「失礼しました」
暖房の効いた職員室を出て、つい先程渡された紙に目を通しながら荷物を取りに行くため教室へと向かう。
【音ノ木坂学院 特進クラス入学希望者対象 特待試験のご案内】と記されている紙には試験の日時と場所、提出書類の一覧や期限などが一通り載っている。試験は年明けの一月中旬に行われ、下旬には結果発表になる。この試験の結果次第では入学金や授業料の免除などが受けられるため、受験する生徒は一般受験をする人達よりも早めに仕上げなくてはならない。もちろん、特待制度が受けられなかったとしても合格判定が出れば一般生徒と同様の条件で特進クラスに入学出来る。ただ、合格はしたが特待制度が受けられないという判定が出た生徒が入学を断り、他の学校をもう一度受験して入学するという可能性もあるそうだ。どちらにせよ音ノ木坂だけを受験する俺は他の高校の受験は考えてはいない。
「前見て歩かないと危ないよ」
その言葉に反応して後ろを振り返ると楽器のケースと楽譜が入っているファイル、そしてそのファイルを立てかける譜面台を抱えた妹の姿があった。今日は顧問の先生が出張だから練習は休みになるかもと朝話していたのに完全下校時間が近づいているのに校内で見かけるという事は先生が居ない状態で練習をしているのだろうか。
「あれ、今日は練習休みって言ってなかったっけ?」
「休みだけど吹きたくなっちゃったからちょっと吹いてた。よいしょっと。それで、何の紙を見てたの?いてっ」
持っていた道具を廊下に置き、プリントを覗き込むように近づいてきた雫の頭が肘にぶつかった。ぶつけられた俺よりぶつかってきた本人の方が痛そうにしている。背伸びをしてプリントの内容を確認すると急に興味を無くしたような表情をし、再び荷物を持った。
「お兄ちゃんもう帰る?帰るなら私も一緒に帰る」
「分かった。じゃあ片付け手伝うから楽器貸せよ」
「ありがと。でも楽器は自分で運びたいからこっちをお願い」
手渡された譜面台とファイルを預かり、吹奏楽部の部室へと向かう。廊下を歩きながらなぜ俺に楽器より軽い譜面台を渡したのか理由を聞くと、あくまで雫本人の考えという前置きを付けて答え始める。ピアノを習っていた時は一台のピアノを数人で順番に弾いていたため、そのピアノは【みんなの物】として扱い、家にあるピアノは雫しか弾いていなかったがあくまで【家に置いてある物】として認識していたらしい。だが中学に上がり、吹奏楽部に所属する事で自分専用の楽器を学校からの貸し出しという形ではあるが持ち始めた。他の子からするとそれが当たり前になっているかもしれないが雫にとっては【自分専用】という事への執着心が高かった。その言葉通り、家で楽器の手入れをしている姿をよく見かけるがいつ見てもどこか楽しそうに磨いている印象がある。そして今日のように音楽室以外で演奏する時の楽器運搬は必ず自分で行うと決めているそうだ。
片付けを済ませ校門を出ようとしたところで一人の男子が雫に声を掛けてきた。その男子は俺よりも少し背が低いが体つきがしっかりとしていて、いかにもスポーツマンらしい姿をしている。何故この男が雫に声を掛けてきたのか分からなかったがすぐに雫が慌てて紹介を始めた。
結論から言うとこのスポーツマンは雫の彼氏で今年の夏頃から付き合い始めたのでそろそろ四ヶ月を迎える。学校の部活では陸上部に所属しているが本来はサッカーをやっていて、部活とは別にクラブチームに参加しているためクラブチームの練習が無い日に気が向いたら陸上部の方に顔を出している。今日は元々雫と一緒に帰る事になっていたがそれを忘れて自主練に行ってしまった雫を校門付近で一時間以上も待っていたらしい。普段はしっかりしているように感じるがこういう大事な要件を忘れてしまう所が母親譲りなのだろう。せっかくだから二人で帰れるようにと適当な理由を付けて家とは逆方向に歩き、二人と別れた。
