if~刹那君は操縦者~   作:猫舌

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第20話

刹那サイド

 

 

束の言葉から数日が経過した。

簪の機体の調整等もあり、デート的な行為は未だ行えずに現在を迎えてしまった。と言っても、デートプランは簪達が既に計画しているそうだ。

普通は僕がするべきなのでは?と聞いた所、今回は僕を惚れさせる事がメインなので絶対に僕を落とすプランを組み立てているらしい。

そんなこんなで僕達は、夏休み中に一度だけある登校日の為、一時的にIS学園へと戻っていた。そして教室で何時もの顔ぶれに声を掛ける。

 

 

「セシリア、鈴、久しぶり」

 

「お久しぶりですわ。刹那さん」

 

「久しぶりね」

 

 

セシリアと鈴も元気そうでなによりだ。

すると鈴が顔を顰めながら聞いて来た。

 

 

「刹那、アンタ何したのよ?最近ウチの国家代表が刹那の事やたら聞いて来るんだけど」

 

「中国の国家代表?確か、《范 星露(ファン シンルー)》さんだよね?」

 

「そうよ。私の鳳と読みが被ってるから不便な所があるあの人よ」

 

「(間違えられたのかな・・・)」

 

「(間違えられましたのですね・・・)」

 

 

少し悔しそうな顔をする鈴にセシリアと苦笑する。

 

 

「別にその人とは面識が無いけど?」

 

「でもあの人今年は荒れる、とかもっと知りたいとか言ってたわよ。もしかしたら学園に来るかも・・・」

 

「流石にそれはないでしょ」

 

「いや、星露さんならありえるわ。ふらりと消えてふらりと戻って来る人だもの」

 

「えぇ・・・(困惑」

 

 

そんな事を話していると、後ろから声を掛けられた。

 

 

「刹那、久しぶり!」

 

「久しぶりだね、シャロ。シェリーさんから直々に受けた訓練はどうだった?」

 

「凄く良かったよ!途中何回かお母さんに会って、[まだこっちに来ちゃ駄目!]って言われたりしたけど、多くの事を学べたかな」

 

「・・・あの人のスパルタは健在か」

 

 

僕も何回かシェリーさんの訓練を受けた事がある。それはもう酷かった。僕も何回かアテナさんに再会する羽目になったから。

そんな人と下手すればモンドグロッソで当たるのか・・・嫌だなあ。織斑先生辺りと戦って潰されておいてくれないかなぁ・・・。

 

 

「でもまあ、これで何時ものメンバーは・・・あれ?ラウラは?」

 

「ラウラなら、簪のクラスで少し話してから来るって」

 

「そっか。今はこれで全員だn「おう刹那!久しぶり!」・・・チッ」

 

「刹那、舌打ち舌打ち」

 

「おっと」

 

 

朝から嫌な奴に出会ってしまった。目の前に居る織斑を軽く睨みながら舌打ちを止めた。そんな僕の不機嫌にも気付かずに織斑はヘラヘラとしている。

 

 

「皆も久しぶりだな。やっぱり家に帰ってたんだよな?」

 

「はい。ですが、今日からは学園で生活ですわね。必要な事は全て済ませて来ましたし」

 

「私もそうね。残りは日本で遊び尽くすわ」

 

「じゃあ、皆で遊びに行かないか?最近、プールが出来たらしいんだ」

 

 

織斑がそう言って、端末に映されたプール施設のサイトを見せて来る。だが、織斑の言葉に頷く者はいなかった。

それと同時に僕に向かって視線が集中する。

 

 

「僕はパスで良いよ。泳げないし。それよりも自分の機体の強化と調整がしたいんだ。簪の新兵器も開発中だし」

 

「そういえば、簪さんの専用機はどうなりましたの?」

 

「完成したよ。かなりチートに出来上がった」

 

「ボクも早く模擬戦してみたいな」

 

