ガンゲイル・オンライン 戦場に散るロマン 作:Bishop1911
ローズの店で武器と弾薬を手に入れた俺は、
ついでにメニュー画面からスキルツリーを開いた。
俺のアバター『ショウ』は
まだ初心者でレベルも低いアバターだが、
何を隠そう、重課金なのでスキルポイントは
ガッポリ腐る程ある。
スキルを割り振るならメインアームの
LE901-16sのスペック的に
ポイントマンやライフルマン、マークスマンが
無難なところだ。
俺はステータスの設定画面を呼び出した。
課金で手に入れたステータスポイントの
半分を使ってSTR(筋力)とVIT(耐久力)、
AGI(敏捷性)を上げてポイントマンに
必要な最低基準より少し高い値を満たす。
今度は残ったステータスポイントの
6割をDEX(器用さ)に、
4割をLUX(運)に割り振った。
ステータスがどんどん上昇していく中で
知性を表すINTが忘れないでくれと
言いたげに『0』を示しているが、
知らん。分からん。そんなもの無かった。
続いて開いたスキルツリーでは
スナイパー用のスキルから探知能力と
視力を上げるホークアイ、
自分のハイディング能力を一定時間上げる
ハンティング、バレットサークルを安定させる
サジェスチョンを習得し、
武器作製のスキルからトラップ作製スキルや
ナイフ作製スキルを習得した。
ナイフ作製スキルを習得した時に
表示された銃剣作製スキルに目を引かれたが、
ナイフ作製スキルの熟練度が足りないうえ、
スキルポイントも圧倒的に足りないので諦めた。
同じように銃器系のスキルツリーでも、
パーツ製作スキルや弾頭カスタムのスキルへ
スキルポイントを齧る程度に割り振って
ようやくショウとしてのキャラが完成した。
まぁ、パーツや弾頭は経験値が無さすぎて
設計図が大量に必要な有り様だが、
そこはぼちぼちやっていけば良いだろう。
「ふぅ…。」
ひと段落ついたところで息を漏らした俺の肩を
トードの華奢な手が叩く。
「終わったか?」
「あぁ、あとは何回か練習すれば行ける。」
本当ならチュートリアルくらいは受けたいが、
とりあえず何とかなるとしか思ってないトードが
その話に乗る確率は限りなく低いだろう。
俺は少し願望を含めてチラリとトードを見る。
「そういやショウ。お前、チュートリアルは?」
「え…?」
まさかトードがこんなことを言い出すとは思わなかった。
その驚きが俺の思考を嬉しさのあまり停止させた。
トードの笑みにも気付かずに。
メニュー画面からチュートリアルを選択した俺は
直後に青白い光に包み込まれたかと思うと、
どこかの屋内射撃場に転送されていた。
目の前にはSっ気たっぷりの露出たっぷりお姉さんが
こっちを睨んでいる。
「よく来たな、ウジ虫!」
「あ、どうも…?俺?」
「そうだとも!
ウジ虫で無ければ父親の〇〇が母親の
マリアナ海溝にぶち込まれた時に溢れ出た
〇〇カスだ。」
なんだこのいきなりの下ネタは…
「良いか、ウジ虫!この世界には異形のモンスター、
狂った機械、殺人を好むプレイヤー、その他、
平和ボケした開拓民が毛嫌いするモノの特売日状態だ。
今からこの私がこのクソ溜めで貴様がウジ虫から
立派なハエになる術を叩き込んでやる!」
成長してもハエかよ…
「苦しくてもう辞めたいとか愚痴を
貴様のフニャ〇ンから垂れる〇〇みたいに
こぼす前に気合いを入れろ。」
そして再び下ネタ。
このセリフの声を吹き込んだ声優さんには
頭が上がらないほどの迫力だが、
このお姉さんに頭を下げると冗談抜きで踏まれそうなので
意地でも下げる気は無い。
「はいッ!」
「返事はyes,ma‘amだ!」
なんだこの理不尽!?
「い、いえす、まーむ!」
「ふざけるな声を出せ。
そんなモスキートの羽音じゃ戦場でママを
呼んでも誰にも気付かれんぞ。」
「イェス、マァムッ!」
「何度言えばわかるんだ、声を出せ!
