では、お願いします。
無事にジョーイを見つけ、ルイズは寧夢に脱出する方法を尋ねる。
「入る時はたれっとを囮にしてたけど、出る時も同じようにするの?」
「ダメよ、外のは壊されちゅうやろうし、さすがに中じゃ作れへんしね。」
寧夢がそう言うのを聞き、ルイズの脳裏に嫌な予感がよぎる。
「まさか、無理やり出るつもり?」
「才人やったらやるやろうけど、ウチはもっとスマートに行くわ。ま、少し待っちょこ。手はずやと、少ししたらバット隊が攻めて来ることになっちゅうから。」
それを聞いたルイズは盛大なため息をつきそうになる。
寧夢の言うとおりとすれば、彼女はバット隊の攻撃に乗じて脱出するか、またはバット隊が勝利するまでジョーイを連れて逃げ回るつもりなのだ。
順当に考えれば前者なのだが、危険極まりないのに変わりはない。
ルイズが落胆している中、ジョーイは寧夢に尋ねる。
「それ、約束したの市長?」
「うん?ちゃうよ、ここの攻撃命令された隊長はん。」
これにジョーイはルイズと同じくらい落胆する。
「ん?どないしたん?」
「何でもないわ・・・」
寧夢はジョーイのため息の理由がわからないまま、攻撃開始を待ち続ける。
30分後。
「どうして始めんとよ!?」
「ちょっとネム?そもそもムチャな話だったけど、何も起こらないじゃないの!?」
「ふたりとも、しーっ!」
騒ぐルイズと寧夢を、スーパーミュータントの小太郎が止めるという状況に、ジョーイが呆れながら仲裁に入る。
なお、この30分の間に二回、見回りのスーパーミュータントが来て、小太郎がごまかしているのである。
「あのねぇ、寧夢ちゃん?市長だったら曲がりなりにも約束は守ると思うわ、けど下っ端の隊長に言っても、市長が圧力かけて自分の好きなように筋書きを書き変えるに決まってるでしょ?」
「う・・・見誤ったわ、どないする?」
寧夢はジョーイにそう尋ねる。
「多分ね、私が考えつくならもうここにいないわよ。」
「う~ん・・・やったら、小太郎は?」
「オラのうしろにかくれていくのは?」
「横や後ろから見られたらアウトやろ?」
ジョーイ、小太郎の順で今後の方針を尋ね、ルイズに番が回ってくる。
「ルイズはん、何か考えつかん?」
「わたしに聞かれても・・・そういえば、さっき使った蜃気楼起こす道具は?」
「ステルスボーイ?いや、これ裸になっても三人が限界やからね・・・それよ!」
寧夢は手を打ち、メイド服を脱ぎ、下着姿になると義手も外してしまった。
健康的な肉体が惜しげもなくさらされ、ルイズは目をそらしながら抗議する。
「ちょ、ちょっとコタローもいるんだし、そんなカッコ・・・」
当の小太郎は寧夢に背を向け、見ないようにしている。
「さ、ジョーイはんとルイズはんも脱いで。ウチのステルスボーイ、裸やったら三人までいけるけん!」
「待ちなさい、仮にそうしてもステルスボーイはずっと起動できるわけじゃないわ。寧夢ちゃんも義手外してギリギリなんでしょ?万一の時、どうするの?」
ジョーイがそう尋ねると寧夢はルイズの背中を軽く叩いて答える。
「そこはルイズはんの出番や!」
「え?わたし?」
「義手外した分と、ルイズはんが小まいからピストル一丁と下着くらいん余裕あるわ。ルイズはんやったらピストルでも、スーパーミュータントにヘッドショットかますくらいわけあらへんやろ?いざっちゅう時は頼むわ。」
「いや、でもコタローは?」
「スーパーミュータントやけん、動き回っても怪しまれんやろ?」
寧夢がそう言うとジョーイも首肯し服を脱ぐ。
「ッ!?」
ルイズはジョーイの身体を見て絶句した。
大きな胸にくびれたウエスト、安産型のヒップに見惚れたわけではない、服で隠れている部分に残る生々しい傷跡を見たからだ。
