刹那サイド
簪の暴走から数日、とうとう8月に突入した僕達はさっさと課題を済ませ、各々の休日を過ごしていた。
ラウラ達は再び母さんに連れられショッピングに。セシア達はイリアステルで束のチェックを受けている。僕は護衛の人に車である場所へと送迎してもらっていた。目的地に着き、降ろしてもらう。
「すみませんクラリッサさん。こんな暑い中」
「いえ、これが我々の仕事ですので。それに隊長・・・今はラウラ様でしたね。あの方を救ってくださった貴方の為ならばこの命も投げ出す所存です」
「別にそこまでの事では・・・」
「そんな事はありません。刹那様が居たからこそ、ラウラ様だけでなく我々も今此処に居る事が出来るのです。貴方は命の恩人に他ならない」
「・・・此処は素直に褒められておきます」
「そうしてください。もし刹那様がお求めになられるのでしたらこの体、好きにしていただいても構いませんよ?」
「そう言うのは本当に好きな人の為に取っておいてください」
「・・・いけずですね」
クラリッサさんの呟きを無視しながら帽子を深く被って敷地内を歩く。場所が場所なだけに目立つ様な事は避けたい。自分の家の近くな所為か、顔が知られてる可能性が高い。
暫く進むと建物の入り口に差し掛かった。そこには《聖都大付属病院》と書かれた石碑が置かれていた。
中に入り受付に話し掛ける。
「すみません、紺野さんに用事があって来ました。不動です」
「はい。ではこちらをお持ちください」
そう言って渡されたのはVIPな方々だけが入院してる階層の許可証だ。その階へは患者を運ぶ時専用のエレベーターと普通の階段しか無い。僕はその階段をゆっくりと上がり始めた。
階段を上がると目的の階へと辿り着く。そこから部屋の番号を確認しながら歩き、とある部屋へと着く。軽くノックをすると、中から声が聞こえた。
「どうぞ~」
相変わらずなんとも気の抜けた声だろうかと思いながらドアを開ける。そこには、黒い髪を肩辺りまで伸ばした少女が窓の外を見ていた。
少し痩せているが、前に来た時よりも血色は明らかに良くなっている。直ぐに健康になるだろう。そんな事を考えながら、僕は彼女へと近づく。
彼女も僕を見た瞬間、その顔をパアッと輝かせた。そこまで喜んでもらえるとは嬉しい限りである。
「刹那!久しぶり!」
「うん。久しぶり、《
彼女は《紺野 木綿季》。出会いはALOでの決闘だった。それから何かと話す様になり、彼女が重い病気に掛かっている事を知った僕は父さんや束達にお願いして、医療用の最新ナノマシンを投与してもらい、彼女の病気を完治してもらった。
治療費?まあ僕のお小遣いがごっそり減ったけど人の命には代えられない。今の彼女はリハビリ中だ。途中経過を担当医の先生から聞く限り、問題は無いそうだし安心だ。
椅子に座ってバッグからお見舞いの品を取り出す。
「ほい、今月分」
「やたーっ!」
それはISのプラモデルである。今の彼女はナーヴギア、またはその後継機であるアミュスフィアを持っていない。ちょっと別のルートでログインしてた彼女はそのルートが無い為に出来ないのだ。
欲しいと思っていても此処は病院。しかもSAO事件があった後だ。あまり良い顔はされない。故に他の趣味を見つけようとした結果、指先のリハビリを兼ねてプラモデルにドハマりした。
「ねえ、木綿季」
「なに?」
「毎回、僕の機体のプラモデルだけじゃ飽きない?」
「ううん。全然!」
「そ、そっすか」
なんとも言えない気分になりながらも嬉しそうにニッパー等の道具が入った箱を取り出しながら鼻歌を歌う木綿季に苦笑しながら見守る。
それからはIS学園での生活等を話した。時間はあっと言う間に過ぎて夕方になった。その頃には机に完成したプラモデルが2体並んでいた。
「いやあ、作った作った!」
「段々スピードとクオリティが上がって何よりだよ」
「ボクも刹那にまた会えて嬉しかったよ。今日は来てくれてありがとう」
「まあ、夏休み中はなるべく来るよ。新学期が始まるとまた暫く来れないし」
「あ、だったら刹那の友達連れて来てよ!ボクも会ってみたいなぁ」
「病院側から許可を取れたらね」
「うん。あ、最後に何時ものお願い!」
