東方英雄伝 ~ラノベの主人公が幻想入り~ 【完結】 作:カリーシュ
暴力・狂気
の描写が存在します。
ここまで読んでくださった方には今更でしょうが、一応念のため。
―永遠亭前
sideキリト
謎の黒い線が、ガードも虚しくオレたちを貫き―
……………何とも、無い?
【「……ふむ。 下等種族。貴様、運はいいらしいな。
……もっとも、幸運か不運かで言えば、間違いなく不運だろうが」】
「は? どういう意味、だ―」
周りを見渡し、絶句した。
「―クトゥグア。 テメェ、何をした?」
【「……何をした、か。 人間とは時々変わった事を聞くな」】
「はぐらかすなっっ!!」
オレの視界には、―
一言で表すなら、『絶望』が、広がっていた。
「最初から…………勝てる訳が、無かったのよ…………あは、はは、は……」
その場で座り込み、涙しながらレミリアが、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ―」
頭を抱え、呟き続ける永琳が、
「!?……一体どうなって……お嬢様!? 妹様!? キリト!? 何処ですか―イタッ!」
まるで、目も耳も利いてないような様子の咲夜が、
「……そうだ……因幡………また変な罠仕掛けて………待ちなさい……何処行ったのよ……」
違う光景が見えてるような鈴仙が、
「来ないで………何で………貴方は、死んだ筈…………私を、殺しに来た、の…………?」
虚空を見つめて、呆然としているパチュリーが、
「―ぁ…………ぃ……こ……ぇ」
震えのあまり、呼吸すら満足に出来ていない輝夜が、
「……もう一度だけ聞く。
皆に、何をした?」
【「……我は、思い知らせてやっただけだ。
絶対的な力の差を。
圧倒的な、
狂気を、恐怖を、苦痛を、悲嘆を、絶望を、―
……下等種族。 貴様が、終焉を拒むなら、
―我自らが終わらせてやろう」】
そう言って、両腕を振り上げる。
ゴウッッッッ!!
「なっ!?」
発生したのは、炎のドーム。
高温が、身体を蝕む………
―違う。 それだけじゃない。
―息が、苦しい………
【「……哀れな下等種族。 酸素を失うだけで満足に動けなくなるのか」】
すぐ近くから、奴の声が聞こえる。
…が、 もう、意識が……
目の前、が、真っくら、に―
【「……安心しろ。 他の奴らもすぐに後を追わせてやる。
何も出来ぬまま、焼け落ちるがいい」】
ぼーっとしてきたあたまで、こえをおう。
だれもいなかったが、なぜか、そこらじゅうに、いろんないろのたまがみえた。
そのひとつに、だれかにあやつられるように、けんをふりおろし―
キンッ!!
【「?!?!?! ば、馬鹿な……
下等種族、どうやってドームを破壊した!?」】
周りを見る、と、そこはさっきと同じ、迷いの竹林だった。
……酸欠で、頭が朦朧とする。
……満遍なく焼かれたせいで、指先を動かしただけで、激痛が走る。
【「……今の力………まるで、あの方…………だが、奴が認めた人間は、
―……認めぬ。
貴様の如き餓鬼が、あの方の加護を受けるなどあり得ない!!」】
掌が前に突き出され、火柱が真っ直ぐにオレを消し飛ばそうとする。
……今度こそ、オレ、死ん―
「―禁忌『レーヴァテイン』!!」
ゴォォウゥオォォォッッッ!!!
【「……このクソ餓鬼が、」】
「ガキじゃないもん!! 495歳だもん!!」
「―ふ、フラ、ン。 駄目だ……」
幾ら吸血鬼と言えど、あの邪神には………勝てない。
せめて………せめて、フランだけでも、逃がさない、と―
「……フラン――グハッ?!?!」
ふと見れば、自分自身の腹に剣を突き立てていた。
―だが、不思議と、オレの弱気な心が消えた。
一体どうなって―
『アハハ、お兄様ぁ♪
ワタシとアソンデくれないうちにコワレちゃうの?』
「!?!?!? この声は、
ユナ、なのか……?!」
でも一体、どうして……
ユナの声が、今、聞こえるんだ?!