寧夢にもあることにはあるが、ジョーイの銃痕、丸型の火傷痕、刃傷痕に比べれば大したことはない。
「ん?あ、ゴメンね?ちょっと見苦しい身体してて。」
「え、いや、そんなことは・・・」
「目立たないようには治してもらったけど、酷すぎたのはこんな風になっちゃってね。」
「治してもらったって?」
「ダンナよ。」
これにルイズは思考停止する。
「ジョーイさんって結婚なさってたんですか!?」
「ええ、10年くらい前に、技術も知識もなかった私を州で二番目の名医にしてくれた人よ。」
そう言ったジョーイは懐かしむような顔をする。
余談だが、彼女の言う一番は当然夫のことだ。
「ウチに義肢をつけるための手術してくれたんもそん人よ。そういえば最初に手術受けた時はジョーイはん、まだおらんかったよね?」
「寧夢ちゃんの歳からしたら、最初の手術の時はまだ立ち会わせてもらえないような見習いだったわよ。それより、ルイズちゃんも早く脱いで。」
割り込んできた寧夢と話すジョーイがルイズに促すが、ルイズは脱ごうとしない。
「その・・・わたし、胸の・・・」
「そやった、ルイズはん、ノーブラやったわ。ちょっち待ってん。」
寧夢は一度外した義手をつけ直し、ジョーイが囚われている独房のベッドにかけられたボロボロの布を取ってきて、適当な長さ、広さに切る。
「はい、脱いで。」
「え、ええ。」
ルイズが恥ずかしがりながらメイド服を脱ぐと、寧夢は切った布をルイズの胸にきつめに巻いた。
結果、ルイズは胸にサラシを巻いたようになる。
「動くの考えたらウチらもこうした方がええかんしれんね。ジョーイはんのから作るけん、ブラ外して待っちょって。」
寧夢はそう言うと、ルイズに巻いた布より大きくもう一枚作り、ジョーイの胸にも巻いていく。
そして最後に自分の分を作ると、それをジョーイに巻いてもらう。
「・・・クッ。」
ジョーイ、寧夢、自分の順で胸を見たルイズが悔しそうに声をもらす。
ルイズはもともと小さかった胸が少年のように平らになってしまっているのに、寧夢は押さえても裸ならば隆起がわかるくらいに主張しており、ジョーイに至っては押さえつけているにも関わらず女らしさを主張しているのだ。
「もういいか?」
「うん、終わったわ。」
寧夢が小太郎にそう言うと、小太郎は振り向くがやはり目をそらす。
「しっかし、ホンマに変なミュータントやね。女の裸なんか普通のやったらキョーミあらへんやろ?」
「あ、そうそう、この子ね、どうもこの辺りのスーパーミュータントじゃないみたいなのよ。」
「ん?どゆこと?」
寧夢がジョーイにそう尋ねると、ジョーイは簡単に説明する。
「どうも戦争のころに作られたFEVを接種したみたいでね、どっかのバカが作った粗悪品でスーパーミュータントになったのと違って人の感情が強いみたいなのよ。それも多分、元は10歳くらいの子供。まあ女の子に興味持つころよ。」
「あら、じゃあ少し刺激が強いなぁ。まあ、オネーさん達の見る分にはタダやけん、堪能しちょき。」
「ルイズ、ねむがいじめる!」
「メソメソしないの!それよりわたしはどうして大丈夫なのよ!?」
「ルイズ、オラくらいだろ?」
「もう怒るのも面倒だから怒らないでおいてあげるけど、寧夢より歳上だからね、わたし!」
州に来て貧乳ネタを幾度となく取り上げられるルイズは、いい加減怒るのも馬鹿らしくなりはじめているのである。
「いつまでもふざけてないで、脱出の手はずを決めるんでしょ?」
ジョーイがそう言って三人の注目を集める。
「そやった、まずさっき小太郎に見てきてもろたけど、北門は地雷処理の爆音で寄ってきたみたいで外はとても通られへん。西門は遠すぎるし隠れる場所がない。東門は北門に近すぎるけん・・・」
寧夢は古ぼけた子供の落書きのような地図を指して説明する。
