リリカルなのは×BLAZBLUE 無印編 作:シャケ@シャム猫亭
「まずは、姉としてお礼を言わせてもらうわ」
応接室でラグナ達を出迎えた
その拍子に、すずかと同じ色の髪がさらりと溢れる。
「妹とその友達を助けてくれてありがとう。ラグナのお陰で二人は傷一つなくこうして無事でいる。いくら感謝しても足りないくらいよ」
またもや向けられた真摯な言葉に、ラグナは居心地が悪そうにする。
本当は単に照れているだけなのだが。
「礼はもういい。とっとと本題に入れ」
「そう……なら、まずはラグナが二人を助けた経緯について、お聞かせ頂けるかしら? 恭也からは、貴方が助けたとしか聞いてないから」
「別に、コイツらが目の前で拐われて、借りがあったから助けた。そんだけだ」
「借り?」
「あー、4日前か? コイツらが道でぶっ倒れていた俺を見つけて、病院に連絡したらしい」
病院で会った女医によれば、かなり危険な状態だったとのこと。
ラグナはその時のことを覚えていないが、アリサとすずかは命の恩人と言えるだろう。
「まあ、後は………ほっといたら目覚めが悪そうだったからな」
「目覚め………ふふっ。貴方、良い人ね」
「はあ? 突然なに言ってやがる」
ラグナの言葉を聞いた忍は、クスクスと笑いだした。
だって、そうでしょう?
覚えていないのに恩を感じて、目覚めが悪いなんて理由で助けに走る。
口も態度も悪いのに、根っこはすごいお人好しなのだ。
外と中が違いすぎて、思わず笑ってしまう。
「気に障ったなら謝るわ。それよりも、もう少し詳しく経緯を聞きたいのだけれど」
「詳しく、ねぇ」
ラグナは左手で、自身の白髪をクシャリといじる。
偶々、町で二人に会ったので道案内を頼んで。
終わった矢先に、目の前で二人が拐われて。
残っていた黒服の男をボコった後、二人を助けるために男を尋問して行き先を吐かせ。
町外れの廃墟についたら黒服共が警備していて、忍び込むのも面倒だから正面突破。
二人の所にたどり着いたら、氷村って男と自動人形のメイドが居て。
吸血鬼だって言うから、自身が欲しい情報のためにもボコった。
結果、すずかとアリサは助かったというわけだ。
その後、勘違いした恭也と戦う羽目になったのだが。
「正面から氷村と自動人形と戦って、勝った?」
「本当だよ、お姉ちゃん」
「ええ。傍から見ていたけど、圧勝だったわね」
信じられないという忍に、すずかとアリサは本当だと肯定する。
「それに、恭也さんとも互角だったよ」
「あれは………思い出したくないわ」
アリサは苦々しい口調でそういった。
すずかは互角だったといったが、ラグナとしてはそうは思わない。
若干であるが、ラグナが押されていた。
それは、貧血と疲労が重なったために、ラグナの動きがいつもより鈍かったせいだ。
万全の状態で戦えば、蒼の魔道書は無いが、その時こそ互角で戦えるだろう。
「それで、ラグナは氷村との戦いの時に「夜の一族」について知ったのね?」
「ああ、そうだ」
ラグナは忍の問に、肯定を返した。
それを聞いた忍は、一度息を吐く。
「ラグナ、貴方は「夜の一族」について、どう思うの?」
「どうって、別に何とも思わねえよ」
「何にも? 恐ろしいとは思わないの? 私たちは人間じゃない、俗に言う「化物」なのに」
「化物って言ってもな……お前ら「夜の一族」ってのはあの氷村って奴と同等の力くらいしかねえんだろ?」
「ええ、むしろ単純な力だけなら、恐らく氷村の方が上だと思うわ」
「正直、拍子抜けなくらいだ。俺より弱い奴のどこを怖がれってんだ」
「ひょ、拍子抜け…………?」
「大体、俺が知ってる吸血鬼は、どうでもいい時に転移して来て煽ってくるわ、自在に風を操って空を飛ぶわ、それでもって少しでも気に障ると俺に向かって雷をバカスカ落としてくるんだぜ?」
「は? え? 雷?」
「おう………あー、思い出したら腹立ってきた」
あの性悪ウサギめ。
帰ったら、ぜってぇ泣かす。
「コホン。その話は同じ吸血鬼として気にはなるのだけど………ラグナ、アリサちゃん、「夜の一族」のことを知ってしまった貴方達には、選んでもらわなければなりません。秘密を決して漏らさず盟友として共に生きるか、それとも全てを忘れて日常へと帰るかを」