敵を殺すときの顔で声を出せ!」
これはフルメタル〇ャケットだ…!
「あ“あ”あ“あ”あ“あ”ぁぁッ!!」
「あああああああああぁぁぁぁぁ!!」
「ふざけるな、ジジイの屁の方がデカイ音だ。
あ“あ”あ“あ”あ“あ”ぁぁッ!!」
「あ“あ”あ“あ”あ“あ“あ”あ”ぁぁッ!!」
「よし。」
もっとなんか言えよ!
「ところでウジ虫、お前はなぜここに居る?」
「え?どういう…?」
「質問するのは私だ、黙れウジ虫!」
「イェス、マァムッ!」
「生き残る為だ!生き残る為に必要なものは
これだ!ウジ虫、これが何か言ってみろ。」
「銃です!」
「ウジ虫のくせに少しは知能があるようだな?
本でも食ったか?なら私が貴様が食った
本のページがクソになってケツ穴から
出て行く前にしっかり覚えさせてやる。
わかったら次のステップに
進んでもよろしゅうございますか?」
「はい、お願いします!」
「銃は大きく分けて2種類。
光学銃と実弾銃だ。光学銃は小型軽量、
射程が長く命中精度が高い。
エネルギーパックの交換も容易だ。
ただ、対人戦闘では対光弾防御フィールドで
威力が減衰する。対して実弾銃は文字通り
質量のある弾丸を放つ。
威力が強く、防御フィールドでは防げない。
しかし、風などの影響を受けやすく、弾倉が重く嵩張る。
セオリーとして対モンスター戦には光学銃、
対人戦には実弾銃だ。
そのクソしか詰まってない頭に入れておけ。」
「イェス、マァムッ!」
「それでは、銃の基本的な扱いを教える。」
教官NPCはそう言うといきなりどこかから取り出した
M16A1を俺に向けてトリガーに指をかけた。
赤いバレットラインがレーザービームの如く
俺の額まで伸び、
「うわっ!?」
剣道をしていた経験からか、頭を傾けて回避した。
「バレットラインだ。
敵が銃の引き金に指をかけた瞬間に発生、
そのライン上に弾が飛んでくる。
そのクソしか詰まってない飾りの頭が
お前の体に必要なら避けるか撃ち返すかしろ。」
もっと何か言ってもらえると思ったが、
やはりNPCだからなのか
決まった受け答えしかできないようだ。
M16を渡された俺はマガジンを確認し、
チャージングハンドルを引いて初弾を装填。
体を的に対して斜めに向け、
伸ばした左手はハンドガードの中程を。
力を抜いた右手はグリップを優しく握り込む。
「貴様何を見てその構えになった!」
「ひゅえっ!?」
情け無い悲鳴をあげた俺に追い打ちをかけるように
教官NPCがまくし立てる。
「スクリーンに映るヤツらから学べるのは
ウジ虫以下のやり方だけだ!
スクリーンに映る素人どもと同じポーズで満足か?
映画館はガールフレンドとイチャイチャして
次のズッコ〇〇ッコンに進む場所だ!
貴様のようなろくにストーリーも
理解しようとしないウジ虫が
気安く入れる場所じゃない!
わかったら脇を締めてもっと脚を広げろ!」
「イェス、マァムッ!」
もはや半泣きである。
「引き金に指を掛けろ。
これがバレットサークル、弾道予測円だ。
ウジ虫が引き金を引けば、
その円の中に弾がランダムに命中する。撃ってみろ!」
バァンッ
1発の銃弾が発射され、
300mほど先のペーパーターゲットに命中した。
「素晴らしい!お前はウジ虫の中でも最高級に
ウジ虫だということが証明された!」
褒められ…てるのか、これは?
「次だ!移動ターゲットへのセミオート射撃!」
「イェス、マァムッ!」
数分後、何十発という銃弾を右へ左へ、
上へ下へと動き回るペーパーターゲットに撃ちまくり、
チュートリアルはようやく山場を過ぎた。
「見事な射撃の腕前だ!
貴様はマークスマン向きだな。
精度の高い銃に高倍率スコープを載せて
中距離の敵と戦うと良いだろう。」
「お、褒められた?」
「次はナイフの扱いについてだ。」
「えぇっ!?まだあんの!?」