この地図は『緑の園』が戦前、開園していた頃のパンフレットである。
「南門を抜けようと思うわ。」
「ちょっとネム?南門って正門でしょ?一番守りが堅いんじゃないの?」
「そこがミソや、たしかに南門は堅牢やし、スーパーミュータントも多い。けんど門が壊されたら連中はローチの巣つついたみたいになるやろ。そのスキにドロンっちゅうわけよ。」
それを聞いたルイズは内心、
『結局ムチャやるのね。』
と落胆し、ジョーイは寧夢に疑問となる部分を尋ねる。
「門壊すって爆薬か何かにあてはあるの?門開閉機の燃料タンクを壊すにしても、ピストルじゃ無理よ?」
「そこはルイズはんに任せといて。アレは見た方が早いけん。」
言うまでもなく寧夢はルイズの失敗魔法の威力に頼ろうとしている。
ルイズは『門を壊す』と聞いたあたりで想像はしていたので軽く首肯して了解した。
作戦の要項としては、まず小太郎はルイズ達の荷物を持って脱出、あらかじめ早苗に通信で合流するよう伝え、ルイズ達三人は南門から脱出して早苗と小太郎に合流するのである。
「じゃあでる。またあとでな、ねえちゃんたち。」
「ええ。それじゃね、コタロー。」
独房を出た四人はすぐ別れ、小太郎は頭上を通るトロッコに沿って歩いていき、ルイズ達は小太郎から教わった、普段は彼が見張っている扉を目指す。
「さ、行くで。ジョーイはんはウチと腕組んで、反対の手でルイズはんと手ぇつないで。」
寧夢の言うとおりにジョーイが寧夢と腕を組み、反対の手でルイズと手をつないで、ルイズは開いた手に銃を持って杖はショーツに挟む。
それを寧夢が確認すると彼女はステルスボーイを起動した。
一般的なステルスボーイは使い捨てだが、このステルスボーイは冷却、充電によって複数回使用することができる。
休憩をはさみながらであれば十分、外に出ることができる。
そして二回目の休憩で、入口に青い鳥の像が立つ建物にルイズ達は飛び込んだ。
長い年月風雨にさらされ色落ち、風化している青い像は、コミカルな顔をしているが青い鳥のモデルである『ペンギン』を知らないルイズには『デスクローの類』の像が門番のように立っているように見えていた。
「・・・って、寒!?」
建物の中に入ってステルスボーイが解除されルイズが最初に発した言葉はそれであった。
無理もない、この建物の中は業務用冷凍庫よりも低温に設定されているのだから。
「ね、寧夢ちゃん、どうしてここ、中継地にしたのかしら?」
「ウ、ウチもまさか動いとると思わんかったんや・・・」
ガタガタと足踏みしながらジョーイの問いに寧夢が答える。
緑の園がまだ人間の居住地だったころ、この建物は食料保管庫として使われていたため、現在でも設備が生きているのである。
人が住んでいた頃の食糧など食いつくしているだろうと寧夢は考えていたが、いまだに起動していたのだ。
下着姿の三人にとってこの建物の冷気は『冷たい、寒い』などというものは通り越して『痛い』と感じるほどである。
だがそんな状況でもルイズは、そういった感覚より好奇心の方が勝っていた。
この『極地を再現した建物』は自然氷穴をイメージしているため、機械を隠すために氷に似せた目隠しを置き、壁やそれらに霜がついては凍りを繰り返したため、本物の氷穴のように見えるのだ。
ハルケギニアでも水のメイジが氷の彫刻を魔法で作ることはある。
しかし、そういった人工物ではなく、自然にできたものに近いこの建物の中はルイズにとって新鮮だったのだ。
「(母さまみたいに風の魔法が使えたらなぁ・・・)」
風のメイジであればこのような寒い場所でも体の周りに空気の層を作り、冷気を遮断することができるのである。
ルイズが思い描く自分のメイジの姿は二つある。
一つは母のような騎士姫、名を聞いただけで敵が退くとまで言われる英雄たる風のメイジ。