「シャロは残りは僕の家に来るし、機会は多いと思うよ」

 

「簪との模擬戦もだけど、刹那の家も楽しみだなぁ」

 

「そんな期待する程のものでもないと思うよ?」

 

 

目をキラキラさせるシャロになんとも言えない気分になっていると、のほほんさんがやって来た。

相変わらずのブカブカな袖を振り回して元気に声を上げた。

 

 

「ふーちゃんも皆も久しぶり~!」

 

「うん、久しぶり。元気そうで何よりだよ」

 

「えへへ・・・あ、かんちゃんがお世話になってます」

 

「かん?ああ、簪ね」

 

 

そう言えば知り合いって言ってたっけ?

整備中に簪からポロッと聞いた様な・・・。そんな事を考えていると、予令が鳴り皆がそれぞれの教室や席に戻る。暫くすると、織斑先生と山田先生がやって来た。

日直が挨拶を行い、SHRに入る。

 

 

「諸君、久しぶりだな。今日はISの実習を少し行って終了だ。ほんの数時間だからって気を抜くなよ」

 

『はいっ!』

 

 

クラス一同の気合の入った返事も久しぶりだ。すると、今度は山田先生が話を変わった。

 

 

「実は、ビッグニュースがあります!なんと、織斑先生が今年のモンドグロッソに出場する事になりました!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「織斑先生の戦いを見れるのね!」

 

「生きてて良かった!」

 

 

騒がしいな・・・ほら、織斑が凄く嬉しそうな顔してるよ。うわ、ニヤニヤしてキモ。

だが、山田先生は大火事に対してナパーム弾をぶち込んで来やがりました。

 

 

「それだけでは無いんです!なんと!今年はこのクラスの生徒からもう一人出場者がいます!」

 

「各国の首脳陣から提案があってな。是非、男性操縦者にも出てほしいそうだ」

 

 

織斑先生の言葉に教室がザワついた。ああ、織斑のワクワクした顔が哀れ過ぎる。

そして織斑先生から、その名が告げられた。

 

 

「出場者は、不動刹那だ」

 

 

うわ、視線が一斉に向いたよ。その中でも織斑と篠ノ之さんの目線がマジで怖い。

特に篠ノ之さん。マジで織斑の実力で出れると思ったのか?福音の三次移行形態の一機や二機を一人で止めてからその視線を向けてくれ。

 

 

「不動、こっちへ来い」

 

「分かりました」

 

 

織斑先生に言われたので前へと出る。すると織斑先生が再び口を開いた。

 

 

「出場に向けて、一言貰いたい。その実力だ。少し大口を叩く位の意気込みでなければ世界には勝てんぞ」

 

「・・・では、お言葉に甘えて」

 

 

僕は一呼吸置いてから、織斑先生を向いて右手の人差し指を向ける。

 

 

「僕の目標はただ一つ」

 

 

鎮まり返る教室。静寂の世界で僕は笑う。

 

 

「----貴方の首だけだ」

 

「・・・面白い。やってみろ、無謀者(チャレンジャー)

 

「精々その地位にしがみ付いておけ最強(ブリュンヒルデ)

 

「「クク・・・ハハハハハハハハッ!!」」

 

 

思わず笑い出した僕達に教室の全員がビクッと反応した。だがそんな事はどうでも良い。このクソ教師、僕が挑発した所為なのは分かるがその強者の余裕を見せた様な顔付きが気に入らない。

絶対に世界の玉座とやらから無様に引きずり降ろしてやる。

 

 

「(絶対潰す・・・)」

 

「(挑発に返したは良いが、正直コイツには勝てる気がせん・・・取り敢えず演技しておこう)」

 

「(あ、殺そう)」

 

「(逆効果だった・・・!ブランクがある私が勝てる訳無いだろう)」

 

 

また鼻で笑って来やがった・・・!

コイツは全力で叩き潰そうそうしよう。見せてやる、"二次移行のその先"を・・・!

