リアルが忙しく、中々更新できずに申し訳ございませんでした。
また忙しくなりそうなのですが、なるべく早く投稿して行きたいと考えております。
どうぞ、これからもよろしくお願いいたします。
刹那「おい、何故僕は着物着てるんだ?」
クロエ「刹那様、レッツ姫h」
刹那「言わせねーよ!?」
刹那サイド
悲報、目が覚めたら祖父の家に到着していた件。
「・・・話せなかった」
「ま、まあ元気出せって。後でなんとか時間作るからさ」
「約束だよ?」
「おう」
苦笑しながら僕の頭を撫でる和人少し強めに睨む。
そうこうしている内に、僕達は荷物を持って祖父と祖母が生活している家・・・と言うよりも屋敷に着いた。
屋敷の中心からはもくもくと湯気が立ち込めている。理由は、僕が中学生の頃に祖父と花壇を造ろうとして居たら、温泉を掘り当ててしまったからである。石が邪魔だったから、深く掘ったら出ちゃったんだよなぁ・・・。
「え、此処って温泉あるのか?誰か掘り当てたとか?」
「すごーい。もしかして、刹那君だったり・・・」
「ママ、それは流石に・・・」
「・・・」
「おい、無言になったぞ」
「もうボクは刹那が何しても驚かないよ・・・多分」
「刹那、ちょっと埋蔵金とかダウジングしてみない?」
「刹那様、もう少し自重なされた方がよろしいかと」
「僕だって好きでこうなったんじゃないやい」
皆してそんなボロクソ言う事ないじゃないか。少し目元に水気を感じながら僕達は屋敷の玄関に入る。
そこには僕の祖父母である《十六夜 英雄》と《十六夜 節子》の二人が立っていた。
「ようこそ、十六夜家へ」
「皆さん、ゆっくりしていってくださいね」
『お世話になります!』
和人達の挨拶に祖父母は微笑む。そして次の瞬間、僕は二人に抱擁されていた。しかも頬ずりのオプション付きで。
「刹那~!中々会えなくてじーじ寂しかったぞ~」
「ばーばもよ~!いっぱいぎゅってしましょうね!」
「あの、お爺ちゃんお婆ちゃん・・・恥ずかしいって」
二人の変わり様に皆がポカンとなっている。そんな皆に父さん達が説明した。
「皆、その、何と言うか・・・」
「お爺ちゃん達・・・初孫が嬉しかったらしくて」
「ハッハッハ!今日はじーじ、頑張って晩御飯の魚をいっぱい釣って来るぞ!今なら、ついでに百鬼夜行も全滅させられそうだ!」
「あらあらアナタ、中の人発言はよくありませんよ」
「可笑しいな、俺には犬頭のボスって呼ばれてそうな奴のオーラが後ろに見えるんだが・・・」
「和人、何言ってるの?」
「いや、なんでもない」
「おっと、すまないね。それじゃあ、部屋へ案内するよ」
そう言って正気をようやく取り戻したお爺ちゃん達へ着いて行く。廊下を歩き、最初に大きな部屋へと通される。
「此処が女子の部屋だ。中の物は好きに使ってくれて構わない」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
「ああ、クロエちゃん、だったかな?」
「はい。お初にお目にかかります。クロエ・クロニクルと申します」
「君が、刹那の許嫁だね。君には刹那と同じ部屋に泊まってもらいたいんだ」
「ファッ!?」
お爺ちゃんの発言に僕は思わず叫ぶ。いやいやいや、なんでやねん。
「お爺ちゃん、いきなり何を言い出すのかな?」
「クロエちゃんの話は元々聞いていてね。この子になら刹那を任せても問題無いだろうと思ったんだ。ならばまずは二人同じ部屋で夫婦になった時の練習をと思ってね」
「ありがとうございます、お爺様」
「別にじーじでも、構わないよ」
「私の事もばーばで良いわよ」
「・・・もうやだ」
なんかクロエからの視線が熱いんですけど・・・。
----間違いなく、マスターを食べるつもりですね。
----野獣の如き眼光を向けているぞ。
----わわわ!甲龍ちゃん!落ち着いて!
----ちょっと!刹那に何する気よあの女~!
