if~刹那君は操縦者~   作:猫舌

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第5話

刹那サイド

 

 

鳳さんと出会った翌日、教室で僕はセシリアとのほほんさんの三人で会話していたのに織斑が乱入して来た。ペナルティーでダメージとか与えられないかなぁ。

話していると、クラスの一人がこう言った。

 

 

「ねえねえ知ってる?隣のクラスに転校生が来るんだって!」

 

「転校生?」

 

「なんでも中国の代表候補生らしいよ」

 

「中国・・・まさか、な」

 

 

織斑が何か考える様な表情で俯いている。もしかして心当たりだあるのかな?そう言えば鳳さんの名前って中国の方の・・・。

僕の思考を遮って、セシリアがドヤ顔で胸に手を当てて言った。

 

 

「もしやこの私の存在を危ぶんでの転校かしら?」

 

「いや、それはない」

 

「ないよセッシ~」

 

「うぐっ・・・」

 

 

僕とのほほんさんの指摘によってセシリアが暗い表情になる。なにせ僕が無傷で勝っちゃったから。別に良かったんだよ?わざと喰らってからなんちゃってな感じで大逆転とかしてもさ。その場合織斑に何言われるか解らないから堪ったもんじゃないが。

 

 

「織斑君頑張ってね!」

 

「今のところ、専用機を持ってるクラス代表って1組と4組だけだから余裕だよ!」

 

 

織斑に対し、女子達から熱烈な応援が飛んで来る。まあ、精々ボロ負けしない事だね。

盛り上がる1組の教室に聞きなれない声が響いた。

 

 

「----その情報、古いよ」

 

 

教室の入り口で一人の少女がセシリアの如くドヤ顔で立っていた。鳳さん、やっぱり中国の代表候補生だったんだ。

 

 

「2組も専用機持ちがクラス代表になったのよ。そう簡単に優勝できると思わないでよね」

 

「鈴・・・?お前、鈴か?」

 

「そうよ!中国代表候補生、鳳鈴音!今日は戦線布告に来たってわけ」

 

「何カッコ付けてるんだ?すげえ似合わないぞ」

 

「なっ!なんて事言うのよアンタは!」

 

 

反応からするに織斑の知り合い&好意を持ってるねあの子。本当にモテモテだな織斑は。流石はイケメン。僕ももう少し男らしく生まれたかった。

 

 

「モテモテだね、織斑」

 

「おりむーはイケメンだもん~」

 

「私は、どちらかと言えば・・・刹那さんの方が」

 

「私もふーちゃんの方が好き~」

 

「はいはい。どうも」

 

「「(本気なのに・・・)」」

 

 

やめろ。変に慰めないでくれ。二人の軽口に苦笑していると、鳳さんの後ろに人影があった。

 

 

「おい」

 

「何よ!?」

 

 

後ろからの声に不機嫌な返事をした鳳さんの頭に出席簿が叩き付けられた。その正体は織斑先生その人。て言うかあんな音出せるのあの人しかいないでしょ。このストロングめ。

 

 

「不動、今失礼な事を考えなかったか?」

 

「してません」

 

「そうか」

 

 

怖っ!?あの人エスパーか何かですか?

 

 

「全く。SHRの時間だ。教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん・・・」

 

「此処では織斑先生と呼べ。入口を塞ぐな。邪魔だ」

 

「す、すみません・・・一夏!昼休み、逃げないでよね!」

 

 

そう吐き捨てて鳳さんは自分のクラスに戻って行った。

こうして無駄に騒がしく一日が始まった。

 

 

~昼休み[食堂]~

 

 

会長は生徒会の仕事があり、今日は一人飯になるかと思ったらセシリアに誘ってもらった。それは良い。それは良いんだけど・・・。

 

 

「刹那と食事するの初めてだよな!」

 

「あーはい、そーっすね」

 

 

なぜ織斑がいるんだ(憤怒)

しかもその隣の篠ノ之さんの視線がこれまたウザい。結局反省文だけしか罰が無かった彼女は僕を殴った事をあまり悪いと思っていない様で、次からは気を付けろと脅迫紛いな注意を貰いました。スクラップ・フィストで殴り掛かりそうになった僕は悪くないと思う。

