リリカルなのは×BLAZBLUE 無印編   作:シャケ@シャム猫亭

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VS 恭也

「………来たか」

 

 

 

 週末。

 ラグナは忍に連れられえて、高町家の持つ道場へ来ていた。

 先日に交わした恭也との約束を果たすためである。

 道場の扉を開ければ、目を閉じ正座して精神統一をはかっていた恭也が、脇に置かれていた木刀を手に取り、ゆっくりと立ち上がった。

 

 

 

「この日を待ちわびていたよ」

「そーかよ」

 

 

 

 心底嬉しそうにしている恭也とは反対に、ラグナは面倒臭そうに答える。

 そんなラグナの元に、道場の脇で立っていた男性が話しかけた。

 

 

 

「君が、ラグナ君だね。今日は息子が世話になるよ」

 

 

 

 その言葉に、ラグナは男性に目をやる。

 十分に引き締まった身体は一切の無駄がなく、にこやかな表情を浮かべつつもこちらの一足一刀を見逃さない瞳。

 明らかに、強者である。

 

 

 

「おっと、自己紹介がまだだったね。高町 士郎(たかまち しろう)だ。今日は立会人を務めさせて貰うよ」

「……ラグナだ」

 

 

 士郎は握手をしようと手を出したが、ラグナはそれに取り合わない。

 少し残念にしながら士郎は手を引っ込める。

 そこへ、恭也が様々な種類の木刀を持って現れた。

 

 

 

「ラグナさん、好きなのを使ってくれ」

 

 

 

 模擬戦用の木刀を用意していないラグナへの気遣いであったが、ラグナはそのどれも手に持とうとはしない。

 

 

 

「いらねえよ、こんなもの」

「………どういうことだ?」

 

 

 

 訝しげに聞く恭也に、ラグナは腰に差した己の大剣を叩いて言う

 

 

 

「俺はコイツを使う。テメェも自分の得物でやれ」

「……真剣か」

「まさか、寸止めが出来ないなんて言わねえだろうな」

「それこそ、まさかだ」

 

 

 

 恭也は木刀を士郎に渡すと、壁に掛かっていた小太刀を一本手にとった。

 そして、胴着の腰に差すと、するりと刀を抜いて、ひと振り。

 銀閃が煌き、軌跡を残した。

 感触を確かめた恭也は、小太刀を鞘に収めると、道場の中心でラグナを待つ。

 その様子に、ラグナはため息を一つ吐くと、いつもの赤いジャケットを脱いで忍に押し付けた。

 

 

 

「巻き込まれたくなけりゃ、限界まで下がってろ」

「言われなくてもわかってるわよ」

 

 

 

 道場の隅まで忍が移動したのを確認し、ラグナも道場の中央へ移動する。

 そして恭也から3メートルほど離れたところで向き合った。

 

 

 

「負けた時の言い訳は用意したかよ?」

「必要ない。そのときは、ただ己が未熟だったというだけだ」

 

 

 

 恭也は小太刀を正眼に構え、ラグナはいつでも大剣を抜けるよう、柄に手を沿えたまま腰を落とす。

 道場の空気がリンと張り詰め、お互いの息遣いすら聞こえそうなほどの静寂が降りる。

 二人の準備が整ったのを確認した士郎が、模擬戦の開始を宣言した。

 

 

 

 

 

「RAGNA=THE=BLOODEDGE」 VERSUS 「KYOYA TAKAMACHI」

 

 

 

THE WHEEL OF FATE IS TURNING

 

 

 

ACTION

 

 

 

 

 

 先に動いたのはラグナだった。

 一歩で間合いを詰めると同時に、腰の大剣を順手で抜いて左袈裟斬りに振り下ろす。

 恭也はそれを右に沈み込むようにして避けると、下からすくい上げるようにラグナの首筋へ一閃を返すも、ラグナは上体を反らすことで回避。

 追撃に恭也が流れるように足払いを仕掛け、飛んで避けたラグナはお返しに突き出すような蹴りを放つ。

 避けるには体勢が悪い恭也は、これを左腕で防ぎ、自身も後方に飛ぶことで勢いを殺す。

 空中で蹴りを出したのもあり、大したダメージにはならなかった。

 すぐにお互いに体勢を整えると、始めと同様に武器を構える。

 

 

 

 今度は恭也が先に動いた。

 ラグナと違い、恭也の踏み込みはトンッと軽い音であったが、その鋭さは恭也のが上だ。

 上段から唐竹割りに振り下ろされた小太刀を、ラグナは逆手に持った大剣で受け止める。

 続いて左一文字に振られた小太刀をラグナは一歩下がることで避け、お返しに大剣を逆風に振るうも恭也は半身になることで避けた。

 大剣を振り上げたことで空いた胴に突きを入れようとするも、ゾワリッとした感覚に襲われた恭也は途中で中断、咄嗟に横へ飛べば、強引に切り返された大剣が数瞬前に恭也がいたところを通過した。

