刹那サイド
あれから数日が経過した。デュノア君改めデュノアさんとの作戦を綿密に進め、日常を過ごす。織斑は気が付けば数日の停学と反省文の提出を義務付けられていた。なんでもデュノアさんが織斑先生にあの日の事を少し改変して話したらしい。
何故そんな事を?と聞くと[一夏は何かと関わってくるから]と綺麗な笑顔を浮かべてらっしゃった。つまりは邪魔、と。
ようやく五月蠅い奴が消えたと思ったら、数日で戻って来やがりました(憤怒)
「・・・」
「・・・ふん」
如何にも不機嫌な表情で僕の前を通り過ぎる織斑。何気なしにデュノアさんの腕を掴んで歩き去るあたり徹底してるな、と感じる。整備室へと向かおうとしたその時、クラスメイトの女子が息を切らして駆けて来た。その様子に僕と織斑達はポカンとする。
そんな僕達に女子は言った。
「お、オルコットさんと2組の鳳さんがボーデヴィッヒさんと戦ってるって・・・!」
僕達はすぐに走りだした。頼むから突っ走らないでよセシリア、鳳さん!
刹那サイド終了
三人称サイド
放課後のアリーナに二つの人影があった。一つはイギリス代表候補生のセシリア。もう一つは中国代表候補生の鈴である。二人はISを展開して互いを見つめ合っていた。
「アンタも練習?」
「ええ。偶然ですわね」
「そうね。この前山田先生にボコボコにされたり、不動にボコボコにされたりで散々だったし」
「心中、お察ししますわ・・・」
二人共ボロ負け経験者として悲しげな目になる。そして唐突に鈴が提案した。
「なら、戦いましょうか!」
「はい!練習あるのみ、ですわ!」
「----ほう、私も混ぜてもらおうか」
「「っ!」」
突如、頭上から聞こえた声に反応して二人は移動する。先程まで自分達がいた位置に弾丸が撃ち込まれた。発射元に視線を向けると、黒塗りのIS《シュバルツェア・レーゲン》を纏った現役の軍人であり、ドイツ代表候補生のラウラの姿があった。そしてセシリア達を見下ろしてつまらなそうな表情で呟く。
「中国の甲龍にイギリスのブルー・ティアーズか。・・・データの方が強そうだったな」
「いきなり何すんのよ。ジャガイモ農場では人様に喧嘩売るのが流行ってるの?」
「あら鈴さん。逐一気にしてると身が持ちませんわよ。此処は落ち着きなさいな」
「何でセシリアはそこまで落ち着いてるのよ」
「彼女の様な事ではありませんが、何かをやらかす方は何人か見ていますの。耐性が付くのも仕方のない事ですわ」
「つくづく2組で良かったと思うわ、私」
二人で苦笑してからラウラへと向き直す。
「それで?やろうっての、アンタ?」
「ふん、あの程度の実力だった貴様等が掛かって来た所で戦いにもならん。それでも良いのであればその飯事にでも付き合ってやろう」
「自分から不意打ちを掛けて何を言ってらっしゃるのかしら、ボーデヴィッヒさん?」
「・・・なに?」
「私達を既にそう評価付けているのであれば正面からいらっしゃれば良いだけの事。それを、上空からの射撃だなんて・・・ドイツ軍人は随分と卑怯な手をお使いになられるのですね」
「貴様、今すぐに死にたいか!」
「図星を突かれたからと言ってそう怒鳴るものではありませんわよ。女性としての品位が損なわれますわ」
「私は軍人だ。女などとうに捨てた!」
「なら今すぐISから降りなさいな。それは本来、女性のみが乗っていた物。捨てた物を都合が良い時だけ拾って来るなんて・・・可愛そうな人」
「殺す!」
そう叫んで右腕を振り上げて降下して来たラウラ。その肩を一筋の光線が通過した。何かを感じたラウラは後ろへと退却する。その正体はラウラでも気が付かない内にビット兵器を展開して射撃を繰り出していたセシリアだった。
「今退けば、ちょっとしたトラブルで済みますわよ」
「ふざけるな。なんとしてでも貴様等は此処で潰す」
「ちょっと!私まで巻き込まないでくれない!?」
「でしたら、離れていてもらえますか?巻き込まない自身がありませんの」
「やるに決まってるでしょ。あんな事されて黙ってられないわ!」