『ウーン、ワタシは『フランドール』の別れた魂なんだから、そのキズナを
「……消える可能性があったんだから、今度からはやめろよ?」
……さっき一瞬見えた球は、『目』だったのか。
『………え、今ここでプロポーズ? イエーイワタシの勝ちー!!』
「なんでそうなる」
つまり、さっきの剣は、オレの弱気な心を破壊したってことでいいだろう。
そうだ、戦況は今、どうなって―
『…あーこれ、憑依先間違えちゃったかな?』
side美鈴
―妹様を庇って、竹林に逆戻りして―
結果としては、ラッキーだったのでしょう。
「……もう………無理、無理なのよぉ……」
「ちょ、お姉様!? どうしちゃったの!?!?」
氣の流れが狂っているお嬢様たちを、妹様に任せる。
キリトさんへの一撃こそ、妹様が防ぎましたが―
……この邪神の相手は、フラン様には荷が重すぎる。
【「……貴様と似た気配を感じたことがある。
…どこかであったか?」】
「いえ。 初めましてですよ」
考え込む仕草をしていますが……
超高温の焼壁があって、攻撃出来ませんね。
【「……思い出した。 古き時代の戦いで、旧神どもに力を貸した連中に似ている。
……貴様は、あの時の個体なのか?」】
「…私はただの門番ですよ。 昔も、今も、この先も」
この邪神の攻撃―氣の流れを狂わせる以外は、全て炎を使った攻撃です。
なら、私なら身代わりになれる。
……傷つくのは、
―力があるのに、フラン様の狂気を放置していた、私が、多分、唯一出来る償いだから。
sideフラン
どうしよう……
どうしよう、どうしよう!?!?
「美鈴が……美鈴が死んじゃう!!」
美鈴に言われた通りに、様子のおかしいお姉様たちを遠ざけて(うどんげは抵抗してきたから気絶させた)、戻って来たら―
美鈴が、アイツの攻撃を受け止めることしか出来ていなかった。
なんで!?!? 美鈴なら、あの程度簡単に―
「い、もうと、様。 後、キリトさんを、頼み……ます」
え? キリト―
あ!! 美鈴の後ろにいた!?
い、今すぐ助けないと―
ビッ―
「……え?」
急に、身体が冷える。
周りを見る、と、青い人魂みたいなのが、白いレーザーを撃ってきて―
ビッ―
「!? キャァァァ!!」
私の身体の一部が凍らされて、地面に墜ちる。
【「……よくやった、アフーム=ザー」】
「…!? あ、貴女という奴は……!!」
アイツの掌に、火球が生み出される。
【「……今度こそ、塵1つ残さず消し飛べ」】
動けない私に、どう動くか迷った美鈴に、火球が、迫る。
……私、ここで死んじゃうのかな?
……でも、美鈴やキリトと一緒なら、きっと何処に行っても楽しいよね。
ゆっくり、目を閉じ―
ドッ―――ゴォォォォォォン…………
……
…………
…………………?
あったかいな……誰かに、優しく抱きしめられてるみたいで。
でもちょっと重いかな?
……目を開ける、と―
「……お前ら、無事、か?」
全身煤と血でボロボロになったキリトが、私と美鈴を地面に倒して、覆いかぶさっていた。
「……え? キリト、さん……冗談、ですよね?」
「…ワリィ、美鈴。
無理なのを承知で頼む……もし、オレの世界の連中に会うことがあれば―
……また会おうって約束、果たせなくて、ごめんって―」
キリトの全身から力が抜ける。
「………ねぇ、起きてよ。 まだアイツ……斃せてないよ?
