リリカルなのは×BLAZBLUE 無印編 作:シャケ@シャム猫亭
「手間かけさせんじゃねぇよ」
「下等……生物がぁ!」
二対一の状況であっさりと勝利したラグナは、氷村の腕の関節をきめると背中を踏みつけ、床に拘束した。
氷村はもがき抜け出そうとするも、その度に激痛が走る。
「貴様、夜の一族たる僕にこんな真似して、ただで済むと思ってるのか!?」
「テメェ程度の雑魚が「夜の一族」ってなら、束になっても俺に敵わねえよ」
ラグナにとって氷村は、本当に力が強いだけだった。
それなら、まだそこに転がっている自動人形が束になって襲って来る方が脅威だ。
「それよりも、知ってること全部吐いてもらうぜ」
「……ふん、誰が貴様なんぞに」
素直に答えないと見るや、ラグナは力を込めて背中を踏み潰す。
ベキリッと肋骨が折れ、氷村は悲鳴を上げる。
「ガアアアアアアアアァァアッ!!」
「いいから答えろや。テメェは吸血鬼なんだな?」
「う…ぐぅ……そ、そうだ。僕とそこにいる月村の娘は「夜の一族」、人の上位種たる吸血鬼だ」
夜の一族。
その昔、吸血鬼は欧州に拠点を置き、暮らしていた。
しかし、その強靭な肉体や吸血行為から周囲に恐れられ迫害を受ける。
徐々に人間に勢力を奪われ、ついには欧州を脱出し流浪の民となった。
そうして散り散りになった吸血鬼の一部が、日本に流れ着き裏社会をまとめ上げた。
こうして日本に拠点を置くことになり、彼らは「夜の一族」と呼ばれるようになる。
「次だ。レイチェル=アルカードは何処にいる?」
「グウウッ………し、知らん!」
「……フンッ」
「ガアアアアァァァァァ!! ほ、ホントに、本当に知らないんだ! 真祖アルカード家の当主はクラヴィス=アルカード様だ。レイチェルなど聞いたこともない!」
「クラヴィス………?」
ラグナにクラヴィス=アルカードという名は聞き覚えがない。
だが、吸血鬼でアルカードというファミリーネーム。
無関係とは思えない。
「そのアルカード家ってのは?」
「……我々吸血鬼の中でもっとも力を持ち、今や数少ない純血の一族だ。迫害の歴史を物ともせず、未だ欧州に拠点としている」
「……なるほどね」
収穫としては上々。
レイチェルの何代前かは知らないが、レイチェルと同等の力を持つ吸血鬼ならば、ラグナが元の時代に戻る方法を持つかもしれない。
よしんば無かったとしても、手掛かりくらいはあるだろう。
そうとわかれば、どうやって渡りをつけるかだ。
「次の質問だが……」
「ちょっと、アンタ!」
ラグナの言葉を遮るように、アリサが声を上げた。
「ったく………なんだよ?」
「いい加減これ外しなさいよ!」
見れば、アリサとすずかが、手錠などで背中合わせになって拘束されている。
そういえば、二人は人質になっていたのだ。
まあ、こいつが馬鹿なおかげで、人質としてはまったく用をなさなかったが。
「っち……おい、鍵は何処だ?」
「………自動人形が持っている」
ラグナは脇に転がっているメイドに目を向ける。
胸を貫かれているが血は流れておらず、替わりに何だかよくわからない透明な液体と、複雑に入り組んだ機械が見える。
「だってよ」
「拘束されているのに取りに行けるわけないじゃない!」
「あの……お願いします」
「…………はぁ」
ラグナはため息を一つ吐くと、氷村の後頭部を蹴りつけた。
そうして気絶したのを確認すると、メイドの元まで歩み寄る。
「しっかし………良く出来てるな、これ」
外見は人間と見分けがつかない。
氷村の言葉と、蹴った時の感触で自動人形と分かったが、普通に会ったら分からなかっただろう。
鍵を探すためとは言え、彼女の服をあさってると妙な気分になる。
「変なところ触るんじゃないわよ?」
「するか、馬鹿! ………お、これか」