「刹那さんが言っていましたわ。ああ言った行動を取る方は鬱憤が溜まっているだけの子供に過ぎないと。少しガス抜き程度に付き合えば良い、程度で戦って後は教師にでも押し付ければ問題無いとも言っていましたわね」
一夏と箒のトラブルに巻き込まれてきた刹那だからこそ言える台詞。なんとなくその光景が浮かんでしまった鈴が思わず笑う。セシリアもそれに釣られて笑った。目の前の状況にラウラは困惑する。
「(何故だ・・・何故コイツ等はこの状況で笑える?私は絶対的な強さなんだぞ?)」
ドイツ軍のIS部隊でトップの成績を収めている彼女は、傍から見ても優秀の一言だ。一般の生徒から見ればその強さは圧倒的な物だろう。そう、あくまでも一般的な生徒からすればだ。
だが、ラウラが今前にしている少女達はチートな機体を器用に扱う男性操縦者や、元日本代表候補生の経歴を持つ教師に負け、それをバネに鍛え直して来たのだ。
ISを動かして僅か数ヶ月の人間や、ただの教師と思っていた者に負けた彼女達は悔しくない筈がなかった。
「それで?どっちが先に戦う?」
「私はどちらでも。そこまで血気盛んと言う訳でもありませんから」
「・・・くだらん。二人纏めて相手をしてやる」
「上等。ここらで挽回して一夏に良いとこ見せなきゃ」
「あの様な男の為にとは・・・馬鹿げているな」
「なんですって?」
ラウラの言葉に鈴は怒りの表情を見せる。そんな鈴にラウラは口の端を吊り上げて話し出した。
「あの様な出来損ないに肩入れするとは、随分とモノ好きな女だ」
「決めた。ガス抜きとか生温い。徹底的に叩きのめしてあげるわよ」
「ちょっと鈴さん。明らかな挑発に乗るなんて・・・」
「そういえばもう一人軟弱そうな男が居たな!」
「・・・はい?」
わざとセシリアに聞こえる声量でラウラが叫ぶ。それを聞いた瞬間、セシリアの表情に一つの青筋が出来た。それを助長するかの様にラウラは続ける。
「私の砲撃を防いだアレは、まさに奴自身の様に貧相なガラクタだったではないか!」
「鈴さん、前言を撤回しますわ。私も今猛烈にあの方を撃ち抜きたい衝動に駆られていますの」
「なら、やる事は一つじゃない!」
「そうですわね!」
「「叩き潰す!」」
「それはこちらの台詞だ!」
こうして、女の戦いが幕を開けた。
セシリアは後衛に下がり、ビットとライフルをでラウラを狙う。そして鈴が射撃を躱すラウラへと接近して双天牙月を振り下ろす。シンプルだが、それ故に安定したフォーメーション。予想通りにラウラは銃撃を躱す事でその行動が制限される。そして出来た大きな隙を突いて振り下ろされた青龍刀がラウラへと、直撃・・・する筈だった。
「な、なにコレ?」
「阿呆が。私の《停止結界》の前ではそんな攻撃は無意味だ」
「鈴さん!」
ラウラの手の平から展開された薄い膜の様なエネルギーが青龍刀の先を捉え、それを握っている鈴の動きまでも完全に停止させる。射線上に鈴がいる事で下手に狙撃出来ないセシリアは何かに気付いて声を張り上げる。それも空しく、シュバルツェア・レーゲンの肩に装着されたレールカノンで鈴を撃ち抜く。
咄嗟に龍砲を撃つが、意味は成さずに鈴はかなりの勢いで吹き飛ばされた。地面に何回か打ち付けられながらも態勢を立て直す。だが、甲龍の一部が損傷していた。そんな事もお構いなしにラウラは突っ込んで来る。鈴の足元にレールカノンを打ち込んで煙幕を上げた隙に、セシリアに接近した。
「このっ・・・!」
「接近戦の適正が無い貴様に何が出来る!」
「きゃっ!?」
その手がプラズマを帯びた手刀となったラウラはそれをセシリアに叩き付ける。咄嗟に盾にしたライフルを軽々と切り裂いて、セシリア自身にもダメージを与える。仰け反りながらもビットで射撃するが、再びラウラの手から発される膜に防がれる。
それからは一方的であった。ダウンする暇も与えずにセシリアと鈴をボールの様に蹴飛ばし、ワイヤーを発射して拘束した二人を何度も壁に叩き付ける。二人のISのダメージレベルは危険地帯に達していた。これ以上は命に関わる。
