東方英雄伝 ~ラノベの主人公が幻想入り~ 【完結】 作:カリーシュ
―少し前
―妖怪の山 麓
side魔理沙
「―起きるんだぜ!? 文! 文!?!」
突然気絶した文を咄嗟に掴む。
原因は分かりきっている。
あの黄色い奴が、どうやってか頭に衝撃を叩き込んで来たのだ。
一体どうやって―
―いや。 今はそれどころじゃない。
「文ぁ……早く起きるんだぜ……!」
何とか文を引き寄せ、箒に跨る。
少しでも
だが、それでもなお、少しづつ、引き寄せられる。
「くぅぅぅぅぅぅっっっ!?!?
き、キツイんだぜ……!」
―私は、此処で死ぬのか?
今までの人生で、危ない橋は何度も渡った。
人里を飛び出して、魔法の森に住み始めた頃。
初めて、妖怪に鉢合わせた時。
初めて、異変の解決に乗り込んだ時。
怖かった。殺されると思った。不安だった。
人里の人間だった自分は、やっていけるのか?
目の前の妖怪は、スペルカードルールがちゃんと理解出来ているのか?
自分が負けたら、どうなってしまうのか?
霊夢と
―勝てない。
霊夢に、全然勝てない。
どんなに努力しても、
どんなに頭を捻っても、
どんなに喰らい付いても、
何時しか、妖怪を軽々と圧倒出来るようになっても。
異変解決者として恥ずかしく無い実力を手に入れても。
あの『天才』には届かなかった。
それが、心残りで―
「……って、私は何を考えてるんだぜ? これじゃ走馬灯なんだぜ!?」
―心残りと言えば、『アイツ』は、
『遠山キンジ』は何処に行った?
ある日、魔法の森を死人同然の状態で彷徨っていた、外来人。
何故かは分からないが、自分と似た力を感じた、同い年か、少し年上の少年。
トリガーは少々変わっているが、女性によって一気に強くなるという、物語の主人公のような能力を持っていた、武偵。
アイツは、今何処に―
「!?!? うわ、と、と、と、」
竜巻の側で見つけたから焦ったが、引き込まれた訳では無いらしい。
竜巻に拳を打ち込んでいた。
紅魔館の化物剣士や、天狗、聞いた話では、伝説の鬼とすら戦って、生き抜いた拳なら―
グォン、と、寺にある鐘を殴ったような鈍い音が聞こえる。
キンジの拳は、当たり前の様に弾かれていた。
「―っ! 文! 起きるんだぜ!! キンジを助けに行かないと―」
瞬間、
魔力の爆発、としか表現出来ないような衝撃が走ると同時に、
―グワァァァッッッッッッッ!!!!
堅いものに、無理矢理穴を穿つような爆音が響き渡った。
「……は?」
見れば、キンジの右手が、
竜巻の風の流れに、突き刺さっていた。
「………は、ははは…………滅茶苦茶過ぎるんだぜ………
………?」
あそこまで行ったなら、後は楽勝、
そう思っていた。
竜巻の中で、鮮血に塗れている右手が見えるまでは。
「アイツは霊夢クラスの天才だから、どうせなんだかんだで無事に帰ってくる」、そう思っていた。
アイツだって、霊夢だって、それこそ咲夜や上条だって『人間』なのに。
ふと、アイツの顔が見えた。
キョロキョロと、まるで飼い主を見失った子犬のように不安げな表情で、何かを探していた。
私のマスパの残留魔力をアイツの視線が辿り始めた頃、私はやっと、気がつけた。
……相手に対して、天才だとか、才能だとか、種族だとか、適当な言い訳を言って壁を作っていたのは、自分だったんじゃないか?