「はいはい」
そう言って両手を広げて来る木綿季を抱きしめて頭を撫でる。
木綿季は家族が居ない。両親と姉が居たが、全員亡くなっている。だから時々、人肌が恋しくなる時がある。僕が見舞いに行くとよくこうするのだ。
まあ、あまり人が来れる病室じゃないからなぁ。
「やっぱり刹那はあったかいなぁ」
「そう?自分じゃよく分からないけど。僕からすれば木綿季の方が温かくて好きだけど」
「・・・刹那って時々凄い事ナチュラルに言うよね」
「ん?」
「なんでもないよ。もうちょっと、こうしてても良い?」
「お好きにどうぞ」
「ありがと」
暫く抱き枕になった後、僕は病院を後にした。
帰りにスーパーで食材を購入してからレジを通る。途中で母さんからメールが来た。内容はラウラ達とスッポン鍋を食べて来るそうな。
まあ、父さんも居ない事だし一人飯でもするかと思いながら車に戻る。ふと考え着いてクラリッサさんに話しかけた。
「クラリッサさん、この後の予定はありますか?」
「いえ、特にはありませんが何処かにご用事ですか?」
「いえ、よければ家でご飯食べて行きませんか?」
「是非」
即答だった。家に着いた僕はクラリッサさんに寛いでもらい、食事を作る。
作ったものは、スーパーに並んでいた鰻を使ったうな重である。向こうもお高いもの頼んでるんだから良いだろうと思い、買って来た。
後は薬味とだし汁、お吸い物をササッと作る。
「出来ましたよ」
「こ、これがうな重と言うものですか・・・」
「後はひつまぶしです」
「す、凄い・・・」
「最後にお吸い物です」
「あの、どれから食べれば?」
「えっとですね」
クラリッサさんの言葉に苦笑しながら前に何かの雑誌で見た店の勧める食べ方を口にする。
「まずはうな重の中身を混ぜちゃってください」
「こ、こうですか」
「そうそう。で、四分の一ずつ分けて、そのまま、薬味、だし汁、と食べて残りの四分の一は好きにしろと言うのが理想だそうです」
「で、では早速・・・」
震え声でクラリッサさんは鰻を口に運んだ。すると目を見開きプルプルと震え出す。口に会わなかったのかと思ったが、直ぐに口に放り込んで笑顔になったので歓喜に震えて居たと分かった。
その後も軍人時代や、僕の少年時代の話をしながら食事を終えた。二人でお茶を飲んで一息吐く。
「本当にごちそうさまでした」
「いえいえ。僕もクラリッサさんと色々話せて楽しかったですよ」
その後クラリッサさんは帰って行き、僕も入浴を済ませてリビングでテレビを見て居た。そこへ母さん達が帰って来た。
「ただいま、刹那」
「おかえり。スッポン鍋はどうだった?」
「初めて食べたけど、美味しかったわ。今度は刹那も行きましょう」
「楽しみだね。僕も今日はクラリッサさんと鰻食べたから」
「クラリッサが来ていたのか?むぅ・・・私も会いたかった」
「まあまあ。明日に僕のISのチェックが終わるから受け取りに行った時に会えば良いよ。父さんに話は通しておくから」
「そ、それは悪い気が・・・」
「大丈夫だよ。父さんは身体能力も伊達じゃないから」
そんな事を話しながらテレビを見ていると、此処最近ずっとやっているニュースが流れていた。
『可決されました、《男性操縦者一夫多妻法》について・・・』
----男性操縦者一夫多妻法
簡単に言えば、僕と織斑にどんどん子供を増やしてもらって、男性側は立場を取り戻し、女性側は大きな後ろ盾を手に入れられると言う欲に塗れた法律である。
特殊な法律である為に今月から適用されるらしい。僕も既に他社等から大量の見合い写真が送られて来ている。
まあ、全て断っているけど。
「織斑イケメンだから大変だろうなーざまーみろ」
「刹那、凄くゲスな顔になってる」
簪が頬を引き攣らせながら言う。この子、焼肉屋での記憶が完全にぶっ飛んでいる。絶対に呑ませたら駄目な子だ。
そう思っていると、座っている僕の膝にラウラが対面で座って来た。そして頬にキスを連続で落とす。簪がやらかして以来ずっとこんな調子だ。そして隣に座ったクロエも僕の手を握って、キスを続ける。それを見て簪は顔を真っ赤にしていた。
おい、元凶は君なんですけど?