野次馬気分で客席から見ていた生徒達の間にも緊張が走る。そんな中、生徒の波を掻き分けて、一つの影がアリーナのバリアを切り裂いてラウラへと攻撃した。
「なにっ!」
「鈴達から手を離せえええええっ!」
零落白夜で客席を覆うバリアを切り裂いた一夏。そのままラウラとの鍔迫り合いを繰り広げる。そして一度互いに距離を取る。そして真っ正面から切り込んだ一夏の零落白夜をラウラは停止結界と呼ばれた膜で防ぐ。
「なんだコレ・・・動かねぇ・・・!」
「・・・消えろ」
「一夏!」
動けない一夏に至近距離でレールカノンを構えるラウラ。そこへ両手に重火器を構えたシャルルが割って入る。ラウラは舌打ちをしながら後ろへ下がった。
「一夏!今の内に二人を!」
「分かった!」
シャルルに任せ、鈴達を回収して一夏はピットへと飛ぶ。それをラウラが見逃す筈が無かった。シャルルの銃弾を防ぎながら、レールカノンを放つ。一夏へ直撃するコースだったその弾丸は、一夏の瞬時加速によって躱される。
だが、その後ろはバリアも何も無い客席。そこには未だに残った生徒達が居た。そのまま弾丸は客席で爆発を起こす。響く生徒達の悲鳴。全員が動きを止めた。最悪なイメージが頭を埋め尽くす中、煙が晴れる。そこには、
「ギリギリセーフ・・・」
重厚な緑色の装甲に身を包んだ刹那が、シールドの様なパーツを取り付けた両腕で生徒達を守り切った姿だった。
その姿はラファールの形態の一つである《ジャンク・ガードナー》だ。防御重視であるこの形態は、ビーム砲でも傷一つ付かないラファール最強の盾である。
「皆、早く逃げるんだ!」
「う、うん!」
「ありがとう不動君!」
そう言って無傷で済んだ生徒達は全員客席から去って行った。ジャンク・ガードナーを解除して、ジャンク・ウォリアーに変えた刹那はラウラ達の元へと向かう。そこにはラウラの攻撃を打鉄のブレードで防ぐ千冬が居た。しかも素手だ。
「き、教官・・・」
「何をしている、お前達は」
攻撃を止めたラウラと未だに警戒を解かないシャルル達を一睨みして言う。その眼光に刹那以外の全員が息を飲んだ。刹那は気にせずに千冬の方へと向かって来る。
「模擬戦をやるのは構わん。だが、アリーナのバリアを破壊する事態になられては教師として黙認しかねる。よって、今からトーナメントまでの間の私闘を一切禁ずる。良いな?」
「教官がそう仰るなら」
「お前達もだ・・・分かったな」
「はい」
「異論はありません。ですが・・・」
そう言って刹那がチラリと視線を向ける。それは一夏とラウラへと向かっていた。
「そこの馬鹿二人には重い罰を加えた方がよろしいかと」
「・・・そうだな」
「教官!?」
「待ってくれよ千冬姉!?」
「織斑先生だ馬鹿者が。まずはオルコット達を運ぶ方が先決だな」
千冬はそう言って、担架を二つ持って来た。それを使って二人を保健室まで運んだ。ラウラはそれに目もくれず、憎々しげに刹那達を睨んで去って行った。
三人称サイド終了
刹那サイド
保健室のベッドで、包帯と湿布まみれになったセシリアと鳳さん達から大体の経緯を聞いた。それに対し、僕は溜息を吐く。
「・・・馬鹿なの?」
「何ですっt痛たたたた!?」
「り、鈴さん!?」
僕の言葉に真っ先に血が上った鳳さんが反応して、激痛に悶え苦しむ。打撲してればそうなるよ。涙目になりながら睨み付けて来る鳳さんに苦笑しながら話を続ける。
「そんな安い挑発に乗る?普通」
「ぐっ・・・」
「模擬戦になるのは悪くないけど、君達は代表候補生なんだからもう少し行動に気を付けた方が良い」
「でもアイツは本気で許せなかったのよ・・・!」
「て言うかなんでそんなに怒ったんだよ」
「そ、それは・・・!」
一人、能天気に聞いた織斑に鳳さんは顔を紅くして俯く。セシリアも無言で俯いていた。そんな二人にデュノアさんが笑い掛けた。
「二人共、一夏達の悪口言われたから怒ったんだよね?」
「な、何言ってるのよ!?」
「ストレートにも程がありますわ!」
デュノアさんに対して二人で突っかかり、同時に痛みに悶える様子に何も言えなかった。僕はセシリアの横の椅子に座って言った。