なるべく織斑と視線を合わせずに進んで食券機の前まで進むと、鳳さんが立っていた。

 

 

「待ってたわよ一夏!」

 

「鳳さん、他の人の邪魔になってるから退いてもらえるかな?」

 

「あ、ごめん・・・」

 

 

そそくさと道を開けてくれた鳳さんに軽く会釈してから並ぶ。鳳さんも大人しく織斑の後ろに並んだ。

 

 

「なあ、何がしたかったんだ?」

 

「うるさいわね!」

 

 

後ろの騒がしい二人を無視して食券を購入する。今日は全部得盛りで、天ざる蕎麦とカツ丼に焼き肉定食。それからカルボナーラとミックスピザのLサイズ。デザートにプリンアラモードだ。

食券を5、6枚取る僕に鳳さんが口を引き攣らせていた。

 

 

「結構食べるのね・・・」

 

「お腹空いちゃって。それに此処のご飯は無料だし、美味しいからつい頼んじゃうんだよね」

 

「能天気にバクバク食べれるアンタが羨ましいわ」

 

 

そう言って鳳さんはお腹周りをペタペタと触り出す。ああ、地雷踏んだなコレ。

 

 

「ん?鈴は太ってないだろ?」

 

「口に出すな馬鹿!」

 

「いってぇ!?」

 

 

織斑の足が見事に踏みぬかれる。うわぁ、痛そう・・・。心の中で余計な事を、と考えながら食券に書かれた注文の品を受け取る。

数が数だから往復して受け取った僕はセシリアと席に座る。だが、次に織斑が隣に座った事で不機嫌メーターが跳ね上がった。

 

 

「なあ、刹那のと俺の少し交換しようぜ」

 

「却下。欲しいなら頼みなよ。いただきます」

 

 

僕は手を合わせて食事を始めた。うん、今日も美味しい!今日は食堂のおばちゃんにプリンアラモードのプリンを一つサービスしてもらった。毎日美味しそうにたくさん食べてくれるお礼らしい。

最近の女子生徒は当たり前の様に残すから完食してくれるのが本当に嬉しいのだそうな。

 

 

「はむ・・・はむ・・・」

 

「な、なんて食べっぷり・・・」

 

「刹那さんは何時もこの量ですわよ」

 

「わお・・・」

 

 

なんか言われているけど無視して食べ進める。む、この天ぷら衣の揚げ具合がまた絶妙。これは箸が進む。

食べ続ける僕を余所に織斑達が会話を始めた。

 

 

「それにしても久しぶりだな。ちょうど一年ぶり位か?元気してたか?」

 

「げ、元気にしてたわよ!アンタこそ偶には怪我とか病気とかしなさいよね!」

 

「な、何だよそれ」

 

 

鳳さんはツンデレなのか・・・。織斑の性格にあまり噛み合わない気がするんだよね。実は織斑は入学から数日でラブレターを貰うレベルのモテっぷりを発揮していた。でも、彼の反応は思わずポカンとなる物だった。

教室の机に入っていた織斑宛てのラブレター。内容はベタに[放課後、屋上へ来てください]と書かれていたが、織斑は

 

 

『これって果たし状だろ?IS学園って怖いな・・・』

 

 

と言って、その日は屋上に行かなかった。当初は渋々向かおうとしてたけど、眉間に皺を寄せた篠ノ之さんに引き摺られて行った。

しかもその話が何処かから漏れていたらしく、織斑先生に尻拭いを任された。その場に居たと言う理由だけでだ。理不尽すぎる。

結局僕が屋上で説明する羽目になって、面倒この上無かった。

 

 

「・・・ごちそうさま」

 

「はやっ!?」

 

「君達が遅いんだよ。セシリアだってもう食べ終わってる」

 

 

セシリアも頼んでいたサンドイッチを食べ終わり、口元を上品に拭いていた。僕も紙ナプキンで口元を拭って盆の上に置く。

それを見て苦笑してくる織斑に遂に篠ノ之さんが怒鳴った。

 

 

「一夏!いい加減どういう関係なのか説明してほしいのだが!?」

 

「説明って言われてもなぁ・・・」

 

「も、もしや二人は・・・付き合っているのか?」

 

 

恐る恐る口にする篠ノ之さん。あ、もうコレ僕帰っても良いですか?