もう一つは医者である水のメイジ。
あらゆる病を治す水のメイジになり、トリステイン中のメイジが匙を投げるほどの難病である次姉、カトレアの病を治すことである。
「(そういえばジョーイさんもお医者さんなのよね?心構えとか教わりたいわ。何にしても、まずはハルケギニアに帰らないといけないんだけど・・・)」
考え事をしながら歩いていたルイズは寧夢達から離れてしまい、あるものを発見してしまう。
「(あら?何かしら、あの赤いの?)」
ルイズは赤くて丸い『何か』に歩み寄り、それを見たことを全力で後悔した。
「~~~ッッッ!!!ッッッ!!!!!」
悲鳴をあげないようには口を押さえ、寧夢達がいる、来た方へと逃げ帰ると、ルイズを探しに来た寧夢達に鉢合わせた。
「ルイズはん、勝手に離れたらいけんよ?」
「し、した、したした、した!!したい!!」
取り乱すルイズがやっとの思いで『死体』と言ったのを聞いて寧夢はこの建物が動いていた理由に思い至る。
「なるほどな、ヤツらもここ、冷凍庫にしちょったわけやね。ルイズはん、どこにあったん?」
ルイズは寧夢に、死体を見つけた方を指差し、三人でその方へ歩いていく。
「・・・やってくれたものね、あいつら。」
ドスのきいたジョーイの声にルイズは戦慄をおぼえる。
その声は先ほどの『優しい女医さん』とは正反対の、『修羅、悪鬼羅刹』と形容すべきものであった。
「あの、ジョーイさん?」
「今は弔えないけど、許してね?」
ルイズがジョーイの顔を覗き込むと、とても『修羅、悪鬼羅刹』の類いとは思えない、優しい顔立ちをして死体に手を合わせており、ルイズもそれにならう。
「さ、そろそろ出られるけん、入口に行くよ。」
二人のように手を合わせていた寧夢がそう言うと、死体に背を向け入口に向かう。
極寒の建物を後にしたルイズたちは南門付近の建物の陰に隠れる。
南門付近はやたら殺気だったスーパーミュータント達が闊歩し、木製の大きなこん棒を素振りしたり、銃を手入れしたりしている。
完全に臨戦態勢だ。
「ルイズはん、あの門の上、赤いタンク、わかる?」
寧夢が指す赤くて丸い、金属製と思われる『樽』をルイズも見る。
樽から管が門の端の機械に繋がっており、樽から機械までルイズの失敗魔法の射程内に入っている。
「タンクから開閉機までのどこかを吹き飛ばして。そしたら全部まとめて爆発するけん。」
「わかった・・・『フレイムボール』!」
ルイズはいつもより長く詠唱し、ファイアボールの上位魔法、フレイムボールを唱えるがいつものように、正確にはいつもより大きな爆発が管を吹き飛ばし、一拍遅れて樽、機械が爆発し、門が崩落する。
「(近くで見るとすごい威力やな・・・マイアラークを一撃で殺す威力といい間違いないわ、ルイズはんのコレ、対消滅や!)」
寧夢がルイズの失敗魔法に一つの仮説をつけていると、予想どおりスーパーミュータント達は騒ぎ始めた。
外からの攻撃と考えて彼らが飛び出そうとした瞬間、一発の銃声と野太い声が響く。
「ギャアギャアわめくんじゃねぇ、カスどもが!!」
銃声にスーパーミュータント、そしてルイズ達も遠巻きながら注目する。
声の主はひときわ目立つスーパーミュータントであった。
顔には血管を思わせる赤い入墨をして、人間の頭蓋骨で作られた首飾りをつけ、腰に巻いた毛革にも、おそらく食った人間から奪った装飾品を結びつけているその個体は、一目でリーダーだとわかる。
「クマゾウのアニぃ、ドういうコってすか?」
「外からはタンクをうてねぇ、門をこわしたってのに何もしてこねぇし、さっきもタレットばかりだったろ?まちがいねぇ、ネズミが入りこんでやがる!」
「ネズミ?モールラット!?あいツはちんみわらばぁ!?」