 

 

----全員、よく聞け。

 

----アッハイ!×3

 

----クソ教師、潰す、OK?

 

----サーイエッサーッ!×3

 

 

セシア達にも宣言をして、席に戻る。皆も緊張が解けたのか、あちこちから息を吐く音が聞こえる。だが、この時僕は気付いていなかった。

 

 

「・・・クソッ」

 

 

一人僕を睨みながら呟く少年の姿に・・・。

 

 

 

 

 

~数時間後[放課後]~

 

 

「ではこれより第一回《織斑千冬をブッ殺そう会議》を始めたいと思います。結論、奴の首を刈り取る。はい、決定~♪」

 

「「「「「「勝手に始めた上に物騒な答え出た!?」」」」」」

 

 

アリーナで僕の言葉にセシリア、シャロ、ラウラ、鈴、更識姉妹が叫ぶ。

今日は此処で宿泊してから家に帰り、その次の日に泊まりで出掛けると言う弾丸スケジュールである。結局デートはまた先延ばしだ。

そんな事を思い出しながら、僕はラファールを展開して右腕を振り回す。

 

 

「と、言う訳でモンドグロッソに向けての訓練と簪の機体の微調整を兼ねて久々にやろうか。バトルロワイヤル方式」

 

「え、えっと・・・それはまだ簪ちゃんには早いと思うの刹那君」

 

「何言ってるんですか会長。貴女に勝った簪が出来ない訳無いでしょう」

 

「うぐっ・・・」

 

「大丈夫だよお姉ちゃん。私も皆と戦ってみたかったし」

 

 

そう言って簪は前に出る。そんな彼女に僕はふと思い出した。

 

 

「あ、簪にプレゼントあるんだった」

 

「プレゼント?」

 

 

首を傾げる簪に僕は収納していた武装を取り出す。

赤を主体とした全体に、刃の部分がクリアブルーのパーツで構成された大きめの剣を渡す。

 

 

「これってまさか・・・!」

 

「前に簪がこんな武装が欲しいなって言ってたでしょ?この前の初勝利のご褒美って訳でもないけど、造ってみたんだ」

 

「造ったって刹那が?」

 

「うん。流石にISとかは無理だけど武器だったら僕にも出来るし」

 

「ありがとう。大切に取っておくね」

 

「いや、使ってよ」

 

 

キュッと武器を愛おしそうに抱く簪に苦笑いしながらツッコむ。

折角開発したのに観賞用とか流石に酷いっすわ。

その武器を皆が気になっている事に気が付いた僕は、性能が記されたデータを全員に見せる。すると、彼女達は顔を青くした。

 

 

「刹那さん、これを本当にお一人で?」

 

「うん。流石にこれもお願いなんて言えないし。それに、これは僕からの個人的なプレゼントだからさ」

 

「いや、これは学生が造るレベルじゃないでしょ」

 

「会社単位で開発する物だよ。フランス支部でも此処までの武装は無かったなぁ」

 

「これが世で言うメイドインジャパンか」

 

「ちょっと違うわよ、ラウラちゃん。でもコレはプレゼントのレベルじゃないわ。色んな組織が大金払ってでも欲しがる代物ね」

 

「過大評価じゃない?所詮は一介の学生の自由研究みたいな物だよ?」

 

 

セシリア達の評価に僕は頬を引き攣らせる。

すると、簪が苦笑いしながら言って来た。

 

 

「普通、9つの形態に変形する武装を自由研究の範囲で造らない」

 

「でも僕は小学校の自由研究でゴミ山で集めたジャンクパーツでロボットとか電動走行のスケボーとか造ってたよ?後は、救助用のロボットとか。あ、今使われてる《キューボ》って分かる?」

 

「知ってるわよ。あのや○らか戦車みたいな見た目した救助ロボでしょ?最新の伸縮性ボディと多機能の災害アイテムを搭載したイリアステル社製の奴じゃない。中国でも使われてたわよ。・・・まさか」