 

 

「べべべっ、別に付き合ってるわけじゃ・・・」

 

「そうだぞ。何でそんな話しになるんだよ。ただの幼馴染だって」

 

「・・・」

 

「な、何で睨んでるんだ?」

 

「別に!何でもないわよ!」

 

 

気付かない織斑に鳳さんが叫ぶ。何でこう騒がしい子ばかり集まるんだ?もう少し静かに出来ないかな。

二人で話しているのを見ながら篠ノ之さんは口を開いた。

 

 

「幼馴染、だと?私だけではないのか?」

 

「箒とは入れ違いで転校して来たんだよ。小4の終わりに箒が転校して、鈴が来たのが小5の始めだったな。鈴、前に話した事あっただろ。俺が通ってた剣術道場の娘さんの箒だよ」

 

「ああ、そんな事も言ってたっけ?」

 

 

そう言って鳳さんが何やら意味深な視線を向ける。

 

 

「初めまして、よろしくね。篠ノ之さん」

 

「ああ、こちらこそ」

 

 

一見普通の会話と握手。でも明らかに二人からはオーラ的な何かが出ていた。

これ以上聞いてもアレだなと思った僕はお盆を纏めて、席を立つ。後ろから織斑の声が聞こえるけど、知らない。

なんか[練習を見てあげよっか?]だの[必要ない!]だの女子二人の声の方が騒がしかった。

その後は何事もなく今日の授業を終えた。

 

 

~放課後~

 

 

僕はとある部屋へと向かっていた。やがて目的地へと辿り着く。そこは[整備室]と書かれていた。あまり無茶はさせていなかったから来なかったけど、一応メンテナンスしておこうかなと思い、来た。

ドアを開けて中へと入り、カタパルトの様になっている機械にラファールと白鋼を展開して接続する。それに端末とケーブルを繋ぎ、プログラムや機体のパーツの負荷を確認する。

 

 

「異常は・・・無し」

 

 

----そうか。それは安心だ。

 

----マスターにメンテナンスされるのやっぱり好き。

 

----また媚びるのか貴様は・・・!

 

----へ、へう~!?

 

----喧嘩しない。

 

 

頭の中で喧嘩を始める二機。溜息を吐きながら機体を拭いたり、間接に油を刺したりする。それから自作の追加パッケージを二機にインストールする。

 

 

----新形態《バルバトス・ルプス・レクス》、インストール完了だ。

 

----新形態《メタルフォーゼ》、インストール完了だよ。

 

----了解。

 

 

端末を閉じて、機体を待機状態にする。休みになったらセシアのデータも整理し直さないと・・・。

 

 

----休日はセシアのデータ整理するから手伝いよろしく。

 

----分かった。

 

----うん。

 

 

返事をしてくれる二機に対して、首元からは何も反応が無い。セシアさんはなんか今朝からイジケテいらっしゃる。僕がセシリアを名前で呼び出したとか、藤原さんとアレな雰囲気になってたとか、鳳さんと知り合ってたとか色々言って何も話してくれない。

いい加減面倒になって来た僕は小声で言う。

 

 

「今度研究所で好きなだけ展開するから」

 

『・・・今回だけですよ』

 

 

チョロい。

なんとか機嫌を直してくれたセシアに苦笑いしながら歩き出す。すると僕に視線が向いているのが分かった。僕はその方向へと視線を向ける。そこには、水色の髪で眼鏡を掛けた少女の姿があった。

僕は首を傾げながら聞く。

 

 

「何か用かな?」

 

「あ、あの・・・この前の模擬戦」

 

「模擬戦?ああ、クラス代表の」

 

「もう一人の操縦者に圧勝してた・・・」

 

「どうも」

 

 

どうやらこの前の模擬戦を見ていたらしい。と言うかこの子は結局何者なんだ?この子、何処かで見た様な・・・。

 

 

「えっと、君は誰かな?」

 

「・・・《更識 簪》」

 

「更識?ああ、会t「お姉ちゃんは関係無い」・・・いや、関係あるね」

 