「あらあら。私は全員がお嫁さんでも大歓迎よ?」
「母さん、冗談キツイ」
「冗談じゃないわよ?それに合法じゃない」
「あのね、ラウラ達の意見もちゃんと・・・」
「私が一番であるなら刹那様が複数の女性と婚約しても構いませんよ。正妻たるもの、何時でも余裕をもって接します」
「うむ。私も愛してくれるのならば構わない」
「・・・わ、私も、なんて」
「待って。お願いだから逃げ道壊さないでマジで」
くっそ・・・そこの母親!ニヤニヤすんな。
僕はラウラ達から抜け出して、部屋に籠り電話を掛ける。相手は僕と似た様な状況にいる相手だ。
「・・・と言う訳でどう思う?様々な女性から好かれている《和人》君」
『お前相談してるのか?それとも喧嘩売ってるのか?』
「やだなあ、僕は只彼女が居ながら義理の妹とか、彼女の友達とか、後輩とかを行ったり来たりしてる君に意見を聞きたいだけなんだ」
『よし決闘だ。今すぐログインしろ』
「ごめんなさい。本当にふざけてないと頭が沸騰しそうなんです」
僕は見えない筈の相手に土下座する。すると電話の向こうから溜息が聞こえた。
『で、お前はどうなんだ?一夫多妻でも良いのか?』
「ぶっちゃけるとそんなに抵抗は無いよ。僕だって、好意を寄せてくれる人が沢山いるのは嬉しいし」
『じゃあ、良いじゃないか』
「でも最後の良心が邪魔すると言うか・・・」
『まあ、普通あるよな。でもかなり贅沢な悩みだぞ』
「分かってる。でもさぁ」
『別に急いで決めろってわけでもないんだろ?今度のオフ会で相談に乗ってやるよ』
「和人さんあざっす!流石《黒の剣士》!」
『SAO時代の二つ名は止めろ。それにお前だって、ALOで俺と合わせて《双黒》だろうが』
「止めて。背筋が痒くなる」
『取り敢えず頑張れ。刹那なら大丈夫だろ』
そう言って和人・・・キリトのリアルネームである少年は僕との通話を切った。
端末を放り投げて天井を見上げる。僕は織斑ほど鈍感ではない。少なくとも、ラウラ、クロエの好意は本物であるとは思ってはいた。
正直自分がそこまで好かれる人間とは思っていなかったが・・・。
何時の間にか寝落ちしていたらしく、外の騒がしさで目が覚めた。そしてカーテンを開けて下を見た瞬間、僕は部屋を飛び出した。
そして玄関を開けて、人の家の前で馬鹿騒ぎする人物に声を掛ける。
「何やってやがりますかこの馬鹿教師」
「む~?なんだ~ふどーじゃないかー!」
「ちょっ、先輩!?えっともしかして此処不動君のお家かな?」
「そうですよ。山田先生も御苦労様です」
そう言って、ベロンベロンに寄った織斑先生を必死に支える山田先生に頬を引き攣らせる。すると、織斑先生が僕に詰め寄る。
「なんだそのはんこーてきなめは!この!」
「いたっ」
軽く叩かれた。その後もポカポカと人を殴った上にローキックまでして来た馬鹿教師は鼾を立てて爆睡し始めた。
山田先生もお手上げの様で、涙目でへたり込む。僕は溜息を吐いて言った。
「放置してカラスの餌にするのもありですけど、仕方ないので家の空き部屋に放り込みましょう」
「い、良いんですか?」
「良いですよ。それに、山田先生も帰らないと」
「あ・・・終電過ぎてる」
「・・・いっそ二人共泊まって行ってください。朝食位は出しますよ」
