今日は音ノ木坂学院高校のオープンキャンパス。生徒の募集を増やすために普通科及び普通科の特進クラスを設立するという案があり、進路指導担当の先生や担任に話を持ちかけられたため仕方なくという感じで行くことになってる。
いざ当日となるとどこか気持ちが浮ついている自分がいることに気がついた。朝はアラームをセットしておいた時間よりも早目に起きてしまい準備も昨日の夜中に済ませてしまっていたので時間が余っている。
オープンキャンパスがというよりもμ’sのライブが楽しみなのかもしれない。今のμ’sは九人になっていて各学年ごとに三人ずつという割り振りだそうだ。最後に入った三年生は絵里さんと同じ生徒会役員で副会長という立場の人らしいから絵里さんと仲も良いはずだし、絵里さんがどういう経緯でμ’sに入ったのかというのも聞いてみたい。
だが、一番の楽しみは南ことりさんに会えること。PVを見るときは必ず南さんを目で追ってしまっていて歌っているパートや立ち位置もほぼ覚えてしまっている。七人で歌っていた【これからのSomeday】での衣装を初めて見た時は鼻血が出そうになったのをよく覚えている。
「おはようお兄ちゃん。今朝は目覚めが良かったんじゃないの?昨日は楽しかったもんね。」
「おはよう雫。頼むから母さんの前では言わないでくれよな。じゃあ行ってくる。」
時間は少し早いが出てきてしまったがあのままいたら母さんに聞かれて質問攻めされるに決まっている。今日は高坂さんと一緒に高校まで行き絢瀬さんは現地で合流という流れになっているが今から向かってしまうと高坂さんの家に着くのが予定より早くなってしまうため少し遠回りをして向かうと思ったところで高坂さんから電話がかかってきた。
『もしもし。おはよう三嶋君。まだお家かな?』
「おはよう。それがもう外なんだよね。早目に出てきちゃったから少し遠回りして向かおうと思ってたところ。」
『そうだったんだ。私も準備出来たからいつでも平気だよって言おうと思って電話したんだ。』
「それならいつも通りの道で向かっちゃうよ!近くになったらまた連絡するね。」
高坂さんも今日が楽しみで早く準備をしちゃったのかな。
家に近づいたので連絡をしようとすると曲がり角の所に高坂さんが立っていた。黄昏るように夏の空を見上げている高坂さんを見て思わず写真を撮ってしまう。高坂さんを画面の下ギリギリに入れ、空の割合を多めにした構図の写真。もう一度取りたいと思っても取れないだろうなって思うくらい素敵な一枚になった。
「おはよう高坂さん。わざわざ外で待ってなくても良かったのに。」
「おはよう。お姉ちゃんが朝から騒がしいから出てきちゃった。」
そのお姉さんが騒がしいおかげで朝からいい事があったので穂乃果さんにお礼が言いたくなった。予定より早目に合流し学校へと向かっている途中で高坂さんの元に絢瀬さんからの電話がかかってきた。絢瀬さんは絵里さんと一緒に来たそうだが絵里さんは準備のために早目に登校したので一人で待っているのが退屈なので早く来てとのことだった。
学校に着き絢瀬さんと合流できたと思ったが特進クラスは案内された場所が違うため二人とはライブ前に再度合流することになった。講堂に入るとすでに八割くらいの席が埋まっていた。周辺の高校に特進クラスが無いということもあり興味のある生徒は多そうだ。
定刻になり壇上以外の照明が落とされ理事長さんが軽くお辞儀をして話し出した。
「中学生の皆さんおはようございます。音ノ木坂学院高校理事長の南です。」
ん?南?もしかして南ことりさんのお母さん?