「え・・・」

 

 

更識さんは辛そうな表情で僕の言葉を遮ったが、僕はそれを気にせず更識さんに歩み寄った。そしてずっと言いたかった事を言う。

 

 

「君のお姉さんなんとかしてくれないかな?」

 

「な、なんとか・・・?」

 

「そうだよ。人のシャワーを覗くし、着替えは撮られるし、寝てるとベッドに入って来るし、部屋ではシャツに下着だけだ。なんかエロオヤジと生活してるみたいでアレなんだよ」

 

「お、お姉ちゃん・・・」

 

「強く言わないと聞いてくれないし・・・毎日叱るの疲れるんだよぉ」

 

「その、な、泣かないで」

 

「泣かずにいられるか!」

 

 

そう。あの会長は普段はとても気品溢れる方とは思えないポンコツっぷりを見せて来る。他にも生徒会の仕事を日常的にサボって、僕が生徒会室まで引っ張って行く事もある。今日の昼だって、仕事しないとスクラップ・フィストすると脅迫してやっと行ったのだ。

こんな事をほぼ毎日続けたら僕の胃がストレスでマッハだよ。

この世の理不尽さに涙を流していると、僕を温かい感触が包み込んだ。しかも頭を撫でられている感触までする。これってもしかしなくても抱きしめられているのでしょうか?

 

 

「大丈夫、大丈夫だから・・・」

 

「・・・ごめん」

 

「ううん。こっちこそ、身内がごめんね」

 

 

なんとなく彼女の目が死んでいる気がした。身内が迷惑掛けてその皺寄せが勝手に来たんだからそうなるだろう。いや、僕も勝手に愚痴ってすみません。

二人して平常心を取り戻すのに数分掛かった。暫く経って、恥ずかしい気持ちになりながら離れる。

 

 

「あ、ありがとう」

 

「こ、こっちも、ごめん」

 

 

無言が続き、なんともいえない空気になる。おい、IS達よ。今こそ騒ぐ時だと僕は思うんですけどね。

 

 

----主殿、気付かなくてすまない。

 

----ごめんね、マスター・・・。

 

----マスター、あの女をお母様に突き出しましょう。

 

----おっふ。こっちも気まずいムード。

 

 

たった一機を除いてだけど。確かにもう一度母さんにソーンウィップしてもらうか。でもあれ見ると父さんにしてたの思いだすんだよね。見たくないものを見てしまった・・・。

 

 

「知ってると思うけど、僕の名前は不動刹那。よろしくね、更識さん」

 

「名字は好きじゃないから、簪って呼んで欲しい」

 

「分かったよ、簪」

 

 

初対面で名前呼びってあまり慣れないけど空気的に断れない。うん、マジで。

この日は、互いのアドレスと番号を交換して解散となった。でもまあ、友達が増えたと思うしかないよね。

その後、部屋へ戻ると会長は居なかった。机に置き手紙があり、急用で出掛けるから後は自由にしていてくれと書かれていた。僕はシャワーを浴びてから食堂で食事を摂る。

食べ終わり、食後のお茶を飲んでいると僕の隣に誰かが座った。

 

 

「隣、良いかしら?」

 

「良いよ。といっても僕はもう行くけどね」

 

「つれない事言わないで。模擬戦の日程が決まったわ」

 

「へえ。何時やるの?」

 

「明後日の放課後に、第3アリーナで」

 

「分かった」

 

 

藤原さんの言葉に淡々と答える。下手に話したらこの前みたいになりかねない。

なるべく視線を合わせない様にするが、僕の太ももに藤原さんの手が添えられる。そしてゆっくりと僕の足を撫で始めた。

 

 

「ひゃわっ」

 

「敏感なのね♪」

 

 

そう言って余計にスキンシップを増やして来る藤原さんからなんとか逃れて部屋の前まで来る。寮の端だから少し遠いんだよね。部屋の前まで来ると、体育座りで泣いている鳳さんの姿があった。

うっわぁ。関わりたくない。本格的に関わりたくない。でもあの子退かさないと部屋に入れないし・・・。

 

 

「よし、今日は野宿だ」

 

「待ちなさいよ!」

 