とうとう、僕の脳内に余所の子が来てしまった・・・。
元気娘の甲龍がさっきから頭の中で叫ぶ。
----学園から、狙い撃てないものでしょうか。
----ティアーズさん落ち着いてください。
唯一のブレーキ役もなんかアレだし。そして僕と同じくISの声が聞こえるラウラもIS達の声を聞きながらクロエに羨ましげな視線を向ける。他の皆もだ。
今まで彼女達の好意に気付けなかった分、ちょっと辛い。別に僕の意思ではないが、クロエへの贔屓がある様に感じてしまった。
その視線へ真っ先に気付いたのが事の発端であったお爺ちゃんである。
「えっと・・・まさか全員か?」
「正確には、結城さん意外ですお義父さん」
「よし、変更だ。刹那、この子達と同じ部屋にいなさい」
「状況悪化したんだけど」
「皆、刹那に好意を向けてくれてるなら平等に機会を作るべきだろう。それに、贔屓はよくないからな」
「あらあら、ひ孫は期待しても良いのかしら?」
今すぐ拒否して走り出したい所ではあるが、顔を紅くしながら嬉しそうにするラウラ達に強く出られない僕が居る。
結局、部屋割は僕と女子全員の部屋と桐ケ谷親子(予定)となった。ユイちゃんに驚いた祖父母を見て、ちょっとだけスッキリした。
~居間~
「まあ、学園生活はこんな感じかな?」
「中々にハードなんだな・・・」
「大怪我したって聞いた時は本当に心配したのよ?でも学園に部外者は立ち寄れないし・・・」
「大丈夫だよ。この子達が守ってくれたから」
不安そうな祖父母に、腕に付けられた相棒達を見せる。頭の中でも誇らしげな笑い声が聞こえた。
「それに、あの馬鹿姉弟がいなければ基本楽だし」
「それには大いに賛成」
アイツが直接関わっていないとはいえ、一番の被害者とも言える簪も大きく頷きながら相棒である打鉄弐式の待機状態である腕輪を撫でる。白鋼と同じ形にした彼女に女性陣の視線が突き刺さる。仕方ないじゃん。型は一緒なんだから。
「それじゃあ、お昼ご飯にしましょうか。と言っても素麺なんだけどね」
「好きだから全然問題ないよ。寧ろ田舎に素麺はベストマッチでしょ」
「そう、なら用意するから皆は寛いでいて。えっと、ユイちゃんは食べても平気なのかしら?」
「はい!刹那さんが食事出来る様にしてくれましたから!」
「ユイちゃんが望むなら、別の機会に素体を更に改造しておくよ。どうしたい?ロケットパンチ?それともドリル?」
「待て。家の娘に何と戦わせる気だ?でもロケットパンチの辺り詳しく」
「和人君?」
「いや、男心についグッと来たと言うか・・・」
明日奈さんに睨まれた和人はシュンとなる。尻に敷かれてるな・・・。
「・・・まただ」
「シャロ?」
「実は、この前から一夏からの連絡が凄くて」
「着信拒否にしたら?」
「前にやったら篠ノ之さんが何故か文句を言いに来てさ。面倒だから受信だけしてるんだよ」
そう言って画面を見せて来たので覗くと、そこには[今度暇か?遊びに行こうぜ!]とか、[刹那の家か・・・やっぱデカイのか?]等と言った文章がツラツラと並べられていた。
所々に僕へのディスりや、鈴が素っ気ないと愚痴も入り混じっている。こんなのが十数通も来ている。
「シャロ、今すぐコイツをブロックしなさい。篠ノ之さんは僕が適当に言い包めておくから。なに、あの七光り落武者娘・・・ゲフンゲフン、篠ノ之さんの事だから織斑の事をちらつかせれば簡単に乗せられてくれるさ」
「刹那、もしかして篠ノ之さんの事かなり嫌い?」
「普通、木刀で殴ってきたりつい最近まで風穴空いてた腹にパンチぶち込んで来る上に、他人を危険に晒す様な奴を好きと言う奴は居ないと思うよ。僕だって、多分中学生の頃とかだったら完全に殴ってただろうし」
「え、篠ノ之博士の妹ってそんなにヤバいのか?」
「君よりも妹さんの方が知ってると思うよ。彼女、去年の中学剣道の全国大会で優勝してるから。まあ、お世辞にも良い勝ち方とは言えないけどね」
少しだけ和人の妹である直葉ちゃんとその事について話した事がある。全国大会で強い奴が居るけど、態度が最悪だったと言っていた。