こんな所で寝ると、風邪引いちゃうよ?」
……当然、返事は返ってこない。
頭では分かってるのに、
心が、事実を、認めてくれない。
これは、きっと私への罰だ。
今まで、何人も、何人も、何人も、
壊して、壊して、壊し続けて来た私への。
私が殺してきた人たちの仲間も、きっと、今の私と同じ苦しみを味わってきたんだ。
―なら、せめて、
…気がつけば、私は、
―私自身の手で、
…キリトの『目』を、
「―きゅっとして、
どかーん」
side美鈴
【「……貴様らは、変わっている。
絶対的な力の差があるにも拘らず、互いを同格のように扱う。
…なぜだ?」】
「………」
……キリトさん。 すいません。
奴の言葉にだって、貴方なら「仲間だからだ」の一言くらい、簡単に言い返せるんでしょうけど、
……私は、『家族』に囚われ過ぎたせいで、貴方を、見殺しにしてしまった。
―だから。
私はもう、迷わない。
【「……心が壊れた、か? 相変わらず下等種族は、あらゆる面で雑魚でしかな―?!?!?!」】
焼壁を膝蹴りで叩き壊し、そのままの勢いで、掌底を当て、即席で練った氣を炸裂させる。
「―これは、咲夜さんの分」
動揺する奴の背後に最高速度で回りこみ、足を払い、バランスが崩れた隙に襟を掴んで真上に投げとばし、落ちてきた所にさらに蹴りをねじ込む。
【「――うご!?!?」】
「―これは、パチュリー様の分」
顔面を掴み地面に叩きつけ、そのまま氣を爆発させる。
思い出したように炎が私を襲うが、皮膚に火傷1つつけることができない。
【「―我が配下よ! アフーム=ザー!! この雑魚を如何にかしろ!! グボァ!?」】
赤と青の人魂状のナニカが、私に殺到するが、
「―邪魔です」
体内の氣を、
決して表に出さないと決めた妖力を、
ドゴガガガガガガガッッ!!!
その直線上に爆発が連続で発生し、そのナニカを消し飛ばす。
「―これは、レミリアの分」
―妖力を解放したことで、かつての力が、―
私が嫌い、棄て去った筈の、
垂直に打ち上げ、右手に溜めたエネルギーをそのまま叩きつける。
再度の爆発、轟音、閃光。
落下時に回し蹴りでの追撃も忘れない。
「―これは、フランの分。
そして、これは―」
吹っ飛ぶ奴に一瞬で追いつき、掴み、そのまま上昇、
「―キリトの分、だぁぁぁぁあああ!!!」
急降下し、地盤をブチ抜き、それでもまだ止まることなく、奴を叩きつけ続ける。
摩擦と、私自身の体温で、土が一部ガラス状になっているが、無視する。
「…焼け堕ちろ―
お前が、焼け堕ちろぉぉぉおおぉぉぉぉおおぉおおおおぉおおおおっっ!!!」
……私が力尽きて止まった頃には、深さだけで軽く数十メートルの大穴が出来ていた。
「…久し振り過ぎて、随分無駄に暴れちゃいましたかね?」
地割れまで起きてるし……こりゃ門番に戻れるのはいつになることやら。
体の氣の流れを普段通りのものに戻し、フラン様を探す。
……仇は、取ったと伝える為に。
それが終われば………こんな取り返しがつかないレベルになるまで、隠し事をしていた私への断罪ですかね。
……前言撤回。 そもそも門番に戻れますかね?
【「……召喚―」】
「!?!? なっ!?」
致命傷を与えた筈の、奴の声が聞こえ、振り向いた先には―
【「―『フォーマルハウト』」】
マグマよりも、太陽よりも、
遥かに高温の大気が、召喚されていた。
補足説明
黒い線:『狂気の波導』
精神への直接攻撃。 TRPG的に言えば強制SANチェック。 SAN値の減少値は、放った邪神に依存する。
今回の場合は、クトゥグア(憑依体)であるため、1D25ほど。
よって、精神状態や運によっては被害が少ない。
ユナ:34話終了時点で、何故フランの内面にいると思った?
…ネタバレすると、少なくとも永夜抄のタイミングではフランの内面にいた。
クトゥグア:今奴が、誰に憑依していると?
フォーマルハウト:クトゥグアが封印されている星。 魚座に位置する星で、表面温度が太陽よりも高いらしい。