「夜なんだから静かにしてよ・・・」

 

 

Uターンしたら怒られた。鳳さんは目元を泣き腫らして僕を睨む。全然怖くなかった。僕は溜息を吐いて心の中で白旗を上げた。

 

 

「取り敢えず入りなよ。話位は聞くから」

 

「・・・うん」

 

 

急に尻すぼみにならないでよ。やりにくい。

僕は未だに泣いている少女を部屋に入れた。冷蔵庫を開けて、買い溜めしておいた缶ジュースを渡す。鳳さんはそれをくぴくぴと飲んで、なんとか落ち着いた。

 

 

「それで、何があったの?ゆっくりで良いから」

 

「うん・・・あのね」

 

 

鳳さんは俯いて話した。

織斑と一緒に居た頃、[将来自分の作った酢豚を食べてくれる?]と味噌汁的な約束をしたのだが、織斑は[自分の作った酢豚を毎日"奢ってくれる"]的な物であると勘違いしていたそうな。更にそれが原因で口論発生。女心が分かっていないと言ったら、なんだそれ?とか自分は悪くないと豪語し始め、遂に鳳さんの心に限界が来て、その場から逃走。寮の端である僕の部屋の前で泣きじゃくっていたそうだ。

何ともまあ、不憫な。

 

 

「まあその、アレだよ。君も悪い」

 

「何でよ!アンタも一夏の味方するの!?」

 

「違う。誰が君"だけ"悪いなんて言った?僕はどっちも悪いと言ったんだ」

 

「どっちも?」

 

「そう。織斑が超が付く鈍感だって知ってたんでしょ?」

 

「そうよ。中学の頃だって、告白されて[付き合ってください!]って言われたら[良いぞ、何処にだ?]って言う様な奴よ!」

 

「じゃあ何でそんな遠回しな告白したのさ」

 

「そ、それは・・・」

 

 

僕の指摘に鳳さんは押し黙った。そんな事して気付く訳がない。そんなの、デリカシーの無い織斑も悪ければそんな告白をした鳳さんも悪い。

 

 

「まあ、過ぎてしまった事を今更考えても仕方ない。これからの事を考えよう」

 

「そうね・・・怒鳴って悪かったわ」

 

「篠ノ之さんより理解力があるだけマシさ」

 

「何かあったの?」

 

「ちょっとトラブルがあっただけさ」

 

 

僕は肩を竦めて誤魔化す。

 

 

「織斑は普通に考えて今日の事を反省してないと思う」

 

「そんな事・・・ある、かも」

 

「あるね。だって織斑だよ?」

 

「説得力あるわー」

 

 

口元を引き攣らせている鳳さんに苦笑いしながら、今後の事を相談する。

端的に言えば、シカト。その事には首を突っ込まない。結局は平行線になる事が目に見えているし、女心がどうだとかも織斑だからと言ったら鳳さんは納得してしまった。

織斑・・・君は何時か本当に刺されるぞ。

こうして鳳さんは満足そうな顔で部屋を出て行った。僕も疲れが出て来て、直ぐに寝てしまった。

 

 

~数日後~

 

 

アリーナ内の待機室で僕は織斑先生達とディスプレイを見つめていた。そこに映し出されているのは白式を展開した織斑と専用機《甲龍(シェンロン)》を纏った鳳さんの姿であった。

今日は前々から言われていたクラス対抗戦の日であり、織斑と鳳さんの試合である。映像に映る鳳さんからは殺気が漏れ出しており、織斑は青い顔をしていた。

理由は試合前に織斑と会話した際、前回の事を避けて会話していたらしいが織斑が不意にその話を掘り返して色々言ったらしい。我慢ができなくなった鳳さんが反論。僕の方が女心が分かってるだの人を話のネタにした所で織斑の[貧乳]と言う悪口。

もう、救い様が無いです・・・。

 

 

「いよいよ始まりますわね」

 

「ああ・・・」

 

「・・・」

 

「(帰りたいと言いたげな顔ですわ・・・)」

 

 

無言の僕にセシリアが何とも言えない表情を向ける。そんな中、試合が始まった。開始早々に鳳さんが仕掛ける。両端に刃の付いた青龍刀《双天牙月》を振るって織斑に攻撃する。

