リリカルなのは×BLAZBLUE 無印編 作:シャケ@シャム猫亭
ラグナが月村家に居候を始めて、二日が経った。
ラグナの傷も癒え、服もまともなものになったので、元の時代に戻るための手掛かり探しに本腰を入れることになった。
そのためこうして、今後の予定を立てるため、忍と相談をしている。
「それで、どうするつもり?」
「前に、俺がこの世界に来た場所を調べたんだが、魔素の残滓があった」
この時代には存在しないはずなのに、だ。
つまり、存在しないはずの魔素が存在するところを調べれば、何かしらの手掛かりを得られるかもしれない。
とはいっても、闇雲に探しても見つかるとは思えない。
「階層都市カグツチへ行ってみるつもりだ」
「貴方がこの時代に飛ぶ原因になった「窯」という物がある所ね。それはどこにあるのかしら?」
忍の問いに、ラグナは地図の有無を尋ねる。
数分後には、ノエルが世界地図、日本地図、そして各県の地図を持ってきた。
「流石に200年前でも地図は変わってないか」
その中で、ラグナは世界地図を手に取った。
ついでに書き込むために赤の油性ペンも受け取る。
「まず、統制機構が建設した二十三階層都市ってのは、大体この辺りにある」
世界地図をテーブルに広げたラグナは、地図にペンを走らせる。
キュッキュッと音がして、世界地図に23個の円が書かれた。
ヨーロッパに6個、アジアに6個、北米に5個、中南米に3個、アフリカに2個、最後はオセアニアに1個。
因みに、日本には1個の丸が付いており、近くの韓国や中国辺りにも丸が4個ある。
また、ヨーロッパの6個の内、5個はアルプス山脈に密集していた。
「ずいぶん片寄っているのね」
「何でなんて言うなよ? 俺も知らねえ。んで、肝心のカグツチだが、ここだ」
「………中国かぁ。すぐには行けないわね」
「何か問題あんのか?」
「あるわよ。貴方の時代と違って世界政府なんてないから、国を跨ぐ移動には手続きがいるの」
特に身分証明できるもの、具体的にはパスポートが必須である。
だが、今のラグナにそんなものはない。
どうしても行くのならば密入国するしかないが、あまり良い手とは言えない。
それよりは、
「貴方の戸籍やパスポートが用意出来てからじゃダメかしら? それなら正規の方法で入国出来るし、厄介ごとが減るわ」
「どのくらいかかる?」
「そうね……一ヶ月、いや三週間かしら。それまでは、この日本にある階層都市を調べるのはどうかしら? ここにも「窯」ってのがあったのでしょう?」
「第十二階層都市ククノチか」
確かにそれまで何もしないのは、時間の無駄だ。
忍の意見は的を射ている。
ラグナはククノチの詳しい場所を特定しようと日本地図に手を伸ばしたのだが、忍がそれに待ったをかけた。
「先に、ここ海鳴市を調べてくれないかしら?」
「はあ? この街か?」
「ええ。貴方がこの世界に来るちょっと前から、いくつか事件が起きているの。それも、科学で説明できないようなものがね」
最初は河川敷にあった橋が比較的新しかったのにも関わらず崩れた。
続いて、市内にある動物病院前の道路が、何かに抉られたかのように破壊された。
極めつけは、街の中心部で突如として大樹が現れ、大規模な被害が出た事件である。
しかも、大樹は現れるのと同様に突如として姿を消したため、原因は全く持って不明。
そんなところに、未来からラグナが来たわけである。
「これを偶然と言える? 私は必然だったんじゃないかと思うわ」
「……確かに、何かしら関係があると考えんのが普通だな」
忍の考えに、ラグナは同意する。
だが、何にせよ、行ってみないことには始まらない。
「その事件があったところまで案内頼めるか?」
「んー……私はこれから大学へ行っちゃうし、ノエルは別に仕事があるし……夕方になら」
「んじゃ、この街の地図をくれ。場所さえわかれば一人で行ける」
ラグナは各階層都市の間を徒歩で移動していたのだ。
方向感覚だってあるし、星や太陽の位置から方角を割り出すことも出来る。
地図さえあれば、贅沢言えばコンパスも、まず迷わない。
そういったサバイバル関係の技術は、師匠に叩き込まれたおかげだ。
ほどなくして、ラグナは事件のあった場所がマークされた地図を貰ったのだが、忍の話にあった事件の数と比べ、マークの数が一つ多かった。
それと、一緒に茶封筒も渡される。
「おい、これは何だ?」