雫から彼氏の紹介をされている時に時折見た二人が楽しそうに話す姿がとても良く見えたのと同時に二人の間に“彼氏と彼女”という特別な関係性がある事に憧れのような気持ちを感じた。
『和樹、一緒に帰ろ』
高坂さんに下の名前で呼ばれ、こんな事を言ってくれないかなと勝手な想像をしながら歩いているといつの間にか神田明神の前まで来ていた。十二月ということもあり十八時を過ぎていないにも関わらず日は沈んでいて街灯が点いていた。ただ遠回りをして帰ろうとしたつもりがかなりの距離を歩いていたようだ。
「あれ?こんな遅い時間にどうしたの?」
またしても背後から声を掛けられ、振り返ると少し息を切らした希ちゃんが居た。マフラーに隠れずに見えている頬は熱を持ったように赤くなっていて、ここまで走って来たのだということがすぐに分かった。
「考え事しながら歩いてたらこんな所まで来ちゃって。希ちゃんこそどうしたの?」
「私は忘れ物を取りに引き返して来たんだよ」
「忘れ物?どこに何を?」
忘れ物を取りに行きすぐに戻ってきた希ちゃんが家まで送ってくれることになり神社から帰路につく。希ちゃんの家がどこにあるのかは分からないか俺の家まで送るとなると自分が家に帰る時間が遅くなるからいいと何度も断ったがそんな事出来ないと言い張る希ちゃんの気迫に負けてしまった。
何故希ちゃんが神社に忘れ物を取りに来たのか理由を聞くと実は希ちゃんは高校一年生の時から神田明神の巫女さんとしてアルバイトをしているそうだ。十二月ということもあり年末年始の準備が忙しくなってきたため最近は練習後に働く回数も増えてきたらしい。それでも、神主さんや同じ巫女として働いている年上の人からは今はスクールアイドルに集中してもいいと背中を押してもらっているそうだ。
それともう一つ、嬉しい知らせを聞いた。
今年は希ちゃんも受験の年なのでどの大学に進むのか聞いたところつい最近、推薦入試に合格し無事に進路が決まった。進学先は都内の有名な女子大学で、精神学を学ぶそうだ。色々と説明を聞いたが中学生には到底理解出来ない難しい内容で分かりやすく説明するのも難しそうに感じた。要は人の心を深く理解するために勉強しに行くんだよ、と若干ではあるが投げやりな説明が一番分かりやすかった。
しばらく歩いたところで、そういえば、と希ちゃんが話を切り出した。
「雪穂ちゃんとは進展あったのかなー?」
「とと、突然何?進展なんか無いよ!今は受験の事で精一杯」
「本当はそんな事ないくせにー。推薦入試だって特待制度もらえる自信あるんでしょー?」
「本当だよ!っていうかその顔やめてよ」
いたずら気な顔をしてながら腕を掴んでくる希ちゃんを振り切り少し距離を取る。俺の周りにはさっきみたいな表現をしながら高坂さんとの事を聞いてくる人が多い。ふふっと笑いながら再び横に並んだ希ちゃんはしばらく黙り込んだ後に溜め息をついた。その溜め息は今まで聞いてきた溜め息の中で一番重い感じの溜め息に聞こえた。
「どうかしたの?すごい溜め息だったよ?」
「え、嘘!?無意識のうちに出てた」
無意識のうちに出たと言う割には本当に大きな溜め息だった。おそらく今のは誰が聞いても驚くだろう。
「何か悩みでもあるの?と言っても、進路の事じゃないだろうからμ'sの事かな?」
「………カズ君って昔から変に鋭いところあるよね。まぁカズ君はメンバーってわけでもないから話しても平気かな」
年末に控えている最終予選へ向けμ'sは新曲を作ろうとしている。その新曲のテーマを“ラブソング”と設定し曲作りを進めているのだがμ'sのメンバーは全員恋愛経験が無く、全く進捗が変わらないそうだ。最終予選は今月末ということもありこれから作詞作曲、ダンスやフォーメーションの確認などを行うとなると明日明後日の休みで曲だけでも仕上げないと時間が足りなくなってしまう。そのため、希ちゃんだけに限らずμ'sのメンバー全員が焦っている。
