ガンゲイル・オンライン 戦場に散るロマン 作:Bishop1911
やっと第3章の終わりー。
4000文字超えてるので
本来は2つに分けるのですが、
キリが悪いのでそのまま繋げました。
長いと感じるかもしれませんが、
どうかお許しを。
集落を制圧してから十数分後。
自分のトラップ系スキルだけでなく、
自らのリアルの知識すらも最大限に発揮して集落の建物の間や遮蔽物の裏側、
門の周囲や建物の出入り口にトラップというトラップを仕掛けまくった俺は、
小雨から土砂降りに変わった雨に軽く舌打ちをした。
「…何も見えない。」
『だねー、こっちもなーんも見えん。』
俺の独り言にカトラスがわざわざ答えてくれたが、
よく考えればこの3人組で索敵スキルを最も上げているのはカトラスだ。
今のがカトラスのボケということに俺が気づく頃には、
もう一名に引火する。
『それは貴女の心が曇っているからです。』
どこぞの聖人の如く答えたトードにカトラスがかみつき、
いつも通りの口論に発展するが、
異常を察知したカトラスが先に口論を打ち切った。
『南から4人、北から4人。』
『やっと来たか。』
「よし、トラップにかかったら撃っていいぞ。」
俺は南側の窓に向かうと、
ACOGサイトを覗き込んで雨の向こうに見える人影に照準を合わせた。
サイトの中の4人は躊躇せずに集落に入ると、
先頭を歩く人物が早速トラップを踏み抜いた。
ぼふっという音とともに雨で水浸しになった地面が揺れ、
敵兵のいるあたりの地面が持ち上がり、周囲に泥を撒き散らす。
濡れてぬかるんだ地面が爆発の威力を落としたらしい。
「チッ、1人だけか…。」
俺はスペック以下の爆発力に思わず舌打ちした。
最初に作動したトラップは60mm迫撃砲弾を応用した対人地雷で、
致死半径は最低10mはある。
爆発で舞い上がるはずだった土を泥に変えたせいで
迫撃砲弾の殺傷力が大幅に落ちている。
つまり、地面に埋めた地雷はアテにできない。
あとは建物や遮蔽物に仕掛けたブービートラップだけだ。
俺は窓ガラスをストックで叩き割ると
サプレッサーを外したLE-901-16sで牽制する。
たたん、たたん、と軽快な銃声を
響かせながらバレットラインがNPCたちの周囲の地面を抉っていく。
銃撃から逃れようと木箱の陰に2人のNPCが隠れたが、
残念ながらそこにあるのはダクトテープで貼り付けられたプラズマグレネードだ。
俺は起爆装置代わりとしてプラズマグレネードにくっ付けた
C-4爆薬のリモコンのトリガーをカチッと引いた。
ビー玉サイズに千切ったC-4のバンッと弾ける音に続いて
目も眩むほどの光球が生まれ、木箱ごとNPCを消し飛ばした。
雨の中に生まれた青い閃光に俺は思わず目を逸らすが、
『ひゃっほーっ!』
『汚物は消毒だっ!!』
無線機からは楽しそうな声が聞こえる。
この威力で2人しか倒せなかったのは少々物足りないが、
仲間は2人ともご満悦のようなのでとりあえずは良しだ。
直後にバラララっとXM8が火を噴いて北側の敵とトードが交戦を始めた。
俺は取り逃がした1人探してあたりを見回す。
生き残りは案外簡単に見つかり、
俺は迷いもせずにライフルの引き金を引いたが、
NPCは死に際で根性を見せた。
ビール瓶のようなものを俺の方に投げつけてくる。
慌てて部屋の中に顔を引っ込めた俺の耳に、
ぱりんっとガラスが割れる音が聞こえた。
ハッと音源を見た俺が見つけたのは、
NPCが投げてきたビール瓶の破片とそこから波のように降りかかる炎だった。
「うわっ!?アッチいぃいいいッ!」
ストーブに近づきすぎた時に感じる熱さをジリジリと全身に感じ、
堪らず窓から飛び出した。
『お、汚物は消毒だ…。』
どこぞのカエルが俺を汚物扱いしているが、今はそんな場合じゃ無い。
服の上で燃える火を慌てて叩いて消した俺は、
転がるように物陰に飛び込んだ。
ひと段落ついてライフルのマガジンを交換しようとしたが、
マガジンを掴み損ねる。
手に違和感を覚えた俺は、
視界の隅でデバフのアイコンが付いているのを見つける。
素早さと器用さが下がっているようだ。
「トード、デバフが付いた!どうすればいい?」
一応VRゲーム初心者の俺はこういう時の対処法を
トードに聞いてみるが、
『浄化結晶的なのは持って無えの?』
「何だそれ!?」
『んじゃ、そんままだ。』
と、対処法がないらしい。
対処法がないのではどうしようも無いので、
俺はライフルを膝の上に載せ、
ジリジリと違和感のある両手でマガジンを差し込んだ。
「やっぱ無理だ。トード、あとはそっちに任せる!」
『あー、だりー…』
このように、大変士気の低いSAWガンナーであるがゆえ、
心配になった俺は
LE-901-16sを7.62mm仕様に換装するのももどかしく、
そのまま5.56mm仕様のLE-901-16sで
伏せ撃ちの姿勢をとる。
水滴を拭ったACOGサイトの向こうで
トードが入っていた民家の扉が
どーんという音を立てそうな勢いで開くと、
そこからシュワちゃんが演じるターミネーターの如くトードが登場した。
が、ターミネーターなんぞ知るわけないNPCは怯む事なく
バレットラインの雨を浴びせる。
レーザーサイトのようなバレットがトードに重なる直前、
トードとNPCたちの間の地面に一本の矢が突き刺さった。
間をおかずに矢の先端から煙が噴き出し始め、
瞬く間にNPCたちの視界を奪った。