クマゾウの言う言葉を勘違いしたスーパーミュータントが殴り飛ばされる。
「バカやろう、ニンゲンに決まってんだろ?スパイがまぎれこんでやがるんだ!」
「っしゃあ!!ナんびキいるンだ!?」
「オれはウデもらウぜ!!」
スーパーミュータント達は嬉々として緑の園の内側に散開し、ルイズ達を探し始めた。
「ウソやろ、あのリーダーも、もしかして・・・」
「小太郎と同じ・・・頭が回るトコからして、元は小太郎より歳上ね。」
寧夢とジョーイがそうやってリーダー、クマゾウの行動の理由に当たりをつけていると、ルイズが横から尋ねる。
「ちょ、ちょっと、じゃあアイツは人間の考え方のまま、あんなヒドイことしてるっての?」
「ま、そうなるわね。動機はわからないわ、無理やりスーパーミュータントにされて、ヤケ起こしたのか、もともとそういう性質なのか。でも、それは大した問題じゃないわ。」
ジョーイの言うとおり、今、問題なのはどうやってスーパーミュータントの捜索をかいくぐって外に出るかである。
彼女達の武器は今、ルイズのピストル一丁と失敗魔法だけ、正面突破は無謀である。
「とにかく、ここまでと同じように限界までステルスボーイで行こ?効果が切れたら一気に走る。」
「
「ら、らじゃ?」
寧夢の言うとおりにする以外に方法がない三人はここまでと同じようにステルスボーイで姿を隠し、練り歩くスーパーミュータントの合間を縫うように歩く。
寧夢の義手が本来ある場所をスーパーミュータントの持つこん棒がすり抜ける。
ジョーイの髪に銃剣の先が引っかかり、少しだけ髪が切り落とされて地面に散らばるがスーパーミュータントは気づかない。
ルイズの尻とスーパーミュータントの膝が触れ、ルイズが小さく『ヒャン!?』と悲鳴をあげるとスーパーミュータントも『どコだ!?』と周囲を見回すが他のスーパーミュータント以外見えないため、『キのセいか。』と捜索に戻る。
瓦礫に足をかけ、寧夢、ジョーイ、ルイズの順で登っていく。
寧夢、ジョーイはなれたものだが、ルイズはそうはいかない。
もともと裸足で歩くことが無かったため、ただでさえ足場の悪い瓦礫の上でもたついてしまっている。
姿が見えていないにもかかわらずジョーイが、ルイズの動きに合わせて引き上げてくれるためルイズもどうにか登れているが、やはりなれない彼女にはつらいものがあった。
「あ!?」
ガラッと音がして、ルイズが足を踏み外す。
ジョーイはとっさにルイズの腕を強くつかみ、落下を防ぎ、結果として寧夢がジョーイに引っ張られる。
寧夢はとっさに義手で瓦礫からのびている鉄骨をつかもうとしたが空を切る、当然だ、今、彼女は義手を外しているのだから。
「チィッ!」
寧夢は一段瓦礫を降りることでバランスを取り、一安心かと思いきや、ステルスボーイのベルトが瓦礫に引っかかって切れてしまったのだ。
無情にもステルスボーイは瓦礫の山のふもとまで転がっていってしまい、三人はスーパーミュータント達に半裸を惜しげもなくさらしてしまった。
「走りやあぁぁぁ!!!」
「ルイズちゃん、ちょっとゴメン!!」
ルイズはジョーイに担ぎ上げられ、寧夢が先導して瓦礫の山を越え、それにルイズを担いだジョーイが続く。
「ごめんなさい、わたしのせいで!!」
「や、ルイズはんは悪ないけん、そんなことより後ろ!狙わんでええけん撃って!!ヤツらん足、止めたって!!!」
ルイズは寧夢の言うとおり、瓦礫を越えてくるスーパーミュータント達に向かってマシンピストルを撃って牽制する。
スーパーミュータント達は撃たれることで多少足を止めるが、ピストルは彼らの強靭な肉体には効果が薄く、構わず突撃しながらマシンガン、ライフルを撃ち返してくるのである。
「どうなってんのよ、アイツら!全然効いてないみたいじゃない!?」