さらにもう一つ問題があり、この問題こそが希ちゃんが悩んでいる原因だった。今回の最終予選では今までの曲をさらに練習して完成度を上げてライブをするのか、それとも新曲を披露するのかという二つの意見が出た。最初は新曲を作る事に対しての賛成意見が多かったためそう決まり、その場で希ちゃんがラブソングを作る事を提案。それでも実際に作ってみると恋愛経験者がいない状況で作るラブソングは想像以上に難しくて歌詞が全く詰まってこない。さらにはこの状況を危惧したメンバーからはやっぱり今までの曲でも良いのではないかという意見も出始め、このままではいつになっても最終予選に集中出来なかなってしまう。“ラブソングを作ろう”希ちゃんのその提案の結果が今の状況を作ってしまっていると責任を感じてしまっているらしい。
大体だけれども現在のμ's内で起きている問題と希ちゃんの悩みは分かったがグループ内に恋愛経験者がいないという言葉を聞いてからは何だか希ちゃんの言葉が頭に入ってこなかった。いくら女子校だからとはいえ一人ひとりがそれぞれ魅力的に見えていたので二、三人程度は彼氏がいてもおかしくはないと思っていた。希ちゃんだって普通に可愛いし、この前のハロウィンライブではセンターを務めていたのでファンも増えた事に違いない。
「希ちゃんは何で彼氏を作らないの?これだけ人気が出てくれば声かけてくる男の人だっているでしょ?」
「んー。いないことはないけど……今はμ'sのメンバーみんなと練習したり遊んでる方が楽しいから他のことに興味が湧かないって感じかな。
μ'sとあの八人は私の宝物………だから」
少し間を空けてμ'sとそのメンバーを『宝物』と言った希ちゃんの表情からは嬉しさというより寂しさの方が強く感じられた。それは、幼い頃から今に至るまでの希ちゃんの生活の経緯を知っているからだろう。
前に一度だけ母さんが希ちゃんのお母さんに偶然会った時に聞いた話を俺に教えてくれたことがあった。
元々お父さんの仕事の関係上転勤が多く、小学校の中学年くらいまでは日本各地を転々としていた。小学三年生の時に再び東京に戻って来た際、お父さんが会社側に転勤の頻度を減らして欲しいとの申し入れをしてくれたおかげで二年間程は三人で暮らせていたのだが会社内での立場が上の方だった影響もあり再び引越しの話が出た。しかも行き先は海外。この時、初めて希ちゃんが転校をしたくないと言ったそうで、その言葉を初めて耳にした両親は驚きを隠せなかったという。昔から自分の思っていることを素直に言い出せない癖があることは本人はもちろんのことだが両親もよく分かっていた。その希ちゃんが転校をしたくないと言ったのだからこのまま無理矢理連れて行くわけにはいかないと考え、同じ学区内で親戚の住んでいるマンションに引っ越すことになった。そのマンションで希ちゃんはずっと一人暮らしをしている。
「私ね、小学生と中学生の時は仲の良い友達なんて全然居なくて、ずっと一人で寂しかった。高校に入って初めてえりちを見た時に “あ、この人も私と同じだ” って思って、この人となら分かり合えるって思えたの。ちなみにこれが友達になりたての頃の写真だよ」
そう言いながら見せてくれた携帯の画面には今と比べるとぎこちない笑顔をして、微妙に距離のある二人の写真が映し出されている。今でこそ親友の二人だが絵里さんが希ちゃんに対して心を開くのに時間がかかったという。その話を聞いてオープンキャンパスでのライブの打ち上げの時もμ'sの一、二年生組が怖かったと言っていたのを思い出した。俺が初めて絵里さんと話した時にはそんな印象を受けなかったので穂乃果さん達が言っていることを上手く理解できずにいたが希ちゃんの話を聞いて何となくは把握できた。