IS学園に入ってから映像を初めてみたが、酷かった。何かに憤りを感じながら、力のままに相手を攻撃するその姿に僕は言葉が出なかった。
因みに、それを束に伝えたら知っていた様で思いだしながら落ち込んでいた。
「さて、ストレスの溜まる話は此処までにしてこれからの予定を決めて行こう!今日はこの後、お爺ちゃんと一緒に山の方へ釣りに行く予定なんだ。だから明日からの予定だね」
「はいはい!私は海に行きたいです!」
ユイちゃんの声に全員が頷く。あー、臨海学校は初日だけ泳いで後は帰っちゃったからね。
「じゃあ、二日目は海で決定だね。後はまあ、追々決めて行こうか」
「さあ、ご飯出来たわよ~」
「あ、配膳位は男でやるよ。父さん、和人、手伝って」
「ああ」
「任せろ」
残った男性陣で皿を運ぶ。お爺ちゃんも既にお婆ちゃんを手伝っていた。その後、何事もなく昼食を終えた僕達は少し昼寝をしてから、山へと向かった。
~山の上流~
「それじゃあ早速始めようか」
「そうだな」
「皆は釣りは初めてかい?」
「私は前に、刹那君と和人君と一緒にやった事があるので分かります」
「私も何度か経験があるので問題はありません」
「私もよく食糧確保で経験があります」
「そうか。それじゃあ、二人には私が教えよう」
「ありがとうございます。どうしよう簪。ボク、釣りなんて初めてだよ」
「私も。小さい頃に釣り堀に行った記憶があるけど、全然分からない」
戸惑う二人にお爺ちゃんが優しく教える。まあ、ちょっと餌のミミズとかに抵抗あるみたいだけど・・・。
そんな二人を尻目に、僕と和人はお爺ちゃんに声を掛けて少し場所を変える。
「和人、準備は良いかい?」
「ああ。それじゃあ、やるか」
「「ヌシ釣りを!」」
お爺ちゃん達が釣りをしているポイントから少し上流へ向かうと、其処には大きめの湖があり、その先には滝から水が流れ出て居る。なんでも昔に隕石が落ちた所に、洪水で流れが変わった川の水が流れてこの形になったんだとか。
大昔の話だから詳しい事は分からない。
そんな事はどうでも良い。ALOで培った釣りスキル。今こそ発揮する時!
「よっと」
取り敢えず、釣り餌を針に付けて水面に投げ入れる。ゲームほど簡単ではないが、ある程度気を抜かないと、正直持たない。隣を見ると、既に和人は欠伸をしていた。まあ、気長に待ちますか。
すると、和人は聞いて来た。
「んで、答えは出たのか?」
「出たら苦労しないよ」
「だろうな。と言っても俺達の場合は、戦場での恋愛だからな・・・あまり参考にはならないと思うぞ」
「まあ、片腕斬り落とされた状態でファーストキスと言われてもピンと来ないね」
「だろう?それだったら《エギル》に・・・アイツもゲームの中で知り合って結婚したんだっけか」
「ヤバい。後もう頼れるの遊馬か、後輩カップルしか居ないんだけど・・・」
「遊馬って確か同級生の・・・」
「うん。《小鳥》って子と付き合ってるよ」
その後は、特に進展もなく僕の中学時代の話へと入った。
「刹那って中学でなんかやってたんだろ?」
「風紀委員に近い何かかなアレは。学校の生徒会からの指名で、数人の生徒で構成された鎮圧部隊的な何か?」
「何かしか言えない組織なのか」
「だって遊馬の所為で、名乗りを上げさせられたりとかしたし。また同級生だった生徒会長がそれを面白いって自分もノリノリでやるんだよ?校内でも無敵のチームとか言われるし」
「因みに、お前はなんて言うんだ?」
「・・・が・・・い」
「なんだって?」
興味深そうに聞いて来る和人に僕は自棄になって、決めポーズであった、指を銃の形にして和人に向けた。
「[無敵がなんか良い!]・・・これで満足したか馬鹿」
「なんだろう・・・本気で全員分聞きたい」
「諦めてどうぞ(映像あるとか絶対に言えない)」
生徒会長が残して行きやがった僕達の痴態(遊馬含めて数名はノリノリ)を僕は厳重に部屋に封印したのだ。マジで困る。しかもあの人、中学卒業と同時に姿眩ませちゃうし・・・。未だに最後に言われた台詞が理解出来ない・・・。
『刹那・・・世界を変えてやれ!お前がオリ主だ!』
おりしゅ?ってなんですか?