鳳さんのISは近接格闘型だ。織斑も重い攻撃に顔を顰めながらも雪片弐型で受け止める。そこから鳳さんが何度も青龍刀を叩き付け、織斑の集中力を奪う。だが、織斑もその内鳳さんにカウンターを繰り出し始めた事で試合の展開が変わり始める。

今度は織斑が白式のスピードを生かして鳳さんの周りを飛び回って、雪片を振るう。そして再び鍔迫り合いを行ってから互いに距離を取る。

 

 

「良いぞ一夏!そのまま押し切れ!」

 

「あの機体から距離取ると厄介だよ」

 

「どう言う事ですの?」

 

「甲龍のデータを良く見て」

 

「これは・・・!」

 

 

セシリアにデータを見せるそこには甲龍に搭載された秘密兵器が記されていた。

そんな僕達を余所に試合は進む。鳳さんが格闘とは違う構えを取ると織斑が突然拭き飛んだ。

 

 

「なにっ!?どう言う事だ!」

 

「衝撃砲、だよ」

 

「なんだと・・・」

 

「甲龍の衝撃砲である《龍砲》からは空間に圧縮を掛ける事で砲身を生成してその余剰で生じる衝撃を砲弾として撃ち出すのさ」

 

「それだけではなく、砲身斜角にほぼ制限がありませんわ」

 

「見えない攻撃だと・・・なんと卑劣な」

 

「普通だよ、馬鹿」

 

「なんだと!?」

 

 

僕を思いっきり睨む篠ノ之さんを視界に入れない様にしてディスプレイを見つめる。砲撃を続け、織斑を追い詰めて行く。そんな中でも織斑の目には諦めは無く、遂に弾道を呼んで肉薄した。そのまま零落白夜を発動して鳳さんに振り下ろす。

だが、その刃は空から落ちて来たビームによって遮られた。

 

 

「織斑先生!直ぐに生徒達の避難を!」

 

「分かっている!」

 

 

アリーナに張られている遮断シールドを一撃で破壊する威力を持った相手。全身が装甲によって防御されたISがビームの着弾した直情から降下して来る。そして織斑達に顔を向けると両腕に取りつけられたビーム砲からビームが発射される。

すると頭の中にセシアの声が流れ込んで来た。

 

 

----マスター!あれは無人機です!

 

----無人機!?束が何かやらかしたのか!?

 

----いえ、今の馬鹿兎はあんなの作りませんよ。

 

----どの道、なんとかしないと。

 

 

取り敢えずアリーナへ向かおうと走る。僕の後にはセシリアが着いて来ていた。

 

 

「君は早く避難を!」

 

「刹那さん一人で戦わせる訳には行きませんわ!」

 

「・・・反省文は覚悟しておこうね」

 

「はい!」

 

 

僕も勝手に行動した罰は貰うだろう。走りながらアリーナの情報を見る。クソッ!客席のドアが全てロックされてる。

 

 

----セシア!

 

----既に解除中です!

 

 

それから数秒でロックが解除された。それによって、避難した生徒達のデータが表示される。だがその中に放送委員と篠ノ之さんの名が無かった。嫌な予感がした僕はアリーナへと急ぐ。

ラファールを展開してセシリアに言う。

 

 

「セシリア、まだ篠ノ之さんと放送委員が避難してない!君は放送室へ向かって欲しい!」

 

「わ、分かりました!御武運を」

 

 

すぐにアリーナへと出撃する。そこでは織斑達が苦戦していた。僕はラファールに声を掛ける。

 

 

----行くぞラファール!

 

----うん!モード《ジャンク・デストロイヤー》!