それから希ちゃんはちょっとずつ仲良くなっていった絵里さんとの思い出や穂乃果さん達が始めた活動をどう思っていたのかなどを詳しく教えてくれた。前に絵里さんから聞いたことがあるので、ある程度は知っていた。それでも希ちゃんも自分なりの思いを持ちながらμ'sを見ていたのだと分かった。
「こうやって色んな事があって、やっと一つになれた。ここが私の本当の居場所なんだって思えたの。でも、そこで欲をかいて曲を作りたいっていうのはさすがに我儘が過ぎたかな」
ちょっと下手くそな苦笑いをマフラーで隠すかのようにしている希ちゃん。先程までの話を聞いた後ということもあり、その表現に寂しささえ感じられた。
「んー、疲れた」
お昼過ぎから握り続けていたペンを放り投げるように放し、両腕を広げて伸びる。それと同時に目を向けた時計の針は十六時を回っていた。年明けに行われる試験の追い込みをかけるため休みの日に勉強をする時間が増えた。休憩を取ろうとヘッドホンを外し部屋を出ようとした時、外から吹き付ける強い風のせいで窓がガタガタと音を立てながら揺れていることに気が付いた。
「あ、お兄ちゃん。外凄い吹雪いてるけど雪穂ちゃん達ちゃんと帰れるかな?」
顔だけ出し、全身が炬燵に隠れるように寝そべっている雫から声をかけられた。今日は雪の影響もあり部活の練習が中止になったためずっとこうしてダラダラしている姿を見ると少しばかり羨ましくも思える。
ずっと放置していた携帯の画面を確認する。高坂さんや絢瀬さんから連絡は入ってはいなかったが心配というか気になったので連絡を入れてみることにした。
今日は一般入試を受ける人を対象とした音ノ木坂の学校説明会が行われていて二人はその説明会に出席している。「わざわざ休みの日にやらなくてもいいのにね。しかも最終予選と同じ日」という雫の何気なく言った言葉を聞いてはっとしてすぐに高坂さんに電話をかけた。
『もしもし?どうしたの?』
「特に用事があるってわけじゃないんだけど、天気凄い悪いからちゃんと帰れたのかなって気になっちゃって」
『そういうことね。説明会は終わったんだけど三嶋君の想像通り、天気がこんなんだからまだ学校内に居るんだ』
電話越しに聞こえる高坂さんの声はいつもより早口になっていて少し焦っているようにも感じられた。徒歩での帰宅が難しいためお父さんに車で迎えに来てくれるように頼んだのだが雪の影響でどこもかしこも渋滞だらけとなっていてすぐには着かないそうだ。
『私たちのことよりお姉ちゃん達がちゃんと最終予選の会場に行けるかどうかが心配だよ』
今日は学校説明会だけではなくラブライブの最終予選が行われる日でもあり、本来ならライブの予定がある穂乃果さん達は説明会に参加しなくてもいいとことりちゃんのお母さん、つまり理事長から言われていたそうなのだが廃校の噂が出ていた学校に興味を持ち、入学を希望してくれた中学生のためにも生徒会としてその気持ちに誠意を見せたいという意見で一致し同席する事になったという。
最終予選はネット配信も予定されており、現地ではなくパソコンで見ることにしている。炬燵に籠りながら携帯をいじっている雫の横にはすでにラブライブの公式ホームページが開かれておりライブを楽しみにしている気持ちがしっかりと伝わってくる。今日の最終予選のライブの順番は予選通過発表の遅かったグループから順にライブをすることになっているのでμ’sは一番最初に登場する。雫が開始時間の一時間も前からサイトを開いているのはその為だろう。
「せめて風だけでも止んでくれればいいんだけどね」