あの言葉に未だに首を傾げる。
セシアに聞くと、[同い年の人でしたけど、マスターよりある意味先輩でしたね。まさかの一人じゃ無かったパターンですか]とか言っていた。これも分からない。
「刹那?何考えてるんだ?」
「ごめん、ちょっとね。今思えば、なんだかんだ一番楽しい頃だったなと」
「俺なんか中学生活の後半、ゲームだったからな。しかもデスが付く方」
「なんか・・・ごめん」
「いや、良いんだ。俺としては、βテスター時代からの友達だったお前が巻き込まれなくて安心したよ。SAOに閉じ込められてから何回か、お前の名前が無いかとか確認しまくったんだぞ」
「ありがとう、和人。本当に出会ったのが君で良かった」
「な、なんだよ照れ臭いな」
「ふふっ♪顔、紅いよ?」
「うるせえ・・・」
「やっぱり照れtうおっ!?コレ来たんじゃない!?」
「マジか!?よし、落ち着いて寄せろ!えっと、タモ!」
急に来た重い引きに、僕は引き摺り込まれそうになった所を和人に引っ張られた。なんとか体制を立て直して、釣竿に集中する。
相手の動きに合わせて、まずは疲労させる。だが、流石はヌシかも知れない大物。中々バテない。それどころか、まだ本気すら出していない気がする。
「・・・くそっ」
「落ち着け刹那。必ずチャンスはある」
和人の言葉を耳に入れながら、再び集中する。何分経っただろうか。時間の感覚が狂い始めた頃、遂に竿に動きがあった。動きが弱まり始めたのだ。まだだ・・・まだ動いてはいけない。
もっとだ・・・もっと待って・・・。
「・・・刹那」
「・・・此処だぁ!」
そしてとうとう、動きが止まった。そして僕は直ぐに後ろへと反転。そして、袈裟切りに近い要領で竿を一気に引く。この釣り糸は、特別性でちょっとやそっとじゃ千切れない。だから手加減なしで引っ張れる。
「この瞬間を待ってたんだぁ!」
「おお!ってデカッ!?」
大きな水飛沫を上げて、空中へと投げ出されたのは2メートルはあろうか本来あり得ないサイズのマスであった。最早、マスと呼んでも良いのかすらも分からないサイズである。これはヌシ確定だ。
そしてヌシはそのまま空を飛び、僕達の方へ・・・、
「刹那!見てくれ!こんなにも大きな魚gつりきちっ!?」
「ラウラ!?」
ではなく、嬉しそうにこちらへと掛けて来たラウラに直撃した。ヌシは最後の力を振り絞って、ラウラの上で暴れまくる。尾びれに往復ビンタされたラウラは、完全に気絶した。
その後、和人がヌシ用に持って来たビニールプールにヌシを移している間にラウラを介抱する。
「ごめんねラウラ。大丈夫?」
「ふっ・・・あんな大物出されたら私のなんて」
「ごめん。なんかホンットごめん」
涙を流しながら、未だに手の中でピチピチと跳ねる魚を弄びながらラウラは力なく笑った。その子、よろっと逃がすかバケツに入れてあげなよ。取り敢えず手元にあるバケツに魚を移す。
「・・・それで?一体あの巨大魚はなんだ?」
「カラーリングからして、コバルトマスかな?ぶっちゃけレア」
「そんなにか?」
「うん。星5鯖も顔真っ青のレベルでレア」
「それがあんな巨大に・・・」
「まあ、此処広いしあまり人も来ないから餌に困らなかったんだろうね」
そう言いながら、ヌシと写真を撮ってる皆を見て苦笑する。最早、観光スポットみたいな扱いだ。でも、勿体ないからヌシはリリースする。
正直此処まで大きくなると美味しくないし。
「さてと、それじゃあ逃がそうか」
「そうだな・・・おい、アレなんだ?」
ふと和人が何かに気が付き、湖の中心辺りを指差す。そこには、目の前のヌシなど比にならないレベルの魚影があった。此処からの距離でもかなりの大物と分かるそしてそれは僕達に気が付いたのか、姿を消した・・・。
「和人・・・」
「ああ・・・」
「「第二ラウンド開幕だー!」」
さっきまでの達成感は宇宙の彼方へと吹っ飛んだ。そして新たな闘志が湧き上がる。
「上等だ船持って来い船!」
「もしもしクラリッサさん!?今すぐに世界で一番丈夫な釣竿と釣り糸持って来てください!あと船!一時間以内で!え、無理?上等だ、今の装備でやってやらぁ!」
「待ちなさい二人共!そろそろ日が暮れるから今日はその辺で・・・ヒェッ」
「お爺ちゃん、僕達に逃げろと?あんな舐めた事されて!?」
「そうです!俺達はあの本当のヌシに興味なしみたいな反応されたんですよ!?」
「い、いやアレってただ逃げただけなんじゃ・・・」