「なに?僕の真似してボーデヴィッヒさんに色々言ったらしいじゃないか」
「そ、それは・・・」
「初見同然の相手に喧嘩売ったらダメでしょ。だからこうなるんだよ」
「仰る通りですわ・・・」
「全く・・・」
「せ、刹那さん?」
僕は思わずセシリアの頭を撫でていた。他人の事なのに・・・。
「僕の為に怒ってくれる気持ちは嬉しかった。でも、もう二度とこんな事をしないでほしい。僕の所為でセシリアが傷付く方が、僕は悲しい・・・」
「刹那さん・・・」
「一夏・・・は、無理か」
「何がだよ?」
横の二人が五月蠅いが、視覚と聴覚からシャットアウトしておく。暫くすると、廊下の方から幾つもの足音が近づいて来る。そして保健室の扉が開かれ、大量の女子がなだれ込んで来た。我先と近づいて来た女子達はそれぞれプリントを僕達に見せて叫んだ。
『織斑君、不動君、デュノア君、私と組んでください!』
そう言って差し出されたプリントは、数日後に行われる学年別トーナメントのペア申請書だった。このイベントでは二人一組でのトーナメント戦で、僕は誰とも組まずに抽選で決まった人と組もうと考えていた。
それかセシリア辺りと組む案もあったが・・・。
「お、俺はシャルルと組むから!刹那に頼むと良いぞ!」
「まあ、他の女子に取られるくらいならね」
「それじゃあ、刹那君!私と組んで!」
「悪いけど、僕は抽選で決めてもらうよ」
『え~?』
女子達に不満の声が広がる。そして渋々と言った様子で去って行った。
また一つ溜息を吐いて、僕は椅子へと座る。そして怪我人二人が抗議し出した。
「一夏!私と組みなさいよ!」
「刹那さん、私と組みませんか!」
「いや、鈴とセシリアは怪我人だから無理だろ」
「今だけは織斑に同意だよ」
「こんなの平気y「駄目です!」や、山田先生」
鳳さんの言葉を遮って山田先生が珍しく怒りの表情で入って来た。
「お二人のISのダメージレベルはCを超えています。当分は修理に専念する必要がありますし、なにより貴女達の怪我が治るまではISに乗せる訳には行きません」
「うぐっ・・・分かりました」
「・・・仕方ありませんわね」
その後も、セシリア達を何かと気にかけてから山田先生は帰って行った。そして事後処理で抜けていた織斑先生がボーデヴィッヒさんを連れて戻って来る。何故か篠ノ之さんが着いていたが。
「・・・篠ノ之、寮へ戻れ」
「何故ですか!?」
「当事者のみでの話しをするからだ」
「・・・分かりました」
何故僕を睨む。篠ノ之さんが去って行き、織斑先生が近くの椅子に座ると口を開いた。
「事情は大体聞いた。ボーデヴィッヒと織斑は反省文の提出と、トーナメントまでの間、放課後のISの使用禁止だ」
「教官!?」
「千冬姉!?」
その言葉に織斑達が何故?とでも言いたそうな顔をする。そして織斑先生が顔を顰めて聞いた。
「お前達は自分が何をしたか分かっているのか?」
「私はISをファッションか何かと勘違いしてる軟弱者達を叩き潰していただけです」
「俺は傷付けられてたセシリア達を助けただけだ」
「・・・この大馬鹿者共が!」
織斑先生の怒鳴り声が響く。何時もの様な怒り方ではない。感情を押し出した怒り方だった。
「おr、一夏。何故アリーナのバリアを斬った」
「えっ?」
「どうして斬る必要があったんだ?ピットから出れば良いだろう」
「だってあのままだったら二人がもっと危なかったじゃないか」
そう言って織斑は訳が分からないと言った表情を浮かべる。まさか、本当に気付いていないのか?自分のやった事に。
「お前がバリアを斬った事で客席に居た生徒達を守る術が無くなったんだ。今回は不動が防いだから良いが、あのまま銃弾が直撃していたら大惨事だ」
「でもそうしなきゃ二人が・・・!」
「ISのダメージはCを超えていたが、お前達が来るまでの時間位は持つ」
「いや、俺は・・・!」
「もういい。・・・ボーデヴィッヒ、何故織斑がバリアを破壊したと知りながら砲撃を続けた」
「目の前に敵がいたからです」
「巻き込まれた生徒の事を考えろ」