確かに、整った顔立ちや髪の色を見れば南さんの母親だと言われても不思議ではない。
そういえば南さんってバイトしてるって言ってたけどスクールアイドルやりながらバイトをしてて衣装作りも南さんが中心でやってるらしいから無理してないか心配だな。
「あ、いたいた!お疲れ様!特進クラスの説明はどうだった?」
説明を聞き終え集合場所の周辺をウロウロしていたら絢瀬さんが見つけてくれた。
特進クラスの概要として一つは他の進学校と同じ程度のペースで勉強を進めていき、課題も多く休日には模試などがある。学校としては有名な大学への進学率を上げて学校の名前を売りたいらしい。もう一つは入試方法だ。冬に一般の生徒を対象に行う入試とは別で特待生として入学させる生徒を決めるために試験を行うそうだ。成績上位の生徒は入学金や授業料などが免除されるため競争率は高くなりそうだ。
他の学校がどのような制度を設けているかは分からないが近くの高校の特進クラスで特待生として入学できれば一石二鳥だと思った。今より勉強の時間を増やさなくてはいけないかもしれないが少しでも親の助けになるなら頑張れる気がする。オープンキャンパスに来ている生徒の数を見る限り廃校の件も何とかなりそうだし、後は絵里さん達μ’sに任せるしかない。
「うーん。予想以上に制度とか方針がしっかりしてたし本気で音ノ木坂を考えてもいいかもしれないって思ったよ。」
「そうなんだ!じゃあ三嶋君も一緒に音ノ木坂にしようよ!そうすれば雪穂も音ノ木坂にするよね?そうだよね?」
「え?私も?何で?」
「だって三人一緒に同じ高校に通えたら絶対楽しいよ!雪穂だけ離れちゃうなんて嫌だし私はそんなの認められないからね。それに私は雪歩と一緒にμ’sに入りたいの!」
そうか。この二人が音ノ木坂に進学するとなればμ’sに入るのか。まだ半年以上先だけど二人がμ’sとして踊っている姿は見てみたい。
「うーんどうしようかな。まだ決めなくていい時期だしUTXも見てみたいからさ。」
絢瀬さんは音ノ木坂で決まってはいるみたいだが高坂さんはまだ考え中なのか。確かにまだ決めるのは早いし色々な高校を見てから決めるのも悪くはないと思う。UTXも女子校だし、高坂さんは女子校に興味があるのだろうか。
「俺も他の学校の見学には行くしまだ焦る必要ないよね。それよりそろそろライブ会場に行こうか。」
ライブ会場へ移動をするとすでにかなりの数の生徒が集まっていてμ’sの注目度が高いことが分かる。高坂さんは絢瀬さんに引っ張られながら前方へと行ってしまったが女子生徒が多いため後ろからでも前がよく見えるので後方で見ることにし、念のため高坂さんと絢瀬さんがいる位置も確認しておいた。
予定時間より少し早いが穂乃果さんを先頭にμ’sのメンバーが前に立った。ちゃんとした場面で歌を披露するのは初めてらしいのでメンバーにも緊張の色が見て取れる。絵里さんは緊張しているみたいで眉間にシワが寄っている。南さんは眩しいくらいにニコニコしていて、これから歌を披露するのが楽しみなのだろう。
メンバーの顔と名前は絢瀬さんのおかげで覚えてしまったから八人は分かるがあと一人のことに関しては生徒会の副会長さんという情報以外は何も聞いていない。が顔を見ると何故か見覚えのある顔だった。
「希……………ちゃん?」
穂乃果さんによる曲紹介が終わりライブが始まった。
【僕らのLIVE 君とのLIFE】
この学校だからこそ、この九人が揃った。
この曲は九人になって初めてできた曲。
μ’sにとって本当のスタートの曲。
スクールアイドルグループとして九人は大人数な気がするが綺麗なフォーメーションとキレのあるダンス。太陽のように眩しいくらいの笑顔で歌っているメンバーはとても輝いて見えた。絵里さんもライブが始まった途端表情の固さが抜け、いい顔をしていてとても楽しそうだ。
………………南さんは相変わらず可愛い。
だが、その二人よりも気になった人が一人。
紫色の長い髪を揺らしながら踊っている人。
俺と雫がまだ小学生にもならないくらい小さな時にいつも一緒に遊んでいて俺らにとって姉のような存在だった。
【 東條 希 】
ある時、急に俺らの前から姿を消してしまい疎遠になってしまった。後から母さんに引っ越してしまったと聞いた時は雫と二人で泣いたのを鮮明に覚えている。希ちゃんは俺らのことを覚えているのか分からないがライブが終わったら挨拶だけでもしておきたい。すぐに思い出せなくても幼い頃の話をすれば気付いてくれるはず。
ライブは大成功。
ライブを見ていた中学生からは大きな拍手が送られていた。この感じならアンケートの結果もきっといいはず。
ライブが終わり絢瀬さんと高坂さんと合流して帰宅することにした。絵里さんや南さん、それに希ちゃんにも挨拶をしたかったが在校生は簡単な片付けがあるそうなので会える時間が取れなかった。
「μ’sカッコ良かったね!お姉ちゃん楽しそうで良かったし、海未さんも可愛かったー!」
