インフィニット・ストラトス Re:IMAGINE   作:如月十嵐

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一章「始まりの鐘は鳴る」
プロローグ


 

 

 私達はいつも世界を色眼鏡で見ている。何故なら、真実は余りにも辛く理不尽なもので、またそれを直視すれば己が眼を焼かれるからだ。不都合な真実を覆い隠し、見えるだけの事実を享受して生きる。それは凡人達の冴えたやり方であり、正しい生き方だ。

 

 それは、インフィニットスーツ、通称「IS」の発明がそうであり、白騎士事件がそうだった。天才篠ノ之束が開発したマルチフォームスーツ。宇宙開発を主として製作され、しかし今は合法的に扱うためにスポーツ競技用機という名目を持つ実質的軍事兵器。これには面白い特性があった。

 

「女性しか乗れず、扱えない」という奇異な特性が。

 

 最初、世界はそれを認めなかった。しかし彼女はそれを大々的なマッチポンプによるパフォーマンスで認めさせた。それが白騎士事件。全世界のミサイルがハッキングされ、それら全てが日本に降り注いだ前代未聞の大事件。そしてそれを、たった一人のISを着た者通称名「白騎士」が全て斬り落とし、撃ち落としたという大事件。

 付け加えるなれば、その特異点を倒すために出撃したあらゆる軍事兵器が、ISの下位兵器である事を思い知らされた事件でもある。

 

 結果的にこの事件が世界がISを認め、急速に世界を変え、今や社会はISに乗れる女性を至上とした女尊男卑の世界となっている。それが篠ノ之束の目論見だとすれば、彼女は大いに笑っただろう。

 

 だが、彼女は笑わなかった。むしろ歯噛みした。

 

 彼女が真の目的である仮想敵は、白騎士を歯牙にもかけず無視した。あまつさえそれを利用し、世論を操作し、世界を歪な女尊男卑社会としたのだ。

 

 

 世の女性は知らない。今の女尊男卑社会が、悪意を以って作られたという事実に。更なる暗黒へと突き落とすための、前触れであるという真実に。

 

 

 彼女には別に、世界を守るとか救うとか、そういう考えはなかった。しかし、自らの好ましい人と面白おかしい日常を妨害する者と戦うやる気と、力があった。

 

 

 幸運なことに、同時期ISという物の本質を見抜き、世界の背後にある闇に気づいた者達がいた。その者達はそれぞれの考えの元に組織を設立。そして彼らは表の名目上、「IS同盟」を設立した。

 

 ある組織は、男でもISが乗れるように。ある組織は、本来の目的である宇宙開発用マルチフォームスーツを目指して。ある組織は、ISを超える代替兵器を作るために。

 

 ISに頼らない世界を作る。そのために彼らは結束し、そして篠ノ之束はそんな彼らと消極的友好関係を築いた。仲間でもない、味方でもない。しかし、敵ではない。

 

 

 これは世界の裏に潜む闇「亡国機業」と、それに抗い戦う事を選んだ人間たちの物語である。


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