 

 

 

「っち」

「今のはヒヤリとしたよ………」

 

 

 

 また、お互いが構え直して仕切り直しになる。

 

 

 

「それにしても、スゴイな。大剣をそこまで自在に振るうなんて」

 

 

 

 それと、先程の突きが来ているのに繰り出した、強引な切り返し。

 

 

 

「肉を切らせて骨を断つような戦い方だな」

「……間違っちゃいねえな」

 

 

 

 ラグナは蒼の魔導書のお陰で、多少の怪我は瞬時に治る。

 そのため、ダメージ覚悟で攻撃することはよくあった。

 もっとも、今は蒼の魔導書はほぼ機能していないのだが、そう簡単に身についた戦い方は変えられない。

 

 

 

「そろそろ本気で行くぜ」

「望むところだ!」

 

 

 

 ラグナの言葉に、恭也は嬉しそうに返す。

 

 

 

 ラグナは大剣を肩に担ぐように持ち変えた。

 先程よりもラグナから発せられる圧力が、より攻撃的なものになる。

 恭也は後の先を取るべく、小太刀を逆手に持ち直して中段に構えた。

 

 

 

 ダンッという音と共にラグナが弾丸のように踏み込んで、その勢いのまま大剣を振り下ろした。

 先程よりも早い動きであったが恭也は反応し、小太刀で逸らすように受ける。

 だが、正面から受けていないにも関わらずラグナの一撃は重く、恭也の手を痺れさせた。

 受けるではなく躱さなければならないことを悟った恭也は、続いて繰り出された突きは身体を捩ることで避け、そのまま回し蹴りを打つ。

 ラグナはそれを、更に恭也に踏み込むことで蹴りの打点をずらし最小限のダメージへと変えると、大剣を手放して恭也の胸ぐらを掴んだ。

 

 

 

「オラァ!」

「くっ!」

 

 

 

 ラグナは力技で恭也を宙へ投げ飛ばずと、すぐさま大剣を手に取り、恭也に追撃を入れるために飛ぶ。

 

 

 

「インフェルノディバイダー!」

 

 

 

 ラグナの下からすくい上げるよう斬撃を恭也は小太刀で受け止め、続く脳天への踵落としも両腕を交差させて防いだ。

 しかし、勢いまでは殺せず恭也は床に叩きつけられる。

 

 

 

「がはっ!」

「ベリアルエッジ!」

 

 

 

 ラグナが突きと共に恭也へ落下してきたが、恭也は既のところで転がって回避し、そのまま距離を取ってから立ち上がった。

 ラグナは床に刺さった大剣を抜くため、それを追おうとはしなかった。

 

 

 

「くっ、やっぱり強いな」

 

 

 

 一足一刀は、そう鮮麗されているわけじゃないし、隙だって当然ある。

 けれど、それを補ってあまりある力強さと、何よりも圧倒的な実戦経験がラグナにはあった。

 

 

 

「けど、今度はこっちの番だ」

 

 

 

 前に廃ビルで戦った時は、神速を見切られた。

 ならば、より早い一撃を。

 恭也は小太刀を鞘に収めると、ラグナに対し半身になり腰を落とした。

 深く息を吸って、ゆっくりと吐く。

 

 

 

「御神流奥義」

 

 

 

 恭也の意識は極限まで集中し、まるで時が止まったかのようにまで感じる。

 同時に、肉体のリミッターを外し、人間の限界まで力を引き出す。

 恭也の目には、世界の色が抜け落ちて白黒の世界と化した。

 他の者が動かぬ世界で、ただ一人、動く。

 ここまでは、普通の神速だ。

 これだけでは、この程度の速さではラグナは追いついてくるのは、すでに知っている。

 だから、恭也は小太刀を鞘に収めたのだ。

 

 

 

「虎切」

 

 

 

 神速の世界の中、鞘走りを使用した最速の斬撃を放つ抜刀術。

 恭也の使える技のなかで、一番の速さを持つそれは、防がれることなくラグナの首へと迫り、

 

 

 

「そこまで!!」

 

 

 

 立会人を務めていた士郎の声と同時に、首から数ミリのところでぴたりと止まった。

 

 

 

 勝った。

 

 

 

 恭也の胸に喜びが湧いてくる。

 しかし、それも士郎の次の言葉で変わる。

 

 

 

「この勝負、引き分けだ」

 

 

 