 

「うん、アレは僕の自由研究で造ったロボが元だよ」

 

 

鈴がギギギと首を向けて聞いて来たのでそれに答える。すると、アリーナの空気が完全に凍りついた。

 

 

「えっと、何か変な事言った?」

 

「言いましたわ。それも特大の・・・」

 

「刹那、アンタ間違いなく篠ノ之博士と同レベルの頭脳よ」

 

「いや、アレと一緒はちょっと」

 

「辛辣」

 

 

束と同じ位置に立てたのは嬉しいよ?でも、あの性格と並ぶと考えるとちょっとと考える部分が自分の中に居る。

いやだって・・・ねぇ?この前なんて部屋に会ったマンガのヒロインの絵全部アイコラされてたし、僕を題材に同人誌作るし・・・。

 

 

「まあ、それは良いや。じゃあ、それ使って早速y「刹那」・・・今日は僕達の使用予定なんだけど?」

 

「そんな事はどうでも良い。俺と戦え」

 

「嫌だね。君風に言わせてもらえば、戦う理由が無い」

 

 

白式を展開して降下して来た織斑に僕は鼻で笑って返す。

それが癪に障ったのか、イラついた様子で近付いて来る。

 

 

「俺にはあるんだ。千冬姉を馬鹿にされて怒らない訳ないだろ」

 

「朝のアレ?いや、織斑先生だってノリノリだったじゃないか。それに大口叩いてみろって言ったし」

 

「だからってあんな言い方無いだろ!それに何で刹那がモンドグロッソに・・・!それだったら俺だって」

 

「寝言は寝て言え」

 

 

悔しそうに言う織斑に僕は失笑する。コイツの実力で出れるのならば今頃僕は世界最強だっての。

 

 

「出たければ僕に一回だけでも勝ってから言ってもらえる?」

 

「ああ。なら今から俺が勝つ試合をしようぜ」

 

「え、嫌だけど?」

 

 

ドヤ顔で言って来る織斑に真顔で返す。嫌だなぁ、真面目にやる訳ないじゃん。なんでこんな雑魚の為に時間を費やさないといけないんですかねぇ?

 

 

「んじゃ、さっさと帰れ。訓練の邪魔だ」

 

「ふざけんな!俺と戦え!そして俺が勝ったら千冬姉に謝ってモンドグロッソを辞退しろ!」

 

「・・・は?」

 

「あれは刹那みたいな奴が出て良い大会じゃないんだ!あれは千冬姉が、世界中のIS操縦者が正々堂々と戦う場なんだよ」

 

「ぷっ・・・アハハハハハッ!」

 

「な、何が可笑しいんだよ!皆も何で何も言わないんだ!?」

 

 

思わず噴き出す僕に織斑が怒鳴りつける。コイツ本当にテンション高いな。血圧大丈夫か?

そう思う僕から何も言わないセシリア達へと視線を向けた。僕もチラッと見ると、全員が殺気立っていた。え?何故?

 

 

「えっと織斑。よく分かんないけど、今は刺激させない方が・・・」

 

「何言ってるんだ?それよりも皆も刹那にってうわぁ!?」

 

 

織斑が再び口を開いたその時、足元をセシリアが撃ち抜いた。その表情は誰がどう見ても怒りに染まっている他の面々も武器を取り出して一触即発な空気だ。

 

 

「ええ、一・・・いえ、織斑さん。刹那さんと戦うのならば止めませんわ」

 

「そうね。ただし、バトルロワイヤル方式よ」

 

「そうだね。それが良いよ」

 

「私も賛成だ。簪達も文句は無いな?」

 

「当然。ちょっと、ううん。かなり怒ってる」

 

「そうね。お姉さんも思わずコロコロしちゃいそうかも」

 

 