もちろん悔しいが、霊夢には、弾幕ごっこの才能があって。
アイツには、格闘や打撃の才能があって。
皆に、それぞれ多種多様な才能があって。
―それならそれでいいじゃないか。
私にだって、私が1番優れていることだってあるだろう。
何も、1つに拘る必要は無い。
人間も、妖怪も、1人では生きていけない生き物なのだから。
「……でも私は、今から死ぬんだよなぁ……。
冥界行き、ならいいな。 それならまた皆で、バカ騒ぎして―」
マスパに注ぎ込んでいた魔力が切れる。
せめて最後くらい、女の子らしくいたかったな。
今更あの男みたいな口調を直す気は無いが、せめて、アイツが私のことを―
side文
黄色い服のナニカの攻撃を受けて、気絶してから―
一瞬か、それともそれなりの時間が経ったのか、
イマイチ状況が把握出来ない状態で感じ取ることが出来たのは、暴力的なまでに強大だった暴風が、収まっていたことだった。
「…あやや。 となると此処は彼岸ですかねぇ?」
どっこいしょ、と上体を起こすと、
何が起きたのか想像もつかない程、デコボコになった地面が目に映った。
次いで、消耗しきった顔で、静かな寝息を立てている魔理沙。
最後に―
「………あの世ですかね此処は? 私としては、せめて最期はカメラと運命を共にしたかったんですけど」
「
―まだ死んでねえから安心しろ。
……向こうの気紛れで、が付くけどな」
寝惚け眼で銃口を辿ると―
あの、黄色い服のナニカが、佇んでいた。
「ふぁ?…………―っっ!?!?」
一気に頭が覚醒する。
「え? ゑ?? ちょ、何でこうなったんですかさっきの竜巻どうしたんですか何で私の髪がカチコチになってるんですかて言うかキンジさん右手ぇぇぇぇえ!?!? す、すぷ、スプラぶぴッちょタん!?!?!?」
「…取り敢えず落ち着こうか」
此方には振り返らず、それでも若干の呆れが混じった声色で返事が帰ってくる。
「そ、それで、何というか、……………大丈夫なんですか?
―その右手」
「俺が今、それを1番聞きたい」
力無く垂れ下がった右腕は、―
小石や硝子の破片、短い枝が至る所に突き刺さり、
パッと見何も刺さってない場所も、皮膚は大きく裂け、一部は白いナニカが露出し、
指なぞそれらしい出っ張りが在ればまだマシな方で、小指や中指などは、手の部分ごと吹っ飛んでいた。
「―、――、―!?!?」
「……スマン、何言ってるかサッパリ分からん。 取り敢えず、先ずは頭数が増える位は待ってくれたコイツをどうにかして斃し―」
スパァンッッ!!
「ッ!?――あ、文?」
「…………貴方という人間は、………」
気が付けば、彼の脳天をビンタしていた。
予想外の一撃を喰らった所為か、一瞬ビクッとし、
おそるおそる、此方に振り向いた。
「……貴方という人間は、自分の状態を理解しているんですか?
―今すぐ、何処か遠くへ逃げて下さい!! その腕、手遅れになりますよ!?!? 貴方、人間の癖して、自分がどれだけぶっ飛んだ面子に囲まれてると思ってるんですか!? 河童天狗果ては鬼の四天王の2人まで日頃から貴方のことを気にかけてるんですよ!?!? ホントアンタ何者ですかコレなら正体不明の四人目の四天王だって言われた方が納得出来ますよ!?! て言うか私の恋心返せ馬鹿阿保唐変木!!!ライバルのレベルが揃いも揃って高過ぎるわよこの鈍感!!! 兎に角アンタ人間、私妖怪!! アンダスタン?!? 分かったらとっとと魔理沙さん連れて霊夢さんなり永琳さんの所行ってくださいよまた顔面蹴り砕かれたいですか!?!?」
「」
「」
途中でトンデモナイことを口走った気がするが、自分でも何言ってるか分からないレベルで怒鳴りつけると、キンジさんどころか、その向こうにいるナニカまで絶句していた。
やがて、何を言われたか、意味を飲み込むことが出来たらしいキンジさんが、口を開いた。
「―そうだな。
それでも俺は戦うよ」
「はっ……!?」
拳を握り込む。
手加減され、不完全ながら防御していて、鬼の一撃に耐えるぶっ壊れ耐久とはいえ、妖怪の全力の一撃を眉間に叩き込んだら気絶する筈―
「な、なに、を、言って、」
「―俺は、文を守る。 勿論魔理沙も、山も、幻想郷も」
「き、綺麗事、を、」
「それになぁ―」
完全に呆れている口調で、私に、トドメの一撃を―
私自身がぶっ放した不発弾だと思っていたのを、そのままの威力で
「―文の言う通り俺が鈍感だとしても、今みたいな言われかたしたら、ついつい希望を持って張り切っちまうのが男ってもんだよ」
「―へ?」
サッと冷えた頭が、ご丁寧にもさっき私が怒鳴った台詞の一部をリピートする。
―て言うか私の恋心返せ馬鹿阿保唐変木!!!ライバルのレベルが揃いも揃って高過ぎるわよこの鈍感!!! ―
「あ―
ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁああぁあぁあぁぁああああぁぁぁああああああ!?!?!?」
「お、おい、文!?」
「うーん……うるさごぶふぁ!?」
「―――――??」
頭を抱えて転げ回る。
途中で何か柔らかい者を下敷きにした気がするが、気にする余裕はない。
は、はず、恥ずかしい………!!