『そうだね。このままだと私達も会場に行けなくなっちゃうし』
最終予選開始まであと一時間。昨日から降り続いている雪は風の影響もあり、吹雪となっていた。
「夜遅くにごめんね。平気だった?」
「平気だよ。急に電話がかかってきた時はちょっとびっくりしたけど」
ラブライブ最終予選終了後、高坂さんから電話があり、家の近くまで来ているから少しだけ話がしたいと言われ急いで準備をした。俺の家の近くまでお父さんの車で送って来てもらったらしく、合流した時の高坂さんは寒さの影響もあり頬や鼻先が赤くなってしまっていた。家に上がるように促したがすぐに済む用事だからと言って、持っていたバックから小さな紙袋を出した。
「はい。今日はコレが渡したくて」
「ん?これは?」
「んーと……一応クリスマスプレゼントのつもり……なんだけど」
手渡された紙袋はきれいにラッピングされていて、開けて中身を確認すると小さなお守りが入っていた。青い生地に黄色文字で “合格” と書かれているお守りはどこからどう見ても高坂さんが手作りで作ってくれた物。裏には平仮名表記で名前まで入っていてかなり手が凝っている。
「ありがとう。凄い嬉しいよ。この時期に態々手作りしてくれたの?」
「こういう事やったことなかったけど、せっかくなら自分で作って渡したかったの」
着けていたマフラーで口元を隠すように話してくれた高坂さん。その姿がとても可愛く見えて今すぐ抱きしめてみたいと思ったのだがそれと同時に自分の口から出ていた言葉に自分でも驚くことになる。
「俺……高坂さんのこと…好きだよ」
「……え?」
「え?」
高坂さんは当然のように驚いた表情を浮かべながら俺の顔を見上げていた。いきなりこんなことを言われたのだから驚くのも無理はないと思ったが高坂さん以上に好きと言ってしまった自分が驚いている。
「…三嶋君……今なんて?」
「ごめん。俺、今なんて言った?」
ちゃんとした会話で俺の言ってしまった言葉を確認しようとしたが高坂さんの質問に対して質問で返してしまったため会話が全く成立していない。それくらい自分でも混乱してしまっていた。
「え?自分で言うのかなり恥ずかしいんだけど……その…三嶋君が私のこと………す、好きって」
やっぱり恥ずかしい、と最後に付け加え先ほどよりもマフラーを巻く位置を上にあげ、ほとんど顔を隠すようにしながら教えてくれた。少し落ち着こうと半ば無理矢理に深呼吸をしてぐちゃぐちゃになっている頭の中を整理する。どうやら、というか確実に今、俺は高坂さんに告白をしてしまったらしい。今まで高坂さんのことを可愛いだとか好きだなどという感情を改めて感じたことは何度もある。それでも本人の前ではそう言ったニュアンスを含める言葉は極力言わないように、意識しないようにしていたのだが今日は不思議と我慢が出来なかった。それと同時に言葉として口から出てしまった。言ってしまった言葉は無かったことにはならない。この際、振られてしまってもいいので自分の気持ちを伝えようと決心した。
「うん。さっきは思わずそう言っちゃったんだけど、この気持ちは嘘じゃないよ。俺は高坂さんのこと………ずっと前から好きでした」
「私も好きだよ。ずっと…私の片思いだと思ってたから嬉しい」
今にも泣き出してしまいそうに声を震わせ、俺の服の袖を優しく握りながら高坂さんも気持ちを伝えてくれた。その言葉を聞いた後、高坂さんの手を取り目を見て改めて言う。
「高坂さん。俺と付き合ってください」
もうすぐ年が明ける。
年が明けると特待試験。二月には一般入試。
お互いの結果が分かるまで二ヶ月近くあるが、一緒に合格して同じ高校に通いたい。
この気持ちさえあれば絶対に良い結果が出せる。
雪が再び降り出した冬空の下、お互いの手を強く握りながらそう確信した。