殺意の波動に目覚め掛けてる全員に織斑は無言で頷き、構える。僕もなんとなく構えて試合が始まった。

開始数秒で全員が織斑に殺到。セシリアのビット攻撃の弾幕が織斑を襲う。必死に避ける織斑に今度は簪の狙撃が直撃する。

衝撃で動きを止めた織斑の腹に鈴の龍砲が直撃。吹っ飛んだ織斑をラウラが撃ち出したワイヤーで拘束して引き寄せ、シャロがヘビーアームズ形態で全弾発射。

最後に会長がランスを投擲して、上空へと打ち上げられた織斑にスクラップフィストを叩き込む。

地面に落下した織斑はそのまま気を失った。それと同時に頭の中にさっきから響いて来た白式の謝罪の言葉がよりクリアに聞こえる。そこらのヘッドホンよりも高音質で聞こえる分性質が悪い。

 

 

「・・・なんか萎えたね」

 

 

着陸してラファールを解除する僕に皆が頷いて同じようにISを解除して、アリーナを後にする。織斑?知るかんなもん・・・。

 

 

~食堂~

 

 

「ああ~!イライラする・・・はむはむ」

 

「ふーちゃん、どうどう」

 

 

途中で合流したのほほんさんに撫でられながら、何時もの倍近くの量の食事を自棄食いする。結局簪の装備も試せなかったし・・・。

セシリア達も疲れて部屋で寝ちゃってるらしい。現在、共に食事をしているのは僕と簪、のほほんさんのみである。会長?生徒会の仕事サボってたとかで連行されましたが何か?

 

 

----織斑ザマアw

 

----どうする?SNSに上げるか?

 

----アカウント凍結されそう。

 

 

頭の中の声を聞いて、少し気分が晴れた。

冷静になった僕は簪に謝る。

 

 

「ごめんね、簪」

 

「良いよ。それに、今日じゃなくて二学期にあるタッグマッチトーナメントで披露するから」

 

「ああ、そんなのもあったね」

 

 

二学期には二人一組で再びトーナメントが開かれる。さて、今回もランダムで良いかな。

 

 

「刹那、私と出て欲しい」

 

「簪と?んー・・・まあ、良いよ」

 

「よし・・・!」

 

 

ガッツポーズをする簪に少し気恥ずかしくなる。此処まで露骨に喜ばれると思わず顔が熱くなる。

僕ってこんなにチョロかったっけ?

 

 

「ふーちゃんはかんちゃんと出るの~?」

 

「まあそうなるかな」

 

「勝てる気がしないよ・・・」

 

 

溜息を吐くのほほんさんを宥めながら、食堂を出て寮へと向かう。そして寮の途中まで歩くと、誰かの部屋の前で藤原さんとその同室である生徒が立っていた。

 

 

「あら、坊や・・・久しぶりね」

 

「久しぶり。だから離れてもらえませんかね」

 

「嫌よ。坊やが居ない間に嫌な事あったんだから」

 

「そうなの?でも胸が当たってるんだけど」

 

「当ててるのよ。もう、女の子からそんな事言わせるなんて」

 

「ちょ、ちょっと!?何やってんの!」

 

 

そう言って藤原さんを女生徒が引き剥がした。いやあ、ありがたやありがたや。

 

 

「ありがとう。えっと、確か月乃瀬さんだったよね?」

 

「う、うん。でもなんで名前を?」

 

「えっ、藤原さんから聞いたんだけど」

 

「あ、忘れてたわ」

 

「ちょーいっ!?」

 

 

ああ、この子間違いなく苦労する側の子だ。

藤原さんを揺さぶりながら顔を紅くする月乃瀬さんに思わず笑ってしまう。

 

 

「あ、ごめんね。つい楽しそうで」

 

「うう・・・改めまして《月乃瀬=ヴィネット=エイプリル》です」

 

「不動刹那です。こちらこそ、よろしくね」

 

 

ペコリとお辞儀する月乃瀬さんに僕も返す。ふと気になったので聞いてみた。

 