「不動君・・・ありがとう」
「良いですよ、別に」
結局この馬鹿教師を僕が抱えて部屋に放り込む。
「あ、あのね不動君・・・幾らなんでも女性を引き摺るのはどうかなって」
「・・・は?」
「何でもないですハイ!」
布団だけ敷いて二人は放置。僕もその日は就寝する事にした・・・。
刹那サイド終了
三人称サイド
「うぐっ・・・此処は?」
頭痛で目を覚ました千冬は、頭を押さえながら体を起こす。隣を見ると、後輩である真耶が眠っていた。そんな彼女を揺さぶって起こす。
「おい、起きろ真耶」
「むふふ~・・・不動君ったら~」
「・・・ふんっ」
「へぶぁっ!?あ、千冬さん・・・」
「おはよう。それで此処は何処だ?」
「えっと、不動君のお家です」
「・・・なに?」
「昨日飲み過ぎた先輩が不動君のお家の前で寝てしまったので泊めてもらったんです」
その言葉に千冬は頭を抱えた。弟の一夏がようやく補習を終えて、帰宅した事により肩の荷が下りた彼女は、真耶を連れて今までのストレスを払拭するべく呑みまくった。
普段の倍の量を呑んだ彼女は、見事に酔っ払い刹那に絡んだのだ。その記憶が段々と蘇って来た千冬は顔面を蒼白にする。
教師が生徒の家に転がり込むなど本来あってはならない事だ。ましてや自分はその生徒が毛嫌いしているクラスメイトの姉である。
「やってしまった・・・ん?」
「あ、良い匂い」
罪悪感に囚われている二人の鼻を擽ったのは、味噌汁の香りだった。耳を澄ませば、リズムよく包丁の音が聞こえて来る。
すると、部屋のドアが開いた。そこに立っていたのは刹那の母であるアキだった。
「おはようございます、先生方。もうすぐ朝食が出来ますから、どうぞ」
「ど、どうも・・・」
「は、はい・・・」
微笑むアキに一瞬見惚れた二人はボーっとしながら下に降りる。リビングに入ると、そこではラウラと簪、クロエが配膳等をしていた。二人に気付いたラウラ達は少し引いた目で口を開く。
「おはようございます」
「あ、ああ・・・昨日は世話になった」
「それなら刹那に言ってください。貴女を部屋に運んだだけでなく、朝食まで作っているのですから」
「そう、だな・・・」
「あの、織斑先生?」
「更識だったな。どうした?」
控えめに手を上げる簪に千冬は聞く。すると簪は言った。
「弟さんには、連絡したんですか?」
「しまった!?」
急いで千冬は部屋に戻り、携帯を開く。そこには弟からの着信履歴が大量にあり、掛け直す。すると五秒も経たずに相手は出た。
『千冬姉何処にいるんだ!?』
「すまない一夏・・・呑み過ぎてしまってな。今は不動の家に世話になっている」
『なっ!?アイツ千冬姉にまで・・・!』
「待て。不動は何も悪くないぞ。私が一方的に迷惑を掛けた側だ」
『でも!』
「でもも何もない。すぐに帰る。今は切るぞ」
『あっ、千冬n』
電話を切った千冬はリビングへと戻る。既に配膳は済んでおり、千冬と真耶の分も並べられていた。
ご飯とみそ汁。目玉焼きに鮭の切り身とほうれん草の胡麻和えと理想的な朝食が並べられている。椅子に座る様に促され、千冬は真耶の隣に座った。
「まあ、さっさと食べてください。そちらの胃の事は考えてないんで」
「いや、態々作ってもらってすまない」