「少しでも足が止まれば儲けもんや!続けたって!!」
「そうは言っても弾丸が・・・」
ルイズは残弾が少なくなって冷や汗を流し始める。
弾丸がなくなればスーパーミュータント達は距離を詰めてきて、彼女達を捕まえるだろう。
その後は生きたまま引き裂かれるか、丸焼きにされて喰われるかのどちらかだ。
「早苗、言うちょったスーパーミュータントと合流できた!?」
『それが、それらしいスーパーミュータントは見ておりません、時間になりましたのでご主人さまたちとの合流地点に向かっておりますが・・・』
「何をしとっとね、小太郎は!?」
「寧夢ちゃんの車も機関砲ついてるんでしょ?とにかく、車まで向かいましょ!」
「ええ、こっち!!」
寧夢は狭い路地に飛び込み、ルイズを担いだジョーイもその後に続く。
路地は一本道で、建物に窓はなく、タイミング的に回り込むことは不可能であるため後ろだけ警戒すればいいのである。
「ハアッハアッ・・・あと少し?」
ジョーイは息が上がり始めており、それは先導する寧夢も同じであった。
「そや、あと少しやけん、がんば・・・ヒャアアアァァァ!!!」
一瞬の気の緩みが命取りとなる場合は多々ある。
寧夢は足元の注意を怠り、スーパーミュータントの狩猟用罠を踏んでしまったのだ。
足にロープをかけ、逆さ吊りにするその罠で、寧夢はよりによって生身の左足を吊り上げられてしまったのだ。
義足ならば最悪切り離すという手段も取れたが、生身の足はそういうわけにはいかない。
「ネム!!」
ルイズはジョーイの上で体を起こして、寧夢の足を縛る縄を狙い撃ち、寧夢は背中から地面に叩きつけられた。
「とんだタイムロスや、ゴメンね。」
「いいわ、ミスなんて誰でもあるしね。それよりネム、走れる?」
「走らな死ぬんや、当然やろ!!」
寧夢は足を引きずりながら歩く。
「ダメじゃない!ジョーイさん、わたしは大丈夫だから、ネムを!」
「ダメや!ウチのことはええ!!一人でもどげでんなるけん!!」
寧夢はそう言っているが、無策なのは誰が見ても明らかだ。
「バカなこと言わないの!ホラ!!」
ジョーイは寧夢も担ぎ上げて走るが、女の力で二人も担ぐのは厳しく、スーパーミュータント達が追いすがってくる。
三人が『ここまでか』と思ったその時、スーパーミュータント達の前に大岩が落ちてきて彼らの進路をふさいだ。
路地にピッタリとはまった大岩を壊そうとスーパーミュータント達が攻撃を始める。
「まにあった・・・」
建物の上からの声を聞き、ルイズ達が上を見上げると、小太郎が建物の横についた管をつたって降りてきた。
「コタロー?どうしてここに?」
「さなえとかいうロボット、いってたとこにいなかったからこっちにきた。」
「遅れたのね?」
「ごめん・・・」
「寧夢ちゃん、結果オーライでしょ?連中は足止めできたし、寧夢ちゃんの義手もルイズちゃんのライフルも返ってきたんだから。」
「ウ・・・ワナにかかってもうた手前、言い返されへんな・・・」
話しながら寧夢が義手を着けなおし、ルイズがスナイパーライフルを組み立てると、岩が割れ、スーパーミュータントのリーダー、クマゾウが顔を出した。
「コタロウ、テメェ何しやがんだ、コラ!!」
「ヒッ・・・くまぞう・・・」
小太郎はルイズ達三人の後ろに隠れてしまう。
「ちょうどいい、そのメス、三びきともそこでころせ、そしたらなかまだってみとめてやるよ!」
「・・・だ。」
小太郎はクマゾウの脅迫に小さく答える。
「あ゛?聞こえねぇぞ?」
「いやだ、そんなことしたくない!!」
小太郎の答えに、クマゾウは持っていた大斧を岩に叩きつける。
「じょうとうじゃねぇか!コタロウ、テメェのきもちはよぉくわかった!!ぶっころしてローチのエサにしてやっからそこうごくんじゃねえぞ!!」