 

「えっと、二人は用事の途中だった?邪魔したならごめん」

 

「そんな事ないわ!ちょっと引きこもりのクラスメイトを引きずり出しに来ただけだから」

 

「引きこもり?」

 

「私の友達なんだけど、ちょっと面倒な性格の子なの」

 

「そうよ、坊や達にも手伝って貰いましょう」

 

「いや、あの部屋とはいえ仮にも女子の部屋よ?」

 

「あの、僕も知らない女子の部屋に入るのは抵抗が・・・」

 

「・・・ショッピングモール内のスイーツ食べ放題」

 

「何時部屋に突入する?僕も同行する」

 

「「刹那院ェ・・・」」

 

 

簪達の視線を感じるが、気にしない。スイーツには勝てなかったよ。

月乃瀬さんも溜息を吐いてから、部屋のドアに手を掛ける。そして僕達に言った。

 

 

「一応言っておくけど、覚悟しておいてね?」

 

「「「?」」」

 

 

首を傾げる僕達を余所に、月乃瀬さんがドアを開けた。

次の瞬間、僕達は思わず呻いた。中からは埃と食べ物を放置した匂いが混ざり合った感じのバッドスメルが鼻を突き抜ける。その先には大量のゴミが散乱していた。

それを月乃瀬さん達は慣れた足並みで進む。

 

 

「・・・これが、女子の部屋なのか?」

 

「刹那、女子の名誉の為に言っておくけどこれは流石に無い」

 

「かんちゃんに同意」

 

 

簪達のドン引きした声を聞きながら部屋を進む。明かりの一切点いていない部屋の奥。そこに一つだけパソコンによる光があった。そこへ向かうと、パソコンの前でグテッとしている如何にもやる気のなさそうな金髪の少女が居た。

その少女へと月乃瀬さんが声を掛ける。

 

 

「ほら《ガヴ》。もう食堂しまっちゃうわよ」

 

「ん・・・なんだ《ヴィーネ》か。良いよ、今日は。後でカップ麺でも食べるし」

 

「昨日もそんな事言ってたじゃない。貴女この夏休みずっとゲームしてゴロゴロしてばかりで・・・今は一人部屋だからって自由過ぎよ!」

 

 

なんだこの駄目人間は・・・。

 

 

「普段は綺麗なんだけど、同室の子が居なくなってからはこんな感じでダラダラ過ごしてるのよ」

 

「なるほど。じゃあ、早速片づけましょうか」

 

「順応早いわね」

 

「それ以前にこんなゴミ山見たら誰だって掃除したくなるよ」

 

 

僕は部屋に備え付けてある掃除用具を手に取って電気を付ける。ガヴと呼ばれた少女が光に目を細めるがそれを無視して、ゴミの整理を始める。

 

 

「はい、邪魔」

 

「は?っておい!何勝手に掃除してんだ!」

 

「月乃瀬さん、それ邪魔だからどっかやって」

 

「わ、分かったわ(コレ絶対怒ってる・・・)」

 

「お、おい離せ!」

 

 

喚く少女を無視して掃除を続ける。

 

 

「簪、のほほんさん、藤原さん。悪いけど手伝ってくれない?これを一人はちょっと・・・」

 

「良いよ。私はこっちやるね」

 

「じゃあ私はこっち~」

 

「今回はおふざけ無しでこっちをやるわ」

 

 

ゴミをササッと纏めて取り敢えず部屋の入り口に置いておく。皆のお陰で掃除は1時間程で終了した。

最後に掃除機を掛けて一息吐く。

 

 

「これで終わり。ベッドのシーツは明日出してもらえば良いかな」

 

「ありがとう、不動君。ほら、ガヴもお礼言いなさい」

 

「お前は私の母親か。まあ、助かった。明日からもよろしkアダダダ!?アイアンクロ―は割れるぅ!?」

 