「あん? どういうことだよ?」
「私たち「夜の一族」は人間とは違い、強靭な肉体と頭脳を持つ。けれど、私たちは身を持って知っているわ。人間の強さを迫害という形でね」
「………それで?」
「だから、私たちは吸血鬼であること知られてはならない。もし、万が一知られた場合は、秘密を漏らさないよう暗示をかけて盟友として共に生きるか、私たちのことを全て忘れてもらうしかないの」
「そんなの、決まってるじゃない!!」
忍の言葉が終わると同時に、アリサが立ち上がる。
そうして、すずかに向き合い手を取ると、強い声で言った。
「アタシは、アリサ=バニングスはすずかの盟友になるわ!」
「アリサちゃん………」
その言葉を聞いたすずかの瞳から、涙がぽろぽろとこぼれ出す。
「ああ、もう、泣くんじゃないわよ。あの時も言ったけど、吸血鬼だなんてちっぽけな理由でアタシがすずかの親友を止めるわけないじゃない」
「うん………うん! ありがとう、アリサちゃん」
すずかは泣きながら、笑った。
それを見たアリサは、ポケットから取り出したハンカチですずかの涙を拭った。
そうして数分が経ち、すずかが落ち着いて。
ラグナが答える番になった。
「ラグナ、貴方の答えを聞かせてもらえるかしら?」
「どっちも断る」
この答えに、アリサとすずかは呆気に取られた。
一方で忍は、静かに聞き返す。
「……どういう意味かしら?」
「盟友も記憶消去も断るって言ったんだ。お前らの事情に縛られる気は無い」
「なら、強制的に記憶を消すわよ?」
「はっ! やってみろよ。言っとくが、そこにいるノエルとやらじゃ俺には勝てねえよ」
気配を消してラグナに近づこうとしていたノエルを、ブラッドサイズに手を伸ばすことで牽制する。
そのせいで、ノエルはそれ以上近寄れなくなった。
この場に恭也が居れば、対等に戦えただろう。
それでも、逃げに徹したラグナを捕らえることは難しいに違いない。
「ノエル、必要ないわ。ラグナはすでに私の「眼」を見た」
その言葉を聞き、ノエルは下がる。
忍の魔眼が発動したのならば、ラグナはすでに暗示の術中。
ならば、ノエルがラグナと戦う必要はない。
そうして、忍はラグナの眼をしっかりと見つめ、決定的な言葉を吐く。
「ラグナ、「夜の一族」のことを全て忘れ、日常に戻りなさい」
大きな声ではなかった。
しかし、しっかりと部屋中に響き渡る。
ラグナはその言葉を聞き、数秒反芻した後、口を開いた。
「断る!」
「っな!?」
ラグナの発した、力強い否定の言葉に忍達は驚愕した。
「まさか、魔眼が発動しなかった!?」
「いや、テメェの魔眼とやらは確かに発動したぜ」
「なら、何故!?」
「悪いな。暗示とか洗脳とか、俺、そういうの慣れてんだわ」
ラグナは、世界情報統制機構にたった一人で反逆している男。
「死神」と呼ばれるSS級の犯罪者として、その首には史上最高額の賞金がかけられている。
そして同時に、世界最強と呼ばれる魔道書「蒼の魔道書」を右腕に宿していることから、統制機構や賞金目的の咎追いだけでなく、魔道書を求める者たちからも常に狙われ続けている。
そんな中で、圧倒的な力を持つラグナに対し、搦手で来る者がいないはずがない。
洗脳や暗示系の術式は、搦手のなかではある意味ポピュラーで、何度も受けたラグナは解除の術式を使わずとも対抗出来るようになっていた。
「これは……困ったわね」
「そうかよ」
「ええ。でも、貴方を殺すのはかなり厳しそうね」
恭也と同等の相手なんて、正直絶対に敵に回したくはない。
無事に済む保証なんて、これっぽっちもないからだ。
どうしたものかと、必死で思考を凝らす忍に、ラグナは一つの提案をした。
「取引だ。黙っておくかわりに、情報をよこせ」
「……それは脅しと言うのよ?」
「わーってるよ。黙っておく担保に、俺の持つ情報をやる。あまり他人に知られたくないことだ」
「…………いいでしょう。月村家の名にかけて、貴方の欲しい情報を渡すことを約束します。そのかわり、貴方の持つ情報の概要と、信じる根拠を先に言いなさい」
その忍の提案にラグナは頷くと、至極あっさりと言うのであった。
「俺は今から約200年後の、2199年から来た。つまり、担保は未来の情報だ」
説明回とか、書くの苦手です