「治療費の請求先に関する書類よ。貴方、海鳴大学病院を勝手に抜け出したんでしょ?」
病院では無銭飲食ならぬ無銭治療になっているはずである。
代わりに払うんだから書類を届けるくらいしなさいと言われ、ラグナは従うしかなかった。
…………………
…………
…
月村家を出発して一時間。
まずラグナが最初に向かったのは、街の中心部。
大樹が出現し、街に大規模な被害が出たところだ。
ここでは、他の所と違って、確実に科学で説明できないことが目撃されている。
そのため、何かしらの手掛かりが残っている可能性が一番高いと判断したのだ。
そして、そのラグナの推測は当たった。
「やっぱり、魔素が漂ってやがる」
数日前に起こったことなので、街は未だにあちこちが壊れたまま。
一部の建物などは倒壊の危険があるからと立ち入りが禁止されている。
奇跡的に死者は出なかったらしいが、それでも被害は甚大である。
「っと、手早く調べねえと。魔導書が全部吸っちまう」
そう、先ほど魔素に触れた途端、蒼の魔導書が周囲に漂っている魔素をどんどん吸収し始めた。
まるで、砂漠で水を求めるかのように。
その吸収速度は遅いと言えるものではなく、早くしなければ術式の痕跡も分からなくなってしまう。
だが、心なしか、蒼の魔導書の存在感が増した気がする。
ラグナは足早に魔素の濃いところを歩いて回り、それを地図にマッピングしていく。
すると、やはり大樹が出現したという所を中心に、まるで根を張るかのように、放射状に魔素が分布していた。
それに、魔素の濃いところは大抵破壊痕があったため、やはり大樹は魔素によって出現したものだとラグナは確信を持つ。
だが、一つ、魔素の分布に妙なところがあった。
大樹の中心から、まっすぐに伸びる魔素のライン。
他の魔素は、大樹を中心に無秩序に広がっているのに、これだけは違う。
それに、角度的に空に向かって伸びている。
「………いや逆に、空から大樹に向かって真っすぐに伸びているのか?」
残念ながら、ラグナは空を飛べないため、ビルを伝いながら魔素のラインを追ったのだが、それは唐突に空中で途切れていた。
しかし、この魔素は他のところと毛色が違うことははっきりと分かった。
「術式まではわからねえが、直線的な、ビームみたいなのだな」
それが、空中から大樹に向かって放たれ、それにより大樹が消滅したと考える方が自然だ。
そしてその推測は、次に向かった動物病院で確信に変わった。
すでに半分近く修繕が済んだ後であったが、ここでも直線的に伸びる魔素のラインがあり、それは破壊痕をなぞる様に伸びていた。
いや、むしろこの破壊は、この魔素によってもたらされたのだろう。
そうなると、考えなければならないのが、
「いったい誰が、この時代に無いはずの魔素を使って術式を発動してんだ?」
もしや、ラグナと同様に未来から飛ばされた人なのか。
だとしても、どうやって魔素を発生させているのか。
そもそも、この術者の目的は何なのか。
その答えは、ラグナがいくら考えても出てきやしなかった。
「……とっ捕まえるのが、一番早いな」
考えて分からないなら、本人に直接聞けばいい。
幸いにして、この不可思議な事件は全て海鳴市で起こっている。
ならば、次もこの街で起こると考えられるし、術者もこの街に潜伏している可能性は十分にある。
そう結論を出したラグナは、日が傾いてきたこともあり、月村邸に戻ることにした。
夕食の席で、ラグナは事件の見解を忍に報告する。
忍は術式のことはわからないが、次の事件もこの街で起こるということと、その事件の関係者がこの街に潜伏しているだろうという点で同意。
最近この街に引っ越してきた者の洗い出しを行うと共に、次の事件が起きた際に直ぐに動けるよう街に人員を配置することになった。
因みに、術式が理論立った「技術」ということで忍が大変興味を示し、ラグナに講義をせがんだのだが、如何せんラグナは術式を「使う」ことに慣れてはいても「教える」ことに向いておらず、忍は術式理論の十分の一も理解できなかった。
余談だが、書類を病院に届けるのを忘れたラグナは、大いに呆れられたのであった。
階層都市の位置は、オンラインモードと設定資料を参考にしました。
そういえば、誤字等の報告が無い。つまり、誤字が無いってこと?
あと、設定等に間違いがあったらご指摘を。
書くべきこと書いたし、やっと戦いに入れる………