クマゾウはさらに激しく岩を殴り、小太郎はルイズ達の後ろで縮こまってしまう。
しかしそれにルイズは微笑みを浮かべ、小太郎を撫でた。
「よく言ったわ、コタロー。ただ、あの群れを出ると決めたなら、自分の決めたことは最後まで通すのよ。」
ルイズは先日、才人に子供を殺すように命じられ、それを突っぱねた自分を小太郎と重ねたのだ。
否、小太郎はいつも自分を害してきたボスに反抗したのだ、自分によくしてくれていた才人の命令を突っぱねたルイズよりさらに勇気がいったことであろう。
そしてもう一つ、小太郎が考えたであろうことを、ルイズは汲んでやることにしたのである。
「すうううぅぅぅ・・・ん!!」
大きく息を吸ったルイズは呼吸を止めると共にスナイパーライフルを撃った。
V.A.T.S.は使わず放った銃弾は、吸い込まれるようにクマゾウへ飛来し、顎に当たるとクマゾウは岩に突っ伏すように倒れ、さらにもう一発、上空へ向けて放つと今度は建物の屋上にあった瓦礫を壊し、道をさらにふさいだ。
「!?ころしたのか?」
「いいえ、脳を揺らして気絶させただけよ。さ、急ぐわよ。迂回されても面倒だしね。ジョーイさん、ネムをお願いします。」
ルイズはそう言って先導に回り、小太郎は聞こえないほど小さな声でルイズの背に呟いた。
「・・・ありがと、ルイズねぇ。」
一歩下がってジョーイは寧夢をいわゆるお姫さま抱っこで抱えてついていく。
「確かに、ルイズはんの撃ち方やと気絶させただけで間違いないやろうけど、どうしてなんやろ?小太郎かてあのボスにいじめられとったらしいやんか。」
寧夢はジョーイにそう尋ねる。
「小太郎だって、何だかんだ言っても仲間が死ぬのは見たくないだろうから、あえてあのボスを生かしたんでしょ。どちらにしてもあの市長のことだから今ごろ、総攻撃を始めてるでしょうし、ヤツらは皆殺しにされるでしょうけど。」
ジョーイの言うとおりであった。
ルイズは小太郎が岩を投げ込んだ時、ボスに直接ぶつけなかったことから、『人間だけでなく同族も傷つけることを避けている』と考えたのだ。
その気持ちを汲んで、せめて自分の手では殺さないことにしたのである。
もっとも、人間にとって害悪であるスーパーミュータントの群れを城郭街が野放しにしておくわけがないこと、結果として連中が駆逐されることもわかっていたが、それでも小太郎の目の前で、自分の手で殺すよりはいいと考えたのだ。
「とにかく、依頼は達成や、帰って市長に報告せんとな。」
早苗と合流して、ルイズ達は服を着ると寧夢は運転席に乗り込み、ルイズは助手席に、ジョーイ、早苗、そして小太郎は寧夢が急ごしらえした荷台に乗り込んだ。
廃材から作った荷台を強引にロードファイターに繋げたものだが、作り自体はしっかりしており、城郭街までなら問題ないというのが寧夢の言である。
荒野を行くロードファイターに乗る者達は各々、これからのことについて考えた。
ルイズは当然、ジョーイが持つ資料にハルケギニアに帰る手がかりがあるかどうか、ジョーイは小太郎をどうやって街に置けるよう取り計らうか、寧夢はルイズについての仮説を整理し、小太郎はジョーイの街についたら、どんなものを育てようかと。
ルイズ、どんだけ狙撃上手いんや。
暴れるスーパーミュータントのアゴにかすらせて脳震盪起こさせるとか、そのうち『ルイズ13』になるんじゃ・・・
用語解説?
極寒の建物
結局、このロケーションで使えたのってジョーイが囚われていた『怪物を閉じ込めた屋敷』と冷凍庫になってたこれだけでした、すみません。
やっぱり印象が強かったのがこれなんですよね。
あの中はホントに『寒いより痛い』でした。
ここ、Falloutと、必要ならばゼロ魔の解説なのにこれでいいのかな?