「別に。母さんに手間掛けさせたくなかっただけなんで」
「この子ったら、素直じゃないわね」
「母さん!・・・と、兎に角!食べましょう」
刹那の言葉に全員が手を合わせて、食べ始める。千冬達も味噌汁を口に含むと、その美味しさに驚愕した。
「美味い・・・」
「不動君、お料理上手なんですね!」
「まあ、人並みには」
「「(人並みってレベルじゃない気が・・・)」」
照れ臭そうにする刹那に笑みを浮かべながら二人は食事を続ける。二日酔いであるにも関わらず、お替りまで要求した二人は満腹になった。
それから暫く、食後のお茶を飲み終えた千冬と真耶は刹那とアキに頭を下げる。
「この度は、本当にご迷惑をお掛けしました」
「本当にすみませんでした」
「もう良いですよ。まあ、ローキックだけは許しませんけど」
「私も刹那が良いならそれで構いませんよ。それに、誰だってハメを外し過ぎる時がありますから・・・」
「ですが、私は教師です。しかも生徒の家に上がり込むなど・・・」
「確かに教師としては屑レベルですよね」
ズバッと言う刹那。だが間違っていない為に反論出来ない。
刹那は溜息を吐きながら言った。
「本当にもう良いですから。さっき会社に連絡したんでもうすぐ車が来ますから送ってもらってください。その体たらくで歩くのはキツイでしょう」
「何から何まですまない」
「そう思うなら貴方の弟さんを僕に近付けないでください」
「・・・本当に駄目な姉弟ですまん」
謝罪しっぱなしの千冬の姿はあのブリュンヒルデとは思えない悲壮感があった。
その後、千冬と真耶は迎えの車で自宅まで送り届けられた・・・。
~織斑家~
「千冬姉!」
「ただいま、一夏。連絡しなくて悪かった」
「それはもう良いよ。そんな事より、刹那に変な事言われなかったか?」
「変な事?」
「ああ。アイツ、俺だって頑張ってるのに真面目にやってないって言うんだぜ」
「・・・一夏。お前は放課後何をしている?」
千冬の疑問に一夏は首を傾げながらも答える。
「俺は、箒とアリーナで特訓したりしてるけど・・・」
「その後はどうだ?」
「普通に食事と入浴を済ませて、寝てるぞ?」
「ISの勉強はしていないのか?」
「だって特訓とかで疲れてるし、なにより夜更かししたら体に悪いじゃないか」
「・・・この愚弟は」
一夏の言葉に千冬は再び頭を抱える。疑問に思っている一夏に千冬は言った。
「良いか。多少夜更かししてでも勉強しろ。でなければお前は進級出来んぞ」
「でも夜って眠くなるんだよ」
「ならアリーナの特訓を削ってでもやれ。実技が全てと言う訳でもない」
「だからって、弱いのは男として我慢出来ねえよ」
「少なくとも箒と訓練するだけでは強くなれんぞ」
千冬の口から出た言葉に一夏は衝撃を受けた。自分と幼馴染の訓練が否定されたのだ。一夏は反論する。
「そんな事ねえ!俺と箒も確実に強くなった!」
「では、その他の専用機持ちにお前は勝てるのか?」
「それは・・・」
「・・・私からも頼んでおくから不動達の訓練に混ぜてもらえ。専用機持ちは殆どそちらに行ってるからな。前に藤原が訓練機で参加したが、死に掛けてたぞ」
「そこまでしなくても大丈夫だって」
「だから・・・もう良い。それと、ちゃんと此処に来るまで、護衛に付いてもらったんだろうな?」