 

 

ラファールが形態を変え、黒塗りのボディに四枚の機械質な羽。通常の腕部装甲の上にもう一組の腕部装甲が追加される。

これがパワー特化型形態であるジャンク・デストロイヤーだ。

そして各腕にエネルギーの球体を生成して無人機に投げつける。織斑達の横を通過して無人機の腕に直撃したエネルギー弾はその場で爆発する事は無かった。

暫くしてから腕に火花が散り始め、爆散する。ジャンク・デストロイヤーのワンオフ・アビリティーである《タイダル・エナジー》はウイルスが搭載されたエネルギー弾を発射して直撃した相手の武装を内側から破壊する能力だ。

ラファールと白鋼は各形態一つずつにワンオフ・アビリティーが存在する。

 

 

「織斑、鳳さんを連れて下がって」

 

「お、おい待てよ!あれには人が・・・!」

 

「一夏、不動!アレ・・・」

 

 

鳳さんが指を指すと、両腕が弾け飛び、オイルを血の様に流す無人機の姿があった。織斑達は唖然としている。

 

 

「あれは無人機。気にするだけ無駄さ」

 

「で、でもISって無人機は存在しないんじゃ」

 

「時代が進めば造れるさ」

 

「だったら後は攻撃を叩きkってきゃぁっ!?」

 

 

突如無人機の装甲が開いて大量のビームが無差別に発射される。ビームなんて余裕で耐えられるジャンク・デストロイヤーの腕部装甲でビームを弾く。

攻撃に転じようとした所で織斑が突っ込んで行った。あの馬鹿・・・!

 

 

「うおおおおおおおっ!」

 

「馬鹿下がれ!」

 

「う、うわあああああああ!」

 

 

結局ビームが多くて近づけずに戻って来た。でもこれ位ならもう・・・!

一気に片を付けようとした所で最悪な事態が発生した。

 

 

『一夏ぁ!』

 

 

突如響くマイク音声。その方向へ視線を向けるとインカムに叫ぶ篠ノ之さんの姿がピットにあった。

 

 

『男なら・・・男なら、その程度の敵に勝てずに何とするッ!』

 

「ほ、箒!?」

 

「何やってるのよアイツ!」

 

「クソッ!」

 

 

あんな目立つ行為をすれば当然無人機のターゲットは向こうに行く。無差別の射撃が篠ノ之さんへ向かう前に僕は《瞬時加速(イグニッション・ブースト)》を使用する。

瞬時加速とは、ISの後部スラスターのエネルギーを圧縮して放出する事による加速だ。

それを使用して篠ノ之さんの前まで来てビームを腕部装甲で弾き、ボディで盾になる。

 

 

「織斑!決めろぉ!」

 

「ああ!行っけええええええ!」

 

 

再び発動した零落白夜で無人機を肩から袈裟切りで両断した。無人機はノイズを吐きだしながら地面へと伏す。

 

 

「刹那さん!」

 

「僕は平気だから篠ノ之さんを連れて行って」

 

「了解ですわ」

 

 

セシリアは篠ノ之さんを連れて中へと戻って行った。

僕は飛行して無人機の方へと向かう。ジャンク・デストロイヤーを解除してジャンク・ウォリアーに戻した。こっちの方が燃費良いんだよ。

 

 

「一応コアを取り出しておこう」

 

 

スクラップ・フィストで外部装甲を破壊してからコアを抜き取る。そこに書かれていたコアナンバーは存在しない筈のコアだった。

現在、存在するISのコアはセシアを抜かせば467機存在し、その内実戦配備されているものが322機。残りの145機は各国の研究機関か、イリアステルの様な企業が所有している。

だがこのコアナンバーは468と書かれていた。つまりは誰かが新たなISを開発したと言う事になる。

僕は何か嫌な予感を感じながら抉り取ったコアを見つめた・・・。

 

 

~アリーナ内部[待機室]~

 

 

「これで全員か?」

 

 

今回の騒動に関わった専用機持ちと篠ノ之さんを集めた織斑先生が声を掛ける。

どうやら篠ノ之さんは放送委員からインカムを無理やり奪ってあそこまで行ったらしい。放送委員の人は最後まで止めたらしいが聞かなかった様だ。

 

 

「それで篠ノ之。貴様は何をやっている」

 

「わ、私は一夏を応援する為に・・・」

 

「それで己を危険に晒すどころか他人まで巻き込んでいるのだぞ」

 

「で、ですが!」

 

「ですがも何もないだろうに・・・」

 

「なんだと!?」

 

 

つい口からボソッと本音が零れると、篠ノ之さんが地獄耳でキャッチする。見事に突っ掛かって来ました。でも今回は流石の僕もキレざるを得ないんだよね。

僕は篠ノ之さんの方を向いて話す。

 

