないでって言ったじゃん!」
お昼休み中で賑やかになっている教室内でさえ全員が反応してしまうほどの声量に絢瀬さん自身も驚いた様子を見せた。勢い良く立ち上がった絢瀬さんの顔は赤く染まっていて、それが泣き出してしまった事を思い出したからなのかクラス中の人に見られているからなのかは分からない。
「もう。雪穂の意地悪。絶対今度仕返しするんだから」
「それで?なんで絢瀬さんは泣いちゃったのかな?」
「あー!三嶋君まで!もうなんなの!?二人して」
少し意地悪をするような言い方をすると絢瀬さんは顔を赤く染めたまま頬を膨らませる。心なしか今も涙目になってしまっているように見えるが、その話を聞きたいのは本当のことなので高坂さんに教えてもらうことにした。
「まぁまぁ亜里沙。三嶋君にならいいでしょ?もう泣いちゃったことは言っちゃったんだし」
「ふん。もう知らない!雪穂のおバカ!」
そう言うと絢瀬さんは机に顔を突っ伏してしまう。その姿を見て、ふふっと笑う高坂さんは何やら楽しんでいるように見える。そしてルーズリーフに特に意味の無いであろう落書きをしながら、その経緯を教えてくれた。
「私もね、亜里沙とはこの先もずっと一緒に何かしたいなって思ってるの。だから、言いたい事とか悩みがあるなら全部言ってほしいんだよね。そういう部分で我慢してほしくないから」
その後、お昼休みが終わるまで高坂さんは当時のことを詳しく教えてくれた。結局、途中から絢瀬さんも話に加わり、何とか話を誤魔化そうと必死になっていたがどんどん話を進めてしまう高坂さんを止めることは出来なかった。
「雪穂が “これからも一緒に” って言ってくれたことが嬉しかったの」
三十分近く話を聞いていて一番印象に残ったのはこの言葉。そして、泣いてしまった理由は絢瀬さん本人から聞かせてもらった。
絢瀬さんが中学二年の時に転校してきて以来、隣には必ず高坂さんが居る。今となっては二人が一緒にいることが本人達だけでなく周りの人から見ても当たり前になっているので、もし二人が別行動を取ったとすると俺を含めた他の人達も不思議に思うだろう。もちろんの事だがそれは高坂さんが自分で決めて絢瀬さんの隣に居る。そんな事は絢瀬さんも分かってはいただろうが心の何処かで【転校生だから】とか【他に仲の良い子が居ないから】という情けも少し入っている理由で隣に居てくれているのだと思ってしまっていたらしい。けれど、高坂さんの口から“これからも一緒に”という言葉を聞いた瞬間、重りのように残っていたその気持ちが全て無くなり、喜びや嬉しさ、高坂さんの優しさを感じて涙を流してしまったそうだ。
おそらく高坂さんが絢瀬さんに向けて言った言葉はこれだけではなく他にも色々あったのだろうが、この内容だけは私の宝物にしたいから秘密にさせて、と絢瀬さんに頼まれたので聞くのを我慢した。
いくら他の人たちに比べて二人と仲が良いとはいえ高坂さんと絢瀬さんの二人の間にある友情には手出しというか間に入ることは絶対に出来ないのだなと思った。