 何故と言いそうになるが、恭也はすんでのところでその言葉飲み込む。

 そして改めてラグナに向き直る。

 恭也の小太刀は、確かにラグナの首筋にある。

 だが、ラグナの大剣も恭也の胴から数ミリのところにあった。

 先程は自身の技に夢中で気付かなかったが、それは丁度、抜刀によって伸びた腕によって生まれた死角から繰り出されたのだ。

 そう言えば、自分で言ったのではないか。

 ラグナの戦い方は、肉を切らせて骨を断つのだと。

 喜びは一転、悔しさに変わる。

 勝ったと思ったこと、それこそが未熟な証だった。

 けれど、同時に清々しさもある。

 

 

 

「……ありがとうございました」

 

 

 

 恭也は小太刀を収めると、きれいな一礼をした。

 

 

 

 

 

「ラグナ君だったね。今日はありがとう」

 

 

 

 あれからすぐに恭也は鍛錬に戻った。

 先程の戦いを己の中で反芻し、虚空のラグナに向かい剣を降っている。

 

 

 

「別に、半分は喧嘩だ」

「いやいや、だとしても恭也と同格の相手はなかなかいないからね。いい刺激になっただろう」

 

 

 

 現に恭也は、ああして剣を降ってる。

 

 

 

「さっきの戦いで、二、三個聞きたいことがあるんだ」

「……んだよ?」

「ラグナ君の右腕、無くしたのは最近かい?」

 

 

 

 あれだけの戦いをしていたのにも関わらず、ラグナ君の重心はまるで右腕があるかのように取っていた。

 それは、蒼の魔道書が腕になっていたからなのだが、今は無い。

 

 

 

「よければ、重心の矯正を手伝おうか?」

「いらん。そのうち腕ももと通りになる」

「もと通り………ああ、義手を付けてたのか」

 

 

 

 そんなに間違ってはいないので、ラグナは士郎の言葉を訂正しなかった。

 まあ、魔道書のことを説明するのが面倒だったのが大きいのだが。

 

 

 

「もし、万全な状態になったら、恭也ともう一戦して上げてくれ」

「それは、アイツをぶちのめせってことか?」

「いや、そうじゃない。うちの流派は小太刀二刀流なんだ」

 

 

 

 間違いなく、恭也は本気だった。

 だが、それは小太刀一刀での本気だ。

 

 

 

「……ナメた真似しやがって」

「どうだろう、やる気はあるかな?」

 

 

 

 無論と言いたいところだが、正直、いつ蒼の魔道書が起動出来るようになるかはわからない。

 仕方がなく、機会があればと言うに留まった。

 

 

 

「最後の質問だが、ラグナ君の剣を振る理由は、復讐だね」

 

 

 

 ラグナの目をしっかりと見て、士郎は問う。

 しかし、最早質問ではなく、断言だった。

 そして、それは間違いではない。

 ラグナが剣を取り、統制機構に反逆するのは、復讐と拐われた弟妹を取り戻すため。

 決して正義を背負っているわけではない。

 

 

 

「だとしたら、何だよ?」

「復讐は何も生まない。いや、復讐が唯一生むのは、悲しみだけだよ」

「だから?」

「僕が見る限り、ラグナ君はまだ戻れるところにいる。止める気はないのかい?」

「―――ッ! 知った口をッ!!」

 

 

 

 ラグナは士郎を怒鳴りつけようとするが、すんでで留まる。

 ギリギリと食いしばった奥歯が音を立てた。

 士郎の言葉は「正しい」のだろう。

 けれど、ラグナにとって「正しい」ことは、既に自身の進む道を選ぶ基準になりえない。

 

 

 

「帰る!」

 

 

 

 吐き捨てるように言うと、ラグナは足早に道場を後にした。

 忍は追ってこないが、この道場から月村家までは大した距離ではない。

 道も覚えている。

 ラグナは胸中に苛立ちを抱えながら歩き始めた。

 




色々書きたいことあるから、箇条書きで。

・お気に入り100名超えました。ありがとうございます。

・話数ごとのUA見たら閑話のViVid編が一位だった。もしかして、無印よりViVid編の方が需要ある? まあ、ViVid編はギャグだから書いてて一番楽しかったんだけどね。
 ………いっそ、ViVid編を立ち上げるか?

・戦闘描写の勉強したい……そもそも私の書く戦闘描写が上手なのか下手なのかもわからん。

・卒業がかかってるので、二月中頃まで更新止まるかも。

・ハーメルンにある小説って、一話あたりの平均文字数が4000文字ちょっとなんだって。私も頑張ってそのくらいにしたいなぁ。

2017/5/11追記 無事卒業、就職しました。が、研修中はネット環境どころかパソコンもないので更新出来てません。ホントすみません。
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