ガンゲイル・オンライン 戦場に散るロマン 作:Bishop1911
5.5
俺の朝はいつもと変わらず、
LINEの確認やスマホゲームのログインと
続くはずだったが、その日の朝、
1月1日はLINEの通知が俺が寝ている6時間30分で
80件を超えていることに対する驚きで始まった。
ちょっとした寒気を覚えるほどの
ホーム画面に連なる送信者の名前は
もちろん全てが『ポイズン・トード』だ。
ちなみに単純計算で5分に1回のペースで
送って来ていることになる。
暇人め…。
まず1番古いメッセージは『あけおめ』だ。
だが数分後からまるで別人のように
メッセージを送ってきている。内容はずっと、
「この前言ってた知り合いと連絡が取れたから
早くグロッケンに来い。」的なことだ。
つまり俺が新年をベッドで初夢も見ないほど
ぐっすり眠って迎えている間、
トードはグロッケンで待っていたのだ。
「ヤッベっ…
アミュスフィア、アミュスフィア…っと。
準備よし。」
俺は自室のドアに
『仮想世界で友達に課題を教えてもらって来る。』
と嘘を書いたメモを貼り、
アリバイ作りのために冬季課題の写真を適当に撮り、
スマホ経由でアミュスフィアにダウンロードする。
たかがゲームのためにこんな嘘を
つくことに罪悪感を覚えるが、
そんな気持ちを振り払って再びベットに潜り込んだ。
リアルは真冬だというのに相変わらず
赤茶けた空のGGOに俺は降り立った。
俺はメニュー画面を開くと
すっからかんのフレンドリストに
唯一載ってるトードをタッチすると、
ログインしたことを報告するメッセージを打ち込む。
数分後、受信欄に1つのメッセージが返信された。
酒場に来いの一言だ。
俺はGGOでは体力が関係ないことを
いいことに短距離走と同じかそれ以上の
速さで酒場まで猛ダッシュで向かい、
メッセージに添付されていた個室に入った。
トードと向かい合って座ると、
堰を切ったようにトードが話し始める。
「ねぇ…なにしてんの?
俺が何時からここで待ってたと思う?
この前言ってた知り合いが
こっちにコンタクト取ったのが昨日の11時半な。
で、そこから色々とメールして
お前が来たら連絡って落ち着いた。
で、その時点で十二時な。
でよぉ、お前に早く伝えてやろうと思って
連絡したんだ、でもよ、お前でないじゃん?
しょうがないからログアウトして
LINEしたけどでないじゃん?
しょうがないからまたログインしてから
街をぶらついてたわけよ、
で、少し経ってからお前に
メッセージ送ったけど音沙汰なし、
またログアウトしてLINEして
十分経っても既読付かねぇ。
でさ、お前がスマホと
アミュスフィア同期させてんの思い出したんだよ。
それまでいちいちログアウトと
ログインしてたんだぜアホみたいだろ?
でよ、しょうがないからログインして
俺のスマホと同期したウィンドウ眺めてたんだよ。
で、一向に既読つかなくてよ、
そーいえばスキルスロット余ってたからよ、
適当なの取ってスキル上げしてたんだ。
ウィンドウチラチラ見ながらだけどさ、
全体の1/5くらいの熟練度になったんだ。
俺がどれだけ待ってたかわかるか?
六時間半…いや、七時間は待ってたからな。
ねぇ、何してたのお前?
まさか俺のメッセージ無視して
コンバット(性◯理)してたの?
ねぇ?お前バカなの?死ぬの?ねぇ?」
雰囲気は部活の剣道の練習に遅刻した時の
先生と同じだが、
いかにもマンガの中のキャラクターが
言いそうな長文のセリフを
噛まずに言い切ったことに
俺はある種の感嘆を覚えた。
だが同時にこうも思った。
「いやいや、死にはしないし
コンバットもしてねえけどよ、
年末年始を寝て過ごすならわかるけど
GGOでボッチって馬鹿か?
みんながみんな新年に
初日の出待って徹夜するって思うなよ?
現に俺は寝てたんだし。」
「まぁ、VRMMO初心者に言ってもしゃーない。
俺は寛大だからな、今回は不問としようじゃないか。」
最後の『不問としようじゃないか』を
妙に強調して言ったトードの口元は
なぜかニヤけている。
顔の感情表現がオーバーなVRMMOで
こんな中途半端な表情を
浮かべれる女…じゃなくて男は
そんなに居ないだろう。
「それと前回言ってた知り合いの他にも
もう1人呼んだんだ。もうそろそろ来る。」
そして待つ事数分。
「やあお待たせトード。」
1人の男の子が入って来た。
150cmほどの身長で癖毛がある。
例えるなら…犬耳だろうか?
「トード、お前ってショタコン?」
「ちげえよ、こいつのリアルは女だ。
ていうかアバターおかしくねえか?」
トードは出入り口から動かない男の子を
ジッと見つめると、
何か閃いたように「あっ」と声をあげる。
「カトラス、ステータスウィンドウ見せろ。」
宙に浮かぶ画面を覗き込んだトードは
何がおかしいのかやっと教えてくれた。
「カトラス、喜べ。お前…男だぞ。」
「え…?」
画面をまじまじと見つめるカトラスの
口元が次第に緩む。
「フッフッフ…よしっ、よっしゃあぁ!
神はオレを見捨てなかったっ!」
いやいや、待て。ある意味見捨てられてるから
こういうミスが起きるんだろ…
個室のテーブルの上を
ピョンピョン飛び跳ねまわるちっちゃい子は
そんな俺の内心を知ってか知らずか、
彼、いや彼女…違うな。やっぱり彼。
彼の喜びのダンスは終わりが見えない。
「トード、そういえば
連絡が取れた知り合いは?」
いつの間にか自分のメニュー画面を
開いていたトードに聞くと、トードは顔を上げる。
髪を搔き上げる仕草が様になっていて
俺は危うく天使の矢に射抜かれそうになったが、
それより先に彼女…じゃなかった彼の口が
開かれ、俺の質問に答える。
「10分後にALOからコンバートして来る。
スタート地点で待ち合わせだ。」
トードは立ち上がると
個室のテーブルをステージ代わりに
飛び跳ねていたカトラスの足を掴み、
逆さまの状態で持ち上げる。
「わっ!?
おいトード!何すんだよ!
レディーにそんな事して恥ずかしくねえのか!」
あ…コイツ男と女を
使い分けるヤバいヤツだ…
「何言ってんだ?
俺の外見は女でお前の外見は幼児。
さあどっちが恥ずかしいかなぁ〜。」
ダメだ。
こっちも同類だった…
次回
目標
2〜3話以内に原作キャラ出す!