「いや?付けてないぞ」
「・・・は?」
さも当然の様に言う一夏に千冬はポカンとなった。そんな事お構いなしに一夏は続ける。
「刹那にも言われたけどさ、俺は別に金持ちのお坊ちゃんじゃないし狙われる理由なんて無いだろ。刹那ってそうやって自分の考え押し付けるよな」
「・・・お前は、馬鹿か!?」
「な、なんだよいきなり」
「そう言って数年前に誘拐されたのを忘れたのか!?知名度で言えばお前の方が有名なんだ。世界で最初の男性操縦者だぞ!?何故護衛を付けない!」
「お、落ち着けよ千冬姉。なんか可笑しいぞ」
「可笑しいのはお前の危機管理能力だ!お前はあれから何も学ばなかったのか!?」
「学んださ。それで今の俺には守る力がある。これで皆を守って見せるさ」
そう言って一夏は待機状態の白式を見せて笑った。それによって千冬のストレスが加速する。
「・・・疲れた」
「ち、千冬姉?朝食出来てるからな」
「不動の家で頂いたからいらん」
今までにない疲れた表情で千冬は部屋に戻る。服を部屋着に着替えた彼女はベッドに倒れ込んだ。自分が仕事に夢中になった所為で弟は変わってしまったと後悔する。
「本当に・・・不動には申し訳が立たんな」
刹那の再三の注意すら聞き入れなかった弟に憤りと不安を覚えながら、千冬は再び眠りに落ちた・・・。
三人称サイド終了
刹那サイド
織斑先生達を見送った僕達はイリアステルにチェックの終わったセシア達を受け取りに行った。ラウラはクラリッサさんと話している。
「ねえねえ、せっちゃん何かあった?」
「あー、バレた?」
「分かるよ~。だって大好きなせっちゃんの事だよ?」
「束もストレートに言うよね」
「だってせっちゃんちょっと鈍い所あるし~」
「敵わないなぁ・・・まあ、話すよ」
僕は束に話した。例の法律の事と、僕自身どうすれば良いのか悩んでいると・・・すると束はこう答えた。
「良いじゃん。受け入れちゃえば」
「ええー・・・」
「せっちゃんは難しく考え過ぎ!はい皆ちゅうもーく!せっちゃんは皆をお嫁さんとして受け入れるってー!」
「ちょっと、束!?」
「それは本当か!?」
「本当・・・?」
「本当ですか刹那様!」
ラウラ達の視線を浴びた僕は、その場で俯く。いや、だって結婚だよ?人生でそうないイベントだよ?普通もっと考えないかな。
----純愛物ばかり好むからこうなるんですよ。
----だからもっと色んなジャンルを読めと。
----マスターだったら大丈夫だよ、きっと。
セシア達の声にまた躊躇いが生まれる。僕はゆっくりと口を開いて言葉を出した。
「正直、好きって感情がよく分からないんだ。それが友達としてなのか、異性としてのか・・・」
「それじゃあさ、皆とデートしてみようよ!」
「・・・はい?」
「だから、皆とデートしてどう感じたかで決めようよ!」
僕の悩みは急にセッティングされたデートによって、委ねられてしまった・・・。
刹那サイド終了
その頃、中国
鈴「ハッ!?急いで日本に戻らないといけない気が!?」
同時刻、イギリス
セシリア「ハッ!?私のヒロインとしての危機ですわ!?」
同じくして、フランス
シャロ「ハッ!?ボクの居ない所で刹那と皆の関係が進んでる気が!?」
大統領「電波w」
秘書「いい加減働けや」