「そうだね!生のライブは初めて見たけどみんなキラキラしてたね。」
絢瀬さんと高坂さんの少し後ろを歩き二人の感想を聞いていた。絢瀬さんはμ’sのことになるとテンションが上がるからいつものことだけど、今日は珍しく高坂さんも興奮している。
「三嶋君はどうだった?楽しかった?」
絢瀬さんが後ろに振り返り聞いてきた。
「俺も生のライブは初めてだったから新鮮だったし楽しかったよ。絵里さんも楽しそうだったしいい顔してたね!それと絢瀬さんは絵里さんと一緒に生徒会やってるっていう東條さんとは会ったことあるの?」
「たまに家に遊びに来るから知ってるけど、三嶋君はなんで希ちゃんのことを知ってるの?」
「親同士が仲良かったし、よく俺と雫と希ちゃんの三人で遊んでたんだ。」
「そうだったんだ!今日は話せなくて残念だったね。今度希ちゃんが家に来た時に言っておいてあげるよ。」
「ありがとう。でも希ちゃんが来たら俺も絢瀬さんの家に行きたいな。直接話ししたいことあるし。じゃあ俺は帰るから。また明日ね。」
「うん!分かったよ。じゃあね」
絢瀬さんは高坂さんの家に行くそうなので二人と別れ家路に着いた
「おかえりなさい。特進クラスの説明はどうだった?」
着替えを済ませリビングへと行くと母さんの方から話しかけられた。いい機会だから特待生の制度についても話してみよう。
「そんな制度があるのね。でも前にも言った通りお母さんは進路に関してはああしろこうしろとは言わないつもりだし、お父さんからも口出しするなって言われてるのよ。だから和樹が行きたいって思ったところに行きなさい。」
こう言われるのは分かってはいたが一応業務連絡的な意味も込めて伝えた。
あくまで本人の意思を尊重し自分達の意見を押し付けることはしないということが両親の中で決まっているらしい。
日曜日だというのに朝はいつもより早く起きたし、ライブも外でやったため見ているこっちも暑さにやられてしまった。夕飯を作る手伝いもできそうにないのでソファに横になり少し寝ようとすると高坂さんから電話がかかってきた。
『あ、もしもし三嶋君?今日はお疲れ様。急な話なんだけど、これからお姉ちゃん達がウチに集まってライブの打ち上げをやるらしいんだよね。それで、亜里沙がライブの成功を祝いたいからっていって張り切っちゃってるんだけど私達だけだと人手が足りなくて……。厚かましいお願いなんだけど、お手伝いとかしてくれると嬉しいなって思って電話したんだけど………ダメかな?」
「面白そうだね!俺でいいなら手伝うよ!希ちゃんにも会えるし。じゃあ準備したら行くね。」
思っていたより早く希ちゃんに会えそうだ。そういえば母さんに希ちゃんのことを言うの忘れてたけど………まぁ後でいいか。
電話の後、高坂さんから買い物をしてきてほしいと連絡があったのでリスト通りの物と少し食材を買い高坂さんの家に着いた。中からはすでに賑やかな声が聞こえていた。
改めて考えると女十一人に対して男一人って絶対に肩身狭いよな。まぁ全員初対面ってわけでもないからなんとかなるだろうし料理もするつもりだから孤立する心配もないか。
居間の扉を開けると全員がこちらを見た。
「お邪魔します。雪穂さんと亜里沙さんのクラスメイトの三嶋和樹です。今日のライブお疲れ様でした。スゴく楽しかったです。今日は打ち上げパーティーのお手伝いという形で参加させていただきます。よろしくお願いします。」
「あ!和樹君いらっしゃい!ピザとかお寿司とか色々あるから遠慮せずに食べてね!」
「はい。いただきます。」
「和樹君久しぶり!おかげでいい挨拶文ができたと思うんだけどどうだった?」
「今日は特進クラスの方で説明を聞いてたんで絵里さんの挨拶は聞かなかったんですよ。今度聞かせてくださいね。」
「改めて言うのは恥ずかしいから嫌よ!挨拶文を見せるくらいにしてくれないかしら。」
穂乃果さんと絵里さんに挨拶をしどこに座ろうか悩んでいると紫の髪をした女の人が立ち上がった。
「…………かず……………君?」
希ちゃんも覚えていてくれた。希ちゃんは俺が言葉を発する前に抱きついてきた
「かず君!久しぶりだね!いやー随分大きくなっちゃって。昔はあんなに小さかったのにね。それにかなりのイケメンさんになったね!雫ちゃんは元気?」
一方的に話しかけられているため質問に答える時間すら無い。高坂さんや絢瀬さんも含め他のメンバーは状況の整理が付かないのだろうか、口を開けてこちらを見ている。
希ちゃんと一緒に説明をして状況を理解してもらった。説明の途中で一つ気になった事を希ちゃんに聞いてみる。
「希ちゃん。なんで関西弁なの?」
「え!変かな?上手く話せてると思うんやけど。」
「いや、俺は向こうに行ったことないから変かは分からないけど昔は標準語だったからちょっと戸惑っちゃって。」
「そ、そうなんや。まぁ今はこんな細かいことはええやん。打ち上げ楽しも!」
希ちゃんに腕を引っ張られ席に着く。話し方や外見は変わっても雰囲気は変わらないで俺と雫が知っている希ちゃんのままだったと安心したところで今度は左肩を優しく叩かれたので振り向くと南さんが隣に移動してきていた。
