タマちゃんも好きであればジンちゃんも好き。
基本的、渓流出身のモンスターが好きである~(˘ω˘ ~)
あれから半年が経つ。
霊峰は未だに快晴を保ち、絶景が広がっている。
初代アマツマガツチの死体は既に骨しか残っていない。
そして肝心の二代目アマツマガツチと言えば……。
ーzzz…
……また寝ている。
しかもいい夢を見てるのかいい顔をしている。
人間で言う「あ、もうそんなにこんがり肉食べれないよ」的な満腹状態のような顔をしている。
そんなアマツマガツチにも変化がある。
まず、体格が大きくなった。
生まれたばかりの頃はドスジャギィ並の大きさであったが、今となればロアルドロス辺りまで大きくなった。
また鰭も、尻尾も、角も、爪も大きくなり、より成体に近付いているし、何よりも纏う風の強さも大きく変化している。
まだ空の王者が出す風圧ではないが、ある程度の遠距離攻撃を弾くほどになった。
成長速度を見れば流石は古龍……と言いたいが相も変わらずマイペースな性格のため、威厳も何も感じない。
そんな若いアマツマガツチを他所に今日の霊峰も平和……とは言えなかった。
何故なら、至るところに雷が走っているからだ。
天気の影響ではなく、文字通り雷がバチバチと鳴らし、そこらを走っている。
この雷の正体は【雷光虫】。
ホタルに似た虫で体内に電気を溜め込んでいるという。
……さて、察しのいい人、というよりも大半の人が気付いてると思うが、この雷光虫が大量にいると言うことは当然、【あいつ】もいる。
其は大きな一対の角を持ちー
其は強靭なる四肢を持ちー
其は無双の狩人と呼ばれる者ー
寝ているアマツマガツチのそばにやって来たのは雷狼竜と呼ばれる牙竜種【ジンオウガ】である。
元々この霊峰はこのジンオウガの縄張りであったが、初代アマツマガツチの出現により、その縄張りを奪われてしまう。
しかし、今はその初代アマツマガツチは亡くなってる。
つまりはこの霊峰も徐々にジンオウガのものに戻りつつある。
だが、ジンオウガは気を荒くしていた。
無理もない、知らぬ内にまた新たなアマツマガツチが自分の縄張りにいるのだから。しかも寝てる。
それは怒る他ない事だ。
ーおいコラテメェ、こっから出ていけ。
まるでそう怒鳴るかのように威嚇するジンオウガ。
それに気付いたのかアマツマガツチは首を上げ、ジンオウガを見つめる。
ー………………。
だが、何も見ていなかったかのようにまた丸くなり、再び寝る。
……ここまで来たら本当に古龍なのか疑わしくなってきた。
ーブチッ!!
無視されたことに更に怒りを覚えたジンオウガはその場に湧いている雷光虫を溜め込み始める。
ここでジンオウガの生態について補足しよう。
ジンオウガの属性は雷であるが、その雷は微弱である。
だが周囲にいる雷光虫を集める事によって雷を補う事が出来る。
ジンオウガからすれば雷は攻撃にも使えるし、雷光虫からすれば天敵であるガーグァから身を守る事が出来る。
まさにwin-winのような関係が築き上げ、共存を可能にした。
そして最大まで雷光虫を溜め込んだジンオウガは大きな雷と共にその姿を変える。
甲殻と毛が逆立ち、より強力な雷を帯び、尻尾裏には青い光が鈍く輝く。
この状態をギルドでは【超帯電状態】と呼ばれる。
この状態になった、ということはジンオウガはアマツマガツチを敵とみなし、排除しようと決めたということ。
「どっからでもかかってこいや」とでも言ってるかのように再び威嚇するジンオウガだが、肝心のアマツマガツチは……。
ーん?
今気付いたらしく、再び首を上げ、浮遊して正面に立つ。
だが、寝起きのためか気だるそうにしてるのに加え、目が半開き状態。
再度言うが、こうなると本当に古龍なのか怪しくなってきた。
ーやっと起きやがったか。勝負しろ!!
ー………………。
まさにそんな雰囲気だった。
ジンオウガは威嚇してるが、アマツマガツチはただじっと見つめるだけで威嚇なんてしない。
その様子が気に入らないのか先に動いたのはジンオウガ。
自慢の四肢に力を込め、地面を蹴り上げる。
アマツマガツチに向かって飛び付き攻撃を見舞う……が。
ーフワッ
アマツマガツチはしなやかな体を使い、避ける。
飛び付き攻撃は失敗に終わった。
だが、無双の狩人の攻撃は終わらなかった。
今度は方向を回転し、強靭な前足でアマツマガツチを潰そうと飛びかかる。
けれど、浮いてるアマツマガツチは滑るかのようにスルリとそれを避ける……と言ってもただ単にタイミングを合わせて後ろに下がっているだけだった。
それでも攻撃は続き、間合いが空いたところにジンオウガは体を捻らせ、雷弾を発射。
曲線を描いてアマツマガツチの方へ向かう。
だが、アマツマガツチが空高く飛んだ事により、失敗に終わる。
しかもそのまま高い位置でジンオウガを見下す。
……いや、訂正しよう。
見下してはいない、見つめている。
ただ、その目からは「うわっ、何こいつめんどくせぇ」とでも言いたげそうな雰囲気が漂っている。
それを見たジンオウガの怒りボルテージはMAXになる。
怒り出したジンオウガに反応したのか雷光虫も活性化し、ジンオウガの全身が濃い青色に包まれる。
ーコンチクショウがああぁぁぁぁっ!!!
そう叫ぶかのように天に向かって大きな咆哮を放つジンオウガ。
もはや放たれるのは殺気しかない。
それもそうだ。
こちらは必死で攻撃してるのにも関わらず、相手は攻撃せず、ただ嘲笑うかのように避けているだけだから。
だが、肝心のアマツマガツチと言えば……。
ーそうだ、渓流に降りてみよう。
何か閃いたのか目を見開き、その場を後にした。
だがそれを逃がさまいとジンオウガは四肢に力を込め、力強く地を蹴り、大ジャンプするも届かない。
そして空中でバランスが取れず、体勢を崩したまま地面へと叩き落とされる。
ゴロンッという表現よりズドォンという表現の方がしっくりくるだろうが、今のジンオウガの姿を見ればはっきり言って哀れだ。
それを他所にアマツマガツチは知らんフリをして霊峰を出る。
……本当にマイペース過ぎる。
ーチキショオォォォォォォォォッ!!!!!!
と、言いたげそうに再び天へと叫ぶジンオウガ。
過去にアマツマガツチによって霊峰から追い出され、渓流に行き着いた際、天を泳ぐアマツマガツチを見上げ遠吠えを上げる事があったが、まさにシンクロしている。
とはいえ、邪魔者が消えたのかジンオウガは霊峰のど真ん中で犬の如く丸くなり、寝始める。
お前もか、と言いたいがこれは単に……不貞寝だろう。
そんなジンオウガはさておき、自分の思い付きで渓流へと降りようと決意したアマツマガツチだが、まさかこれが大きな冒険の始まりになるとは思いもしなかった。
ー続くー
展開が急するぎる気がするが私は悪くない、気分で行動するアマツマガツチがすべて悪い(汗)