「殺せぇぇぇぇぇええ!! いっそ殺してぇぇぇぇえぇぇぇぇぇええ!?!?」
錯乱する私。
困惑するキンジ。
追撃を喰らって気絶した魔理沙。
呆然と立ち尽くす黄色いナニカ。
グッダグダのカオスがそこに広がっていた。
〜ブン屋発狂中〜
sideキンジ
「えぇと………大丈夫か?」
「………はい…………お騒がせしました…………」
一通り絶叫して、過呼吸になって、落ち着いたのを見計らって声をかける。
ちなみに魔理沙は、ちょっと前に意識が戻っていて、ある程度
腕について、その時にも聞かれたが―
痛みは、無い。
それに、ここまで酷いとなると、感染症予防の為にも切断することを覚悟しておいた方がいいだろう。
そう割り切って、
――問題無いと、
さっきの文の台詞が冗談じゃなかったとしても、
魔理沙に対するこの妙なモヤモヤがなんだったにせよ、
ヤツは、黄色いナニカは止めないといけない。
それこそ、死ぬ気で。
例え死んだとしても、誰かを守る為に死んだのなら最低限は誇れるだろ。 不特定多数の人を救った兄さんには届かないだろうがな。
―さて、仕切り直しといこうか。
「待たせたな。 どういうつもりかは知らんが、遠慮なく利用させてもらうぞ」
俺たちの、作戦の準備が整う時間をくれた、その隙を。
次の瞬間―
ヤツの顔面目掛けて、『水の球』が突き刺さり、
そのフードを吹っ飛ばすだけだった。
「チッ、バランスの1つも崩れると思ったんだけどなッ!!」
タイミングよく文が騒いでる間―
『千里を見る程度の能力』で戦況を見ているだろう椛に伝言―文が気をひいてる隙に、にとりにヤツを狙撃出来る水球を発射する武器を造らせ、合図を出して狙撃してもらったのだ。
回避してもマトモに喰らっても、バランスが崩れると思っていたが―
まさか受け止めるとはな。
だが目眩し程度でも、攻勢に出るには充分―ッ!
だが、その顔を見た文の台詞で、
この攻撃のチャンスを潰さざるを得なかった。
「………はた、て?
―キンジさん!! その子、行方不明になった天狗の一人です!!」
「―ッ!? うぉ!?」
一瞬、スピードを緩めた瞬間、ノーモーションで放たれたカマイタチを躱し、後ろに下がる。
「…知り合いか?」
「ライバルの新聞記者で―
はたて、私です、射命丸文です!! 分からないんですか!?!?」
「―――――」
「取り憑かれてるのか……?!」
最大のチャンスは潰れた。
相手が女で、しかも文の友人なら、|ヒステリアモードの特性上《女性を傷つけたり、悲しませることが出来ない》、攻撃が難しくなった。
だが、これは、―
「……ん? アイツの首元がウネウネ動いてるように見えたのは、私の気のせいなんだぜ?」
前話の前書きで、2話に分けたと言ったな。
アレは嘘だ。
……マジですいません。区切りがいいところで、と考えたら、3話構成となりました。
…この話は丸々ノロケでしたが(RPG–7を構えながら)。
補足説明
ハスター:ニョグタ同様、取り憑いている。神降ろしに似た状況。
よって、本体に比べれば結構弱体化しています。
発狂はたて:SAN値直葬被害者その3。
犠牲になっていたことそのものは26話で分かっていた。
ウネウネ:
待つハスター:
ルルイエにて
クト「リア充爆発すべし」
ゆかりん「オイバカヤメロ」
そんなこんなで攻撃指令と停止指令が同時に出てました。
キンジの右腕:筋繊維血管神経全てグチャグチャ。 狂気神話の魔術も混じった怪我だから永琳でも完全に治すのはムリなレベル。
水球:にとり製
▽こうかは いまひとつ だ!