「「明日奈(さん)はそこで待機!」」
「ご、ごめんなさい!」
僕と和人に気圧された明日奈さんは他の皆と後ろへ下がる。和人と僕はこれから行われる戦いに胸を躍らせた。
「刹那、久しぶりに《双黒》復活と行こうぜ!」
「良いねぇ!勝負は一回きりのノーコンティニューだ!」
「「超キョウリョクプレーで、クリアしてやるぜ!」」
二人で釣竿を構えて、近くに捨てられていた木造ボートに乗り込む。
この後滅茶苦茶釣りした。
~数時間後[十六夜家]~
「「釣れなかった・・・」」
「それどころかボートが壊れて二人で溺れるんだもの」
「まさかヌシが運んで来てくれるとは思いもしませんでしたね」
ガタガタと震えながら毛布に包まる僕と和人に明日奈さんとクロエがそれぞれマグカップに入ったスープを飲ませてくれる。思ったより湖のど真ん中は寒かった。
それよりも僕泳げないの本気で忘れてた。
「くそう・・・次は勝つ」
「そうだな。明後日はリベンジマッチだ」
「じゃあ、ボク達は撮影するよ。刹那達の戦いをちゃんと見たいし」
「また溺れる様な事だけは止めてくれ。思わずISを展開しそうになったからな」
「ラウラ、まだヘッドギア展開されたままだよ」
「むっ・・・」
「心配だったんだね」
「そ、そう言う簪もさっきまでシールドビットを展開していたではないか」
「・・・お恥ずかしい限りです」
皆で笑いながら、台所を見る。あの後、手柄0で帰れないと見栄を張って普通に釣りをしてなんとか魚を取った。夕暮れの風は、ずぶ濡れの体には地獄でした。
その後は、何事もなく過ぎて行った・・・。
刹那サイド終了
三人称サイド
刹那達が夏休みをエンジョイしている間、篠ノ之束は戦場に居た。
「《シノーノ》先生!新刊、完売しました!」
「既刊も完売です!」
「よっし!それじゃあ、私は他のサークルの人達に挨拶して、目的の本買って来るよ。二人も自由にしてて。本当にお疲れ様!」
「「お疲れ様です!」」
戦国時代でもあり得ない数の人混みに揉まれながらもシノーノこと篠ノ之束は、手伝いに来てくれたイリアステルの同僚と別れ、戦場を駆け抜けて居た。
途中で席を抜けて目的の品を買いに行かなかったのは、束なりの流儀である。
「自分の手で渡したいしね~・・・私誰に話してるんだろ」
会場の熱気を感じながら束は突き進む。そしてなんとか目的の物とネットで知り合ったサークルの方々に顔を出して行く。
「どうも~、お疲れ様です」
「おお、シノーノ殿でヤンスか!そっちはもう完売でヤンス?」
「まあね!それよりも、そこのメイドさんのコスプレ似合ってるねー!なんか尻尾とか生えてるけど、それ何のアニメ?」
「違います!コスプレじゃないです!」
「まあまあ、トール殿も落ち付くでヤンス」
「へえ、トールちゃんって言うんだ。私はシノーノ!あ、これ今回の新刊ね。トールちゃんもどーぞ」
「おお!通販しかないと諦めていたでヤンスが、貴女は神か!」
「ふふん!もっと褒めて~!」
「・・・何ですか、コレ?白い髪の女の子・・・男の子が黒髪のお姉さんに家に連れ込まれてって何て破廉恥な!」
束の本を読んだトールと呼ばれた女性は、軽くパニックになる。
「もしかして彼女、一般人・・・?」
「一般人と言うか・・・何と言うか・・・まあ、気にしないで良いでヤンス」
「そっか~・・・アレ?隣の人?」
「家で一緒に暮らしてるファフ君でヤンス」
「ほっほ~う♪ねえねえファフ君、どっちが攻め?」
「何がだ。殺すぞ」
「おおう。中々にクール・・・あ、読んでみても良い?」
「ああ」
ファフ君と呼ばれた青年のスペースに積み上げられた同人誌を読む。文章では無く、良く分からない紋章の様な物が大量に書かれた本だった。
「あ、あの・・・シノーノさん?その本は止めた方が・・・」
「この本一冊くださいな♪」
「ッ・・・500円だ」
「はい、丁度ね。それじゃあ、これから別のサークルも周るから。バイバ~イ」
そう言って自由気ままに去って行った。そんな束を見て、トールは冷や汗を掻く。
「あの人、呪いがビッシリ描かれた《ファフニール》さんの本読んでも何ともなかったですよ・・・」
「フン・・・人間にしては、分かる奴だな」
「おお、ファフ君が珍しく人を褒めたでヤンス」
「黙れ」
「(買ってもらえたのがそんなに嬉しかったんですね)」
こうして、束も夏をエンジョイしていたのである・・・。
三人称サイド終了