メイド服のポケットから、チャラリと音がして鍵の束が出てくる。
それを持ってラグナは二人に近寄る。
二人は後ろに回した腕と足に金属製の手錠がされ、体を背中合わせにして縄で縛られていた。
「まずは、縄を解く………めんどくせえ、切るから動くなよ」
「え、ちょ、きゃあ!!」
結び目が固く、解くのが面倒になったラグナは、ブラッドサイズを振るい、縄を切った。
だが、大剣を目の前で振るわれて怖くないはずがなく、アリサは悲鳴を上げた。
「な、何すんのよ! 危ないじゃない!!」
「傷一つ無いんだから気にすんな」
「するわよ!!」
「はぁ………何で俺はこんなのを助けちまったんだ」
煩わしいアリサの抗議を聞き流しつつ、先にすずかの拘束を解いた。
「あ……えっと、ありがとうございます」
立ち上がり、ペコリと頭を下げるすずか。
そんなすずかに、ラグナはアリサを指差して言う。
「アイツ、あのままじゃダメ?」
「あ、あはは。と、解いて欲しいかな」
その答えを聞いたラグナは、仕方がないかとアリサの錠も外して解放した。
「い、一応、お礼を言っておくわ」
「そーかい」
アリサの言葉に、ラグナは気のない返事を返す。
「ほら、さっさと行けよ」
「え、あの、ラグナさんはどうするんですか?」
「俺はもう少しアイツに聞くことがあるからな」
すずかの問に、ラグナは気絶している氷村を指さして答える。
コイツからはアルカード家の場所などを吐かせなければならない。
「あの、出来れば私の家に来て欲しいんですけど……」
「あん?」
「えっと、ですね。「夜の一族」ってのは一応秘密になってまして。ラグナさんはそれを知ってしまったので、その……と、ともかく、詳しい話をするためにもお姉ちゃんに会って欲しいんです」
「……そういや、お前も吸血鬼だったな。お前はレイチェルを知らねえか?」
「い、いえ……どんな方なんですか?」
「赤目ゴスロリ金髪ツインテールで性格が最悪の女だよ」
「あ、あはは………お姉ちゃんは「夜の一族」当主なので、もしかしたら知ってるかもしれません」
「当主ってことは、アイツより詳しいのか?」
「多分……」
その答えにラグナは少し考える。
一応、妹の命の恩人ならば、手荒な歓迎はないだろう。
このままアイツに尋問するより、楽に情報が手に入るかもしれない。
それにここで尋問してても、下の黒服共が起きる可能性がある。
そうなると二回戦が始まり、厄介だ。
「分かった。案内しろ」
「あ、迎えを呼びま………携帯が無いや。アリサちゃんは?」
「アタシのもないわ。大方、何処かに捨てられたんでしょ」
最近の携帯はGPS機能が付いていて、居場所が簡単に分かってしまう。
誘拐犯がそれを警戒しないはずがない。
「す、すみません。多少歩きますが、大丈夫ですか?」
「ガキのお前らより体力はある」
本当は貧血の状態で連戦をこなした為、かなり疲労がある。
だが、それを言うのはあまりに情けないし、多少歩く程度なら問題はなかった。
そうなると、あとの問題は氷村と下の黒服たちのことだ。
このままではいずれ気絶から覚めて逃げてしまう。
だが、たとえアリサたちに付けていた手錠を使って拘束しても、氷村なら力ずくで引きちぎり、逃走されてしまうだろう。
「コイツらはどうs」
そのことについて相談しようとして、ラグナは不自然に言葉を切った。
「? どうしたのよ?」
「静かにしろ」
アリサが見れば、ラグナは真剣な表情で廊下の方を見つめる。
腰に差した大剣に手をかけ、腰を落とす。
「……下がってろ」
「う、うん」
ラグナの言葉にすずかは頷き、アリサと共に壁まで下がった。
すでにラグナは臨戦体勢で、意識を研ぎ澄ましている。
ラグナの直感とこれまでの戦闘経験が、こちらに向かってくる強敵を捉えた。
今度の敵は、さっきまでの雑魚とは違う。