 

「君の言い分はどうであれ、必要以上に場を引っ掻き回した事に変わりはない。もし僕達が間に合わなかったら君だけじゃない、余所見してた織斑達だってやられる所だったんだよ?」

 

「わ、私は一夏ならば勝ってくれると信じていた!余計な事をするな!」

 

「それはこっちの台詞だ!」

 

 

あまりにも自分勝手な言い分に思わず声を荒げる。

 

 

「自分から死にに行くのなら周りを巻き込むな!君一人で死ね!それともなんだ?自分は篠ノ之束の妹だから好き勝手許されるとでも?」

 

「だ、黙れ!」

 

「黙るのは君だよ。普段は姉と関係無いとか言っておいて、自分に都合が悪くなると自分はISの製作者の妹だ、とか・・・呆れを通り越して哀れだ」

 

 

自分でも分かる。今の僕は驚く位冷たい目をしているのだろう。織斑先生ですら顔を青くしてるのだから。

それほどに僕の中で怒りの炎が渦巻いている。

 

 

「そもそも戦う力が無いくせに出しゃばらないでもらえるかな」

 

「私にだって専用機があれば!」

 

「無理だね。今の君じゃまともに扱えずに終わるよ。いい加減自分の立場を理解しなよ、役立たず」

 

「貴様ぁ!」

 

「前々から貴様、貴様とばかり。それ以外の言葉を知らないのか?」

 

「このぉっ!」

 

 

再び振り下ろされる木刀。僕はそれを膝を落として篠ノ之さんの腕に下から掌底を叩き込む。衝撃で手を離れ、宙に舞う木刀を見つめる篠ノ之さんの襟首を掴んで地面に叩き付ける。そして落ちて来た木刀をキャッチして切っ先を篠ノ之さんの眼前へと向けた。

篠ノ之さんは何が起こったのか分からない表情で木刀を見つめる。ゆっくりと視線を上げて僕を見ると、小さく声を上げて震え始めた。そんな彼女に僕は言う。

 

 

「討って良いのは、討たれる覚悟のある奴だけだ。この程度で震える態度なら、今すぐISを捨てろ。政府の方々にお人形の様に守られてるのがお似合いだ」

 

 

そのまま木刀を後ろに投げ捨てる。溜息を吐くと、頭に衝撃が走った。どうやら織斑先生に叩かれた様だ。うん、こうなるとは思ってた。

 

 

「不動。やり過ぎだ」

 

「反省はしてますけど、後悔はしてません」

 

「・・・はぁ」

 

「刹那!お前何やってんだよ!」

 

 

今度は弟君の方に胸倉を掴まれる。あれ?何かデジャヴ?

 

 

「正当防衛ですが、何か?」

 

「女に暴力振るうって何考えてんだ!」

 

「はあ?君だってさっきまで鳳さんとドンパチやってたじゃないか」

 

「あれはISだろ?関係無いじゃないか」

 

「ISだろうが何だろうが戦うのであれば暴力同士のぶつかり合いだ」

 

「違う!」

 

「違うって何さ?じゃあ僕に木刀で殴られろって言うの?あの勢いで叩かれたら僕は大怪我なんだけど」

 

 

駄目だ。コイツの理論が理解出来ない。

結局この日は解散となって後日話し合う事になった。織斑が最低野郎だとか言ってたけど、篠ノ之さんに対して何も言わずに傍観してるだけの君に言われたくないよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~夜[屋上]~

 

 

『そっか・・・箒ちゃんを助けてくれてありがとう、せっちゃん』

 

「別に。それと君の妹歪み過ぎだよ。色々と」

 

『うん・・・私が自分勝手にやり過ぎたから』

 

「そう思うんだったら自分でなんとかしなさいな」

 

『頑張る・・・本当にごめんね』

 

「今度休日にそっち行くから細かい話はそこでしよう」

 

『分かった・・・』

 

 

束に報告を入れてから電話を切る。束の知らないコアと言う予想は当たりだった。ますます怪しい匂いがして来た。

 

 

「・・・面倒だ」

 

 

刹那サイド終了

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