「二度と、こんなに、汚すな、OK?」

 

「お、おーけー・・・」

 

「ふん」

 

「し、死ぬかと思った・・・!」

 

 

手を離し、頭をさする少女を見て泣きたくなった僕はふとパソコンの画面が目に入った。流石に電源を勝手に切るのもアレだからそのままにしていたのだ。

 

 

「お、ALOの攻略記事だ。またキリトが載ってるよ」

 

「何?お前って双黒のキリトと面識あんの?」

 

「あるよ。だってだってフレンドだし」

 

「マジで!?じゃあALOやってんの?」

 

「去年からやってるよ。君も?」

 

「いやあ、始めたのは夏休みからでさ。でも操作に慣れなくて困ってたんだよ。学校じゃ禁止だからショッピングモールの漫喫でやってたらその店舗ナーヴギアの類禁止で途中で追い出された」

 

「世間の評価微妙だからね」

 

「だからちょっとコツとか教えてくれ」

 

「良いよ。その代わり、ちゃんと掃除と食事はする事」

 

「そんなので良いなら幾らでもやってやる!」

 

「が、ガヴがこんなあっさり言う事聞くなんて・・・」

 

 

ショックを受ける月乃瀬さんを少女はシカトしてパソコンの操作を始めた。そしてそこには自分のアバターが映されていた。

 

 

「あ、自己紹介忘れてた。《天真=ガヴリール=ホワイト》。面倒だからガヴで良いよ。どうせキャラネームも同じだし」

 

「初対面で名前呼びは抵抗があるから天真さんで。僕は知ってると思うけど不動刹那。キャラネームはクロナね」

 

「・・・マジで?」

 

「そうだけど?・・・あ」

 

「あの双黒の!?」

 

 

驚愕する天真さんに対し、やっちまった感に囚われる。キリトにも有名勢に仲間入りしてるんだから気を付けろって言われたばかりなのに・・・!

ゲームとはほぼ無縁だった環境だから油断した。そんな僕に憧れに近い視線を向けて来る天真さん。何故か簪も同じだ。

 

 

「刹那、今の本当?」

 

「そうだよ・・・簪もALOやってるの?」

 

「私はネットで情報を見てるだけ。でもクロナって本当に有名だよ?」

 

「僕としてはあまり実感無いけど」

 

「何言ってるんだお前は。凄いなんてもんじゃないぞ!」

 

 

天真さんはハイテンションでズイッと近づいて来た。

 

 

「ALO唯一の可変剣使いにして、あの《絶剣》に勝ったプレイヤーであのキリトと並んで双黒とまで言われてるんだぞ」

 

「それにナビゲーションピクシーを3人も連れてるのも特徴」

 

「あはは・・・(それ、僕のIS達です)」

 

 

言えない。セシア達がハッキングしてバレない様に僕のデータで勝手に作ったとか絶対言えない・・・。

 

 

「ま、まあそれは兎も角。今日はもう遅いから今度でも良いかな?」

 

「あ、じゃあメアドと番号交換だ。それならすぐ聞けるし。次って何時イン出来る?」

 

「次って・・・お盆中はメンテナンス入る予定だよね。何処かバグが見つかったって」

 

「あー、じゃあ盆明けだな。都合のいい日に連絡くれ。絶対にインするから」

 

「分かった。まあ、僕達もお盆は母さんの実家に里帰りだからさ」

 

「へえ。不動の母親の両親って元議員だったっけ?」

 

「うん。今は田舎に隠居してるけどね。実はそこに今回はキリトと《アスナ》さんも来るんだ」

 

「アスナってあの《バーサクヒーラー》のか!?」

 

「あの人気にしてるから言わないであげて」

 

 

こうして天真さん達と別れて部屋に戻り、荷物を纏める。さて、これから祖父の家へと皆で旅行と簪達とのデート・・・やる事いっぱいあるなぁ。

 

 

刹那サイド終了

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