いつでもブラッドサイズを抜ける状態で、ラグナはじっと待つ。
そしてついに、廊下から敵の姿が見えた。
それと同時に、何かを感じ取ったラグナは大剣を抜き放つ。
「っちぃ!!」
見えなかった。
見えなかったが、感じ取ったラグナが振るった大剣が、敵の小太刀と鍔迫り合いをする。
「神速を見切った!?」
己が技を見切られたことに驚嘆しつつも、男は隙を見せない。
お陰でラグナは鍔迫り合いから抜け出せないでいる。
「クソッ!」
埓が明かないと見たラグナは、隙が生まれるのを承知で蹴りを繰り出す。
それを片手でいなした男は、逆にラグナに蹴りを入れた。
その蹴りを放つかわりに小太刀が鍔迫り合いから外れ、ラグナは大剣を盾にして蹴りを受け止めた。
だが、蹴りの衝撃を逃せず、数メートル後ろへと滑べる。
しかし、そのお陰で二人の間に距離が開き、仕切り直しが出来た。
「っは! やっとこさ骨がある奴が出てきたな!」
「……そっちこそ。まさか神速を見切る奴がいるなんてね」
「伊達に場数は踏んでねえよ」
再び、両者の間で緊張が走る。
お互いの間合いを確認し、すり足でゆっくりと縮めていく。
そうして緊張が最大まで高まり、今まさにお互いが切りかかろうとしたとき、
「スト―――プ!!」
アリサが静止の叫びと共に、二人の間に割り込んだ。
「二人ともストップ! 敵じゃない、敵じゃないから!!」
「アリサちゃん!? それににすずかちゃんも! よかった、無事だったのか!」
「……んだよ、早く言えよ」
アリサとすずかを見た男は小太刀を下げ、ラグナもまた大剣を腰に収めた。
一発触発の空気はあっさりと霧散する。
その様子にアリサはへなへなと座り込んだ。
「恭也さん、ラグナさんは私たちを助けてくれたんです」
「そうだったのか! すまない、どうやら恩人に刀を向けてしまったようだ」
「あー、まあ気にすんな」
「そう言って貰えると助かる」
「ラグナさん。彼は恭也さんといって、えーと……」
すずかが恭也のことを何て説明しようかと悩んでいると、ラグナが先に言った。
「ボディガードか何かか?」
「あー、まあ大体そんな感じです」
「
小太刀を腰の鞘に収めた恭也は、ラグナに向かってきれいなお辞儀をした。
「恭也さんは、どうしてここに?」
「
もっとも、すでに氷村たちはラグナに倒された後だったが。
「迎えに関してはすでに呼んでいる。二人共、先に帰ってくれ。ラグナさんも、同行して貰えますか」
「わーってる。もとからそのつもりだ」
その言葉に恭也は頷くと、懐から携帯を取り出し氷村の後始末をするべく連絡を取り始めた。
それを見たラグナは先に外に出ようと歩き出したのだが、アリサに裾を掴まれた。
引き止めたアリサは、何かを我慢したかのような表情で呟く。
「…………の」
「何やってんだ、いくぞ」
「……てないの」
「あんだよ?」
「―ッ!! 腰が抜けて立てないの!!」
大声で言い切ったアリサは、羞恥で顔が真っ赤になっていた。
先程、二人の間に割り込んだアリサは、二人の殺気を直接ではないにしろ受けてしまった。
そのせいで腰が抜けたのだ。
「………ぷっ! ハハハハハハハハハハ!! こ、腰が抜けて立てない! くくくくっ!」
そんな様子に、ラグナは腹を抱えて大笑い。
すずかも困ったようにしていた。
「わ、笑うな!!」
「いや、だってよ………ププッ!」
「――ッ!!」
そんな二人を見かねたのか、すずかがラグナに言った。
「あの、アリサちゃんを運んで上げてくれませんか?」
「ククッ! わーったよ、ほら」
「っきゃ!?」
ラグナはアリサの腰を掴むと、ヒョイと持ち上げ肩に担いだ。
まるで米俵の担ぎ方に、アリサは女の子の運び方じゃないと抗議するが、ラグナは聞く耳を持たず、すずかと共に外へ向かうのであった。