「和樹君。雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんと仲がいいってことはこの前悩んでた相手ってあの二人のことだよね?」
こんな状況にならないだろうと思ったから相談したはずなのに………ここまでくれば隠す必要もないか。というか隠し通せるわけがない。
「あ、ひとまず今日のライブお疲れ様でした。とても素敵なライブでした!それで本題なんですけど、南さんの察しの通りこの前の相手はあの二人のことです。どっちが質問してきたかは教えられませんが、あの時はありがとうございました。」
「ありがと!絵里先輩が入ってからダンスのクオリティが何倍も良くなったからそう言ってくれると嬉しいよ。それと、どっちが聞いたかなんて今日の様子とか見てれば分かるだろうから聞かないよ!あと、私のことは名前で呼んで!これは命令です。」
顔近い。いい匂いする。めちゃくちゃ可愛い。
…………そうじゃなくて、ことりちゃんが他のメンバーに言いふらすような人じゃなくて良かった。これからも何かあったら相談しようかな。
「分かりました。ありがとうございます。あの、良かったらまた何かあったら相談とかのってもらってもいいですか?」
「うん!もちろん!じゃあ連絡先交換しておこうか。」
まさか連絡先まで交換してくれるなんて思っていなかったからとても嬉しかった。
打ち上げも終盤になってきたので高坂さんから頼まれて買ってきた物を取りに行くため台所へ向かった。それにしても年頃の女の子が集まると騒がしくて仕方ないな。だがまだ先輩後輩の関係が影響してるせいか多少ぎこちないところもある。それはこの先もっと絆が深まれば気にならなくなるはず。
「ごめんね三嶋くん。私が思っていた以上に騒がしかったよ。ちゃんと楽しめてるかな?」
高坂さんが心配そうな顔をして台所へ来た。こういう気遣いができるところはさすがだ。絢瀬さんは園田さんの隣から離れることなくずっと話をしていて、絵里さんが少し拗ねている気もする。
「心配してくれてありがとう。でも俺も楽しめてるよ!希ちゃんともいっぱい話せたしメンバーの皆にも挨拶できたから良かったよ。」
「良かった!でも希さんと繋がりがあったなんて驚いちゃったよ。三嶋くんと雫ちゃんにとってはお姉ちゃんみたいな存在だったんだね。雫ちゃんにも会いたいだろうね。」
食後のデザートとして高坂さんに頼まれて買ってきたケーキを出した。チョコレートケーキとチーズケーキをワンホールずつ。絵里さんはチョコレート、ことりちゃんはチーズケーキが好きだということでこの二つにした。チョコレートケーキの方のプレートには〔ライブ大成功 おめでとう〕と書いてもらい、みんな喜んでくれたので良かった。
後片付けがほぼ終わりあとは洗い物だけとなったので再び台所へ向かう。
「和樹君。雪穂ちゃんに亜里沙ちゃんのことをどう思ってるのか聞かれたんだよね?」
声を聞いただけで誰だか分かった。そもそもこの一件を知っているのは一人しかいないから当たり前か。
「やっぱり気づかれちゃいましたか。まぁことりちゃんには全部言おうと思ってたんでいいですけど。」
「それで?あれから進展はあったのかな?」
進展って付き合うことになったとかそういうことか?だとすると進展はしていないことにはなるが。
「進展らしい進展はないですけど前より少しだけ高坂さんのことを目で追うようになっている気がします。」
「ふーん。そっかそっかー。それは大きな一歩だね!これからも二人と仲良くね!」
それはもちろんだ。むしろこっちから二人にお願いしたいくらいだし、違う高校に進学したとしてもこの二人とは定期的に集まりたいと思っている。
打ち上げも終わり、家に帰ると絵里さんからメッセージが入っていた。
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今日はありがとう。
希と知り合いだったなんて驚いたわ!
それでなんだけど、今回の事で和樹君と希にはお世話になっちゃったから私からお礼をさせてもらいたいの!
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とのことだった
やっぱり希ちゃんも絵里さんのことを心配していたのか。まぁもう少しで夏休みだし時間なんていくらでもあるだろう。
絵里さんがどういう経緯でμ’sに入ったかも希ちゃんなら教えてくれるはず。楽しみだな。
この話をアップしたのが5日だったのですが、次の日に【雪穂】が【雪歩】になっているとのご指摘をしていただきました。
作成途中では全く気づかなかったのでお恥ずかしい話ではありますが、しっかりとご指摘きていただき感謝しております。
他にも気づいていらっしゃった方もいるとは思います。今後は注意していきたいと思っておりますのでこれからもよろしくお願いいたします。