「そんな事は知りません。避けられないのならその程度だったと言う事でしょう」
その言葉に織斑先生は呆れた表情をして出て行った。それをボーデヴィッヒさんは追い駆けて行く。織斑はさっきからブツブツと呟いている。
鳳さん達もドン引きしてるじゃないか。彼女達は途中で気絶してたから知らなかったのだろう。織斑先生の話を聞いて、二人共顔を青くしていた。
「織斑、よく考えて行動しなよ」
「俺は・・・皆を守ろうと」
「皆って誰さ?」
「それは千冬姉や周りの皆だ!」
「・・・話にならない」
僕はそれを鼻で笑って歩き出す。織斑に肩を掴まれた。
「話にならないって何だよ!」
「未だに誰にも勝てない君が何を守れる?」
「守れるさ!俺には千冬姉から受け継いだこの雪片がある!」
そう言って僕に向かって待機状態の白式を見せる。
「自分の武器の特性すら理解出来ずに自滅した奴がよく言うよ」
「なんだと!?」
「また都合が悪くなったら殴るの?」
「このっ・・・!」
「落ち着きなさいよアンタ達!」
僕達を鳳さんが制する。織斑は僕を乱暴に離して不機嫌そうに去って行く。逆ギレされても困るんだけど・・・。
「怪我人の前で、ごめん」
「全くよ・・・」
「僕も帰るね。明日、お見舞いに行くから」
「それじゃあボクも。二人共、お大事に」
気まずくなった僕はデュノアさんと一緒に保健室を出た。廊下を歩きながら会話する。
「・・・必要な情報は揃ったよ」
「分かった。それじゃあトーナメント当日に決行だね」
「ん」
デュノアさんとの作戦を確認してから部屋に戻る。部屋では会長がお茶を飲んでいた。
「お帰りなさい。お茶、いる?」
「お願いします・・・」
「分かったわ。ちょっと待っててね」
そう言って湯呑にお茶を淹れながら会長が話し掛けて来た。
「貴方のクラス、問題児が多すぎじゃないかしら」
「もう耳に入ってたんですか?」
「生徒会の情報網を甘くみちゃ駄目よ。あんな事やこんな事だって、知ってるんだから」
妙に色っぽい声でウインクして来る会長に苦笑しながら差し出されたお茶を受け取る。それをゆっくり飲みながら今日あった事を愚痴った。それはもう愚痴った。
話して行く内に涙が止まらなくなって来た。嗚咽に近い声で話していると、会長に抱きしめられる。簪に抱きしめられて以来だったけど、温かくて不思議と心が落ち着いた。
「よく頑張ったわね。本当に・・・うん、本当に」
「・・・疲れた」
「よしよし、少し寝ましょう?」
「はい・・・」
頭を撫でられた僕はそのまま睡魔に負けて眠ってしまった・・・。
『いや、本当にもうあの子嫌い』
『どうします?処す?処す?』
『とりあえずアイツの携帯をハッキングして全ての情報を抜きとってやる』
『マスター、可愛そう・・・』
どこにでもある和室でお茶を啜りながら僕は3人の少女達と話していた。此処はISによって創り出された世界。眠っていると偶に此処に迷い込む事がある。
銀髪に帽子を被った少女がセシア、黒髪の刀を携えた少女が白鋼、ピンクの髪を大きなリボンで結んでいるのがラファールだ。
ぐだぐだとしていると、和室の襖が開いて黒い何も無い空間から金髪の執事服に身を包んだ女性が入って来た。
『あ、《ティアーズ》さん』
『お久しぶりです、不動様』
『修理は順調ですか?』
『はい。このままなら一週間と少しと言った所でしょうか』
『ボロボロだったからな』
ティアーズさん。つまりはセシリアのISであるブルー・ティアーズの人格である彼女は僕達に笑顔で答えてくれる。そして人見知りが激しいラファールは僕の背中に隠れて震えていた。
『すみません。この子まだ慣れてなくて』
『いえ。誰にでも得意不得意はありますから』
『そう言っていただけるとありがたいです』
『ヤッホー!甲龍ちゃん参上!』
『ひっ!?』
『ラファールが気絶した!』
『この人でなし!』
茶髪にシニョンを付けた少女、甲龍の人格が元気よく入室した瞬間にラファールの我慢の糸が切れた。目を回して倒れたラファールを介抱しながら、自分は眠っていても騒がしさの中から出れないのかと溜息を吐いた・・・。
刹那サイド終了