一方のトードは両手に持ったXM8を構えると、
それをブッ放す。
バラララという銃声が2丁分、毎秒12発響かせ、
合計200発を8秒で撃ち切った。
煙が晴れた南門にはNPCを倒した証拠であるドロップアイテムが4つ残っていた。
『はい、終了。お疲れ。』
勝手にしめて終わらせようとするトードにカトラスがお知らせする。
『また4人きたー』
『えー…、もうマジかよ…』
と言ってそこから先は無線機で拾えない小言を言いながら
トードはXM8から手を離した。
パシャッとぬかるんだ地面に落ちた自分の得物を一瞥すると、
ホルスターからバレルやフレームが紅く輝く巨大な、
拳銃と呼ぶことを躊躇うそれを抜いた。
『まぁ試し撃ちでもするか。ショウ、こいつって1発撃てば死ぬ?』
「そりゃそんなもんで撃たれたら死ぬだろうよ。」
俺にそう答えさせたその拳銃は
デザートイーグル.50AE 10インチバレルだ。
そしてトードのデザートイーグルは
俺がガンスミスのスキルを使って改造した銃でもある。
前回のクエストでXM8では戦闘ドローンの装甲を貫けなかった事に
不満を抱いたトードがXM8のLMG仕様で
弾幕は張るのはやめたくないという葛藤の末、
セカンダリを強力なやつのするという結論が選び抜いた拳銃だ。
1丁目のバレルは鮮やかな紅で、
スライドはまるでシルクのようなホワイト。
グリップは水色だ。
もう1丁の方のバレルとフレームは1丁目と同じで、
スライドは鮮血を思わせるブラッディレッド、
グリップは派手に輝くゴールドだ。
2丁はトードによってスカーレット・シスターズと名付けられた。
バレルとフレームも一見塗装したように見えるが、
この色は素材が生み出している。
数週間前の話だが、
トードが1人でフィールドを探索している時に
ダンジョン的な怪しい研究所で見つけたらしい。
名前をスカーレットメタルというその金属を出された時は
『これをどうしろと…?』と思ったが、
まあなんとかなった。
強装弾でも耐えれるように、
スライド用のスカーレットメタルを強化しようと
グロッケンの鍛冶場に持って行ったら、
前述の悪趣味なブラッディレッドのスカーレットメタルが返ってきた。
トードに聞いた話だと純度が高くなれば色が濃くなるとか。
そんなこんなで、
トードはデザートイーグル改めスカーレット・デビルと
Grip&Breakdownを構えた。
最後に言っておく。俺に言わせれば変態である。
まったく…。
パーツの塗装をする俺の気持ちも考えてほしいものだ。
南門から入ってきた最後の4人が
バラバラに散らばってトードを囲み始める。
銃を構え、弓をつがえた俺とカトラスを無線機越しにトードがとめる。
『俺の獲物だ。邪魔するなよ?』
『はい出たー!独り占めはんたーい!職権乱用はんたーいっ!』
どこで職権を使ったのかとは敢えて突っ込まないが、
俺はデバフで全身が痺れているのでどっちにしろ動けない。
カトラスはあーだこーだと文句を言うが、
グロッケンの酒場でカレーだのハンバーガーだのを
奢ってもらうという事で結局は手出し無用となった。
だがそうやって喧嘩している間にも時間は過ぎていく。
NPCたちはトードを取り囲み、
まさに十字砲火を浴びせる構えだ。
NPCたちが各々のライフルをトードに向けると同時に
トードもスカーレット・シスターズを前方の2人に向け、
躊躇せず引き金を引いた。
ズカカンッと2発の銃声を響かせて撃たれたNPC2人が爆散した。
『いいねいいね!これだけでイッちまいそうだぜ!』
おそらく映像として記録したら
絶対にピー音で消されるだろうセリフを吐いたトードだが、
『えー、一部不適切な発言がありました。
誠に申し訳ありませーん。』
一応は女子であるカトラスはそこら辺もしっかり見ていた。
『んだよ…キャンティ知らねぇのかよ…』
ズカンズカン
『ったく…これだから最近の若い奴は…』
ズガンズガン
という感じで1発も撃たれずに4人を倒したわけだが、
決めゼリフがアレだとなんだか締まらない。
とにかくクエストをクリアした俺たちは、
集落で一番大きい建物に集まって
帰りの分の弾薬をストレージから取り出す。
俺がようやくデバフが消えた体を動かしていると、
3人の頭上でアナウンスの電子音が鳴り、
目の前のホロウィンドウにメッセージが現れた。
「んー…なになに…
『武装勢力を撃退した事で集落が解放され、住人が戻ってきた。
ガンショップ、アイテムショップ、酒場がオープンした。』だって。」
「まだ下にあるぞ。」
文章の最初だけ読んだカトラスに続いて今度は俺が読み上げる。
「えっと…
『<注意>
この集落はグロッケンから遠すぎる。
自分の身は自分で守らなければならない。
集落の中でも敵に気をつけろ。』
…つまりはフィールド扱いのミニミニグロッケンってことか?」
と、俺はトードに話を振るが、
トードはメニュー画面に何か打ち込んで数秒後にニヤニヤと笑みを浮かべる。
「おい、トード。今誰にメールしてた?」
「な、ナンノコトカナー…」
「棒読みの時点でワザとらしいんだよ!誰にメールした!」
俺はホルスターからHK45を抜いてトードの顎に当てる。
「…アルゴっていう情報屋…」
「そんでおいくらー?」
後ろからいつもの幼児のような口調で
聞いてきたカトラスにトードはすんなりと答えた。
「150000クレジット…。」
「よし、3人で割れるね。」