ガンゲイル・オンライン 戦場に散るロマン   作:Bishop1911

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プロローグ

タタタタッ タタタタタタタタタッ

 

SBCグロッケンにほど近い荒野で、

地球開拓軍と名乗って

ロールプレイを楽しむ近未来的なアーマーに

身を包んだSFチックな6人組のスコードロンが

激しく銃声を鳴り響かせていた。

PvEをメインにする彼らは普段から

狩りの帰りに襲撃される事を想定して

実弾銃をストレージの片隅に収納しており、

実弾銃の銃声からしておそらく彼らが

恐れていたPvPであることは間違いないのだが、

地球開拓軍の面々は

それ以上の恐怖を相手にしていた。

 

「どこだ、ラインが見えなーー」

 

「隊長!ジョセフが!」

 

「黙れ!…いいか、相手は1人だ。」

 

そう、たった1人の相手に

追い詰められているのだ。

いくらPvE専門のスコードロンでもそれなりに

PvPの経験を積んでいただけに、

この戦況は彼ら地球開拓軍の士気に大きく影響した。

 

「でも…ラインが…」

 

それもそのはず。

相手は数年前のスクワッド・ジャムから

使われ始めた上級者中の上級者技、

つまり彼らからしてみれば雲の上のプレイヤーが

使うリアルなスキルを駆使したライン無し狙撃を

使ったスナイパーだったのだ。

加えてその連射速度からしてセミオートライフル。

ボルトアクションライフルに少し劣る程度の

高精度な弾丸が次から次へと送られて来るため、

ボルトアクションの再装填の隙を狙った

陣地展開すらまともにできない。

 

「いつまでも隠れてんじゃねーぞッ!!」

 

地球開拓軍の兵士の1人がスナイパーの

潜んでいるであろう方向へと銃弾をばら撒き、

次の瞬間にはその場に崩れ落ちた。

 

「チッ、PvPで電磁スタン弾

使うって一体何もnーーうぎゃアッ!?」

 

男は最後まで言い終わらないうちに

悲鳴を上げて仲間と同じように倒れた。

 

 

 

 

するとさっきまで何も無かった空間が歪み、

まるでブラックホールのような黒いシミが

できたかと思うとそれは一気に広がり、

黒いマントに身を包んだ人の形を作り出す。

まるで幽霊のように現れた黒いマントの男は

ホルスターからCz75を抜き、

倒れているSF兵士たちに近づくと

その首筋に1発ずつ撃ち込んでいく。

当然9mm口径のCz75ではそれなりに

ステータスの高いSF兵士たちにトドメを

させるわけがないのだが、

よく見ればSF兵士たちが唯一肌を露出させている

首から頭の部分に1人1つずつ不気味な緑色の液体が

充填された小さく透明な虫のような物がくっついている。

マントの男はCz75のマガジンを交換して

SF兵士たちの腕を掴むと、

設定を変えなければ本人にしか見えないはずの

メニュー画面を出現させ、

迷いのない操作でストレージから

全てのアイテムを実体化させた。

 

「クソッ、何しやがる!やめろ!」

「おい待てッ!」

 

男たちの制止を無視して

マントの男は全員のアイテムを全て奪い取ると、

最後に仕留めたリーダーのSF兵士のもとへ

ゆっくりと、しかししっかりと

地面を踏みしめながら歩み寄り、

首根っこを掴んで横っ面を覗き込む。

 

「…ゲーム、オーバーだ。」

 

「は?お前何言っーー」

 

SF兵士は質問を最後まで言い終わる事なく、

いつのまにか9mmの実弾に再装填されていた

Cz75で頭を撃ち抜かれ、

ポリゴンのカケラとなって荒野に散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後。

マントの男に全てを剥ぎ取られて

文字通り裸一貫となった元SF兵士たちは

SBCグロッケンの酒場にあるクエスト依頼用の

掲示板へ黒いマントの男に関する

最初の依頼を書き込んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<討伐依頼>

依頼主:地球開拓軍

報酬:300クレジット

プレイヤー名:

プレイヤーID:

特徴:黒マント、ライン無し狙撃、

電磁スタン弾使用

備考:電磁スタン弾を使って

装備を全て剥ぎ取られます。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2026年も終わりが見えてきた

12月のとある日曜日の朝。

夜遅くまでガタゴトと騒がしい隣人であり幼馴染の

おかげさまで寝不足気味の灯俊は

台風通過後と言われても

何ら不思議のない寝癖のついた髪の毛を

押さえつけながら洗面所で顔を洗い、

歯を磨いて台所に入った。

 

「やっと起きたかトー坊。」

 

「おはよ…アルゴ…

朝から元気だね…何か良いことあった?」

 

「まあナ。

良い知らせと悪い知らせダ。」

 

灯俊は頭からまだ抜けない眠気を振り払おうと

テーブルの上のコップの水を一気に飲み干す。

 

「ナっ……」

 

「ん?あー、えっと…じゃあ悪い方から。」

 

「…そこのファイルの中ダ。」

 

アルゴがちょうど出来上がったらしい味噌汁を

お椀に注ぎながら目線で示したクリアファイルから

何枚かのプリントを取り出したトードは

それがインターネット上の掲示板での

やりとりを印刷した物だと理解するが、

内容がサッパリ理解できない。

『アンブッシュ』だとか『ライン無し狙撃』

その他大量の業界用語らしきものの羅列だらけだが、

かろうじて理解できたのは

記憶の底に沈めていた3文字だった。

 

……GGO

 

 

「…アルゴ、分かって言ってるのか?」

 

「あぁ、承知の上サ。

だから前回の教訓を活かして今回は準備からダ。」

 

 

 

 

それから数分かけて資料に黙々と目を通した灯俊は

クリアファイルをアルゴに突き返した。

 

「…樫舟さん、この話を葵には?」

 

「してませんよ。」

 

「…少し…時間を下さい。」

 

「分かりました。」

 

トードはその返事だけを聞いて部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからきっかり1時間後。

日曜日で部活が休みになったのを良いことに

二度寝をかました葵は午前8時になって

ようやく床を出た。

リビングへ向かうや否やいつものように

アルゴの中の人である樫舟素子に叱られる。

 

「やっと起きたカ。

カトラスも少しはトードを見習えヨ。」

 

「はぁ〜い…」

 

あくびとも返事ともつかない声を発した葵は

午前4時に一度起きた時に使ったコップへ

手を伸ばし、注ぎっぱなしにしていたはずの水を求めて

コップを傾けるが…コップの中は空っぽである。

 

「ぷっ……くくくっ…」

 

「……あれ?

樫舟せんせー、水飲みました?」

 

「ナ、ナンノコトダロナー…」

 

何が起きているか1人だけ理解しているアルゴは

笑いを堪えながらこのネタをどうしたものかと

思考を巡らせ始めた。

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